2025.04.09
実は夏よりも"春"がオススメ!意外と奥が深い「冷やしトマト」を上手に作るコツ
春でも暑い日が増えた昨今、トマトでサッパリ、簡単に栄養補給できると体にも良さそうです(写真:筆者撮影、以下同)
料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は、実は今が1年の中で一番おいしい「トマト」を使った、お手軽な副菜をご紹介します。
「春トマト」をオススメする理由
物価高の中で、食べ物の価格もこれまでにない上昇傾向にあります。少し前にはキャベツや白菜の価格高騰が話題になりました。天候不順による影響、人件費や物流費の増加など、価格が上がる要因はあっても、下がる要素はほとんどないため、上手に付き合っていくしかないようです。
野菜はスーパーで年中手に入りますが、季節によって価格に変動があります。旬の時期の野菜は安く、逆に旬から外れると高くなるので、高い野菜に手を出すよりも流通量が増え、価格が下がった野菜を食べるのが吉です。今回はトマトを取り上げます。
トマトは夏野菜の代表として扱われるので「夏が旬」と思われがちですが、これは露地栽培が中心だったころに定着したイメージ。トマトは暑さに弱い作物なので、最近の天候では育てるのが難しく、むしろ昨今の暑すぎる夏では流通量が減り、価格も高くなります。
実は流通量が増え、価格が下がってくるのは春。業界で「春トマト」と呼ばれるトマトは冬の寒さを越え、時間をかけて育つので、糖度も高く、食べるなら今です。今回はシンプルな冷やしトマトをおいしく食べるレシピをご紹介します。
冷やしトマト
材料 2人分
トマト 1〜2個
タマネギのみじん切り 大さじ2程度
米酢 大さじ1
水 大さじ1
しょう油 小さじ1
砂糖 小さじ1
このレシピではトマトを冷蔵庫で冷やすので、食べる30分以上前に準備しましょう。余裕があれば、1時間前に用意するのが理想です。
材料表にある少量のタマネギのみじん切りはトッピング用。冷やしトマトに食感と風味を加える名脇役ですが、作り方にコツがあります。
大玉トマトを使いますが、あまり大きくないものがおいしいようです
タマネギをおいしく切るコツ
タマネギは皮を剥き、上下を少し切り落とします。通常のタマネギのみじん切りは、タマネギを半分に切り、繊維の方向に包丁で細かい切り込みを入れ、さらに包丁を入れる方法です。あるいは、ざく切りにしてフードプロセッサーを使う、手回し式のみじん切り器を使う、という人も多いでしょう。
しかし、サラダ用に使うタマネギの場合はもっと丁寧な切り方をするのがベスト。タマネギは半分に切らずに、写真のように端から包丁で2センチ程度切り込みを入れていきます。
包丁は中心よりも先端寄りの薄い刃の部分を使うときれいに切れます。安定しない場合はさらに下を切り落とすといいでしょう
半分まで進んだら、逆方向から同様に切り込みを入れていきます。タマネギを90°回転させ、同様に切り込みを入れていきます。これで細かい碁盤目状に切り込みが入りました。
切り込みが入ったら、包丁でタマネギをそいでいきます。包丁を前後に動かし、力を入れないように心がけましょう。
ボウルにざるや茶こしをかませると、作業が楽です
切ったタマネギを水にさらします。通常のみじん切りとこの切り方では、何が違うのでしょうか。
タマネギの仲間に共通する独特の風味は、酵素反応によるもの。普段は液胞に収まっていますが、細胞が傷つくと、放出された酵素が硫黄化合物を生じさせます。これが刺激的な風味や苦みの原因になるのです。
丁寧なみじん切りは必要以上に細胞を壊さないため、嫌な風味や辛味が出にくくなります。最終的に切った断面では酵素反応が進みますが、それも水で洗い流してしまうことで、硫黄化合物が取り除かれるのです。
反対に切れない包丁、あるいは手動のみじん切り器を使うと、必要以上に細胞が傷つき、すっきりした味わいにならないのです。
トマトの皮を簡単に剥くには?
次にトマトの下処理です。まず包丁の先端などを使い、ヘタを取り除きます。
トマトは熟れた赤いものを使いましょう
熱湯に3〜4秒通し、冷水にとります。そうすると皮が簡単に剥けます。これをトマトの湯剥きといい、トマト料理の基本工程の1つです。鍋に湯を沸かすのが面倒であれば、直火であぶっても皮は剥けます。
トマトに味をつけるためのマリネ液を作ります。ボウルに米酢、水、砂糖、しょう油を混ぜ合わせましょう。和風の料理にも合う、ノンオイルの甘酸っぱいマリネ液です。
米酢の代わりにワインビネガーを使っても、違った風味が楽しめます
タマネギの取り扱いは丁寧に
くし形に切ったトマトをマリネ液に加え、ラップをかけて冷蔵庫で30分以上冷やします。冷やしトマトは冷やし込むところにおいしく仕上げるポイントがあります。
トマトの大きさは好みですが、あまり小さく切りすぎないほうがいいでしょう
水にさらしたタマネギの水気を切り、キッチンペーパーなどでさらに水気を取ります。このとき、力を入れてしまうとやはり細胞が壊れ、タマネギの風味が損なわれるので、やさしく扱いましょう。
トマトとマリネ液を器に盛り付け、タマネギのみじん切りをトッピングします。普段、見過ごされてしまいそうな副菜ですが、丁寧に作ると驚くほどおいしいもの。ビールにも合うのでぜひ試してみてください。
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提供元:実は夏よりも"春"がオススメ!意外と奥が深い「冷やしトマト」を上手に作るコツ|東洋経済オンライン