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2024.12.15

「めまいの悩み」年だからとあきらめてはいけない|脳と筋肉だけは、年を取っても成長させられる


「めまい」を改善するための、「小脳の鍛え方」について解説します(写真:マハロ/PIXTA)

「めまい」を改善するための、「小脳の鍛え方」について解説します(写真:マハロ/PIXTA)

多くの人が悩まされている「めまい」は、耳から入ってくる「からだのバランスをたもつ」ための情報が、小脳でうまく処理できないことに起因しているといいます。
そんな「めまい」を改善するための「小脳の鍛え方」を、横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科部長の新井基洋氏の著書『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』から、一部を抜粋・編集して解説します。

めまいの原因は「耳」が7割

あなたを悩ませているめまいの原因は、おもに「耳」にあります。じつは、耳は、めまいの原因の約7割を占めているのです。

めまいは、体のバランスが崩れることで起こります。ですから、めまいを理解するために、まずは体のバランスの話をしようと思います。

私たちの体はバランスをたもつために、目、耳、足の裏からの情報を小脳がまとめ、それを大脳に伝えています。この目、耳、足の裏のうち、小脳がもっとも頼りにしている情報収集役が「耳」です。

耳のはたらきというと、音を聞くことを思い浮かべるかもしれませんが、それだけではありません。耳には、体のバランスをたもつために、体の位置や傾き、動きの速さや方向など、体の動きに関わる情報を小脳に送る役割もあります。

(出所:『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』より)

(出所:『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』より)

ところが、なんらかの理由で左右どちらかの耳のはたらきが低下すると、小脳は正確な情報を得ることができなくなります。すると、正確な情報を送っている目と足の裏からの情報と耳からの情報にずれが生じ、小脳は体のバランスをうまくとることができなくなります。その結果、めまいが起きるのです。

ここまでの説明で、なんとなく、耳と小脳が密接につながっていて、体のバランスにおいて重要な役割を担っているのがわかってもらえたかと思いますが……いまいち、ピンとこなかった人のために、わかりやすい例をあげてみます。

会社組織にたとえると、会社が私たちの体で、大脳は、会社の司令塔である社長です。社長は信頼のおける優秀な部下がいなくては、会社にとっての最良の決断を下すことができませんよね。その社長の右腕となってはたらくのが小脳です。

さらに目、耳、足の裏は、中間管理職のポジション(その中でも、耳がリーダー的な役割)にあり、上司である小脳にこまごまとした情報を伝えます。中間管理職の人は、部下からの情報を集約・取捨選択して社長に伝えます。この連携がうまくいくことで会社は安定・繁栄します。

体もまったく同じで、小脳が優秀であれば、目、耳、足の裏から送られてきた情報を正しく大脳に送ることができます。大脳は受け取った情報をもとに手足に「動け!」と指令を送り、それに従って手足はうまく動くことができ、私たちは体のバランスを崩すことなく、立ったり、歩いたりできているのです。

「小脳」は体のパイロット

めまいは、左右どちらかの耳のはたらきが低下する(左右差が生じる)ことで起きると説明しました。つまり、めまいを軽減するには、耳のはたらきの左右差を改善すればよい、ということになります。

しかし残念ながら、左右差を根本的になくす方法はありません。めまいの薬を使っても治すことはできないのです。そこで私が考案したのが「めまいリセット法」です。紙幅の関係で本稿では詳しく触れませんが、その多くは、小脳を鍛えることを目的としています。

私たちの体は、目、耳、足の裏からの情報を小脳がまとめ、大脳に伝えることで、バランスをとることができているのでしたね。しかし、片方の耳のはたらきが低下して左右差が生じた場合、小脳はその左右差を補おうとします。リセット法は、この小脳のお助け機能に着目したことで生まれました。

小脳と耳の関係は、プロペラ機にたとえることができます。プロペラ機の本体が人間の体だとすると、パイロットは小脳、両翼についているプロペラは耳です。

もしプロペラ(耳)のどちらかがうまく動かなくなったとしても、パイロット(小脳)が優秀であれば、なんとかバランスをとりつつ飛行を続けられます。しかし、腕の悪いパイロット(小脳)では、機体を制御しきれません。

パイロットは、どんなアクシデントも乗り切れるように、日ごろから訓練をしています。それと同じように、小脳のはたらきを日ごろから鍛えることが大切なのです。

「あえて目を回す」ことで効果が上がる

遊園地のコーヒーカップに四六時中乗っていれば、(グルグル目が回る回転性の)めまいに強くなる。これは少し極端なたとえですが、めまいの特効薬は薬ではなく、目が回ってしまうような環境にあえて身を置くことなのです。どういうこと? と思った人は、氷上を華麗にクルクル回転しているフィギュアスケーターを思い浮かべてください。

フィギュアスケーターは、クルクル回っても目を回すことなく美しい演技を続けられている。不思議ですよね。彼らが特殊能力の持ち主だと思っている人も多いでしょう。しかし、そうではありません。彼らもはじめは私たちと同じで、クルクル回ったあとはフラフラしたり、気持ち悪くなったりしたのです。

彼らが目を回さない秘密は"小脳"にあります。目、耳、足の裏から送られる情報エラーを修正する小脳のバランスシステムは、発動する機会が増えれば増えるほど、情報修正能力=バランスをとる能力が高まります。

もうおわかりですね。フィギュアスケーターたちはクルクル回るという、あえて体のバランスを崩すような動きをくり返すことで、バランスシステムが発動する機会を増やしているのです。その結果、ちょっとやそっと回ったくらいでは目を回してバランスが崩れることがないような、たくましい小脳(=優秀なパイロット)を育成することに成功しているのです。

そもそも小脳に限らず、脳にはある程度の負荷をかけていかないとその機能は低下していくいっぽうとなります。

めまいの症状が重い人は、発作が怖くて視線を動かさない、ふり返ったりしないなど、めまいのきっかけになるような行為を避けたり、中には寝たきりに近い状態で1日を過ごしたりするという人も少なくありません。気持ちは痛いほどわかるのですが、これではバランスシステムが発動する機会が失われ、機能がどんどん低下してしまいます。

「小脳を鍛えましょう」というお話をすると、「もう歳を取っているし、いまから小脳を鍛えるのは難しいのでは?」と思われる人がいます。じつは、人間の臓器の多くは自分の意思で鍛えることは難しいのですが、脳と筋肉だけは異なり、いくつになっても成長させることができます。

脳は筋肉のように成長を目で見ることはできませんが、頭の中では同じようなことが起きています。適切な方法さえわかれば、あなたの小脳は確実に鍛えることができます。いくつになってもあきらめる必要はないのです。

グルグル回るだけじゃない「めまいの3つのタイプ」

「耳」が原因のめまいといっても、その症状はさまざまです。めまいの症状は、次の3つのタイプに分けることができます。

① グルグル型の「回転性めまい」
② フワフワ型の「浮動性めまい」
③ ユラユラ型の「動揺性めまい」

それぞれのタイプについて、くわしく見ていきましょう。

【① 寝ても、起きても目が回る! グルグル型の「回転性めまい」】

目の前がグルグル回る症状が現れる「回転性めまい」は、3つの中でもっとも多いタイプです。めまいといえば、この「回転性めまい」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

「回転性めまい」は、おもに次のような症状があります。

・視界がグルグル回って見える
・物がブレて見える
・風景が左から右、右から左に流れているように見える
・風景が上下や左右に激しく動いているように見える

「回転性めまい」の発作は、数分で治まる場合もあれば、長時間にわたり続くこともあります。ときには吐き気や嘔吐などの症状も伴います。動くことすらままならないような重い症状が出ることが多く、3つのタイプのめまいの中でもっともやっかいなめまいと言えるでしょう。

【② 雲の上を歩いている!? フワフワ型の「浮動性めまい」】

体がフワフワ浮いたように感じる「浮動性めまい」は、おもに次のような症状があります。

・体がフワフワと宙に浮いているような感覚がある
・マットやスポンジの上を歩いているような、フワフワした不思議な感覚を覚える

回転性めまいほどの重い症状ではないのですが、症状が長引くことが多いのが特徴です。そのため、症状があっても異常とは感じず、病院へ行かない人も多いと思われます。

ひと昔前は「フワフワ型のめまいが起きたら、まずは脳の疾患を疑うべし」と言われていました。しかし近年の研究では、その可能性は低いことがあきらかになっています。

【③ まっすぐ歩けない、人混みが怖い! ユラユラ型の「動揺性めまい」】

頭や体がグラグラ、あるいはユラユラ揺れた感じがする「動揺性めまい」は、おもに次のような症状があります。

・体が前後にユラユラして、不安定で立っていられない
・地震でもないのに、地面がユラユラ揺れているような感じがする
・歩いているとき、体が右や左に引っ張られるような感じがして、自然に右か左のどちらかに曲がってしまう
・人混みで他人にぶつかりやすい
・家の中で物にぶつかりやすい

「動揺性めまい」のつらいところは、めまいの治療を得意としない病院を受診すると、「原因不明」として有効な治療を受けられない場合があることです。「歳のせい」「気のせい」などと言われてしまうこともよくあります。

クラーッとする「立ちくらみ」にも要注意

以上の3つのタイプのほかに、もうひとつお話ししておきたいめまいの症状があります。立ち上がったときに「クラーッ」とする「立ちくらみ」という症状です。

これは耳ではなく、脳貧血や心疾患、脳血管障害などによる一時的な血流障害が原因となる症状です。低血圧、睡眠不足、疲労などが原因で起こることもあります。

この立ちくらみは、なかなか完全改善が期待できない少し特殊なタイプのめまいです。ときには重篤な病気が隠れていることもあるため、症状が頻繁に起こるようであれば、耳鼻咽喉科ではなく、循環器内科や脳神経内科を受診することをおすすめします。

とくに、65歳以上で生活習慣病の高血圧や糖尿病などの持病がある男性で、突然、強い立ちくらみの症状が出た場合は、脳梗塞や脳出血などの脳の障害が原因の「中枢性めまい」と呼ばれるめまいの可能性があるので、早急に脳神経内科、脳神経外科などを受診する必要があります。

ちなみに、高血圧や糖尿病などの持病がある男性は、女性の3倍も中枢性めまいになりやすいことがわかっているので、生活習慣病に注意することが重要です。

『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』(アスコム)

『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』(アスコム)

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提供元:「めまいの悩み」年だからとあきらめてはいけない│東洋経済オンライン

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