メニュー閉じる

リンククロス シル

リンククロス シルロゴ

2024.09.10

60歳を過ぎたら「たかが便秘」では済まされない|「大きなウンチ」を「しっかり出す」が腸活の基本


性別を問わず、60代の後半からは便秘に悩む人が増えてくるという(写真:PanKR/PIXTA)

性別を問わず、60代の後半からは便秘に悩む人が増えてくるという(写真:PanKR/PIXTA)

性別を問わず、60代の後半から悩む人が増えてくる便秘。その理由は腸内細菌の環境がガラリと変わる「60歳の壁」にあると、文教大学健康栄養学部教授の笠岡誠一氏は指摘します。また、笠岡氏によれば、「腸活」は便秘の解消だけではなく、大腸がんのリスクを減らすなど、多くの健康効果をもたらすそうです。

※本稿は、笠岡氏の著書『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』から、一部を抜粋・編集してお届けします。 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

腸内細菌の環境がガラリと変わる「60歳の壁」

加齢によって腸の働きは、だんだん衰えていきます。そうすると、悪玉菌が増えやすくなり、便秘になりやすくなります。

グラフを見ると、60代後半から便秘に悩む人が増えていることがわかります。70代前半までは女性のほうが多いのですが、70代後半からは男女共通の悩みになります。

(出所:『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』より)

(出所:『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

60歳以降、便秘が増える理由には、いくつか原因が考えられます。

○腸の働きの低下

加齢によって、大腸のぜん動運動が低下することが考えられます。大腸内に便がとどまる時間が長くなり、その間に便の水分が吸収されて硬くなり、便秘を引き起こしてしまうのです。

○便を押し出す力の低下

筋力の低下によって、便を押し出す力が低下することにより、便が大腸内にとどまりやすくなってしまいます。

○食べる量が少ない・食物繊維の摂取量が少ない

年を重ねると食が細くなっていきます。便のもとは食べたものですから、食べる量が少なければ、便の量も減ってしまいます。食事量の減少とともに、便を形づくる食物繊維の摂取量も少なくなるため、便秘になりやすくなってしまいます。

「大きなウンチ」を「しっかり出す」が腸活の基本

便秘を予防するために、若いときよりも意識して腸活に努めましょう。ご飯などの炭水化物をしっかり摂り、ヨーグルトや、ごぼう・大根などの野菜を意識して摂るようにしましょう。

また、日中の活動量が少なければ、エネルギーが使われませんから、お腹もすかず、食べる量も少なくなります。家の中ばかりにいるのではなく、外出して適度な運動を心がけましょう。からだを動かすことは、腸に直接、刺激を与えることにもなり、ぜん動運動を促すことにもなります。

ウォーキングに出かけたら、途中でトイレに行きたくなったという経験のある人は多いことでしょう。これは、からだを動かすことが腸への刺激になって、便通が促された証しです。

運動すると気分も前向きになり、食も進むものです。1日をぜひ活動的に過ごして、しっかり食べて、腸の元気を維持しましょう。

中高年・高齢者に限らず、便秘は若い女性にも共通する悩みです。特に太ることを気にして、炭水化物を制限したりすると食物繊維が不足して、たちまち腸内環境は悪化し、便秘になってしまいます。

「大きなウンチを作って」「しっかり悪いものを体外に出すこと」。これが腸活の基本と、心得てください。

さて、ここまで腸活の大切さと食物繊維の重要性をお話ししてきました。腸活によって腸内細菌を元気にすることが免疫力を高めたり、肥満を予防したりするといった多くの健康効果につながることがわかっていただけたでしょう。

さらにここからは、腸活は病気の予防という側面からも重要であることをお話ししましょう。

まず、腸が元気になることで、大腸がんのリスクを減らすことができます。2022年の統計で、死亡数が多いがんは、女性の第1位、男性の第2位が大腸がん。罹患者数は、年間約16万人もの数になります。

大腸がんの発症には、生活習慣、特に食生活との関連性が強く指摘されています。日本人の食生活が炭水化物を減らす方向にシフトしてから、急激に患者数が増えたがんの1つです。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、炭水化物の摂取量は1955年には1日411グラムありました。それが、2019年には248グラムまで低下しています。1日当たりのエネルギー摂取量も減少、米の摂取量も低下しています。炭水化物の摂取量が減少するのに反比例するように、大腸がんにかかる人が急増しています。

疫学的な研究で、炭水化物(でんぷん)の摂取量が減ると、大腸がんの発症頻度が上がるという報告もあります。

また、炭水化物に含まれる食物繊維は、善玉菌の「エサ」になり、エサを食べた善玉菌は、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの「短鎖脂肪酸」を作り出します。この中の「酪酸」が、大腸がん予防にすごい働きをしていることが近年の研究でわかってきました。

通常の細胞はブドウ糖をエネルギー源としていますが、大腸の細胞は、酪酸を主要なエネルギー源としています。そのため酪酸の量が不足すると、エネルギー不足に陥り、細胞が正常に機能できません。

また酪酸は、がん抑制遺伝子の一種「p53」を活性化することもわかりました。p53遺伝子が活性化すると、がん化した細胞が増殖するのを防いだり、死滅させたりと、がんの発症リスクを下げることができるのです。

つまり、酪酸を増やすことが、大腸がんの予防につながるというわけです。炭水化物を食べ、善玉菌にしっかりエサを与えて腸の中に短鎖脂肪酸を増やしてあげることが、発がん性物質の発生を抑えるのみならず、遺伝子レベルでもがんの増殖を防ぐための効果を発揮するのです。

「潰瘍性大腸炎」「クローン病」などの病気も予防

今、日本では大腸がんをはじめとして、腸の病気に苦しむ人が増えています。潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こして、下痢や腹痛を伴う病気です。難病に指定されていて、日本では約17万人の患者がおり、老若男女関係なく発症するとされています。近年、急速に患者数が増えています。

また、同じように腸に炎症が起こり、腹痛や下痢をもたらすクローン病も増加傾向にあります。こちらも難病に指定されている病気で、小腸や大腸での発症頻度が高く、日本には約4万人の患者がいるとされています。

潰瘍性大腸炎もクローン病も、腸管での免疫機能が暴走することで、腸管に炎症が起きると考えられ、炎症性腸疾患(IBD)と総称されています。

動物実験で実証された「食物繊維」の効果

これらの病気も、レジスタントスターチ(食物繊維)を摂取することで症状が緩和する可能性のあることが、ブタを使った実験で示されています。ブタは人間と腸の長さがほぼ同じため、研究に使われることが多い動物です。

その実験では、ブタにレジスタントスターチの少ないコーンスターチ(トウモロコシのでんぷん)と、レジスタントスターチが多い非加熱のジャガイモをそれぞれ14週間食べさせたところ、非加熱のジャガイモを与えたブタのほうが、明らかに炎症性腸疾患の症状が緩和したのです。

また、炎症性腸疾患には、短鎖脂肪酸の1つである「酪酸」が治療に有効だと示唆する実験もあります。

慶応義塾大学の長谷耕二教授らの実験では、酪酸を結合させたでんぷんを、大腸炎を起こしているマウスに与えたところ、与えていないマウスに比べて免疫の暴走を抑える細胞(制御性T細胞)が2倍ほどに増え、その結果、大腸炎の症状が緩和したといいます。

このことから、腸内に酪酸を増やしていけば、炎症性腸疾患(IBD)の改善効果が期待できるといえます。

特に潰瘍性大腸炎は、直腸部分から炎症が起こることが研究で明らかにされています。したがって炭水化物を冷やすことで増えるレジスタントスターチならば、直腸まで善玉菌を届けることができるため、改善効果が期待できるというわけです。

食物繊維についていろいろ述べましたが、腸を元気にする食物繊維をしっかり摂ることは、命に関わるような重大な病気を予防することにもつながるということがわかっていただけたのではないでしょうか。

記事画像

『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(アスコム) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

記事画像

【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

年金暮らしを圧迫「避けては通れない」2つの出費

「メンタルを病む60代」「余裕ある60代」の決定差

医師が警告「生活習慣病」招く3つの身近な食品

提供元:60歳を過ぎたら「たかが便秘」では済まされない|東洋経済オンライン

おすすめコンテンツ

関連記事

「寿命を決める臓器=腎臓」機能低下を示す兆候5つ|ダメージを受けてもほとんど症状が表れない

「寿命を決める臓器=腎臓」機能低下を示す兆候5つ|ダメージを受けてもほとんど症状が表れない

【医師監修】脂質異常症と動脈硬化の関係~メカニズムや予防方法についても解説~

【医師監修】脂質異常症と動脈硬化の関係~メカニズムや予防方法についても解説~

命に関わる心疾患は、予防が大切!今すぐできる生活習慣改善とは?

命に関わる心疾患は、予防が大切!今すぐできる生活習慣改善とは?

なぜ年を取ると「しょうゆをドバドバ」かけるのか|高血圧になると腎臓にも負担がかかってしまう

なぜ年を取ると「しょうゆをドバドバ」かけるのか|高血圧になると腎臓にも負担がかかってしまう

戻る