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2024.08.20

「自信がない人」は簡単なことに気づいていない|自己肯定感を高められる「超簡単テクニック」を伝授


「自信を忘れること」。つまり、もともとあったはずの自信を、失ってしまうことだ(写真:mits/PIXTA)

「自信を忘れること」。つまり、もともとあったはずの自信を、失ってしまうことだ(写真:mits/PIXTA)

X(旧Twitter)にて、10万人超のフォロワーを抱えるインフルエンサー・おばけ3号氏。連載「ストレスに強く、自己肯定感が高くなる おばけメンタル」では、人々や社会とのコミュニケーションの関わり合いの手法を発信している。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボによりお届けする。

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「自信を忘れること」

私は人間の設計をとても残念に思うことが多い。そもそも設計ミスじゃないかと思うことがよくある。

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ちょっと花粉を吸えばクシャミが止まらないこと、どこかが痒くてもだいたい掻かない方がいいというケースが多すぎること、栄養不足だから口内炎になったのに口内炎が痛くて栄養が摂れないこと……などなど。

その中でもぶっちぎり文句なしNo.1殿堂入り間違いないチャンピオン the グランプリ十年連続の覇者は、「自信を忘れること」。

これに尽きるだろう。

「自信を忘れること」。つまり、もともとあったはずの自信を、失ってしまうことだ。

自信がないと、自分を肯定できず、仕事であろうと遊びであろうと、意欲的に取り組めなくなってしまうだろう。そうなれば、結果として、人生から幸福さが失われてしまうのだ。

だが、この「自信を忘れること」というのは、人類が太古の時代より生き延びてきた結果から見ると、さほど特別でも珍しくもないという説がある。

種が生存する過程でどのような要素が重要であるかを調べる研究があるそうだ。

太古の昔、野生の動物と共存していた人類は、襲われたり狩りに失敗したりして命を落とすことが少なくなかった。そこで彼らはどうしたら種を存続できるかを考えた。その答えは、戦闘力や頑健さで動物に遥かに劣る分、頭を使い、工夫を続けることだった。彼らはまず、自身の成功体験や成果にとらわれて慢心することが、失敗の理由だと考えた。

そこで、それらをなるべく早く忘れ、これから来るだろう脅威に備えるべく、新たなアイディアを生み出すことを続けた結果、慢心したり隙を作ったりすることなく、その身の防衛に成功してきたという。そしてその中で役立った成功体験を淡々と知識に変え、生き延びてきたのだ。

この積み重ねを経て、人類は過去の成功よりも未来への不安に苛(さいな)まれる思考を基本として所持するようになったのである。

その思考の中では、成功から来る自信は慢心や隙に変化するため、危険以外の何物でもない。

しかし、四方八方を野生の動物に囲まれる生活は、今のこの時代にはもう発生し得ない。その時代性から見ると、この基本思考は実際の生活にそぐわなくなってきているとも言える。

今回は、その基本思考から離れることで得られるメンタルケアテクニックを、皆さんに伝授したい。

予想だにしない返答

私がまだ学生で、アルバイトをしていた頃。

高校生にしてアルバイト先のレストランの古株になっていた私は、二つ年上で大学生の新人の教育係を担当することになった。

その大学生は神奈川県の女子大に通う地方出身の女学生で、見た目にはなんの変哲もなかった。

ある日、その大学生と休憩時間が重複し、休憩室で客には出せない気の抜けたコーラを片手に談笑していた時のことである。

私はなんの気なしに、「なにかスポーツとかやってました?」と尋ねてみた。

大学生は首を横に振り、僅かに困った顔で「運動神経悪くて……」とだけ呟き、俯いた。

地雷を踏み抜いた気がした私は、その気まずい空間を埋めるべく、「あ、じゃあ何か特技あります?」と、立て続けに聞いた。

今考えれば、どう考えても盛り上がってない会話を深堀りするようで悪手だが、当時まだ高校生だった私の会話術は、これが限界だった。

しかし、大学生は予想だにしない返答をよこしてきた。

「あ……。強いて言えば、書道、かな……?」

僕は見出した活路を広げるべく、続けた。

「書道! なつかしいな、中学生の頃にやったな~。上手いんですか?」

大学生は今度は恥ずかしそうに俯き、こう言った。

「全国2位です……」

おいおいおいおいおい。待て待て待て待て待て待て。何? え?

突然の全国覇者クラスの登場である。もはや運動神経はどうでもいい。そんなものよりも圧倒的に誇れる実績すぎるだろ。

忘れた方がいい全国2位?

むしろ俯いて言うことじゃないのよ。表彰台の上で銀メダル齧りながら言うべき内容なのよ。

突然のカミングアウトのインパクトが極端に大きい。気持ちの整理がつかない。なんかコーラでごめんなさい。シャンパンとかほしかったですよね。

そんな大学生に私は言った。

「いや、すごいじゃん。驚異的な実績じゃないですか。なんでそんなの隠してたんですか」

俯き加減を少しだけ水平に戻しつつ、また予想外のコメントが返ってきた。

「隠していたのではなくて……。忘れていたっていうか、なんの自慢にもならないなと思って」

おいおいおいおいおい。待て待て待て待て待て待て。何? え? え?(二回目)

自慢にしかならないだろ。その実績を貶せるのは全国一位の奴だけでしょ。

全国2位よ? 日本人は一億二千万人いるのよ? 自分の下に119,999,998人以上いるのよ? 覇者じゃん。皇帝じゃん。閣下と呼ばせてください。

「えー、一生誇れる素晴らしい功績だと思いますけどねー! もしかしたら書道の先生のバイトとかできるんじゃないですか?」

若き天才、ないしは全国2位に教えてもらえるのだ、絶対に需要はあるだろう。

しかし大学生は改まった様子で虚空を見つめて、再度私にこう返した。

「いや、でもそのあとずっと入賞できなくて。そうしたら私の過去の入賞も全部マグレだったんじゃないかって思えてきて、実感もなくなって全てが嫌になってしまったんです。だからもうこのこと忘れようかなって思っています……。なんかすみません、こんな話しちゃって」

手元のコーラよりも気の抜けた素振りで、彼女は暗い雰囲気に包まれ、私は何を言えばいいかとあたふたとしてしまった。そんな苦い記憶である。

その後も、私は人生で似たような人間に三人遭遇した。

一人は、世界三位のパントマイムパフォーマー。もう一人は数学オリンピック国際大会出場者。最後の一人は、けん玉の世界チャンピオン。

しかし、そんな栄光を手にしているのに、全員が口を揃えて自信なさげにこう言うのだ。

「私、そんなすごくないです」と。

自身の能力を必要以上に高く見積もり、油断や隙を生むのは言語道断だが、低く見積もって自分の精神面や他者からの評価にダメージを与えるのは非常にもったいない。

評価は、他人からされるものであり、他人と比較されて決まるものなのだから、何かのランキングや賞を得た人間の能力が低いだなんてことは理論上ありえない。

だが、自身を過小評価してしまう人は少なくない。

それは、非常にもったいないと言えるだろう。なにせ実力はあるのだから。

具体的には、自身を過小評価すると自分の存在をとにかく小さく考え、行動が委縮する。行動が委縮するから自身の評価が低いままで、また自分を小さく考え、行動が……といった、無限マイナスダメダメ落下オーマイガーサイクル(勝手に名付けた)に陥る。

そして、最悪のパターンになると「過去の私はすごかったかもしれないけど、今の私は……とても社会や他人に見せられるものでは……」というように、何も悪くないのに自身が自身を傷つける心理状態に陥ってしまう。

ちなみに、この心理状態を「インポスター症候群」という。インポスター症候群とは、自己の能力や立場、財産や成功などについて、自分の実力を心の中で肯定できずに、自分を過小評価する心理状態のことである。

インポスターは英語で「詐欺師」を意味しており、インポスター症候群に陥った人は「自分の能力は大したものではないのに、まるで成功している者であるかのように、自分が他人を騙している詐欺師のような気分になる」という罪悪感に苛まれ、心身に悪影響を及ぼしてしまう。

ここで断言したい。

過去のあなたなんていない。全て地続きで、過去も今のあなたの一部。そう考えるほうがいい。

それでも自分を信じられない迷える子羊のあなたには、ここで私がしっかり、引導……いや、幸せに向かうための技術を授けたいと思う。

「事実の堤防」を築く

今回授ける技術は、堤防を作る技術だ。……あ、違うよ。別に建設業の人とかじゃないです。ショベルカーとかいらないです。色黒でムキムキで工事現場にいる強面のお兄さんとかもいらないです。

さて、皆さんは、堤防をご存じだろうか?

海や湖畔、湾岸に存在する波消しブロックが集積しているところや、コンクリートで造られた防壁のことである。

堤防の役割はいくつかあるが、最も大きなものとして「外部からの脅威や不要な波浪を防ぎ、堤防の内側を安全かつ平穏に保つ効果」が挙げられるだろう。

これを人に置き換えてみると、この「内側」とはメンタルにあたり、「外部からの脅威」こそが、メンタルにダメージを与える存在である。

さて、では「堤防」とは何か?

ここで自身の部屋を見回し、記憶を呼び起こしてみてほしい。賞状やトロフィーをもらった経験がある人はいるだろうか? もしくは先生や上司、尊敬する人などに褒めてもらった記憶。

自分が成し遂げた事実や実績を評価する

少なくてもいい。それが事実なら全く問題ない。

その実績や記憶たち、それこそが堤防なのである。

それでは続けて、この堤防の使い方を説明しよう。

例えばの話。

先に紹介した書道全国2位の大学生は、普段生活していて、よくこう思うと言っていた。

「はぁ……私、何も取り柄ないな。書道全国2位とか、日常で役に立たないし」

これでは、堤防が堤防の役割を果たしていない。そこで、メンタルの不調や脅威に対する堤防として、しっかり前面に押し出してみよう。

「はぁ……私、何も取り柄…………………………あったわ。書道全国2位だわ」

~完~

である。事実や実績を堤防として構えることで、もはやそれ以上マイナス思考のつけ入る先がなく、完結するのだ。

大事なのはまず、自分が成し遂げた事実や実績をしっかり評価すること。次に、それを前面に押し出すこと。

自分がダメだと思う前に、実績をちゃんと見ること。本当にダメか? そんな実績まで持っているのに?

さらに言うなら、そもそもダメだと思ってはいけないんだ。それは、過去にあなたを称賛してくれた人たちの目を節穴とすることにもなりかねない。

あなた一人の判断で、あなたをダメだと判断してはいけない。

恋人のために、家族のために、先生のために、称賛してくれた人々のために、あなたは自分のことをダメだと思ってはいけないのだ。

その決意を胸に、堂々と事実のチカラを借りて心の堤防にしよう。

今、パッとしないのではない。昔がパッとしすぎているのである。

今、若い頃のように努力ができないのではない。今そんな若い頃のような無尽蔵の体力を必要とする努力をしたら、物理的に死ぬからしょうがないのである。

「私の実績は大したことない」、なんてことはない。

第三者があなたを称賛した、その事実は紛れもないあなたの素晴らしい実績だ。何度祝っても足りないくらいだ。

なんだかめでたいな、シャンパン開けよう。

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提供元:「自信がない人」は簡単なことに気づいていない|東洋経済オンライン

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