2024.08.02
コロナ再拡大、変異株「KP.3」はどんなウイルスか|一度感染した人も要注意!押さえたいポイント
新型コロナの感染が再拡大中です。気を付けたいポイントは?(写真:elise/PIXTA)
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が再拡大中だ。
都内在住のAさん(20代、女性)は6月末、企業の懇親会に参加した際に感染した。会から3日後、喉の痛みと声の出しづらさ、38℃の発熱があり、自宅で行った抗原検査で陽性を確認。熱は1日で下がったが、抗原検査が陰性になるまで5日間、自宅で静養した。
昨年2月にも一度感染しているAさん。昨年の感染時には、発熱は37.8℃程度だったが5日目まで下がらず、喉の痛みと咳、声が出しにくくなる症状に味覚障害も伴い、その回復に時間がかかったという。
6月から急に患者が増え始めた
現在、国内で流行中のコロナは以前とどう違うのか。
埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科の岡秀昭医師は、「6月から急に患者が増え始めていて、6月後半からはコロナ関連の肺炎による入院も増加しています」と話す。軽症者は若年層を中心に増加しているという。
東京都の2024年7月15日から21日までの医療機関あたりの患者報告数は8.50人(前週7.56人)。5月初旬から11週連続して増加中だ。
【画像】現在流行しているコロナの変異株「KP.3」の特徴と押さえたいポイントはこちら。 ※外部サイトに遷移します
新型コロナウィルス感染症の発生状況
この夏はコロナ以外にも手足口病やヘルパンギーナ、溶連菌感染症などの発熱性疾患も同時に大流行している。岡医師によると、「発熱して病院を受診したら、ヘルパンギーナとコロナの両方に感染していた」というダブル感染のケースも報告されているという。
現在のコロナ感染再拡大は、日本国内だけでないようだ。
「アメリカやイギリスなどでもいま、KP.3などのオミクロン系統の変異株が流行しています。日本もKP.3が中心です。KP.3は以前の株に比べて感染力が非常に強く、過去に感染した人や、ワクチン接種者でも感染しやすいのが特徴です」(岡医師)
KP.3で特徴的な症状は?
岡医師はKP.3の主な症状についてこう説明する。
「強い喉の痛みを訴える人が多く、咳や38~39℃の高熱が出やすく、倦怠感もかなり強い。一方で、これまで多かった味覚障害や嗅覚障害などの症状は、かなり減っている傾向です」
これまで、インフルエンザや風邪などのウイルス感染症は冬場に大流行する傾向があった。今回、夏場に感染が拡大しているのはなぜだろうか。
「変異株により感染しやすくなっていること、マスクなどの予防策がとられなくなっていることに加え、猛暑ということもあり、ずっと窓を閉め切ってエアコンを回し続けていると、換気が不十分になることが多い。これが感染を蔓延させる要因となっている可能性があります」(岡医師)
発熱や喉の痛みが出て、「コロナかもしれない」と思ったときに、以前と受診の仕方に何か変更はあるのだろうか。
「5類移行前のような“発熱外来”もなくなったので、コロナの疑いがあっても、どの医療機関でも受け付けてくれるかぎりは受診は可能です」(岡医師)
ただ、岡医師は「持病がなく、症状が軽い若い人たちには、自宅静養」を勧めている。
「軽症であれば、風邪のときのように自宅での静養で十分な回復が見込まれます。発熱から5日間は感染力があるので、その間はできるだけ外出しないこと。もし、外出が必要な場合は他人への感染を防ぐため、発熱後1週間程度はマスクを着用しましょう」
5類移行後、検査費用や治療薬の費用は自己負担となった。
特に治療薬は高額(ゾコーバの場合、3割負担で1万5000円強)だ。そのため、検査や治療薬を希望しない人も増えている。
岡医師も「若い基礎疾患のない方には治療薬は必ずしも必要ではありません。診断しても解熱薬などの処方で、ヘルパンギーナなどと治療法が変わりません」という。この場合、風邪と同様、解熱鎮痛薬や咳止め、痰切り薬などが処方される。ただ、これらの薬の供給不足は現在もまだ問題となっている。
一方で、検査や治療薬が必要な人たちもいる。高齢者や持病のある人などだ。「この人たちは診断や治療が遅れると重症化しやすいため、優先的に受診して検査し、治療薬も飲んだほうが望ましい」と岡医師。
コロナの主な治療薬には、ゾコーバやパキロビッド、ラゲブリオがある。これらはウイルスの遺伝子複製を抑えたり、ウイルスの骨格となるタンパク質を作れなくしたりして、ウイルスの増殖を阻害することで効果を発揮する。
「ゾコーバは重症化リスクの低い人たちの回復を早くする薬ですが、若い人が飲んでも、効果としては、半日、回復が早まる程度。妊娠中の女性の服用は禁忌です。パキロビッドやラゲブリオは重症化リスクの高い人向けの薬です。パキロビッドはほかの薬との飲み合わせにやや注意が必要ですが、最も効果が示されている薬です。ラゲブリオは処方しやすい薬ですが、効果がやや劣るとされています」(岡医師)
自宅用キットを使う場合の注意点
冒頭のAさんもそうだったが、感染の有無をすぐに確認するために、自宅で抗原検査キットを使用する人もいるだろう。これにはいくつかの注意点があるという。
まず、研究用のものは精度が落ちるため、使用はお勧めしない。次に、保管しているものは使用期限も確認したほうがいい。期限切れのものは正確な結果を得られない可能性があるからだ。
「抗原検査の場合、陽性であればほぼ信頼できますが、陰性なら正確に検査できていない可能性もあり、感染初期には検査の空振りのケースもあります。家族にすでに数人感染者がいるような状況で発熱したなら、検査で陰性でもコロナと考えていいでしょう」(岡医師)
冒頭のAさんもそうだったが、感染の有無をすぐに確認するために、自宅で抗原検査キットを使用する人もいるだろう。これにはいくつかの注意点があるという。
まず、研究用のものは精度が落ちるため、使用はお勧めしない。次に、保管しているものは使用期限も確認したほうがいい。期限切れのものは正確な結果を得られない可能性があるからだ。
「抗原検査の場合、陽性であればほぼ信頼できますが、陰性なら正確に検査できていない可能性もあり、感染初期には検査の空振りのケースもあります。家族にすでに数人感染者がいるような状況で発熱したなら、検査で陰性でもコロナと考えていいでしょう」(岡医師)
ところで、コロナは「ただの風邪」とみていいのかどうか。これについては、そうとはいえないようだ。
例えば、コロナではさまざまな後遺症が残ることも報告されている。特に「ロングCOVID」と呼ばれる後遺症は、咳や倦怠感、息切れなどが数カ月にわたって続くことがある。特に若い女性に多い傾向があるという。
「ロングCOVIDにより、就業が困難になるケースもあります。度重なる感染によって後遺症の頻度が高くなるというデータもあるので、若い人もコロナにはやはり、かからないにこしたことはないです」(岡医師)
ワクチン接種は、これらの後遺症の発生リスクを減らす効果もあることがわかっている。岡医師は「後遺症のリスクを減少させるためにも、重症化リスクの低い若い人であっても、ワクチン接種は意味があります。ただし、コストと副反応のバランスから、接種するかどうかはその人の考え方次第」と述べる。
ワクチンの感染を予防する効果は、半分まで弱まる(半減期)のが接種後100日と短い。それでも、重症化の予防効果はその後もある程度続く。
コロナ禍初期に流行したデルタ株は重い肺炎などの重症化率が30%、致死率でも2~3%という凶暴さがあったが、ワクチンや治療薬の開発により、重症化率や死亡率が大きく下がった1つの要因となった実績もある。
「KP.3を含めたオミクロン変異株も、病原性はパンデミック初期の株とあまり変わらないという研究結果もあります。重症化リスクが大幅に下がったのは、ワクチン接種や治療薬の進歩による影響もあります」(岡医師)
今後も、特に高齢者や持病がある人は追加摂取が重要だ。そのときの流行株に合わせ、定期的な追加接種を受けることが推奨される。今年10月からは、65歳以上の高齢者と、60~64歳の重症化リスクが高い人を対象に、接種費用の一部自己負担によるワクチン定期接種が始まる予定だ。
猛暑続く夏の流行の対策は?
最後に、猛暑の続く夏場の流行にどう対応すればいいか聞いた。
「何よりエアコン使用中にも定期的な換気が必要です。扇風機やサーキュレーターを使ってもいいでしょう。つねに空気が循環するような、空気の流れを作ることが大切です」(岡医師)
また、感染者のいる家庭内では必要に応じてマスクを着用したい。
「重症化率が下がり、すでに一般的な感染症となった現在、以前のようにつねにマスクを着けている必要はありません。過度な人混みに出かける際や、医療機関を受診する場合、咳や喉の痛みなどの自覚症状がある場合、あるいは感染者に接触するときは、できるだけマスクを着用するなど、メリハリをつけて感染予防をしましょう」(岡医師)
加えて、家族内ではほかの家族への感染を防ぐために部屋を分けるなど、感染者の適切な隔離も必要だ。
夏場は熱中症にも注意が必要だが、熱中症とコロナの初期症状が似ていることも混乱を招きやすい。どちらも発熱、倦怠感、頭痛などの症状を伴うことが多い。
「コロナは気道の感染症ですので、咳や喉の痛みなどを伴うことが一般的。熱中症ではこうした呼吸器症状がみられないので、症状で区別できることも多いと思います。熱中症は予防可能な病気。まずは熱中症にならないようこまめに水分を摂り、適切に冷房を使いましょう」(岡医師)
5類以降移行最大の感染拡大の恐れ
いまの感染拡大のペースでいくと、「5類移行以降、最大の感染拡大になる恐れもある」と岡医師は危惧する。
最後に現在流行中のKP.3の特徴と押さえたいポイントをまとめた(※外部配信先では図を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。今後も感染状況を気にしながら、それぞれが感染防止に努め、適切な医療機関の利用を心がけたい。
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提供元:コロナ再拡大、変異株「KP.3」はどんなウイルスか|東洋経済オンライン