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2024.07.24

「医者が嫌いすぎる」夫を襲ったまさかの"出来事"|結婚20年の妻も驚き、彼が受診を決意したワケ


病院嫌いな夫がついに受診を決意! 彼をそうさせた症状とははたして何だったのでしょう(写真:stockmate/PIXTA)

病院嫌いな夫がついに受診を決意! 彼をそうさせた症状とははたして何だったのでしょう(写真:stockmate/PIXTA)

50歳の女性は、医者嫌いの夫(会社員・56歳)に困り果てていた。鼻の持病が悪化しているのに、何かと難くせをつけて耳鼻科に通おうとしないからだ。

しかし、あることをきっかけに、夫は治療に前のめりになる。夫の気持ちを変えることになったまさかの出来事とは――。

鼻腔に細菌が増殖して起こる病気

女性の名前を山口直美さん(仮名)、夫の名前を誠さん(仮名)としよう。直美さんによれば、誠さんは今から5年ほど前に「好酸球性副鼻腔炎」と診断された。

副鼻腔炎は鼻の穴の周囲に広がる大小の空洞(副鼻腔)に、炎症をきっかけに細菌が増殖して膿(うみ)が溜まり、鼻水が出たり鼻づまりが起こったりする病気だ。

膿が残ったまま、症状を繰り返している状態を慢性副鼻腔炎という。

好酸球性副鼻腔炎は、両側の鼻の中に鼻茸(はなたけ:鼻の粘膜が炎症を起こすことによって放出された物質が、粘膜の腫れを促す細胞を活性化してできる、やわらかい塊)がたくさんできたり、手術をしても再発しやすかったりする難治性の慢性副鼻腔炎。治療法が確立されていないため、“国の指定難病”となっている。

実は誠さんの鼻の異常は、診断される10年ほど前からあったという。

「結婚して10年ほど経ってからでしょうか。あるときから鼻水が止まらなくなりました。気がついたら始終、ティッシュで鼻をかむようになったのです」(直美さん)

夫は始終ティッシュで鼻をかんでいたという(写真:Cloudy.T/PIXTA)

夫は始終ティッシュで鼻をかんでいたという(写真:Cloudy.T/PIXTA)

「鼻荒れ」予防に高級ティッシュ

やがて「鼻が荒れちゃう」と、かみ心地のいい高級ティッシュを使うように。ただ、耳鼻科を受診するようすすめても、断固として行かなかった。
実は誠さんは昔から大の医者嫌いなのだ。

「風邪ぐらいでは基本、医者にかかりません。結婚して20年ほどですが、医者にかかったのは帯状疱疹のときくらいだったと思います」と直美さん。帯状疱疹のときは、目の周りにひどい水ぶくれができた。

そのときは「お岩さんのようになってしまい、このままでは会社に行けないということで受診したのです」と言う。

会社の健康診断ではピロリ菌に引っかかり、除菌をすすめられているが、放置している。50代以降の男性にすすめられている「前立腺がん検査」も受けていない。

「病院嫌いの理由をはっきり聞いたことはありませんが、怖いのと、面倒なのと両方あると思います。だから、ひどくなるまで、受診を我慢するのでしょう」(直美さん)

我慢の結果、誠さんの鼻の状態は悪化した。

喉に垂れる鼻水のせいで咳払いをしょっちゅうするようになり、やがて鼻水は頑固な鼻づまりに。鼻が通らなくなり、ようやく耳鼻科を受診したというわけだ。

「いびきも毎晩ひどかったので、ほっとしました。副鼻腔をCT(コンピュータ断層撮影)で撮影してもらったのですが、画像は真っ白でした。医師からは“重症の好酸球性副鼻腔炎”と言われました」(直美さん)

それだけ重度となると、当然ながら医師からは手術をすすめられる。

「完治は難しいけれど、10年くらいはいい状態をキープできるから」とのことだった。しかし、誠さんはこれを拒否。

一方、処方してもらったステロイドの点鼻薬や抗菌薬の効き目にはご満悦で、「悪くなったときだけ耳鼻科に薬をもらいに行く」ようになった。

それも、「薬での治療は限界です!」と医師から手術をすすめられようものなら、「もうあそこには行かない」と、他の耳鼻科クリニックに変える。つまり、ドクターショッピングを続けるようになった。

しかし、この「とんでもない生活」に終止符が打たれる出来事が起こる。

ある日突然「物が二重に見える!」

それはある日の朝のこと。出勤前の夫が玄関先で何やら、騒いでいる。慌てて見に行くと、「物が二重に見える!」というのである。

最寄りの駅まで自転車で行っている誠さんだったが、「これじゃあ、怖くて自転車に乗れない!」と、その日は会社を休むほどだった。

物が二重に見えることを「複視(ふくし)」という。誠さんは数日前から副鼻腔炎の症状が悪化していたことから、複視もその影響と考えたようだ。「目の痛みや顔面痛も出ていました。以前どこかのクリニックでもらった薬が手元に残っていたので、飲んでいましたが、よくならなかったみたいです」と直美さんは振り返る。

そこで直美さんは、副鼻腔炎治療で有名な医師が開業している耳鼻科に予約を取った。いつもの誠さんなら拒否をするところ、この日は素直に応じたという。

「複視も心配でしたが、これを機に手術を受けてくれるかもしれない、という期待もあり、気持ちが変わらないうちにと連れて行きました」(直美さん)

診断の結果、複視の原因ははっきりしないものの、医師からは「手術で副鼻腔炎がよくなれば、複視もよくなる可能性が高い」と言われた。答えを保留にして家に戻ったが、翌日さらに複視は悪化した。

誠さんはついに、「この復視が治るなら、手術をしてやってもいい」と言い出したという。

「『してやってもいい』というのは、医師に対して『なんて失礼な!』と思うかもしれませんが、これは負け惜しみのようなもの。夫が不安でたまらないであろうことは、そばで見ていてわかりました」と直美さん。

その後、誠さんはクリニックから紹介された大学病院で精密検査を受けた。そこでも複視の明らかな原因は不明だったが、検査を受けている最中になぜか複視が治ってしまった。

ともあれ、手術は決行された。内視鏡での日帰り手術ができることから、前出のクリニックに戻って、受けることになった。

「『全身麻酔は信用できない。局所麻酔だから手術を受けるんだ!』などと最後まで、意地を張り続けていました」(直美さん)

誠さんは内視鏡を使って副鼻腔の膿を取り除き、きれいにする「副鼻腔手術」のほか、症状を悪化の原因である鼻中隔(びちゅうかく:鼻腔の内部を左右に仕切る壁)の曲がりを矯正する手術、鼻水を抑える後鼻神経切断術を受けた。

手術はうまくいき、「鼻が通るようになった!」と誠さんは喜んだ。

ただし、直美さんによれば、これで誠さんの医者嫌いが治ったわけではなかった。手術後、クリニックに通わなくなってしまったのだ。

「再手術といわれるのが怖いのかもしれません。困ったものですが、今のところ症状はひどくなっていないので、しばらくは様子を見たいと思います」と、直美さんはあきれ顔で話す。

総合診療かかりつけ医・菊池医師の見解

総合診療かかりつけ医で、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師はこう話す。「まずは鼻の手術を受けることができて、よかったと思います。鼻水、鼻づまりが続くとQOL(生活の質)が低下し、仕事への影響が出かねません」。

クリニックにも、副鼻腔炎の症状でやってくる患者は多いという。

「鼻水が喉に落ちる『後鼻漏(こうびろう)』はけっこうつらいのです。副鼻腔は額や目の近くにあることから、顔痛や目の痛みを訴える人も多いですね」(菊池医師)

また、病気の種類にかかわらず、病院嫌いな患者は珍しくないそうだ。

「中年以降の男性に多い印象ですね。ご家族に言われてしぶしぶ受診される患者さんは、けっこういらっしゃいます」という。

このような患者を検査すると、たいていの場合、何らかの病気が見つかる。

「家族が気にするくらいですから、当然といえば当然なのですが……。ご本人もおそらく、異変に気づいていると思います」(菊池医師)

病院嫌いの人に、無理に「受診しろ」とは言えない。一方、「短期間で病気をしっかり治したいと思うのであれば、ドクターショッピングはせず、同じクリニックに通い続けるほうがいい」と菊池医師は言う。

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慢性副鼻腔炎を例に取ると、まず、抗菌薬の少量投与を1カ月ほど続ける。

再度、X線やCTで副鼻腔を撮影して、膿が取り除けていないとわかったら、内視鏡で副鼻腔をきれいにするなど、外科的な処置を検討する……という具合に、段階的に治療を進めていく。

さらに、誠さんのかかっている好酸球性副鼻腔炎に対しては、手術で十分な効果が得られない場合もあり、そのときは2020年3月に登場した生物学的製剤のデュピルマブという薬(皮下注射)の処方が可能となっている。
指定難病に対する薬であるため、医療費助成を受けられることがある。

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(関連記事:【治らない副鼻腔炎】実は指定難病、嗅覚低下も)

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「クリニックを変えてしまうと、途中まで進んでいた治療が一からやり直しになってしまいます。検査やお金、時間も無駄になってしまうのです」(菊池医師)

家族のためにも、医者嫌いは、ほどほどにしたいものだ――。

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提供元:「医者が嫌いすぎる」夫を襲ったまさかの"出来事"|東洋経済オンライン

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