2024.07.02
「ネガティブ思考な人」が誤解している3つのこと|「いつでもポジティブな人」の方が実は危険
(イラスト:『ネガティブな自分のゆるし方』より)
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こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。
現代は過剰なほど「ネガティブな感情」になりやすい環境と言えます。
・親の世代よりも一層変化が激しくなり、誰も正解を知らない世の中
・働き方が多様化し、会社ではなく自分で決めなければいけないキャリア
・タレントやインフルエンサーの活躍に憧れ、比較が止められないSNS
上に挙げた以外にも、誰もが少なからず、さまざまなシチュエーションでネガティブな感情に悩み、苦しんでいるのではないでしょうか。
ですが、2万人以上のカウンセリングを行ってきた私が強く思うことは、感情には良し悪しはないということです。よって、不快やつらいと感じることも捉え方を変える、つまり「感情の置き場所」を整理することによって払拭できることがあります。
そのための方法を、拙著『ネガティブな自分のゆるし方』より、考え方やTODOを一部抜粋、再構成してお届けします。
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(1)ネガティブ感情を悪いものだと考えてしまう
・仕事がうまくいかなくて落ち込む
・将来を考えると不安になる
・人の発言に対して嫌な気持ちになる
・最近パートナーとの会話がうまくいかない
ストレスを感じやすい現代社会では、誰もがこうした「ネガティブ感情」を心のどこかに抱えて生きています。
心配、モヤモヤ、嫉妬、ねたみ、焦り、悲しい、寂しい、つらい、苦しい、物足りない、失望、孤独感など、感情のバリエーションを挙げればキリがありません。
多くの人はこうした「ネガティブ感情=悪いもの」だと思っていますが、カウンセラーの立場からすれば、それは大きな誤解です。まずはその誤解を解くことが大切です。
あなたの心に浮かんでいるネガティブな感情は、決して悪いものではなく、その感情を「なくしたい」「忘れたい」「どこかに行ってほしい」と考える必要はないのです。
例えば、「明日の会議は遅刻できない。でも電車が遅れたらどうしよう」と心配になれば、「いつもより早く起きて、早い時間の電車に乗ろう」と前もって準備ができます。
つまり、ネガティブ感情は、視点を変えると健全な成長を促す「原動力」につなげられるということです。しかも、心にネガティブな感情が生まれやすい人ほど、その先の成功を自らの力で掴み取るケースも多いと言われるので、ネガティブな感情をなくそうとする必要はないと言い切れるのです。
人の感情には必ず両面がある
生きていれば、楽しいことや嬉しいことだけでなく、悲しいこと、つらいことがあって当然です。人の心にはポジティブとネガティブ、両方の感情が存在しているからです。
周りから見たらいつも明るく、悩みがなさそうなポジティブな人でも、実は人に話せない悲しい過去を抱えていることもありますし、ネガティブ思考になりやすい人でも1日の中でちょっとした嬉しい感情が生まれたりするのではないでしょうか
人の気持ちにはこうした両面があるはずなのに、「私にはストレスがないんです」「怒ることなんてありません」と本気なのか、演技なのか自分でもネガティブ感情に気づかないままでいる人に出会うことも多くあります。
しかし、「いつでもポジティブな人」の方が実は危険です。
例えば、周りから「優秀な人」と期待されていた新入社員が、最初はバリバリ仕事をこなして成果を上げたのに、半年後には心がポキッと折れて休みがちになって出社できなくなる。これは本当によくあるケースですが、こうした状況に陥りやすい人こそ「いつもポジティブな人」の典型例です。
その原因として、「ネガティブ感情に気づけないほど心のセンサーが鈍感になっている」、もしくは「自分の気持ちにふたをして向き合えていなかった」のいずれかが考えられます。
「今日も1日良いことばかりだった」ではなく、「悪いこともあったけど、1つだけ良いことがあった」と現実を受け止められる人の方が、幸福を感じやすいものなのです。
(2)ネガティブな感情を無理になくそうとする
心にネガティブな感情が生まれたとき、「こんな気持ちではダメだ……」とその感情を否定する人は多いでしょう。しかし本来、人の感情に「良し悪し」は存在しないというのが心理学の考え方にはあります。
それなのに、なぜ私たちは感情を良いもの、悪いものと考えてしまうかというと、過去にあった悪い出来事に対する刷り込みが影響しているからです。
(イラスト:『ネガティブな自分のゆるし方』より)
例えば「後ろ向きな発言はしてはいけない」「マイナスなことはできる限り考えない方が良い」といった周りの人からの教えや、ご自身の体験などにより、「ネガティブなことは感じてはいけない」と脳にインプットされているのです。
しかし、メンタル不調が始まる1つのケースとして、このような感情の否定から「自己肯定感」が低くなってしまうことがあります。だからネガティブ感情の視点を変える必要があるのです。
ポジティブ感情も、ネガティブ感情も、湧き上がってくるのは自然なことで、抑えられなくて当然です。だから、それを自分で否定する必要も、人から否定される不安を感じる必要もありません。
ネガティブ感情の「置き場所」を変えるには、自分の感情というものを事実として認識した上で、良し悪しを判断せずに「受け止める」ことが大切です。
私が行っているコミュニケーション研修には、「喜怒哀楽」の4つの感情ごとに、最近の出来事を書いてもらうワークがあります。
この研修を続けていく中で気づいたのは、長く自分の感情にふたをしてしまっている人ほど、ワークの記入ができないということです。その理由は明確で、自分の感情に向き合わず、見て見ぬふりをし続けてしまっていたからです。
また、カウンセリングをしていると、「仕事が嫌い」「上司が嫌」「なんとなくモヤモヤ、イライラする」とはいうものの、具体的にどんな気持ちなのか、自分はどうしたいのかを聞くと、「自分でもよくわからない」という人が多くいます。
変化の激しい社会を生きる私たちは、無意識に心に鎧をまとい、自分の弱さを周りに見せないようにしてしまいがちです。
この「自分の悪い部分、恥ずかしく醜い部分を見られたくない」という思いが強くなりすぎると、自分の感情を抑え込んでしまい、その反動として最近では、SNSに本心と違うことを発言してしまうケースにつながっているのです。
特に、「我慢強くてまじめな人」「自分よりも他人を優先してしまう人」がこのパターンに陥りやすい印象があります。
こうして、私たちは自分の本当の感情は何かを見失ってしまうのです。
(3)「ネガティブな感情を人に話してはいけない」と思ってしまう
ネガティブ感情に捉われるのがつらいあなたに、今日からすぐに試してほしいのが「愚痴る」ことです。
(イラスト:『ネガティブな自分のゆるし方』より)
なかには「愚痴ばかりを言う人は嫌われる」「愚痴を口にすると幸せが逃げる」と言われたりしますが、ネガティブな感情ほど人に話してみることです。なぜなら、「愚痴る」行為にはカタルシス効果という効果があるからです。
カタルシスとは、簡単にいうと「浄化作用」のことです。心の中に溜まっている鬱々とした感情を吐き出し、解放することで嫌な気持ちを取り除けます。
人に話しただけで、胸につかえていたモヤモヤがすっきりした経験はないでしょうか。それが、愚痴ることで得られるカタルシス効果そのものです。
「愚痴る」にはもう1つ良い点があります。
頭の中の「思考」は目には見えず、不確定なものですが、言葉にすることでその思考が具現化されるということです。「愚痴を言う」のは、目に見えない感情を形のあるものに変換する作業でもあるのです。
例えば「このとき私はこういう気持ちだった」「このときは嫌な気持ちだったけど今考えるとそうでもなかった」などと、冷静な自分の感情に気づけることが非常に大事です。
自分の感情がわからないという人こそ、「愚痴る」行為を通して心のリハビリを始めていきましょう。
話すのはSNSより浄化効果が高い
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ネガティブな人の中には、「話すのではなく、SNSで愚痴るのはダメですか?」と聞く方もいます。
私の考えとしては、「人に話す」と「SNSに書く」では、圧倒的に前者の方がおすすめです。理由は、文字数制限のあるSNSよりも言葉で話す方が、はるかに情報量が多いからです。
SNSでの発信も悪くはないのですが、投稿に対する反応で傷つくこともあるかもしれません。それを考えると、「愚痴る」場所をSNSに求めるのは避けるのが賢明な判断です。
また、そのときに起こった事実や感じた気持ちを細かく補足できるのも「話す」メリットの1つです。
微妙なニュアンスまで伝えることで、さらに感情の整理が行われ、自分が何に対してモヤモヤしていたのか、ネガティブな感情を抱いていたのかがはっきりしてくるのです。
まずは、ネガティブ感情を悪いものだと決めつけずに、否定しないことから始め、自己コントロールに役立てていただければ幸いです。
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提供元:「ネガティブ思考な人」が誤解している3つのこと|東洋経済オンライン