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2024.06.26

「朝起きたら足が…」女性を襲った恐怖の"感染症"|経験から悟った「病気から身を守る方法」とは?


女性の足を襲ったのは、いま問題になっているあの感染症でした…(写真:buritora/PIXTA)

女性の足を襲ったのは、いま問題になっているあの感染症でした…(写真:buritora/PIXTA)

自営業の47歳の女性は、「溶連菌感染症」がニュースで取り上げられるたび、10年前、自分の身に起きたある”怖い”事件を思い出す。女性が忘れられない、そのできごととは――。

女性の名前を佐藤由美さん(仮名)としよう。それは10年前、PR会社に勤務していた36歳のときのことだ。

朝、起きると目を疑った

ある朝、ベッドから起き上がって足を見た瞬間、由美さんは自分の目を疑った。

足全体が普段の2倍くらいの太さになっている。ひどいのは足首からふくらはぎにかけてで、とくに足首はそれとわからないほど膨張。膝までが1本の棒のようになっていた。

「むくんでいるというレベルではなく、ドラえもんの足みたいな感じです。思わず、『うわぁー!!』と叫んでいました」(由美さん)

不思議なことに、足は重だるいものの、痛みなどはなかった。体調も悪くない。とはいえ、「何かよからぬことが起こっている」と感じた由美さん。その足の状態に夫も驚き、「すぐに病院に行ったほうがいいよ!」と受診を促した。

「急いで、歩いて5分ぐらいのところにある近所のクリニックに行きました。歩きにくい感じはありましたが、何とか1人で行くことはできました」と由美さん。

足のむくみのイメージ写真。由美さん曰く「この写真の2倍ぐらい。絶対に病気だなと思うほどで、例えるなら”乳児のちぎりパン"のような状態でした」(写真:MUUPHOTO/PIXTA)

足のむくみのイメージ写真。由美さん曰く「この写真の2倍ぐらい。絶対に病気だなと思うほどで、例えるなら”乳児のちぎりパン"のような状態でした」(写真:MUUPHOTO/PIXTA)

なぜこんなにむくんでしまったのか

「それにしても、なぜ、こんなに足がむくんでしまったのか……」

診察を待つまでの間、由美さんは考えをめぐらせると、1つだけ「もしかしたら」と思い当たることがあった。それは2週間ほど前、「溶連菌感染症」という病気にかかっていたという事実だ。

溶連菌感染症は、溶血性レンサ球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)という細菌が主にのどに感染することにより、咽頭痛や発熱、体や手足の発疹などの症状を引き起こす病気だ。

この溶連菌が全身にまわり、手足の壊死(えし)から死に至る「人食いバクテリア」(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)が、昨今では話題になっている。

「そのときは、のどに痛みがあったので、最初は風邪だと思っていたんです。でも数日のうちに急激に悪化し、焼けるように痛み出した。熱は39.5度まで上がりました」

のど全体が真っ赤で、つばを飲み込むのもつらかったという。

「仕事帰りに、会社近くのクリニックを受診したのですが、医師はのどを診るなり、『あー、溶連菌感染症だね』と、きっぱり言われました」(由美さん)

今でこそ注目度の高い溶連菌感染症だが、10年前は今のように”怖い病気”という認識はなかった。ただ、由美さんは、当時、医療分野の仕事をしていたこともあって、一般的な風邪に比べて「注意すべき感染症」だと知っていた。

「溶連菌感染症から、『腎炎』という合併症が起こるということは、知識としてはありました」(由美さん)

もう1つ、“抗菌薬は症状がなくなってもやめないで飲み続ける”必要性もわかっていた。だから、「こじらせてはいけない」と、クリニックで処方された抗菌薬を、途中でやめずにしっかり飲みきった。

「薬を服用したら、1日ほどで熱は下がりました。それもあって、病気にかかったことは、そのときまですっかり忘れていたのです」(由美さん)

すぐに大きな病院に行ってください!

話を戻そう。

診察室に呼ばれた由美さん。足を見せたとたん、医師は顔色を変えたという。そこで、これまでの経緯を伝えると、「溶連菌感染症から発症した腎炎の可能性が高い。すぐに大きな病院に行ってください!」と、紹介状を書いて、由美さんに渡した。

紹介先の病院に向かう車の中で、由美さんは、猛烈な不安に襲われはじめた。というのも――。

腎炎を発症したとしても、子どもの場合は、一時的な腎機能の低下ですむのがほとんどだ。

しかし、「大人は子どもと違い、将来にわたって少しずつ腎臓の機能が落ちて、最終的には『慢性腎炎』になってしまうケースが多い」と、仕事を通じて医療関係者から教えてもらったことを思い出したからだ。

「進行したら、透析が必要になる可能性もゼロではないというのも聞いていました。紹介先の病院でも、問診時に『大人は慢性腎炎になる可能性が高い』と、告げられました」(由美さん)

さらに主治医からは、急きょ「入院をするように」と告げられる。入院して、急性腎炎か慢性腎炎かを調べる「腎生検」を行うことになったのだ。これは、腎臓に専用の針を刺して組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査だ。

「診断結果が出るまでの数日間は、心配で、心配で……。病院のベッドで毎日、泣いていました」(由美さん)

さて、告げられた検査結果は、幸いにも、急性腎炎のほうだった。薬なども必要なく、数日で自然に治ると伝えられた。

「医師からも『よかったですね』と言われました。その瞬間、心から安堵したのを覚えています」(由美さん)

実際、むくみは数日でよくなり、足は元通りに。1週間ほどで腎臓の数値も正常になった。

由美さんによれば、溶連菌感染症になったときは、仕事の忙しさがピークだった。「そのため、熱が下がると、すぐに仕事を始めてしまいました。忙しさで体力が落ちていたのも腎炎の引き金になったのではないかと、反省しましたね」。

以来、風邪をひいたときや、体調が悪いときにはしっかり休養することを心がけるとともに、友人にも自分の経験を伝えているという。

総合診療かかりつけ医・菊池医師の見解

総合診療かかりつけ医で、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師によれば、頻度ははっきりしないものの、溶連菌感染症を発症したあとに、「腎炎」(糸球体腎炎)が起こるケースは、ときどきあるそうだ。

なぜ、溶連菌感染症から腎炎が起こるのか。それはこんな仕組みだ。

体に細菌などの病原体が侵入すると、免疫細胞は抗体を作り、異物(抗原)に結合することで、細菌の毒性を弱めようとする。抗体に異物がくっついたものを「免疫複合体」と呼ぶ。

抗体が異物と結合すること自体は、異物から体を守る防御反応であり、大切なのだが、この免疫複合体が体内で大量に作られすぎると、体の臓器に悪さをする場合があるという。

「溶連菌感染症の合併症である腎炎は、免疫複合体が腎臓の糸球体という毛細血管に沈着することで発症すると考えられています」(菊池医師)

由美さんが「しっかり抗菌薬を飲まなければならない」と、症状がなくなってからも抗菌薬を飲み続けたのは正しく、抗菌薬を服用する一番の目的も、この糸球体腎炎を防ぐためだという。

「抗菌薬は、約10日間と長めに処方をするのが特徴。決められた期間や量を服用することで、腎炎を予防する効果が得られるというエビデンス(科学的根拠)に基づいています」(菊池医師)

腎臓の主な働きは血液中の老廃物を濾過し、尿として体の外に排出することだ。このため、腎炎になり腎機能が低下すれば、本来、排出されるはずの水分が体に溜まり、むくみが起こる。

「むくみの原因は1つではありません。突然、足のむくみが起こった場合は、医療機関を受診し、原因となる病気がないかどうかを尿検査や血液検査などですぐに調べてもらいましょう」(菊池医師)

風邪は万病の元、は間違いではない

ちなみに、むくみが原因となる病気のうち、見逃してはいけないものとして、今回取り上げた腎炎のほか、心臓や肝臓の病気がある。

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最後になるが、風邪などを発症した際に「安静にすること」についても、医学的な見地から「とても大事」と、菊池医師は言う。

風邪の症状で受診する患者は、「最近、忙しかった」「あまり寝ていない」といった人がとても多いそうだ。

「感染症にかかったということは、それはすなわち体の免疫力が落ちているサイン。だからこそ、免疫力を回復させるために安静が必要なのです。大事なのは栄養と睡眠で、とくに睡眠はしっかりとるようにしてください」(菊池医師)

風邪は万病の元というのは、あながち間違いではない。風邪などの感染症になったときは、仕事をまずは忘れて、しっかり休むように努めたい。

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提供元:「朝起きたら足が…」女性を襲った恐怖の"感染症"|東洋経済オンライン

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