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2024.06.15

世界では「近視は病気だ」と認識されつつある|日本で目が悪いことが軽視されすぎている理由


「近視は治療が必要な『病気』である」という認識が、日本ではまだまだ浸透していません(写真:サクちゃん/PIXTA)

「近視は治療が必要な『病気』である」という認識が、日本ではまだまだ浸透していません(写真:サクちゃん/PIXTA)

今、近視が世界的に問題になっている。

WHO(世界保健機関)は、「2050年には世界人口の約半数が近視になる」という予測をしている。

日米で30年以上眼科研究を続ける眼科医であり、近視撲滅を目指すクボタグラスの発明者である窪田良氏は著書『近視は病気です』(東洋経済新報社刊)で、「日本ではこうしたことがあまり知られていない」と警鐘を鳴らしている。

窪田氏によると、日本でもう一つ理解されていないことがあるという。それは「近視は治療が必要な『病気』である」という認識が、世界的に高まってきている事実だという。

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「異常」ともいっていい変化

WHOの予測は大変ショッキングです。2050年には世界でおよそ48億人が近視になるという予測をしているわけですが、これは、糖尿病や肥満よりも多い数です。そしてこれらの病気の比ではない勢いで、近視人口は増えています。

今からおよそ10年前、2010年の近視人口は20億人弱と、世界人口の約3割でした。通常、遺伝子の変化を必要とする生物の進化は、10万年から100万年単位で起こってきました。それが、一気に2割も増えてしまうのは異常といってもいい変化です。

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この爆発的増加の主体が、子どもの近視の増加です。日本でも2023年秋に文部科学省が公開したデータで、資料が1.0未満の子どもの割合が過去最多となったことがわかり、大きな物議を醸しています。

私は日本においては、「近視は遺伝だからしかたがない」「近視はメガネをかければいいので気にしなくていい」といったように、近視が単に「見えづらいという現象」であるかのように軽く見られ、十分な対策が取られてこなかったように思います。

実はさきの文科省調査では、虫歯についての結果も出ています。それによると、子どもの虫歯の割合は過去最低となりました。これは、虫歯は良くないものだという認識が広まり、早いうちからしっかりと予防されるようになっているためでしょう。

一方、近視はこれまで放置されてきた、とは言いすぎでしょうか。

少なくとも私から言わせると、「近視は良くないものである」という認識が日本ではまだまだ浸透していません。

しかし、近視は病気です。

近視が抱える将来的な「リスク」

近視は病気なのかについては、実は、専門家の間でもまだ議論の最中です。国によっても、学会によっても立場がさまざまで、コンセンサスがまだ得られていません。

非常に程度の強い近視は、すでに「病的近視」という言い方が定着しています。一方で、軽い近視はノーマルバリエーション――いわば鼻が高い、低いと同じ“個人差”であるという考え方が根強くあるのです。

ただ私は、近視は病気であるという立場をとります。鼻の高さや背の高さは、「何cmだったら正しい」というような、絶対的な正常値というものはありません。しかし目は、少なくとも近視でも遠視でもない「正視(せいし)」という正常な状態があります。このことから、単なる個人差では片付けられないと考えるからです。

たしかに、軽い近視はそこまで害はありません。ただ、近視というものは、将来どこまで進行するかわかりません。そうであるかぎり、どんな軽い近視でも進行抑制、つまり近視の治療に努めるべきでしょう。

症状が軽くても、治療するということは、病気であるということです。

そしてこれは最も大事なことですが、近視は、将来的に失明に至る可能性のある病気を引き起こすリスクを増やすことがわかっています。このことからも、近視は病気であるといえるのです。

具体的に言うと、程度の差はあるものの、近視の人は将来、緑内障、白内障、網膜剥離、近視性黄斑症といった病気にかかるリスクがはね上がります。こうした眼疾患はすべて、将来的に失明につながるリスクのある病気ということで共通しています。

たとえば、日本人の失明の原因の第1位である緑内障はどうでしょう。

目の中には、網膜から脳に通じる神経がありますが、それが一つひとつ死んでいってしまう病気で、目の圧力(眼圧)が高まることで血液の循環障害が起きたり、細胞が圧迫死したりしてしまうのが主な原因です。

近視の目はもろい状態にある

ところが、近視の人の眼球は伸び、網膜も伸びて薄くなっています。つまり、普通の人より、眼圧に対してもろい状態になっています。血流も悪くなっています。こうしたことが、神経が死ぬリスクを高めるといわれているのです。

さらに言うと、近視の人は緑内障の早期発見にも支障が出ることがあります。目の奥には視神経乳頭という部分があり、緑内障になるとこの凹みが大きくなるので、正視の人なら検査すればすぐ「おかしい」と気付けます。

ところが近視が強くなると、視神経乳頭の形状が変化してしまうことがあるのです。そうすると、緑内障が作った凹みが見つけづらくなり、結果的に診断が遅れてしまう可能性があるのです。

近視が病気であると聞いて、何か怖いだとか、ネガティブに受け止められる方も少なくないかもしれません。ただ、病気として注意喚起されるからこそ、近視のことをより理解しようとか、子どもが近視にならないようにしようとする人が増えることが期待できる側面もあります。

また、病気と認識され始めたことで、世界ではさまざまな研究者が新しい治療法を開発しようとしています。大切なのは、現実を直視することです。私は、近視は病気であるというスタンスです。

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提供元:世界では「近視は病気だ」と認識されつつある|東洋経済オンライン

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