2024.06.10
「人生いろいろ」価値ある出来事を見抜ける方法|嫌な出来事を好機に変えて人生を好転させる
自分に起きる「嫌な出来事」や「些細な出来事」を、どう意味づけるかによって、人生が変わっていきます(写真:KiRi/PIXTA)
同じ出来事を経験しても、ポジティブに考える人もいればネガティブに感じる人もいます。ノートを使った内省手法を実践・提唱する山田智恵さんは、「出来事をどう意味づけるかによって行動が変わり、結果が変わる」と言います。自分に起きる「嫌な出来事」や「些細な出来事」を意味づけるポイントをご紹介します。
※本稿は山田智恵著『最高の未来に変える 振り返りノート習慣』から一部抜粋・再構成したものです。
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ピンチの場面をどう意味づけるかは自分次第
私たちは何か出来事が起きると、瞬間的に感情が生まれ、無意識に思考しています。例えば、上司から雑な指示を出されると、瞬間的にイラッとし、褒められると照れながらも誇らしい気持ちになったりします。
ひとつひとつの出来事に対して、感情をコントロールしたり、じっくりと思考したりしていては、日常生活が進まなくなってしまうので、無意識で瞬時に処理できるようになっているのでしょう。
しかし、この瞬間的な感情や無意識の思考をそのままで終わらせず、意識的に価値や可能性を見つけ出すのが、意味づけスキルなのです。
なぜ、この意味づけスキルが大切なのでしょうか?
人間は価値・可能性を見つけると、行動が変わるからです。
例えば、ピンチの場面で「終わった……」と思うのか、「成長するチャンスだ」と思うのかで、そのあとの行動は変わります。出来事をどう意味づけるかは、私たちの行動の方向性を決めるコンパスのような役割を果たしているのです。
そして、行動が変わると、結果が変わります。この繰り返しで人生が変わっていくのです。
こんなに大切な力を無意識で終わらせず、ちゃんと育てていきましょう。
意味づけスキルを身につけるポイント
自分に起きる出来事を意味づけるポイントを2つお伝えします。
●ネガティブな感情が生まれる「嫌な出来事」や、見過ごしがちな「些細な出来事」にも価値・可能性が潜んでいる
心がポジティブに大きく動く特別な出来事だけではなく、怒りや悲しみ・自己嫌悪を引き起こすようなネガティブな出来事や、ちょっとした気づきや、小さな嬉しい出来事にも着目してみてください。
私は、嫌な出来事を「スパイシーチャンス」、ささやかに見える出来事を「わらしべチャンス」と名づけています。これらは、価値がない出来事として素通りしてしまいがちですが、意味づけるスキルを身につけることで、チャンスに変えられるようになっていきます。
●出来事から「気づき」「学び」「決意」「良かったこと」「予感」のどれかを探す
出来事から、「気づき」「学び」「決意」「良かったこと」「予感」の内、どれかひとつを見つけ出し、意味づけます。それが、あなたがその出来事から得た価値です。
例えば、家族と夜ご飯を楽しく食べられて(出来事)、幸せな時間を過ごせた(良かったこと)とします。この良かったことが、あなたが出来事から得られたものになります。
例えば、会社の同僚から期末のフィードバックで「伝達の仕方が雑」というネガティブなフィードバックを受けて(出来事)、少し落ち込んだものの、新しいことを学ぶ機会だと決めた(決意)とします。この決意が、あなたが出来事から得たものになるのです。
「自分はその出来事からいったい何を得たのか?」を考えることで、出来事に含まれる価値・可能性を見つけ出す力がついていきます。
この意味づけスキルは正解がないクリエィティブな世界です。自分の納得感を大切にしてください。自分が納得していないものは、心にも残らず、行動にも落とせないからです。
この意味づけスキルを身につけていくことで、いつも無意識に見過ごしていた出来事、嫌な出来事にすらも、何かを得るチャンスが潜んでいることに気がつけるようになります。ちょっとやそっとの嫌な出来事に動じなくなり、「おっ、きたな。どう意味づけようか」とワクワクすらできるようになってきます。これぞ、人生を切り開くサバイバルスキルです。
情報量が多いほど意思決定ができなくなる
●選択肢を「絞る」スキル
絞るスキルは、日々起きるたくさんの出来事から、何が自分にとって大切なのか、自分の優先順位を見つけ出すものです。
なぜ、この絞るスキルが大切なのでしょうか?
情報量が多いほど、人間は迷い、意思決定ができなくなるからです。
品揃えが多いほど、「買う」という意思決定ができなくなる「ジャムの法則」というものがあります。スーパーで、6種類のジャムを置いた場合と、24種類のジャムを置いた場合と、どちらが多く試食後に購入されたのか実験したところ、種類が少ない6種類の方がなんと10倍も購買者が多かったのです。
つまり、選択肢が多いと、人は迷って逆に選べなくなってしまいます。
私たちは、とんでもない情報量の中で、迷うことが多い時代に生きています。これは人類がはじめて直面している環境です。
例えば、健康情報ひとつとっても、朝食は食べない方がいい、いや食べた方がいい。炭水化物は食べない方がいい、いや食べた方がいい。というように情報は氾濫しています。
あなたも「いったい何が正しいの⁉」と思ったことがあるのではないでしょうか?
情報だけではありません。生き方の選択肢も増えました。何の仕事をするのか、結婚するのかしないのか、賃貸か持ち家か、リモートか出勤か……。これだけ選択肢があると、選ぶだけでも大変ですよね。
情報量が多く、迷いやすい今の時代は、あえて絞ることで決めやすくすることが大切です。
毎週の振り返りで、絞るトレーニングをしていきましょう。
自分にとって大切なものは何か。このシンプルな問いを毎週自分に問い続けることで、自分の優先順位が浮き彫りになって大きな決断ができるようになっていきます。
絞るスキルを高めるメリットはもうひとつあります。
自分の優先順位がわかると、関心のアンテナが立ちます。そうすると、関連する情報が集まり、瞬時に反応することができるようになります。
「赤い車を買ったら、急に街中で赤い車が目につくようになった」「自分に子どもが生まれたら、他人の子どもに目がいって、世の中に子どもが増えたのかと錯覚してしまう」。これは、RAS効果と呼ばれるものです。関心のアンテナが立つと情報に敏感になって、より目に入りやすくなるのです。
点と点がつながって思いもよらぬ未来にたどり着く
●出来事を「つなげる」スキル
つなげるスキルは、自分に起きる出来事が、次にどうつながっていくのか、関連性を見つけ出すものです。
自分に起きる出来事は、次の出来事へつながっていきます。
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズの有名なスピーチの中で語られた「コネクティング・ザ・ドッツ」という言葉があります。これは、「人生は点と点がつながるように出来事がつながって、思いもよらぬ未来にたどり着く」という話でした。
でも、私たちはどの出来事がどうつながっているのか知らずに生きています。
実際に出来事をノートに記録する習慣をつけ、振り返ってもらうとわかるのですが、出来事は、1本の線で綺麗につながっているわけではありません。意外なつながりがあったり、複数のつながりが交わったりと、ごちゃごちゃに絡み合いながらつながっています。記録なしには、何がどうつながったかを見ていくことは不可能でしょう。
だから、ノートに記録して、自分の目でつながりを確かめていきます。
つながりを見ることで得られるメリットがあります。
「わらしべ長者」が教えてくれるつながりの大切さ
日本の昔話「わらしべ長者」が、つながりの大切さを教えてくれる話なので、この話をもとにお伝えしたいと思います。
主人公が観音様に「幸福を授けてください」とお願いすることから、わらしべ長者の物語はスタートします。
するとお堂の中から観音様が出てきて「このお堂を出て最初に拾ったものを大切にしなさい」と告げられます。主人公がお堂を出て最初に拾ったのは、1本のわらでした。この1本のわらがきっかけとなって、旅の途中でみかんに交換してもらい、みかんは反物になり、反物はケガをした馬になり、最後は馬がお屋敷になります。
これは、わらやお屋敷というメタファーを使って、ささやかな出来事がきっかけとなって、思わぬ未来へとつながっていくことがあるということを教えてくれる話だと解釈しています。では、実際に起きたつながりを見ていくことで、どのようないいことがあるのでしょうか。
●価値のある出来事を見抜く「目利き力」がつく
「わらしべ長者」の主人公の旅のはじまりは、「1本のわらを拾う」ことでした。道端に落ちている1本のわらなんて、ゴミみたいなものです。拾ったときには、「ただのわら」にしか見えなくて当然でしょう。でも、最後にお屋敷までつながると、1本のわらが、最初に大事なきっかけを作ってくれていたのだということがわかり、「あれは、ただのわらではなく、黄金のわらだったのか!」と見方が変わります。つながった先を見ることで、「1本のわら」に潜んでいた価値がはじめて見えてくるのです。
ノートの振り返りで細かいつながりが見えてくる
ノートの振り返りでは、出来事がどうつながったかを追いかけていきます。それにより、以前は見えていなかった、出来事に潜んでいた価値・可能性を自分で学習し、目利き力を鍛えていきます。価値には、経済的な価値だけでなく、人との出会いという価値、新たな学びを得た価値、自分の可能性が開花したという価値など、さまざまなものがあります。
ノートの中でつながりを見つけ、目利き力を鍛えていきましょう。
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●細かいつながりが見えて感謝の気持ちがあふれる
「わらしべ長者」の主人公のように、なんてことない些細な出来事が、その後つながって、自分の人生を大きく変えていっているということは、実際に私たちの人生にも起きています。当たり前ですが、ノートを書いていなくても、起きています。でも、多くの人は「お屋敷をくれた」といったインパクトが大きい出来事は記憶に残っていても、最初のきっかけが「1本のわら」だったことや、そのわらをみかんに換えてくれた人がいたことを忘れてしまいます。いつしか、自分の努力や苦労だけが記憶に残って、すべて自分のおかげだと思ってしまうこともあるでしょう。
ノートを見返すと、最初の「1本のわら」までたどり着けて、それを忘れずにいられます。密かに助けになってくれていた思わぬ人物がいたり、苦しいトラブルが人生を大きく変えるきっかけになっていたり、細かいつながりや複雑なつながりが見えてきて、壮大なつながりによって自分の人生が作られているのを目撃することができます。これは、じわじわと感謝の気持ちがあふれる感動体験になるでしょう。
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提供元:「人生いろいろ」価値ある出来事を見抜ける方法|東洋経済オンライン