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2024.05.21

今の時期はご用心「カラス襲撃」から身を守る方法|人を襲う理由や習性について鳥類学者が解説


今の時期はカラスにご用心(写真:suzuki/PIXTA)

今の時期はカラスにご用心(写真:suzuki/PIXTA)

突然だが、皆さんはカラスに襲われたことがあるだろうか。毎年、この時期になると聞こえてくる、カラスが人間を攻撃する事件。その原因と対策法を探った。

ただ歩いていただけなのに…

筆者は一昨年の2月、東京23区にある公園を早朝、1人で歩いていたとき、突然、背後からカラスに襲われた。何の前触れもなく、筆者の頭を一発蹴ると、カラスはそのまま悠々と飛び去った。ただ歩いていただけなのに、なぜ……。ショックと恐怖で呆然としたのを覚えている。

千葉県在住の女性Aさんも昨年5月、自宅近くの公園で襲われた。

Aさんの場合、早朝の散歩道で、たまたま木の根元にカラスのヒナが落ちているのに気づいた。その瞬間、大人のカラスに襲われたという。約30分後、Aさんは散歩からの帰りに再び“現場”を通った。すると、また同じ目に遭ったそうだ。

なぜカラスは人を攻撃するのか。鳥類学者、樋口広芳東大名誉教授によると、カラスが人を攻撃するのは主に5月から6月。繁殖の時期にあたり、子どもを守ろうと、親ガラスの警戒心が高まっているからだという。

「巣に卵やヒナがいるとき、あるいは巣からヒナが出てしまって、道路の上や植え込みの中などにいるとき、人がそばを通っただけでも親ガラスはパニックになり、襲ってくるのです。Aさんが攻撃されたのはこのケースです」(樋口さん)

都会のカラスは通常、木の上や電柱などに3月ごろから巣づくりを始め、繁殖期を迎える。5月ごろにヒナが生まれ、約1カ月で巣立つが、そのあとも約1カ月間、子ガラスは親ガラスの世話になり、やがて独立する。ここまでが繁殖期。したがって、非繁殖期である10月から2月は「人を襲うことは珍しい」と樋口さんは言う。

人を襲う「理由」がある

では、筆者が2月に襲われた理由は何か。実をいうと同じ公園で、昨年10月にも別の女性が襲われている。彼女も何かした覚えはない。でも、樋口さんは「カラスは理由もなく襲うことはないので、必ず何か理由があるはず」と断言する。

例えば、筆者らが襲われる前に誰かがカラスに向かって棒を振り回したり、石を投げたり、あるいは近くで工事が行われていて、人がたくさん動き回っていたりと、カラスにしてみると何か嫌がらせと感じるようなことが起きている場合。カラスはそれらの行為を行った人間を“敵”と認識し、“代理”で別の人間を攻撃することがあるというのだ。

おそらく、誰かがカラスの嫌がることを何かしていたに違いない、と筆者は思っている。

故意に巣に近づいたり、路上にいるヒナに触ろうとしたりすれば当然攻撃されるが、たまたま巣やヒナに接近してしまって襲われることもある。これらを防ぐためにはどうすればいいだろう。

樋口さんによると、その対策としては、「帽子を被ったり、日傘を差したりすること」が挙げられるという。帽子も傘もない場合は、両腕をバンザイのように垂直に上げることも有効だそう。カラスはつばさが何かに触れることを嫌うため、「障害物」があれば攻撃してこない。

「突然襲われたときは、びっくりしてあわてて立ち去ろうとすると思いますが、それはしないほうがいいです。意外と転んでケガをするケースが多いんです。襲われても動き回ったりせずに、落ち着くことが大切です」(樋口さん)

カラスは世界中にいるが、大都会でこれほど多くのカラスが人のそばにいる光景は、東京以外はないそうだ。

欧米のように鉄製の重いフタが付いたダストボックスではなく、道路の片隅にあるゴミ集積所に袋詰めのゴミを出すという東京独特のゴミの収集方法が、カラスの口に食べものが入りやすい状態を作り出しているのだという。

日本で見られるカラスは2種

日本でよく見られるカラスはハシブトガラスとハシボソガラスの2種。都会で暮らすのは主にハシブトガラスで、ゴミを荒らしたり、人を襲ったりするのもこちらだという。

くちばしが大きいのが特徴で、全長は平均約57センチ。雑食性で、小動物や果実、昆虫を食べるが、マヨネーズなど油脂を多く含む食材も好む。せっけんも好物だ。

ハシブトガラス。くちばしが太くて大きい(写真:樋口広芳撮影)

ハシブトガラス。くちばしが太くて大きい(写真:樋口広芳撮影)

ハシボソガラス。少し小さく、くちばしも細い(写真:樋口広芳撮影)

ハシボソガラス。少し小さく、くちばしも細い(写真:樋口広芳撮影)

「ゴミを散らかす」「襲われて怖い」などの苦情を受け、石原慎太郎都知事(当時)が「カラス対策プロジェクトチーム」を発足させた2001年に比べ、現在の東京都心のカラスの数は大幅に減っている。

大きなねぐらがある豊島岡墓地(文京区)、明治神宮(渋谷区)、国立科学博物館附属自然教育園(港区)の3カ所で1985年から個体数を調べている「都市鳥研究会」によると、2000年は1万8658羽だったが、2021年は2785羽だった。ゴミの早朝収集などの取り組みのほか、カラス除けネットの普及、わな小屋を設置したうえでの捕獲・駆除の結果といえる。

カラスが引き起こす害には、送電線の上に巣をつくることで起きる停電や、農作物の食い荒らし、空港付近での航空機との衝突もある。近年では、鳥インフルエンザのウイルスをカラスが運んでいるのかもしれないと疑われたこともあった。

こうした害を減らすため駆除は行われてきたが、「カラスだって生き物ですから、大人のカラスにしてもヒナにしても、無残に殺されるのは問題。カラスの巣があったら短絡的に落としてしまおうとするのではなく、せめてまだ卵もヒナもいない段階で対処してほしい」と樋口さん。

カラスはこんなに頭がいい

樋口さんにカラスの魅力を教えてもらうと、カラスは鳥の中で記憶力、洞察力、学習能力が抜群に優れているという。

樋口さんが観察してきたカラスの中には、公園の水飲み場の蛇口の栓をくちばしで回し、水の量を調節して水を飲んだり浴びたりするカラスや、道路にクルミを置いて、車にひかせて割らせるカラスが確認されている。クルミを道路に置くこと自体驚きだが、確実に車にひかせるため、赤信号で止まっている車のタイヤの前にわざわざクルミを置くこともあるという。

「この場合は100%、クルミは割れますね(笑)。水飲み場の蛇口の例もそうですが、カラスは人間生活の中に積極的に入っていき、人がやっていることを見て覚える。人間が作り出した機械文明を大いに利用しながらたくましく生きている生き物です」

それにしても、かつては「夕焼け小焼け」や「七つの子」などの童謡に登場し、親しまれていたはずのカラスに、いつから悪役のイメージがついたのだろう。

「それはやっぱり都市で人が生ゴミをたくさん出したことでカラスの数が増え、ゴミを食い散らかしたり人に危害を加えたりすることが頻発してから。だから人間がもう少しまともな生活をし、ゴミの処理などをきちんとすれば悪者のイメージはつかなかった。責任はかなり人間にあると思うんですよ」(樋口さん)

筆者はカラスに頭を蹴られて以来、現場付近では日傘を差すようにしてきたので、新たな被害には遭っていないが、最近はカラスがガードレールにとまっていることが多くなったと感じている。

つばさを閉じていてもかなり大きいカラスのすぐ横を通り過ぎるのは怖いものだ。でも、樋口さんによれば、「カラスが下から襲ってくることはないので、そのまま通り過ぎて大丈夫。でも、目は合わさないほうがいいでしょう」。

カラスが襲ってくるのは理由があってのことで、決して悪気がないこともわかった。それでも日傘を差したり、変に驚かせたりしないようにして、こちらは用心を怠らないようにしようと思う。

参照:『ニュースなカラス、観察奮闘記』樋口広芳著、文一総合出版

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提供元:今の時期はご用心「カラス襲撃」から身を守る方法|東洋経済オンライン

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