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2024.03.25

「コーヒーで疲れを誤魔化し続ける人」迎える末路|疲労を忘れるメカニズム「休養学」博士が解説


飲むと元気になるコーヒーや栄養ドリンクはビジネスパーソンの強い味方。しかし、頼りすぎは禁物です(写真:dejavu/PIXTA)

飲むと元気になるコーヒーや栄養ドリンクはビジネスパーソンの強い味方。しかし、頼りすぎは禁物です(写真:dejavu/PIXTA)

突然ですが、あなたは今、疲れていませんか?

医学博士で日本リカバリー協会代表理事である片野秀樹氏によれば、疲労は熱や痛みと同じ、体からの警告です。

片野氏がこのほど上梓した『休養学:あなたを疲れから救う』では、軽視されがちな「疲労」と「休息」について科学的な解説を加え、

「人はなぜ疲れるのか?」

「疲れても無理をして休まずにいると、人間の体はどうなるのか?」

「どんな休み方をすれば最も効果的に疲れがとれるのか?」

といった疑問に答えていきます。

コーヒーを飲むとどうして疲れが和らぐのか? 本書から抜粋・編集してお届けします。

『休養学:あなたを疲れから救う』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

疲労は病気につながるサインである

私たちは酸素を吸って生きていますが、酸素を吸うことで生じる、よくない副産物もあります。それが酸素ラジカルという活性酸素です。

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活性酸素は細胞を傷つけます。傷ついた細胞を修復するためには修復エネルギーが必要になります。その修復エネルギーは何かというと、ATP(アデノシン三リン酸)です。

これはミトコンドリアでつくられ、われわれの体を動かす原動力となるガソリンのようなもので、ATPが潤沢にあれば、傷ついた細胞をすぐ修復してもとの状態に戻せます。

しかし体内のATPを使い切って枯渇してしまうと、修復ができない状態になってしまいます。そうするとさまざまな悪い影響が体の中に生じてきます。その1つが疲労です。

疲労を放っておくと、重大な病気を招く可能性もあります。「たかが疲労」ではありません。疲労は病気につながる重要なサインなのです。

ところが痛みや熱と違って、疲労については無視したり軽視したりする人が多いのです。疲労も体からの重大な警告なのに、無理をしてがんばってしまいます。

疲労は病気につながるサインであることを多くの人が見落としているのです。

体のどこかが痛むとき、あるいは明らかに熱があるとき、欠勤することをためらう人はあまりいないでしょう。

朝、会社に連絡して、「頭が痛いので休ませてください」「胃がキリキリするので、今日は休みます」「熱が39度あります」といえば、「ゆっくり休んでね」といってもらえるはずです。あるいは「痛みが治まらないようなら病院に行きなさい」と気づかってくれるかもしれません。

ところが「今日は疲れているので休ませてください」というと、一笑に付されてしまいます。

もし、「疲労感は体の発する危険信号である」ということが常識になれば、「疲れているなら今日は休んでおきなさい」という話になるはずです。

疲労はマスキングできてしまう

私たちが疲労感を無視できるもう1つの要因は、疲労感を一時的に「マスキング」できてしまうことです。

マスキングとは上から覆い隠すことをいいます。使命感や仕事のやりがい、褒賞への期待、あるいは「ここでがんばらなければみんなに迷惑をかけてしまう」という責任感などによって、疲労感を覆い隠すことができるのです。

ものすごく疲れているときでも、「今度の大会で一等賞をとれば、欲しいものを何でもプレゼントするよ」といわれたらどうでしょう。賞品に釣られて疲れを感じないことが実際にあると思います。

疲労感を一時的に忘れることができるのは、脳の発達した人間がもつ、すばらしい能力ではあります。一時的にがんばらなければいけないとき、どうしても責任を果たさなければいけないとき、この能力があることによって私たちは急場をしのぐことができます。

問題は疲労感のマスキングを恒常的に繰り返してしまうことです。

自分が疲れていることを認めず、十分な休養をとらずに活動を続けていると、今度は少し休んだくらいでは疲れが回復しなくなります。疲労の蓄積の始まりです。

こうなると疲労が回復するまで、予想以上に時間がかかります。あるいは本当に病気になってしまうこともあります。

コーヒーで元気が出るメカニズム

疲労感をマスキングするのは、責任感ややりがいなどの精神的な要素だけではありません。コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインも、疲労感をマスキングします。

冒頭で、傷ついた細胞を修復するエネルギーであるATPについてお話ししました。

ちょっと専門的にいうと、ATPはDNAやRNAなど核酸の構成成分であるヌクレオチドの一つです。人間は食べたものを体内でATPというエネルギーに換えて、それを使って動いているのです。いわば、人間の体を動かすガソリンです。

私たちが活動によってATPをどんどん使うと、ATPがアデノシンに分解され、燃焼します。

私たちの体には、アデノシンに対応する「受容体」という受け口のようなものがあって、アデノシンの燃焼が終わると、灰のようになったアデノシンの燃えかすは、この受容体にスポッと入ります。

アデノシンの燃えかすがはまった状態では、覚醒作用のあるヒスタミンの放出が抑制されるので、「眠い」という感覚が生じます。

ところがカフェインは、アデノシンの燃えかすと化学構造が似ているので、この受け口にぴったりと入ってしまいます。アデノシンの燃えかすが入る前に、カフェインが受容体に入ってフタをしてしまうのです。

同じようにスポッとはまった状態でも、カフェインにはヒスタミンの放出抑制機能はありません。つまりヒスタミンが放出されたままになるので、「眠い」という信号が出ません。

こうなると、本当は疲れているのに、疲れや眠気を感じることができなくなります。これが、カフェインが疲労感を抑制するしくみです。ですからコーヒーを飲むと眠気が覚めるのです。

疲れたときはエナジードリンクを飲むという方もいるかもしれません。エナジードリンクとか栄養ドリンクといわれる飲料は「〇〇〇という成分が△ミリグラムも入っている!」などとうたっていますが、主成分は糖分、そしてカフェインです。ですから、コーヒーと同じしくみで、一時的に疲労を忘れられるのです。

「燃え尽き症候群(バーンアウト)」にご用心

本当に忙しいときは、コーヒーや栄養ドリンクを飲んで乗り切らないといけないときもあるでしょう。しかしそれに頼ってばかりいるのは禁物です。

疲れ方というのは、個人差が非常に大きいものです。どれくらい一時しのぎができるかはその人の年齢や体調にもよります。

「あの人ががんばれるのだから、自分も同じようにがんばれるはず」ということはありません。それにもかかわらず疲労感をマスキングし続けることは、体にとって相当な嫌がらせになります。

人それぞれ、もって生まれた体質は違います。睡眠時間も同じで、3時間でも大丈夫な人と、10時間寝なければダメな人がいます。仮に年齢や性別が同じでも、体質は一人ひとり違うのです。

人間は永遠にがんばり続けることはできません。マスキングが常態化してしまうと、どこかでポキッと折れてしまうでしょう。その先は「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と呼ばれる状態になることが知られています。

燃え尽き症候群には12段階があり、最初は自分の存在価値をなんとか証明しようと一生懸命無理をすることから始まります。次に「がんばる」とか「ひきこもる」などの段階を経て、11段階目になると、うつ病になります。最後が燃え尽き症候群です。

こうなると何もできない状態になってしまい、治療に時間を要することになります。

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日本人がやりがちな「寿命を削る」2つの悪習慣

6時間睡眠の人ほど「体調不良に陥る」納得理由

「休めない」日本人の生産性が著しく低い理由

提供元:「コーヒーで疲れを誤魔化し続ける人」迎える末路|東洋経済オンライン

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