2024.02.06
「3大ハッピーホルモン」が多い人がしている習慣|医師が教える「人に優しい人が受けるメリット」
人に優しくできる人は、損をする?得をする?(写真:maroke/PIXTA)
あなたは、自分のことを「優しい人」だと思いますか?
人に優しくすると、自分の気持も良くなります。それによって脳内にセロトニンなどの神経伝達物質が分泌されて、心身にいい影響が生まれることが科学的に明らかになっています。
しかし、世の中全体がギスギスとしていますから、どうしても自分のことを優先して考えるようになり、周囲の人を慮るような精神的なゆとりを見失いがちです。
こんな時代だからこそ、「優しさとは何か?」を考えることで、その意義を見つめ直す必要があるかもしれません。精神科医である和田秀樹氏の新刊『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』をもとに、優しさの意味と意義を3回に渡り解説します(今回は1回目)。
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人に優しくすると自分が損する?
人には優しくありたいと思っていても、そんな気持ちが失せることもあります。日常的に最も多いのが、人に親切にしたら、相手の反応が思ったほど良くなかった……というケースです。次のような経験は、誰にでもあるのではないでしょうか?
・電車でお年寄りの人に席を譲ったら、当たり前のような顔をされた
・苦労して頼まれたことをやってあげたのに、相手はあまり喜んでいない
・困っている後輩の仕事を手伝ってあげても、感謝の気持ちが薄い
一度でもこんな思いをすると、後味が悪いだけでなく、相手に対する気遣いを後悔する気持ちが生まれます。人に優しくできない人の多くは、こうした経験がベースになっていることが少なくありません。
自分が相手に優しくしても、相手は何もしてくれなかったり、「ありがとう」の一言すらない……というのは、意外によくあることです。そんなことが続くと、いつの間にか「人に優しくしても、自分が損するだけだな」と思うようになります。
自分が損をすると思ってしまうと、人が困っていても「見て見ぬふり」をしたり、「気づかぬふり」を装って、そうした場面を避けるようになるのです。
優しさの見返りを求めてしまう
自分が嫌な思いをしないために、できるだけ無関心な態度を取っていると、「あの人は冷たい人だ」と言われるようになります。自分を守るために、面倒なことを避け続けているだけで、周囲の人の目には「あの人は優しくない人だ」と映ってしまうのです。
なぜ、こんな矛盾したことが起こるのでしょうか? それは自分では意識していなくても、人に優しくすることに、何らかの「見返り」を求めていることに理由があります。
相手のためと思って、何かをしてあげるときには、すごく喜ばれるとか、うれしそうに「ありがとう」と言われることを、心のどこかで求めています。場合によっては、「あなたから受けた恩は、一生忘れない」と、こちらの想像以上に感謝されることを、密かに期待しているのです。
相手が期待通りの反応を見せてくれれば、それだけで満足することができますが、そうならない場合には、釈然としない気持ちになります。
自分が満足できるような見返りが得られないと、「あまり喜んでいないのだから、ムダなことをしたかな」と思い始めて、何となく「損をした」ような気分になってしまうのです。
こうした受け止め方は、日本人特有のものだと思います。「ギブ・アンド・テイク」という言葉があるように、欧米人は相手にギブをしなければ、テイクはないという発想をしています。
こちらが何もしていないのに、向こうから何かしてくれることは基本的にはないと思っており、相手に何かしてあげても、必要以上に感謝を求めるような気持ちはありません。
相手にギブをして、何の見返りもなければ、それは自分の見当違いですから、「悪いのは自分」と考えて、相手を恨むようなことはないのです。
日本人には、相手の「好意」に期待してしまうところがあります。夏の暑い日に人が訪ねてきたら、「今日は暑いですよね」と言いながら、冷たい飲み物をそっと差し出す文化が日本には根づいています。
そうした習慣や考え方が身についているため、日本人には、人に優しくしたら、自分の期待値に見合うだけの反応を相手が見せてくれることを、心のどこかで勝手に求めてしまうところがあります。
相手に悪気がなくても、こちらが期待しているような反応を示してくれないと、何だか裏切られた気分になってしまうのです。
こちらが何も言わなくても、向こうが気を遣ってくれることに慣れていますから、相手に気の利かない対応をされると、「おもてなしの心がない」→「優しくない」→「嫌なヤツだ」と思ってしまいます。
損得勘定といったら少し極端ですが、自分の期待値を上回る反応を相手に求め、それが示されないと「損をした」と思い込んでしまうのです。
無意識に相手からの「見返り」を求めて、それを得られないと勝手に傷つき、相手を悪く思ってしまう……という経験を何度も繰り返していると、自己防衛として、できるだけ人のことに関わらないようになり始めます。
これが人に対する「無関心」を助長させて、「優しい人」を「優しくない人」に変えてしまうのです。
医学的にもいい影響がある
人は誰でも、体調や機嫌がいいときのほうが優しくなれます。
不安を抱えたり、何かに追い詰められていると、優しい気持ちにはなれません。風邪を引いたり、寝不足が続いて体調がすぐれなかったりするときには、人の気持ちを想像する余裕など、どうやっても持てないものです。
「優しい人でありたい」と思うならば、体調を管理して、メンタルを安定させることが最初の一歩となりますが、人間には不思議なシステムが備わっていることも知っておく必要があります。
人に優しくすると、セロトニンやオキシトシン、ドーパミンといった脳内ホルモンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されやすくなり、たくさんのいい影響が生まれることが医学的にわかっています。
もう少し正確にお伝えすると、「人に優しくしていると、神経伝達物質が分泌される」という説と、「神経伝達物質が分泌させるから、人は優しくなれる」という2つの説があり、現時点ではどちらが先なのかは明確になっていません。
どちらが先であっても、脳の中にいい流れを作っておけば、自分自身が幸せな気分になり、さまざまなメリットが享受できますから、人に優しくすることは、医学的にも好結果をもたらす……と考えていいと思います。
3大ハッピーホルモンの効果
3つの神経伝達物質の主な特徴は、次のようになります。
(1)「セロトニン」(通称:幸せホルモン)
・ポジティブで前向きな気持ちになる
・怒りや焦りなどのマイナスな感情を抑える
・メンタルを安定させて、幸福感が得やすくなる
(2)「オキシトシン」(通称・愛情ホルモン)
・ストレスの軽減
・脳の疲れを癒す
・気分を安定させる
(3)「ドーパミン」(通称:快楽ホルモン)
・多幸感を得られる
・意欲がアップする
・集中力が高まる
最近では、セロトニンとオキシトシン、ドーパミンを総称して「3大ハッピーホルモン」などと呼ばれて注目を集めています。人に優しくすることは、医学的に見ても、あなたの人生にいい影響をもたらしてくれるものなのです。
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提供元:「3大ハッピーホルモン」が多い人がしている習慣|東洋経済オンライン