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2024.02.03

蔓延する「インフルエンザ」、なぜ2回かかるのか|今シーズンは3種類のウイルスが流行している


インフルエンザの流行が続いている今、知っておきたいこと(写真:スマイル/PIXTA)

インフルエンザの流行が続いている今、知っておきたいこと(写真:スマイル/PIXTA)

暖冬にもかかわらず、インフルエンザの流行が続いている。秋に一回かかったから、もう大丈夫と思っているあなた、それは大きな誤解だ。インフルエンザには何度もかかるので、注意を続けねばならない。実際、診療の現場でインフルエンザA型に2回かかっている患者を診ている。年明けからB型インフルエンザが検出されるケースも増加している。

インフルエンザウイルスのA型とB型は何が違う?

インフルエンザウイルスは、大きく分けてA型、B型、C型、D型の4種類がある。このうち、人間に感染して強い病気を引き起こし、季節性インフルエンザウイルスとして問題になるのはA型とB型だ。さらに、A型はAソ連型とA香港型に、B型は山形系統とビクトリア系統に再分類される。山形系統のウイルスは2020年3月以降、自然感染では検出されていない。よって、いま日本でヒトに感染するインフルエンザウイルスは3種類と考えていい。

3種類のインフルエンザウイルスに共通する症状は、悪寒、関節痛、発熱などの全身症状で、それらが強く出て急速に悪化する。ほか鼻水や鼻づまり、咳、のどの痛み、嘔吐や下痢など胃腸症状を伴う。鼻水や咽頭痛で始まる、数日かけて悪化するかぜとは発病の様式が異なる。

A香港型は比較的症状が強く、Aソ連型やB型は比較的軽症だ。もちろん無症状の感染者や、軽症の人もおり、症状だけでインフルエンザか否か判断することはできない。皆さんも家族がインフルエンザにかかった際、同居の家族は同様に高熱が出たりするわけではなく、無症状や軽いかぜ症状で済む人がいることを経験されているのではないだろうか。

なお、C型インフルエンザウイルスは感染しても軽度の症状しか起こさない。D型はウシに感染するが人間には感染しないので、問題とされない。

自然界では130種類以上のA型インフルエンザウイルスが同定されている。その多くは野鳥から検出されており、その中のいくつかは、鳥インフルエンザウイルスとして各国で家禽に感染し、最近では鳥類のみならず、オットセイなど哺乳類にも感染した事例が報告されており、新型インフルエンザ出現が近いと警戒されている。

事例 ※外部サイトに遷移します

A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面の2つのタンパク質、ヘマグルチニン18種類(H1〜H18)とノイラミニダーゼ11種類(N1〜N11)の組み合わせで亜型(サブタイプ)に分けられる。人間の季節性インフルエンザウイルスの亜型はH1N1(Aソ連型)、H3N2(A香港型)であり、鳥インフルエンザウイルスはH5N1やH7N9などだ。

複数のウイルスが同時に感染すると、体内でウイルスが遺伝子を交換し、新たな亜型が生じる。遺伝子交換によりインフルエンザウイルスの性質が変わると、動物にしか感染しなかったウイルスが、ときどき人に感染するようになる。さらにウイルスが変異すると、人から人にまれに感染するようになり、さらに人から人に定常的に感染するようになったものを新型インフルエンザと呼ぶ。

2009年に世界を席巻した新型インフルエンザは、豚のインフルエンザが人間に感染するようになったのが原因だ。ウイルス遺伝子の解析により、北米の豚群とユーラシアの豚群の間で循環しているウイルス間で遺伝子が交換された可能性が最も高いと報告されている。

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B型インフルエンザウイルスは変異しないのか?

幸い2009年の新型インフルエンザウイルスは、そこまで病原性が高くなかった。しかしこれは単なる幸運にすぎない。

これまで高病原性鳥インフルエンザが人に感染した事例は多々報告されており、その死亡率は60%だ。上述のオットセイの事例は、ウイルスの変化が起きていることを表しており、引き続きウイルスの変化をモニタリングする必要がある。

報告 ※外部サイトに遷移します

A型と異なり、B型インフルエンザウイルスではヘマグルチニンやノイラミニダーゼの遺伝子の組み換えのような大きな性質の変化は起きない。ただし、コロナウイルスでも起きているように、ウイルスの遺伝子は不安定であり、少しずつ変異している。ウイルスが変異し、少しずつ性質が変わることが、ワクチンの効果が出にくいことの原因だ。

A型2種類、B型2種類の免疫のもと=抗原を含むワクチンしか日本国内では製造されていない。よって、ワクチンを受けた人は、すべての流行しうるウイルス亜型に対して免疫がついていると考えていい。ワクチンは1つの種類にしか効かないと思っている人もいるようだが、それは誤解だ。

インフルエンザワクチンの発病予防効果は、こどもでは70%程度、健康な成人では59%程度、65歳以上の高齢者では58%程度だ。実数で考えたら、この予防効果は大きい。インフルエンザにかかる人数を、65歳以上では人口の6%から2.4%へと減少させるのだ。医療機関がインフルエンザ患者であふれ、医療提供が逼迫すれば、普段なら治る病気の治療が受けられないことになる。よって、インフルエンザワクチン接種の社会的な効用は大きい。

ウイルスの種類別では、インフルエンザワクチンの発病予防効果はAソ連型56%、A香港型22%、B型42%と報告されており、A香港型にワクチンが効きにくいことがわかる。シーズン毎のインフルエンザワクチンの効果の違いは、アメリカ疾病対策センターが推定して公表している。流行したウイルスによって効果は異なるが、概ね40〜50%程度である。

報告 ※外部サイトに遷移します

公表 ※外部サイトに遷移します

今シーズンは3種類のウイルスが流行している

2023年夏から秋口までの流行はA香港型がメインであったが、次第にAソ連型が増加したことが東京都感染症情報センターで報告されている。コロナ以前の流行パターンでは、1月末にA型インフルエンザがピークを迎え、その後はB型インフルエンザが流行し、GW前まで続くことが多い。今シーズンも同様であるならば、引き続きB型インフルエンザ流行に備えておくべきだ。

報告 ※外部サイトに遷移します

もし、今シーズンのインフルエンザワクチンを受けていない人は、今からでも遅くはないので接種をお勧めする。

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提供元:蔓延する「インフルエンザ」、なぜ2回かかるのか|東洋経済オンライン

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