2024.01.24
性格によって異なる「心臓病になりやすいタイプ」|「全力で楽しむ」ことが心臓病の予防になる
心臓病になりやすい人には、いくつか傾向があるようです(写真:kimi/PIXTA)
「心臓病になりやすそうな人」といって、みなさんはどんな人物像を思い描くでしょうか。いつも何かに怒って血圧が高そうな人? それとも肥満気味で日常的に運動をしない人でしょうか。
「その人の性格も関係していますが、同調圧力の強い日本社会の傾向にも心臓病リスクを高める要因があるようです」と言うのは、東北大学名誉教授で医師の上月正博氏。上月氏の著書『弱った心臓を元気にする方法』より、心臓病になりやすい人のタイプと私たちが気をつける点について一部抜粋・再構成してお届けします。
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性格によって傾向が異なる「心臓病になりやすいタイプ」の人とは?
病気そのものを根本から解決させるために、そんな人がどんな病気になりやすいかについては、昔から研究が続けられてきました。心臓病患者においては、性格や行動パターンで次の4つのタイプに分けられています。
タイプA......真面目で向上心や責任感が強く、自分を駆り立てる性格
タイプB......穏やかで落ち着いた性格
タイプC......几帳面で真面目な性格
タイプD......対人関係において不安を覚えやすい寡黙な性格
では、このなかでどのタイプが心臓病になりやすいのでしょうか。今までは、真面目で責任感が強くて自分に厳しい「タイプAの」人が、虚血性心疾患の発症率が高いとされてきました。タイプAの人の怒りや攻撃性、敵意といったものが、最も心臓病の発症に関連するといわれてきたのです。しかし、日本人についての近年の研究結果では、タイプAよりも、ネガティブ感情が強くてコミュニケーションが苦手な「タイプD」の人が、心臓病になりやすいタイプだと考えられるようになってきました。
【タイプ分け診断】
あなたはいくつ該当しますか?
▢ささいなことで過度に騒ぎ立ててしまう
▢対人関係で引っ込み思案になりやすい
▢不幸せだと感じることが多い
▢物事を悲観的に見てしまう
▢イライラしやすい
▢よく機嫌が悪くなる
▢感情表現が苦手だ
▢落ち込みやすい
▢なにかと心配事が絶えない
▢なるべく他人とは距離を置きたい
▢会話でその場にふさわしい話題が思いつかない
出典:The Japanese Journal of Health Psychology 2015, Vol. 27, Special issue, 177–184
3つ以上チェックがついた人は「タイプ」Dです。個人差 はありますが、心臓病のリスクが高いと認識しておくといいでしょう。さらに、同調圧力が強い日本社会で「抑圧型対処行動」をとらなくてはならないことも、心臓病に関連するとの見方があるのです。
また、「配偶者がなく、信頼できる友人もいない心臓病患者は、そうでない患者と比較して5年間の死亡率が約3倍」といった報告もあります。このような研究結果は、心臓病のリスクが個人の性格や生活習慣などの問題だけでなく、社会的な要因にも左右されるということを示しています。
ちなみに「タイプB」は穏やかで落ち着いた人、「タイプC」は几帳面で真面目な人です。個人差はありますが、タイプBの人の性格は、ストレスを感じにくいといわれています。
ストレスへの対処で心臓病リスクを減らす
個人の性格が心臓病にかかるリスクに影響するというのは、「ストレスを感じやすいかどうか」ということに大きく関わっています。
ストレスが心臓病の発症に密接に関係しているというのは、2011年に起きた東日本大震災直後に、心不全や虚血性心疾患の患者数が増加したという事実も裏付けています。なぜストレスが心臓病を発症させる原因となりうるのかというと、身体的あるいは精神的ストレスが交感神経を過剰に活性化させ、心拍数の増加、血管の収縮などにつながるからではないかと考えられています。仕事や家庭、対人関係などの心理的なストレスも心臓病につながるリスクとなりうると、多くの研究成果が告げています。
また、ストレスによって血液中のコレステロールや血小板数が増えると、動脈硬化や不整脈を起こしやすくなるので、さまざまな理由からストレスは心臓病の発症あるいは再発症の引き金になるものといっても過言ではありません。
日本人においては、タイプDの人が心臓病になりやすいと見られていると述べました。「物事に対してほとんど興味がない」「将来が不安で絶望的な気持ちになる」「目標とするものがなく生きる気力がない」といったネガティブな感情を抱きやすい人はストレスを溜め込みやすく、心臓病にかかるリスクも、かかってからの生存率おける予後との関連を調べてみても、その死亡率が高いとされています。
全力で楽しむことが心臓病の予防になる
性格や感情に端を発するストレスは、他人に指摘されてすぐに治るものではありませんが、だからといって放置していいものでもありません。ストレスによって生活リズムが乱れると、喫煙や飲酒量の増加、過食、睡眠過不足などを引き起こしますが、これらはすべて心臓病につながる危険な要素です。悪い生活リズムは新たなストレスを生み、そのストレスがまたリスクを高める――この負のスパイラルは本当にやっかいです。
解決の糸口は、いたってシンプルです。まずは何でもいいので楽しめることを見つけてください。そして、それを全力で楽しんでください。ストレスは「溜まる」と表現されるように、コップに少しずつ水が注がれていく様に喩えられます。コップに空きがあるうちはいいですが、満タンになった途端に水が溢れ出して大事になってしまいます。ストレスも同じで、ちょっとずつでも解消していかないと、取り返しがつかなくなってしまうのです。
社会的な孤立も、危険性をはらんでいます。たとえば高齢者の場合、仕事を退職してひとりの時間が増えたり、配偶者や友人と死別したりして、社会的なコミュニケーションが激減することがあります。何か新しいことを始めたり、地域の趣味サークルに参加したり、若い人と積極的に関わるようにすることで、心臓病の予防になることを覚えておきましょう。
心臓病にとって、肥満は大敵です。男性は戦後から肥満指数(BMI)が右肩上がりに上昇し続けていて、なかでも40代と50代は約4割の人が肥満に数えられるほどです。肥満は万病のもとともいわれますが、心臓病にとっても同様です。
肥満だけでなく、やせすぎも大きな問題
世界的にはBMI30以上で肥満とされますが、日本を含む東アジアと南アジアにおける判定指標はBMI25以上です。これは、日本人を含むアジア圏の人たちは、食事によって摂取したエネルギーを皮下脂肪でなく、内臓脂肪として溜めやすい傾向にあることに起因します。肥満には皮下脂肪が多い「皮下脂肪型肥満」と内臓脂肪が多い「内臓脂肪型肥満」がありますが、多くの研究結果から、内臓脂肪型肥満のほうが病気を引き起こしやすく、身体に及ぼす悪影響も強いことがわかりました。
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では、やせていれば心臓病の心配はいらないのかというと、それも正しくはありません。やせすぎていることは、病気に対する免疫力の低下につながります。やせているということは、筋肉量が少ないということでもあり、筋肉がなければそれだけ運動をすることが億劫になってしまいます。
適度な運動は心臓病のリスクを低下させる効果があるので、適切な栄養バランスの取れた食事をきちんと摂り、しっかり体を動かしていきましょう。体を動かすことはストレスの解消にもつながりますから、心身ともに健康維持につながっていきます。
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提供元:性格によって異なる「心臓病になりやすいタイプ」|東洋経済オンライン