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2023.12.29

「糖尿病で失明」知るとゾッとする合併症の正体|世界的眼科医が「薬物治療主体」に異論唱える訳


日本の失明原因の第2位は、糖尿病性網膜症といわれています(写真:りょーま/PIXTA)

日本の失明原因の第2位は、糖尿病性網膜症といわれています(写真:りょーま/PIXTA)

日本は世界最長寿の国となり、人生100年時代を迎えています。ところが「目の寿命」ははるかに短く60〜70年ほど。十分な準備をしておかないと人生の後半に目の病気や視力障害で生活に支障をきたしてしまうかもしれません。世界中から治療を求めて患者の絶えない眼科専門医が世界基準の目の守り方を記した『100年視力』から一部抜粋、再構成してお届けします。

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早めの手術で治せる! 糖質制限食も取り入れて

日本の失明原因の第2位が糖尿病性網膜症です。

最近の統計では症状の軽い人も入れると、日本人総人口1億2000万人の6分の1にあたる2000万人が糖尿病だそうです。飽食の近年、糖尿病患者数はとくに増加してきています。ですから現代病とも、国民病とも言えます。

糖尿病は遺伝素因が関係しますが、遺伝に加えて、過大な糖質摂取による「糖化」が糖尿病発現の原因です。

簡単に言えば、ご飯やパン、麺の食べすぎですね。また、トウモロコシからつくった甘味料である「異性化糖」「ブドウ糖果糖液糖」なども多くの甘い飲み物や食べ物に含まれています。人工的につくった果糖ですので、砂糖よりはるかに血糖値を上げやすく糖尿病が悪化します。子ども時代にこの異性化糖という甘味料に慣れてしまうと、依存性ができて、悪い食習慣から抜けられなくなり、早くから糖尿病になります。

糖尿病の患者さんは、糖化で白内障になりやすいだけでなく、「血管系の閉塞や出血」が起きやすくなります。それが「糖尿病性網膜症」の姿です。

糖尿病の名前の由来であるものの、「尿に糖が出る現象」は大した問題ではありません。「糖尿病とは血管病」です。高血糖状態からインシュリン薬投与で、血糖値が急に下がるような、血糖値の急激な上下によって、血管が詰まったり、血管が破れて出血したりします。

目の中で出血すると炎症反応が起き、増殖膜が張ってきます。増殖膜は収縮することで網膜を破き、網膜剥離を起こして、失明につながるのです。

増殖膜による網膜剥離が起きた場合、長い間放置していると、新生血管や網膜下の増殖膜などが起きてくるので、硝子体手術で網膜剥離を治すことが困難になります。さらには、血管新生緑内障など重症緑内障の合併症を併発することも多いのです。血管新生緑内障とは、糖尿病により新生血管が、目の水(房水)の流れる隅角・線維柱帯部分に伸びて、そこに膜が張り眼圧が上昇する、重症の難治性緑内障です。

(画像:『100年視力』より)

(画像:『100年視力』より)

私は数万件の網膜剥離の手術をしていますが、この強い増殖膜や新生血管が起きた網膜剥離は、とくに難治症例です。

しかし、糖尿病関係の目の疾患は早く見つければ治せます。目の疾患の治療の原則である、早期発見・早期治療が重要なのです。

もっとも重要な治療は、糖質をとりすぎない食事です。糖質の多い主食を食べないようにする「糖質制限食」が、糖尿病予防や糖尿病患者さんの効果的な治療になります。ブドウ糖の10倍以上の速さで「糖化」を進める果糖の摂取もNG。食べるものは栄養成分表示をチェックして選び、とくに人工的につくった果糖である「異性化糖」「果糖液糖」「果糖ブドウ糖液糖」と表示にあれば摂取をやめましょう。

さらに、高温での焦げ目のついた調理は終末糖化産物(AGEs)を増やします。蒸したり煮たりの調理法を主として、加熱でも低温調理器具を使うと良いでしょう。

「眼底検査」で見つかることも多い糖尿病

目の異常を訴えて病院に来た患者さんの眼底検査をして、糖尿病性網膜症を発見することがよくあります。つまり、自覚していなかった糖尿病が見つかるのです。

人の体で直接、血管を観察できるのは、眼底の網膜だけなのです。ほかのどの診療科でも血管を直接は診察することはありませんが、私たち眼科外科医は日々、患者さんの目の中をのぞき、血管を見ています。眼科の最高峰のツアイス手術顕微鏡で見ると、20倍にも拡大した鮮明な像で血管を見ることができます。

血管を直接見ると、血管壁が硬くなっているとか、もろくなっているなどもよくわかります。赤血球もよく見え、血流の異常があれば、それも直接流れを見ることでわかります。目の中の血管を見ていると、その患者さんの全身の血管の様子もかなり推察できるということです。

糖尿病は薬ではなく「食べ物」による治療を

糖尿病は自覚症状が乏しく、自覚があったとしても生活にまぎれてしまうことが多い病気です。

「のどが乾く」「だるい」「トイレの回数が多い」など、代表的な自覚症状を季節や年齢のせいだと思う人も多いためです。

そこで、重症の糖尿病が眼科で見つかることはまれではありません。以前はそのような患者さんには目の治療をしながら、内科も受診するよう勧めていましたが、それも問題が多数生じ、その後は行っていません。

というのも、内科の医師は糖尿病の診断をすると、「血糖値」だけを見て、血糖値を下げる治療を熱心にします。しかし、血管が詰まったり、裂けたりするのは、血糖値が上昇するときだけではなくて、薬物治療によって急激に下がるときも同じなのです。そのため内科治療が始まると、早い時期に目の症状が悪化してしまう患者さんが多くいました。

眼科外科医の私は血管から目の病気と糖尿病を見ていて、目や、全身の血管などの組織を守ろうと考えます。

内科の医師は血糖値のデータを見ているばかりで、血管は診察していません。「血糖値はできるだけ上下動を少なくして、ゆっくり改善して」と頼んでも聞いてはもらえず、網膜症の悪化が多く起こったのでした。

それは目だけの問題ではありません。目の血管が破けたり、裂けたりするということは、ほかの、たとえば腎臓の血管にも同じことが起きている可能性があるわけです。

腎臓のランゲルハンス島という組織の血管は、網膜の細い血管によく似ています。破けて、腎不全を起こしてしまったら、生涯透析です。

私が「糖質制限食」を勧める理由

残念ながら、日本の内科の糖尿病治療では透析患者が年々増え続けています。つまり、合併症が増えるということは、糖尿病の内科治療がうまくいっていないのです。現在の内科の食事指導で、総カロリーの4割も炭水化物をとらせて、高くなった血糖値は薬で下げるという治療法では、糖尿病性網膜症も腎症も悪化する患者が増えるだけなのです。

透析となれば、患者さんの生活は一変してしまうし、目だけでなく全身のさまざまな代謝異常につながり、寿命が縮んでしまう危険もある。私は糖質を控え、血糖値の変動を少なくする療法で、目や全身の組織をまもりながら糖尿病の悪化を防ぐ方法として「糖質制限食」を勧めています。

最初は難しいので、主食であるご飯や麺やパンをすべて食べるのをやめてもらいます。

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血糖コントロールを強化するなら、糖質制限食にプラスして、血糖値が高いときだけ血糖吸収を抑えるGLP-1の皮下注射や、薬でもインシュリン作用性ではないメトホルミン内服薬がいいと思います。

深作眼科には多くの重症糖尿病患者が来られるので、私は糖尿病の正しい内科的な治療についても、時間をかけて説明しています。糖質制限食で血糖の変動が少なくなり、血糖値が安定すれば、血糖値を急激に下げる薬から卒業できます。同時に負担の少ない手術で網膜症の治療を行い、視力回復をめざすのです。

ただし、いまだに糖尿病の標準的な治療の主体は薬物治療で、糖質制限食など、生活習慣の改善ではありません。

糖尿病は生活習慣病の1つなのに、なぜ、そもそもの原因である生活習慣を正す治療や啓蒙が主体でなく、生活習慣の乱れの結果として起きている血糖値のコントロール不良だけを治療対象とするのか。合理的ではないし、ある意味本末転倒なのです。

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提供元:「糖尿病で失明」知るとゾッとする合併症の正体|東洋経済オンライン

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