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2023.12.11

自分の感情に振り回されないための「4つの方法」|「どうして」ではなく「どうすれば」で考える幸せ思考


自分の感情がコントロールできるようになりたいと思いませんか?(画像:Graphs/PIXTA)

自分の感情がコントロールできるようになりたいと思いませんか?(画像:Graphs/PIXTA)

「柔軟なマインドセットを身につければ、大きな変化に直面してもうまく切り抜けられるようになる」と指摘するのが、認知心理学者・神経科学者のエレーヌ・フォックス氏です。今回は「感情の調整法」について、フォックス氏が解説します。

※本稿はフォックス氏の著書『SWITCHCRAFT(スイッチクラフト) 切り替える力 すばやく変化に気づき、最適に対応するための人生戦略』から一部抜粋・再構成したものです。

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感情をコントロールする

どのように私たちは感情をコントロールしているのか、その実態はほとんどわかっていない。感情の調整法を学ぶにあたり、以下の点を判断してもらいたい。

● いま、感情の調整が必要か? 不安感をやわらげる必要があるだろうか? 落ち込んだ気分から抜けだす必要は? 興奮状態で自分を落ち着かせる必要があるだろうか?

● 次に、どの調整法が適しているかを選ぶ。状況そのものを変えるか? あるいは、ほかのものに注意を向けて、気をまぎらわせるか? たとえば、あなたがいま歯科医の待合室にいるのなら、治療から逃げ出すのは得策ではないだろう。それなら気をまぎらわせるために、お気に入りの音楽を聞くといいかもしれない。

研究によれば、感情の調整法は次の図のように大きく4つに分けられる。「いまの状況を変える方法を見つける」「注意を向ける対象を変える」「状況をほかの視点から考える」「反応の仕方を変える」だ。

(画像:『SWITCHCRAFT(スイッチクラフト) 切り替える力 すばやく変化に気づき、最適に対応するための人生戦略』より「感情のコントロール」)

(画像:『SWITCHCRAFT(スイッチクラフト) 切り替える力 すばやく変化に気づき、最適に対応するための人生戦略』より「感情のコントロール」)

● 選んだ調整法をどう実行するかを決める。その方法を実行するべきか、ほかの方法に変えるほうがいいか、あるいは感情を調整する努力をやめるべきか、最終的に判断しよう。

感情のコントロールは継続するプロセスで、「感情への気づき」の能力の中心となる。可能であれば、「いまの状況を変える方法を見つける」のがいちばんいい場合もある。

変えられないときは「注意を向ける対象を変える」「状況をほかの視点から考える」といった方法をとるといい。状況をほかの視点から考えれば、ストレスの多い出来事を違う枠組みで見られるようになる。

強い感情を制御する方法とは

そして最後に、「反応の仕方を変える」ことも試してみよう。あなたの感情の反応に直接影響を及ぼす方法もいくつかある。次の表では、ストレスの多い状況に対処し、強い感情を制御する際によく利用されている方法を紹介する。

記事画像

(画像:『SWITCHCRAFT(スイッチクラフト) 切り替える力 すばやく変化に気づき、最適に対応するための人生戦略』より「強い感情の制御法」)

(画像:『SWITCHCRAFT(スイッチクラフト) 切り替える力 すばやく変化に気づき、最適に対応するための人生戦略』より「強い感情の制御法」)

こうした手法を活用した実例として、私がライフ・コーチングを担当したマンディの体験を紹介しよう。

彼女はビジネスパーソンとして成功をおさめていたが、不安感がぬぐえないと、助けを求めてきた。不安でたまらないのは現実的な悩みがあるからではなく、感情のコントロールが下手だからではないかと、彼女は考えていた。

実際、彼女は人もうらやむような生活を送っていた。すばらしい男性と出会って結婚し、2人の子どもにも恵まれて、どちらも成績優秀だった。友人も大勢いて、勤務先である大手建設会社の仕事にもやりがいを感じていた。利益の大きい新規プロジェクトの契約を獲得するという大変な仕事だが、報酬も高額だった。

彼女は有能で、大規模な建設プロジェクトで契約を何度も勝ちとっていた。私自身、ロンドンで新たな土地開発計画が進行中という新聞記事のなかで、彼女の名前を見かけたことが何度もあった。

マンディでさえ、百戦百勝というわけではなかった――そんな人などいないだろうが。

彼女は獲得できなかった契約のことを考え、自分の行動や判断が間違っていたから契約を逃したのではないかと思い悩んだ。自社の代表として力不足だったのでは? 競合他社よりもすばらしい提案だと、相手を説得するだけの力が足りなかったのでは? 仕事について考えはじめると、マンディはネガティブ思考の渦に吞み込まれ、失敗したときのことばかり思い出した。

成功した契約のほうが多いのだから、その思い出を大事にするべきなのに、たまに犯した失敗にとらわれていたのだ。

状況を変えるために、4つの方法を実行

私たちはこの問題について話し合い、4つの方法をすべて実行することにした。

マンディは、いまの状況を少し変える努力を始めた。まず、不安感にさいなまれていることを同僚に打ち明け、あえて契約獲得に失敗したときの話をもちだし、ユーモアをまじえて披露した(「いまの状況を変える方法を見つける」)。

それに、自分が失敗した経験にとらわれていて不安感がぬぐえないことを自覚し、ネガティブなことばかり考えている状態を変えなければならないと気づいた(「注意を向ける対象を変える」)。

さらに全体像に目を向けた結果、百戦百勝の人などいないことを理解するようになった(「状況をほかの視点から考える」)。

失敗に目を向けるのではなく、成功したことを祝い、バランスよく状況を俯瞰できるようにもなった。最後に、定期的に運動することを心掛けた結果、以前よりよく眠れるようになり、ストレスも軽くなった。ストレスを感じたら、深呼吸をするエクササイズを実践するようになった(「反応の仕方を変える」)。

やがて、マンディは不安感とネガティブな感情を調整できるようになったのである。

感情のコントロールは途切れずに続くプロセスだ。私たちは1つの感情だけではなく、複数の感情をたえず経験している。そのため、つねに自分の感情の声に耳を傾けるだけではなく、調整が必要かどうかも判断している。

ネガティブな感情や思考に混乱させられると、「感情への気づき」の能力も衰えてしまう。脳は報酬を得られそうなことよりも、目先の危険に意識を向けるため、ネガティブな情報に注意を向けるからだ。

私たちの祖先は生き延びるために脅威を察知しなければならなかったので、ネガティブなものの見方に引かれるのは当然だ。けれど、ネガティブ思考が通常モードになると、臨床心理学で「ネガティブ自動思考」と呼ぶ状態におちいる。あらゆる状況にネガティブな反応をしていると、ネガティブ思考が次から次へと湧きおこり、制御できなくなる。

このような「ネガティブ自動思考」は、主観的で影響力が強く、多くのエネルギーを要する。マンディのように、生活のあらゆる場面に影響を与え、幸福感をそこなうのだ。

ただし、ネガティブ思考がつねに悪いとはかぎらない。ときには、危険を察知して身構える必要だってある。ネガティブ思考をするからといって、だれもがうつ病になったり不安にさいなまれたりするわけではない。偏っていることではなく、硬直したものの見方をすることが問題なのだ。

頭のなかでいつもネガティブな声が聞こえればエネルギーを消耗し、行き詰まってしまう。大切なのは、ネガティブ思考にブレーキをかける方法を見つけることだ。

ネガティブ思考への対応

ネガティブ思考は役に立つこともあれば、悪影響を及ぼすこともあるので、うまくコントロールしよう。ものの見方を変える方法はたくさんある。

あなたが、職場で積極的に意見を言えるようになりたいと思っているとする。まず、どうして積極的になれないのか考えてみよう。「押しが強いと思われるといやだから」だとしたら、この理由を違う視点から考えて書きだそう。

「積極的に発言するようになったら、うっとうしいと思われるかもしれない」「給料アップを要求したら、無礼なやつだと上司に思われるかもしれない」といった思い込みがあるのなら、次のような問いかけをする。

● その考えは、白黒がはっきりしすぎていないだろうか?
● その考えに思い込みはないだろうか? 「いつも」「絶対」といった危険ワードで物事を考えていないだろうか? 
●「他人が考えていることが、自分にはわかる」という前提に基づいて、思い込んではいないだろうか?
● ネガティブなことばかりに目を向けていないだろうか?
●「こうすべき」「こうしてはならない」と、あなたが強く思っている規範が反映されてはいないだろうか?
● 他人を責めていないだろうか? 自分のことを「被害者」だと思っていないだろうか?

このように問いかけると、思い込みの呪縛が解けてくる。現実を直視せずに偏見のレンズを通して物事を見ていたことがわかってくるのだ。

「押しが強いと思われる」を「昇給に向けて努力している」「昇給の要求は理にかなっている」といった考え方に変えれば、いつもの思考を疑問視できるようになり、固定観念を捨てられる。そのためには視野を広げ、自分の問題ばかりにこだわりすぎないことを心掛けよう。

「どうして」ではなく「どうすれば」で考える

「どうして、あれほど悪いことが起こったんだろう?」と、くよくよ考えるほど不幸になる。それは多くの研究者たちが明言する結論だ。

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どうして自分はがんになったのだろう、どうして恋人にふられたのだろう、どうして就職できなかったのだろうと、頭のなかでネガティブな声に耳を傾けていると、思考の悪循環から抜け出せなくなる。

「どうして」とか「あのときべつの行動をとっていれば」という思考回路におちいったら、「どうすれば」「なにをすれば」などに変えてみる。「どうすれば、気分を上向きにできるだろう?」「この状況を変えるために、いま自分はなにをすればいいんだろう?」といったように。

このシンプルなテクニックに大きな効果があることは、臨床心理学者たちも実感している。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ人はよく、「どうして」あんな恐ろしい出来事が起こったのかと繰り返し考え、ネガティブ思考から抜けだせなくなる。

過去の出来事が起こった理由にこだわるのをやめて、「どうすれば、また自分の人生を歩みだせるだろう?」と考えるようにすれば、ネガティブ思考のサイクルから抜けだせる。

「どうすれば」「なにをすれば」という言葉とともに問いかければ、ネガティブ思考を頭の外へと追いだし、ふたたび前進できるようになるはずだ。

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提供元:自分の感情に振り回されないための「4つの方法」|東洋経済オンライン

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