2023.10.27
「イジりの9割パワハラ」上司が使いがち"NG言葉"|相手の失敗を「ポジティブに変換する」言い方3選
正しい「イジる技術」とはどういうものなのでしょうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)
コミュニケーションには、「関係開始」「関係継続」「関係深耕」の3段階しかない。そして全ての段階には、攻略法がある!
元お笑い芸人である中北朋宏氏は、お笑いを辞めた後に未経験でコンサル業界に転職。そこで「笑いの技術」を活かしたコミュニケーションを駆使して3年でナンバーワンの成績をおさめています。
その後、起業して株式会社俺を設立。自身が開発した「お笑い」と「コミュニケ-ション」を掛け合わせた、「コメディケーション」を260社、2万6000人以上に提供しています。
そんな中北氏が「仕事で結果を出すためのコミュニケーション技法」をまとめたのが最新刊『おもしろい人が無意識にしている 神雑談力』。
すぐに使える、コミュニケーション強者になるための、テクニックが満載で、発売即重版になるなど話題を呼んでいる。
以下では、ビジネスパーソン必読の「パワハラにならないイジり方」について解説します。
『おもしろい人が無意識にしている 神雑談力』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
「イジる」ときはポジティブな言葉で行う
上司・先輩が若手社員に対してコミュニケーション図る際に、「イジる」という手段を使う人が多くいます。特に飲み会などでは、上司・先輩が若手をイジって笑いをとっている様子が多く見られます。
『おもしろい人が無意識にしている神雑談力』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
元お笑い芸人の私から見て、正しい「イジる技術」を使っている人はほとんどいません。今回は、誰にでも好かれる本当に正しいイジる技術について解説します。
お笑い芸人以外の方で「自分はイジるのが得意」と思われている方もいるのではないでしょうか。
今まで数多くの 「自称イジるのが得意」 な方にお会いしてきました。
その方々の多くは、「自分は、メンバーをイジって盛り上げている」「あいつは、そうでもしないとキャラがない」などの主張をしていることがあります。
率直に伝えると、笑いが生まれるどころか「イジられる役」を傷つけているだけです。
特に「自分はイジるのが得意」と自負している人ほど、相手への配慮がなく「パワハラ」「セクハラ」などのヒドイ結果へとつながっていることが多いです。誰も得していないので直ちにやめましょう。
主観ですが、会社でのイジりの9割は「パワハラ」と呼んでもおかしくないと思っています。それくらい相手を傷つけている、と元芸人の私からは見えるのです。
では、どのようにすれば「イジる技術」を活用して、心理的安全性を生み出し、関係開始がしやすい、楽しいと思える場を作れるのでしょうか。
そもそもイジるとは?
まずは、そもそも「イジる」とは、どのような行為のことを言うのかについて解説していきます。
例えば、Aさんが仕事で失敗したとしましょう。すると先輩や上司の「イジる役」の人が、「Aさんが、また失敗したよ。仕事できないな〜」とAさんを馬鹿にしました。
すると当然ですが、Aさんは傷つきます。それだけではなく絶対に忘れてはいけないのが、ネガティブな言葉を周囲が聞くことによってチーム全体の関係性も劣悪になり、パフォーマンス自体も低下してしまいます。
ネガティブな言葉を使うと、相手を傷つけ、パフォーマンスも落とす。(図:『神雑談力』より)
一方で、Aさんが仕事で失敗したことに、先輩や上司の「イジる役」の人が、「失敗の切り口が斬新でいいね」とポジティブな言葉を使うことにより、Aさん本人だけでなくチーム全体の関係性も高まっていきます。
また、失敗をとがめられない風土になるため、心理的安全性の高いチャレンジできる環境へと変化していくことができます。
なぜ、相手を馬鹿にするような行為を「イジる」と認識している方が多いのでしょうか。
それは、テレビ番組などでMCの方がひな壇に座るお笑い芸人の方を「小馬鹿にする」ことや「下げる」ことで笑いを生み出していることを表面的に理解し実施しているからです。
一般的な「イジる」とお笑い芸人が活用している「イジる」は目的が違います。では、具体的に一般的に使用されている「イジる」とお笑い芸人が使用している「イジる」の違いはなんでしょう。
一般の方が「イジる」を使う場合は、 「自分の力を誇示するため」 や 「相手を馬鹿にするために」 に使用されることが多く、「イジる」を使用している方のマウント行為になっていることが大半です。そのため、使用された側は配慮に欠く言動に傷つくわけです。
一方で、お笑い芸人の使用している「イジる」は、「相手に敬意を持ち、相手を好きだから笑いに変えるため」 に行っています。
なぜ、このようなことが言えるかというと、例えば嫌いなお笑い芸人が同じ番組に出ていたとしましょう。
嫌いだから相手をイジり、嫌いな相手が笑いに変わってしまっては出番が増えてしまいます。これでは、嫌いにもかかわらず売れるアシストをしているようなものです。
では、どうするかと言うと、嫌いな相手はイジることはせず無視するわけです。
芸人と、一般人の「イジる」は目的が違う
また、「イジられる側」のひな壇に座るお笑い芸人の方々は、MCの方に対して憧れがあることが多いです。
例えば、ダウンタウンの浜田雅功さんにツッコまれ頭を叩かれたら、お笑い芸人たちは皆が喜ぶように、何を言われようが嬉しく感じるという関係がすでにある状態だということです。
つまり、一般の方の「イジる」とお笑い芸人が活用している「イジる」では、技術以前に目的が違い、さらには何を言われようとも、何をされようとも喜べる関係がすでにあるということを理解する必要があるわけです。
この目的の違いや関係構築の違いを理解したうえで、どうすれば「イジる役」は、飲み会を心理的安全性が高く、関係開始をしやすい空気にしていけるのでしょうか。
具体的なスキルについて説明していきます。
前提として、職場などで「イジる役」を担うのは、役職や年齢が上の方で、部下や立場が弱い人に対して行うことが多いです。
そのため、ネガティブな言葉を使ってしまうなど、「イジる」には、パワハラなどの大きなリスクを伴います。
「いや、自分は普段からいい関係を構築ができているので……」という方もいると思います。ただ、いくら関係構築ができていたとしても、相手の状況がたまたま「恋人と別れてしまった直後だったら……」「体調不良で精神的にも弱っていたら……」「別の人間から破壊的なフィードバックを受けていたら……」など、私生活や職場の中で起こる出来事によって弱っていて、傷ついてしまうリスクはいくらでも存在しています。
さらには、そのリスクを負ってのリターンとなる「笑い」という現象は、時代の流れとしても「人を下げる笑い」では得るのは難しくなってきています。
こんな状況の中で「人を下げる笑い」を、あなたはやる意味があると思いますか?
私は、合理的に考えて、撲滅したほうが組織のためであると思います。
その中で、リスクを減らし相手を傷つけることなく、関係開始がしやすい楽しい場を作るためには、ポジティブな言葉を活用した新たな「イジる技術」を身につける必要があるということです。
具体的なイジる単語
一番簡単な方法は、イジる単語を人を傷つけるものから、人を傷つけないものに変えることです。
人を傷つけないイジる単語は下記のようになります。
NG 「声が小さいよ」→ Good「声が薄いよ」
NG 「スベってるやん」→ Good「俺は爆笑だったけどな」
NG 「なんで喋らないの?」→Good「ごめんね。俺がいるから喋りづらい?」
当たり前のことですが、人を傷つけない単語を使うときには、ちゃんと笑顔で、嫌みに聞こえないように言うのも大切です。
イジるというのは、相手を落とすのではなく、場をあったかくするためのもの(図:『神雑談力』より)
「イジる技術」の特徴としては、誰かに発言を促し、その発言に対して行う技術のため、「イジる側」にはスベるなどのリスクが少ないという特徴があります。
一方で、繰り返しではありますが、人を傷つけてしまうリスクをはらんでいるため取扱注意となります。
もちろん、絶対的な正解というものはなく、重要なのは自分の中で笑いが取れた言葉や相手をモチベートできた言葉、場が活性化された言葉をストックしていくことです。
そして、ストックした言葉を飲み会や職場で、引き出しから取り出し使用してみてください。すると、あなたの周囲には、自然と人が集まってくるようになります。
志村けんさん曰く、「お笑いって基本的にあったかいものだと思うんですよね」。
私も、心からそう思います。
人を笑顔にしようと考え行動する行為が、あったかいもので、優しいものでないはずがありません。
そんなあったかい場には、人が集まってきて当然だと思っています。それが「イジる技術」の本質でもあるかと思います。
ぜひ、間違った認識の「イヤミ」や「イジメ」につながるような行為を書き換えてください。
そして、本来の「イジる技術」を活用して、心理的安全性が高く、心あたたまる飲み会を作っていきましょう。
そうすれば飲み会は、必ず楽しく生まれ変わります。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:「イジりの9割パワハラ」上司が使いがち"NG言葉"|東洋経済オンライン