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2023.10.20

「手指の痛み・こわばり・変形」リウマチとどう違う|「考えられる病気6つと対策」を専門家が解説


指先の関節が曲がる「ヘバーデン結節」の症状(写真:岩城医師提供)

指先の関節が曲がる「ヘバーデン結節」の症状(写真:岩城医師提供)

年齢を重ねるにつれて増えるのが、手指の症状。毎日の仕事、家事などに使わないわけにもいかない部位だからこそ、手指にこわばりや痛み、変形などがあると、生活に差し支えがちだ。見ため目的にも「年齢」を感じてしまうので、それが気になる人もいるかもしれない。

そこで手指に起こる病気の種類や特徴、治療法について、日本手外科学会専門医の岩城啓修さん(四谷メディカルキューブ・手の外科)に話を聞いた。

手指の関節が痛くなる理由

加齢や使いすぎで膝関節の骨と骨の間にある軟骨がすり減り、骨同士が直接当たることで痛みが出る「変形性膝関節症」。テレビのコマーシャルやテレビショッピングなどで見ない日はないほど、代表的な加齢による骨と関節の病気だが、同じことが手指でも起こることをご存じだろうか。

手指の小さな関節の骨と骨との間にも、膝と同じように軟骨がはさまっている。この軟骨はふつう表面がつるつるしていて、摩擦が起こりにくく、柔軟性に優れていて、クッションのような役割を果たすため、私たちは関節を滑らかに動かすことができる。

「ところが、何らかの理由でこの軟骨がすり減ってしまうと、骨と骨とがぶつかり、痛みが出たり、腫れたりします。また進行して骨が変形すると骨棘(こっきょく)といって先端がトゲのように尖ったり、軟骨の一部が削れてそこに炎症が起こり、水が溜まったりすることもあるのです」と岩城さんは言う。

手指の関節痛は、骨や軟骨を守るエストロゲンの分泌量が減ると起こりやすいため、更年期以降の女性に多く見られる(詳しくは関連記事「50代の『指の関節痛』使いすぎとは違う意外な原因」をご覧ください)。

「50代の『指の関節痛』使いすぎとは違う意外な原因」 ※外部サイトに遷移します

こうして手指の関節が痛くなったりこわばったりすると、関節リウマチを心配する人もいるかもしれない。関節リウマチも手指が痛む、腫れるなど似たような症状が起こるからだ。

「手指の関節痛と関節リウマチはまったく違います。関節リウマチは自己免疫疾患で、免疫異常によって免疫細胞が自身の軟骨や骨を破壊してしまう病気です。手指だけではなく体のさまざまな関節が痛くなる一方、手指の第一関節は痛くなりにくいといった特徴があります」(岩城さん)

手指が痛い場合は、手外科の専門医がいる整形外科を受診するのが一番で、X線検査や血液検査を行えばリウマチとの鑑別もできる。

へバーデン結節とブシャール結節

では、手指の関節痛や変形には、どのような種類があるのだろうか。

(1)ヘバーデン結節/(2)ブシャール結節

岩城さんによると、最も多いのは手指の爪側の関節である第1関節(DIP関節)に症状が表れる「へバーデン結節」、次に多いのが手指の真ん中にある第2関節(PIP関節)に症状が表れる「ブシャール結節」だ。

へバーデン結節だけ、あるいはへバーデン結節とブシャール結節の両方になることが多く、ブシャール結節だけということは少ないという。複数の指に起こることもあれば、1本の指だけに起こることもある。

(画像:Mokooo/PIXTA)

(画像:Mokooo/PIXTA)

「いずれも軟骨が変性することで、関節に痛みや腫れ、ゆがみなどが生じる病気です。X線写真を見れば、関節の骨と骨との隙間である『関節裂隙(れつげき)』が狭くなり、骨が変形することで棘(とげ)のような突起『骨棘』ができているのがわかります」と岩城さん。

「初期には軽い痛みや腫れ、こわばりがある程度ですが、悪化すると痛みが強くなったり、水ぶくれのような粘液嚢腫(のうしゅ)ができたりします。指の関節は回旋しながら曲がっていき、最終的にはその状態で固定されます。そうなると痛みはなくなりますが、関節は動かなくなってしまいます」

へバーデン結節やブシャール結節になったら、どのような治療法があるのだろうか。

「どちらもエストロゲンの減少が関係していると考えられているため、当院では初期で軽度の場合にはエクオール含有食品(サプリメント)を勧めています。場合によっては、末梢循環改善薬(ビタミンBの内服)や消炎鎮痛薬(ステロイドの塗り薬)を使ったり、テーピングを行ったりすることも。こうして、まずは保存療法を行います」(岩城さん)

実際、こうした早めの治療が奏功して、症状が和らぐ例も少なくないそうだ。岩城さんは「エクオールを3カ月間ほど摂取していたら、ほとんど痛みがなくなったという患者さんもいらっしゃいました」と話す。

痛みを和らげるには、関節内にステロイドを注射するという治療法がとても効果的だ。ただし、効果が持続する期間は人によって違っていて、およそ半年から1年程度。「ステロイド薬には骨がもろくなるなどのリスクもあるため、大量に使うことも、長期にわたって頻繁に使うこともできません」と岩城さん。

そのため、これまでに述べたような保存療法で改善がない場合、もしくは改善してもすぐに再発してしまう場合は、手術を検討することになる。

手術の方法は、へバーデン結節とブシャール結節で大きく異なる。

へバーデン結節の手術は、第1関節の曲がりを正してチタン製のスクリューを入れて固定する「関節固定術」が一般的。第1関節は動かなくなるが、指はまっすぐになる。また、第2関節が正常に動けば、日常生活に支障が出ることはない。「痛みがなくなるので、手を動かすのがラクになりますよ」(岩城さん)。

一方、ブシャール結節の場合、腱鞘(けんしょう)炎が原因と考えられる中等症くらいまででは、指を動かすための腱の1本を切除する「浅指屈筋腱(せんしくっきんけん)切除術」や、その腱を包む腱鞘を切開する「腱鞘切開術」などの治療法がある。

「浅指屈筋腱切除術や腱鞘切開術では、指の可動域はさほど変わりませんが、痛みは軽くなるので動かしやすくなります」(岩城さん)

重症例では、第2関節を人工関節に置換する「人工関節置換術」を行う。こちらは痛みが軽減するだけでなく、可動域が大きくなることが多い。

もともと私たちの指の第2関節は、角度にして100度程度動く。目安としては、それが50度ぐらいしか曲がらなくなったときに手術をし、だいたい70度くらいまで曲がるようになると、岩城さんは話す。ただし、手術後はリハビリが必要になる。

ほかにもある手指のさまざまな疾患

そのほかには、どのような病気があるだろうか。まとめてみていく。

「ばね指・腱鞘炎、ドケルバン病、手根管症候群、母指CM関節症も、よく見られる手指の関節の病気で、これらにもエストロゲンの低下が関係しています。そのため、初期で痛みが軽い場合は、エクオール含有食品が有効です」(岩城さん)

更年期でほかの症状もある場合は、ホルモン補充療法(HRT)を行ってもいい。ただし、その場合は整形外科ではなく、ホルモン補充療法を専門としている産婦人科での治療となる。

それぞれの病気については、以下のような特徴および治療法がある。

(3)ばね指・腱鞘炎

指の付け根に炎症が起こるのが「腱鞘炎」、それが進行して指を動かそうとすると引っかかるようなバネ現象が見られるのが「ばね指」だ。

これは手の使いすぎで起こることもある。母指と中指に多いが、どの指でも起こる。更年期や妊娠中、産後の女性だけでなく、男性でも糖尿病があったり透析治療を受けていたりすると起こりやすい。

最初は痛みだけであることが多いが、進行すると指が曲がったまま伸びなくなることもある。ステロイド薬を腱鞘内へ注入しても繰り返し発症する場合は、手術が検討される。「腱鞘切開術」でほとんどの患者の症状が改善するが、それでも痛みが続く場合は「浅指屈筋腱切除術」を行う。

(4)ドケルバン病

手首の母指側の付け根に腫れと痛みが生じる。母指を伸ばしたり曲げたりすると、痛みが増すことが多い。更年期、妊娠中、産後の女性だけでなく、パソコン作業が多い人やアスリートで母指をよく使う人などに多く見られる。

治療は、腱鞘内へのステロイド薬の注入が非常に効果的だ。手術には「腱鞘切開」があるが、ステロイド薬の効果が高いため、最近では手術例が減少しつつある。

(5)手根管症候群

手首にある手根管と呼ばれるトンネルのような空間には1本の神経と9つの腱が通っているが、これが圧迫されることで、手指に痛みやしびれを感じる。朝起きたときに手がこわばっていることが多く、手を振ると少しラクになるのが特徴の1つ。症状が進むと感覚が低下することもある。

中等症までは、手根管内へのステロイド注射が有効。一方、靱帯が厚く硬くなっている場合は、保存療法があまり効かないことが多いので、神経や腱を圧迫している靭帯を切開して圧迫を取り除く手術の対象になる。

(6)母指CM関節症

親指の付け根にある馬の鞍のような形の母指CM関節に変形が起こった状態。何かをつまむとき、瓶のふたを開けるときなどに親指の付け根に痛みが生じる。

母指CM関節は可動域が広く、不安定になりやすいので、固定装具で動かないようにしたり、関節内にステロイド薬を注射したりするのが効果的。

それでも症状が改善しない場合や再発・進行する場合は手術になる。関節をチタンで固定する「関節固定術」、痛みの原因となっている骨を摘出して人工紐などで固定する「関節形成術」を行う。

65歳までは悪化することも

いずれの疾患にしても、いったん発症してしまった場合は65歳ごろまでは悪化する。が、65歳を超えると新たに発症することはないという。早期発見、早期治療、そして進行を抑えることが大切だといえそうだ。

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「手指に何らかの症状がある方は、ぜひ気軽に手外科を受診してください。医療をうまく使うことで、健康で若々しい手を維持してもらえたらと思います」(岩城さん)

(取材・文/大西まお)

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四谷メディカルキューブ・手の外科
岩城啓修医師

1996年杏林大学医学部卒業、北里大学形成外科に入局。2008年から板橋中央総合病院・2019年浜田山病院を経て、2020年より現職。専門は、手の外科・形成外科・整形外科。日本手外科学会専門医・指導医、日本形成外科学会専門医・領域指導医、日本形成外科学会再建・マイクロサージャリー分野指導医、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医。

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提供元:「手指の痛み・こわばり・変形」リウマチとどう違う|東洋経済オンライン

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