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2023.09.07

「膝痛」で悩む人が知らない正しい立ち方・座り方|スクワットやウォーキングが原因になることも


加齢とともに生じる「膝の痛み」、スポーツをする人にも悩める問題です。この膝痛の対処法をトレーナーが紹介します(buritora/PIXTA)

加齢とともに生じる「膝の痛み」、スポーツをする人にも悩める問題です。この膝痛の対処法をトレーナーが紹介します(buritora/PIXTA)

テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授する本シリーズ。今回のテーマは「膝の痛みの予防と軽減法」です。

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体の不調を和らげてコンディションを整えるトレーニング、今回のテーマは「膝の痛みの予防と軽減法」です。

さて、体の動きに関わる筋肉、骨、関節を「運動器」と総称しますが、このうち損傷すると最も回復しにくい組織はどれでしょうか?

A 筋肉

B 骨

C 関節

「いかに長持ちさせるか」がカギ

正解はCの関節です。 

骨は筋肉同様に鍛えることができますが、関節は基本的には鍛えられないどころか、消耗品であるともいえます。なぜなら、筋肉と骨の中には血管が張り巡らされており、新陳代謝が繰り返されているのに対し、関節内にある骨の末端部や関節軟骨は血管に乏しく、摩耗したり損傷してしまうと自然に治るということができないのです。

この意味で関節は消耗品であり、いかに負担をかけずに長持ちさせるかが、重要になります。

関節には2つ(もしくはそれ以上)の骨が連結されていて、関節をまたいで骨にくっついている筋肉が収縮することで、腕や脚が伸びたり、曲がったりします。

筋肉や骨に過度な負担がかかれば炎症や肉離れ、骨折が起こりますが、休ませればいずれ炎症は治まり、筋肉や骨はその後のトレーニングによって元の状態(あるいはそれに近い状態)まで戻すことが可能です。

しかし、関節の場合は、休養によって炎症が治まることがっても、鍛えることができないため、自然に元の状態に戻るということはありません。

つまり、安静時や体を動かしたときに「イテテテ……」と痛みが出ない健康で快適な生活を送るためには、いかに負担を最小限に抑え、長持ちさせるかがカギとなります。

最も消耗するのが膝の関節

関節の中でも負担が大きく、炎症や消耗を起こしやすい関節の1つが、膝関節です。それは、重力に逆らって重い体を支えているからです。しかも、典型的な関節は一方の骨の末端が他方の骨の末端にカチッとはまる構造となっているのに対し、膝関節は脛(すね)にある脛骨(けいこつ)の上に太腿の大腿骨がポンと乗っている形になっているため、不安定な構造をしています。

また、脛骨はほぼ床と垂直ですが、大腿骨は少し外側に傾いた状態となっています。角度がついているのは、私たちは1本の脚でも安定して立つことや、安定して歩いたり走ったりすることを可能にするためです。

この大腿骨と脛骨がなす角度(FTAアングル)の正常値は176度で、これが180度以上になると膝が外側に開いた、いわゆる“O脚(外反膝)”という状態になります。こうなると膝関節の内側にかかる圧力(圧縮力)が高まって炎症を起こしやすくなり、消耗が進んでしまいます。

正常な膝関節(左)では膝の軟骨に均等に負担がかかるが、外反膝(右)になると膝関節内部の内側にかかる圧力が高まって軟骨がすり減りやすい(イラスト:koti/PIXTA)

正常な膝関節(左)では膝の軟骨に均等に負担がかかるが、外反膝(右)になると膝関節内部の内側にかかる圧力が高まって軟骨がすり減りやすい(イラスト:koti/PIXTA)

O脚とは反対に、大腿骨と脛骨の角度が小さくなって、膝が内側に入った状態がX脚(内反膝)です。こちらは膝関節の外側にかかる圧力が高まり、やはり膝の消耗を速めます。

ただしX脚は非常に稀で、ほとんどの人は加齢とともにO脚になっていく傾向にあります。これには理由があります。床と足裏が接する面を支持基底面といいますが、O脚だと足裏の外側に体重がかかるため、支持基底面が広がって安定性が高まり、ほとんど筋肉の力、エネルギーを使うことなく、楽に立つことができるからです。

楽に立つことができる代わりに犠牲になるのが、関節です。

床(地面)と足裏とその内側を足した面が支持基底面。つま先を外に向け、足の幅を開いて、足の外側に体重をかけると支持基底面が広がって安定するが、膝の負担は増加する(イラスト:キントレ/PIXTA)

床(地面)と足裏とその内側を足した面が支持基底面。つま先を外に向け、足の幅を開いて、足の外側に体重をかけると支持基底面が広がって安定するが、膝の負担は増加する(イラスト:キントレ/PIXTA)

膝にかかる負担を最小限に抑ええるためには、第一に正しい姿勢を意識する必要があります。

正しい姿勢に必要な3つのポイント

正しい姿勢というと骨盤や背骨に意識が向きがちですが、肝心なのは床(地面)と接する「足」を正しい位置に置くことです。具体的には以下の3点が挙げられます。

(1)つま先を前に向ける
(2)右足と左足の幅を狭くする
(3)足の外側(小指側)に体重をかけすぎない

この3点を意識して立つと、膝関節の負担が最小限になるのに加え、骨盤が立って背すじも伸びます。結果的に体全体の姿勢がよくなり、膝だけでなく体全体にかかる負担が減って、疲れにくくもなります。

逆に、以下で紹介するような座り方、立ち方は膝に負担がかかるので、今すぐ改めたほうがいいです。

まず、床に座る場合(いわゆる、あぐら座りの状態)。膝を外側に開いて足の外側を床につけるクセがつきやすいので、床座りは可能な限り短時間にしましょう。

イスに座る場合は、足を組むと上に乗せた脚の膝が外を向くので、膝を開くクセがつきやすくなります。膝関節がねじれて負担がかかるので、イスには深く座って背中全体を背もたれにつけ、つま先は正面に向けて足裏全体を床に置きましょう。もしくはイスに浅く座って足を手前に引いてつま先を床につけ、そのまま背すじを伸ばします。

いずれにしても、左右の足幅は広げすぎず、膝がつま先より外に出ないようにします。

立っているときに足を交差させたり、一方の足もしくは両方の足の内側を浮かす(外側だけ床に着ける)のも、足の外側に体重を乗せるクセがついてO脚を招くので、すぐにやめましょう。

立ち作業だとどうしても片方の足に体重をかけがちですが、このクセも体重をかけたほうの膝関節の消耗を早めることになります。左右均等に体重をかけて、膝の健康寿命を伸ばしましょう。

スクワットで膝痛になることも

膝関節の負担を減らすには、太ももの大腿四頭筋を鍛えることも必要です。ここを鍛えると膝関節の安定性が高まり、歩行時の横ブレが抑えられ、膝関節の炎症が起こりにくくなるからです。

大腿四頭筋を鍛える代表的なエクササイズとして、スクワットが知られていますが、ただスクワットを頑張ればよいわけではありません。やり方を間違えると、かえって膝関節を傷めることになりかねません。

ジムなどでは、スクワットは足を肩幅もしくはそれ以上に開いて、つま先を外側に向けた状態で実施するように指導されます。確かに、こうすると支持基底面が広がって安定性が増し、体を持ち上げやすくなります。反面、実施時に膝関節の内側にかかる圧が強まります。また足幅が広く、つま先が外を向き、足の外側に体重がかかる悪いクセもつきやすくなります。

トレーニングでは筋肉に負荷をかけても、関節に負担をかけてはいけないのです。

足幅はできるだけ狭く、できれば両足を揃えて、つま先を正面に向け、足の親指側(内側)を意識して屈伸することで、膝関節の負担を最小限にしながら、大腿四頭筋に効かせることができます。このやり方は後ほどエクササイズで紹介します。

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ウォーキングやランニングも心肺機能を向上させ、生活習慣病を予防する大変有益な有酸素運動ですが、フォームを誤ると膝関節を傷めてしまいます。多いのは右足と左足の幅が広く、つま先が斜め外側を向き、足の外側に体重が乗ったフォームです。こうすると当然、膝の内側の圧が増大します。

膝が斜め外側に出た状態になると、太腿の横にある腸脛(ちょうけい)靭帯と膝の外側にある大腿骨外側上顆(がいそくじょうか)の摩擦が大きくなって、膝の外側にも炎症、痛みが起こりやすくなります。これは「ランナーズニー」といわれ、多くの市民ランナーが抱える悩みです。

ウォーキングでもランニングでも、肝心なのは正しいフォームです。実際に歩いているときや走っているときにこれを確認するのは難しいので、歩く(走る)前に確認、修正ができるエクササイズを2つめにご紹介します。

膝痛の防止・改善エクササイズ

■膝に負担をかけずに太ももを鍛えるスクワット

(1)イスの前に立って足を揃えてつま先(足の人差し指)を正面に向け、足の内側(親指側)を意識して立つ。背すじを伸ばし、両腕を伸ばして体側に置く
(2)息を吸いながら2~4秒かけて、両腕で脚が開かないように押さえたまま、前傾しながら膝と股関節を曲げていく。お尻が座面に触れたら息を吐きながら1秒で立ち上がる
(3)これを6~10回を1セットして、3セット続ける。1セットごとに1分間の休息をはさむ
※足の人差し指を前に向けるので、かかととかかとの間には2~3cmの間隔を空ける

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■正しく歩き、走るためのエクササイズ

(1)つま先(足の人差し指)と膝を正面に向け、足幅をできるだけ狭くし、足の内側(親指側)を意識して立つ
(2)腕を振りながら左右交互に足の親指でしっかり床を押して、できるだけ高くかかとを上げる
※できれば鏡の前で足の位置を確認しながら行う。ウォーキングの場合は1秒に1動作、ランニングの場合は1秒に2~3動作行うとよい

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イラスト:竹口陸郁

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提供元:「膝痛」で悩む人が知らない正しい立ち方・座り方|東洋経済オンライン

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