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2023.08.24

【痔】生活改善で治る人と手術が必要な人の違い|放置はダメ!早く治療するほどよくなりやすい


実は、痔は生活習慣病?医師がそう語る真意とは(写真:metamorworks/PIXTA)

実は、痔は生活習慣病?医師がそう語る真意とは(写真:metamorworks/PIXTA)

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排便のたびにおしりから出血する、おしりに痛みやかゆみがある……。そんなトラブルを抱えているにもかかわらず、恥ずかしさや「手術されるのでは」という不安から放置していないだろうか。
痔は日本人の3人に1人は自覚症状があるといわれるほど、ポピュラーな病気だ。これまで延べ約40万人の痔の患者を診てきた肛門科専門医、平田雅彦医師は、「痔は生活習慣病。切らずに改善する」と言う。その意味とは――。

切らないのが世界のスタンダード

「痔の約9割は切らずに治る。これは今の“世界のスタンダード”です」と平田医師。

痔とは、肛門にできる病気の総称だ。肛門に炎症が起こって粘膜や組織が弱ることが原因で発症する。なぜ肛門に炎症が起こるのか、平田医師はこう説明する。

「肛門は粘膜で覆われていて、そこでは外部からの細菌やウイルスなどに対する強力な免疫が働いています。ところが、それが生活習慣の乱れによってリンパ球が減少し、免疫が働きにくくなると、細菌やウイルスが増強し、炎症を起こしてしまうのです」

つまり、痔は糖尿病や肥満、高血圧などの生活習慣病と同じで、長らく続けてきた生活習慣が要因というのだ。その要因を具体的に挙げると、肉体疲労やストレス、過度な飲酒、長時間座りっぱなしの姿勢、下痢や便秘、冷え、運動不足、食生活の乱れなどさまざま。

こうした要因を取り除くことで、「痔は手術をしなくても治る」というわけだ。

「当院では、受診した痔の患者さんすべてに対し、まずは生活習慣改善の指導をします。3カ月ほど様子を見てから手術をするか決めますが、その間にほとんどの方の痔は治ってしまいます」(平田医師)

痔には大きく分けて、いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔瘻:じろう)がある。

いぼ痔は肛門周辺にいぼができた状態、切れ痔は肛門付近の皮膚が裂けてしまった状態だ。あな痔は肛門の縁から約1〜2センチのところにある歯状線(しじょうせん)にある小さな穴から通じる肛門腺に膿(うみ)がたまり、おしりの皮膚から膿がでてくる状態を指す。

このなかで生活習慣の改善でよくなるのは、いぼ痔と切れ痔だ。

痔のタイプは全部で3つ(イラスト:barks/PIXTA)

痔のタイプは全部で3つ(イラスト:barks/PIXTA)

運動不足で便秘がちの人は要注意

「肛門には、便やガスが漏れないように筋繊維や動脈、静脈が網の目のように集まっているクッション組織があります。いぼ痔は、このクッションを支える組織が弱くなったり、クッションが大きくなったりして、いぼになったもの。便秘時の強いいきみが原因となりやすく、運動不足で便秘がちの人に比較的多いです」(平田医師)

いぼ痔はさらに内痔核と外痔核に分かれる。内痔核は、歯状線より奥(腸側)にできる。歯状線というのは直腸の粘膜と肛門の皮膚の境界線だ。この歯状線より肛門側の皮膚にできるいぼ痔は外痔核となる。

「内痔核のできる直腸側の粘膜は自律神経が支配している部分なので痛みを感じませんが、便がいぼにこすれるため出血が見られます。また、排便時にいぼが肛門の外に飛び出すこともあります。たいていは排便が終わると自然に戻りますが、進行すると、いぼを指で押し込んでもなかなか戻らず、脱出したままの状態になります」(平田医師)

一方、外痔核は皮膚にできるので、硬いイスに長く座っているなどでは腫れて痛むケースがあり、また肛門の出口にいぼが出てくるケースもある。

切れ痔は20~40代の女性に多い。排便時に鋭い痛みや出血などが見られるのが特徴だ。

「主な原因は便秘で、硬くなった便が肛門の上皮に傷をつけるために生じます。したがって切れ痔は便秘がちな若い女性に多いのですが、それだけでなく、生理中に下痢になる女性もリスクがあります。下痢の刺激によって起こる粘膜の炎症でも切れ痔になるからです」(平田医師)

一方、生活習慣の改善だけでなく、外科治療も必要になるのが、あな痔。がん化する可能性があるため、100%手術が必要になる。

あな痔は排便時に強くいきみがちな、筋力のある男性に多い傾向がある。とくに、“お酒をよく飲み、下痢をしがちな男性”が勢いよく排便することで、発症しやすい。

あな痔の前段階に肛門周囲膿瘍(のうよう)がある。これは、肛門の歯状線にある小さい穴から細菌が入り込んで肛門腺が化膿し、肛門周囲の皮膚に炎症が広がった状態だ。これが進行して、肛門腺からおしりの皮膚に向かって膿の通り道ができる。つまり、あな痔だ。

肛門周囲膿瘍は痛みが強く、発熱やだるさなどの症状を伴うことがある。

「肛門周囲膿瘍の段階で患部を切開して膿を出せば、症状は治まりますが、治療をせずに放置しておくと、あな痔に進行してしまいます。基本的にあな痔は男性に見られますが、男性と同じようなライフスタイルの女性も多くなったため、最近は女性にも増えています」(平田医師)

念のため大腸内視鏡検査を

では、痔らしき症状があった場合、生活習慣の改善をすれば、病院に行かなくてもいいのかというと、それはちょっと違う。

おしりからの出血や血便が見られた場合、その原因が痔ではなく、大腸がんという場合もあるからだ。大腸がんも痔も症状だけでは判別ができず、大腸内視鏡検査で詳しく観察してみないとわからない。

平田医院でも、出血や血便の症状が見られた場合には、がんを除外するために早めに大腸内視鏡検査を行っている。大腸がんの疑いがなくなれば、安心して痔の治療に専念できる。

「痔だと思っていて調べたら大腸がんだった、という患者さんは、実際にいます。度重なる出血や血便などの症状が見られた場合は、早めに肛門科を受診したほうがいいでしょう」(平田医師)

(関連記事:【大腸内視鏡】痛くない受け方と病院選びのコツ) ※外部サイトに遷移します

ちなみに、肛門にもがんができるが、これはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染によるものがほとんどのため、あまり心配はいらないそうだ。

痔で病院(肛門科)に行く目安については、平田医師はこう助言する。

「まず、おしりからの出血が1週間続く、月に4~5日は便に血がつく、おしりが腫れて痛む、排便時に痛むなどの症状を繰り返す、というのは、やはり普通の状態ではありません。おしりの症状で日常生活に支障が出ている場合も、肛門科を早めに受診しましょう」(平田医師)

前述したように、平田医院では初診から3カ月間は生活習慣の改善に充てる。この期間を平田医師は「生活改善の予備校」と呼んでいる。その心構えとして説くのは、治療を自分ごととしてとらえ、「自分の体からのメッセージをよく聞くこと」。

初診時には痔の詳しい病名を紙に書いて患者に渡し、患者自身が自分の痔への理解を深めることからスタートする。3カ月間は2週間ごとに受診をして、治り具合を確認する。炎症がなかなか落ち着かなかったり、ぶり返したりした場合は、患者に生活を振り返ってもらい、その原因を一緒に考察するという。

「たとえば、職場の上司との関係性、仕事の忙しさ、女性なら生理中など、その悪化要因がわかれば、あとはその状況やストレスにどう対処していくかを考えます。女性の場合は生理中にとくに痛みやだるさ、眠気などが生じやすい。生理中は『仕事を1割減らす』『1時間早く寝る』などで体調の悪化や炎症を予防する。よりよい状態に整えることが大切です」(平田医師)

傷が浅い軽度の切れ痔は、患部を清潔にして炎症を抑える軟膏を塗りながら、生活習慣を整えて便秘や下痢を治していく。いきまずに軟らかい便をするりと出せるようになるだけで、症状は速やかに改善する。

手術が必要なケースとは?

ただし、やはりすべての痔で手術が不要というわけではない。

あな痔のほかにも、いぼが脱出して戻らない内痔核でかつ患者が手術を望む場合や、切れ痔で生活改善しても症状に変化が見られない場合、繰り返す切れ痔によって皮膚が引きつれて肛門狭窄(きょうさく)を起こした場合も手術することがある。それでもその割合は1割程度だ。

平田肛門科医院が実施したアンケート調査によると、痔の症状で病院に受診するまでに平均7年かかっているという。診察でおしりを出すという恥ずかしさ、「手術になるのでは」という不安や恐怖は、多くの痔の患者の足を病院から遠ざけてしまっている。

「痔は早く治療するほど治りやすい。もっと早く来てくれればよかったのに、と思うことはよくありますね」と平田医師は残念に思うそうだ。

「病院に行きたくても行きにくい」。そんな患者心理に対して、受診しやすいようにさまざまな工夫や配慮をしている肛門科も昨今は増えている。どのような病院を選ぶといいのだろうか。平田医師が勧めるのは以下のような病院だという。

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最後に、市販薬を使うときの注意点について平田医師に聞いた。

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「痔の市販薬のなかにはステロイド成分が入っているものもあり、作用が強い。腫れや痛みに即効性はありますが、長期的に使うと粘膜が薄くなるなどの副作用があり、大腸がんなどの重篤な疾患の見逃し要因にもなります。連続で使っても2週間までにして、痛みやかゆみ、腫れ、出血などの症状が続くなら病院を受診しましょう」

(取材・文/石川美香子)

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平田肛門科医院院長
平田雅彦医師

日本大腸肛門病学会肛門領域指導医。「手術をしないで治す」を信条とする肛門科専門医。1981年に筑波大学医学専門学群卒業後、慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。1985年に社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医となる。現在は、1935年開院の平田肛門科医院の3代目院長。ストレスマネジメント、食事指導、排便イメージトレーニングなど心身両面の生活指導を実施。本来持つ自然治癒力を最大限に引き出しながら、延べ40万人以上の患者を改善に導く。

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提供元:【痔】生活改善で治る人と手術が必要な人の違い|東洋経済オンライン

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