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2023.08.15

「親に認められたい」完璧主義が裏目に出る人生|仕事も人間関係も―「親の支配下」という恐怖


本人が大人になっても気づかないことが多い(写真:Fast&Slow/PIXTA)

本人が大人になっても気づかないことが多い(写真:Fast&Slow/PIXTA)

コロナ禍を経て、それまでうやむやにしていた「生きづらさ」を強く意識する人が増えているようだ。『親といるとなぜか苦しい:「親という呪い」から自由になる方法』は、そんな生きづらさの背景に「一見すると普通の家庭に潜む、大人になれない精神的に未熟な親との関係」があると説く。

前回の記事では、『「繊細さん」の本』の著者でHSP専門カウンセラーである武田友紀氏に、この親子関係を背景とした生きづらさについて紐解いてもらった。ここからは、子ども時代の「生存戦略」として身につけ自分を追い込んでしまう「親の声」から自由になる方法について語ってもらった。

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前回の記事 ※外部サイトに遷移します

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生きづらさを解消する「9つの自由」

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子どものころに接した「親の意見や信念」がいつしか自分自身の声となり、生きづらさにつながることは前回の記事でお伝えしました。無意識に浮かんでくる「〇〇すべき」「〇〇しなければいけない」といった親の声に気づき、違う選択肢があることに気づけると、少しずつ生きやすくなっていきます。

書籍『親といるとなぜか苦しい:「親という呪い」から自由になる方法』では、それを「9つの自由」としてまとめています。

1 できなくてOK――「不完全でいる」自由
2 自分の本心からの考えや感情を抱く自由
3 つながりを断つ自由
4 人に尽くさない、人の都合に合わせない自由
5 自分を大切にする自由
6 他人に共感しすぎない自由
7 自分のために行動する自由
8 自分を表現する自由
9 “しみついたパターン”に戻らない自由

すべてを実践できなくてもいいのです。人間関係や仕事で問題にぶつかったとき、頭の片隅に置いておくだけでも、楽になるのではないでしょうか。

たとえば「完璧にしなければ」と頭の声がするとき、そう思うことで自分を励まし、良いパフォーマンスを発揮できているのであれば問題はありません。ですが、完璧さを追求することで苦しくなっているのなら、その完璧主義は、親のもとで発達させた、傷つかないための生存戦略かもしれません。

相談者さんが「自分の完璧主義が苦しい」とおっしゃる場合、カウンセリングでは完璧主義を良い・悪いと判断せず、寄り添っていきます。「そうなんだね、完璧にしなきゃって思うんだね」と受け止めていくのです。その上で「完璧にしないとどうなると思っているんだろう? 何を心配しているのかな」と問いかけていきます。

完璧でないとまわりに見捨てられる

ある人は「完璧にできないと、まわりの人に見捨てられる気がします」と言うかもしれません。完璧さによって居場所を確保してきたのであれば、手を抜くと居場所がなくなる気がして、ひどく怖いのです。

こうした内なる声に気づき、相談者さん自身が「そう思ってたんだな」と受け止めることで、強固だった生存戦略が少しずつほどけていきます。

長年使ってきた生存戦略を手放し、「9つの自由」を手にするのは簡単なことではないでしょう。

「親に認められたい」という気持ちが大きい場合、親との心理的な距離をとる必要がありますが、育ててもらった恩返しをしなければならない、親も歳をとってきたし、親が元気なうちに良い関係を築きたい……と、さまざまな捨てきれない思いが浮かんで、つい自分から親に会いに行ってしまうかもしれません。

親に会うたびに体調を崩す、気持ちが暗くなるなど、ストレスが明らかであれば、会う頻度を減らす、電話の時間を短くするなど、今の自分にとってほどよい距離を探ってみてください。

「子は3歳までに一生分の親孝行をしている」という考え方もあります。乳幼児のころの愛らしさ、それ自体が親孝行なのだという考え方です。恩はもう十分返しているのだから、距離をとってもいいんですよね。そのほか「親は完璧ではなく、未熟なんだ」と思ってみるのもいいでしょう。

この「9つの自由」は、子育て中の親が意識しておくのもいいですね。子どもにこの9つの自由があるか、という視点でみてみるのです。子どもが親に文句を言ったり、気軽に頼みごとができるかどうかはわかりやすい指標です。

幼い子なら「ママ嫌い/パパ嫌い」と言えるか、日常のなかで「これやってよ」「えー! そんなのやだ!」と気軽に言えるかどうか。ひたすら我慢したり、不満を溜め込んで爆発するのではなく、親に「こうしてほしい」と言えているのであれば、子は「自分の感情や欲求を表現しても大丈夫だ」という安心感のもとに育っているのでしょう。

親子関係はすべての人間関係の雛形

ここまで親子関係についてみてきましたが、親子関係はその後の人間関係の雛形になります。つまり、多くの場合、大人になっても子どものころの生存戦略が使われるのです。

自分よりも親のニーズを優先することを学んだ子は、職場でも同様に振る舞います。自分の仕事だけでも大変なのに同僚を手伝うことを優先したり、体調が悪くてもまわりに迷惑をかけられないからと休まず働いたり。

まわりからみれば真面目に働いている社員ですから、上司も同僚も、なかなか本人の苦しさに気づけません。仕事を1人で抱え込んでしまい、「もうムリだ」と会社を辞めるものの、転職先でも「まわりのニーズを優先する」という生存戦略をとってしまい、同じような状況になってカウンセリングに来る方もおられます。

また、前回の記事でその違いに触れた「内在化タイプ」と「外在化タイプ」ですが、内在化タイプの部下は外在化タイプの上司と相性が悪い場合があります。

書籍『親といるとなぜか苦しい』によれば、外在化タイプは何かあれば他の人や環境のせいにし、極端に自分に自信がないか多分にうぬぼれているかのどちらかで、人にやってもらう、人に与えてもらうことを当然だと考えている、とのことです。

相手のせいにしやすい外在化タイプと、自分のせいにしやすい内在化タイプが組むと、内在化タイプが押し負けることになります。

外在化タイプの上司と働く場合、上司の不機嫌をみて「私が不快にさせたのではないか」と思ってしまうと振り回されます。自分を守るために、心理的な距離をとりましょう。

挨拶ができればOKで、あとは上司が自分にとって嬉しいことをしてくれた場合に「ありがとうございます」とお礼を言うくらいにとどめます。難しいことではありますが「自分にとって良いものだけを受け取り、上司の不機嫌など悪いものは受け取らない(反応しない)」という姿勢が必要です。

「なぜ上司はあんな言い方をするんだろう」などと考えだすと振り回されますから、上司の内面を考えすぎないように気をつけてください。

「人のせいにしかできない人っているんだな」「違う星の人なんだな」ぐらいに思っておき、あとは「自分がどうしたいか」に目を向けましょう。

仕事に集中したいのであれば、どうやったら集中しやすいか考えてみる、書類にサインがほしいのであればサインをもらう、といったことです。相手の内面に踏み込まず、自分に集中することが、内在化タイプの人が外在化タイプの上司とうまくやっていくコツです。

「相手も悪い」という視点を持つ

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内在化タイプは問題があっても1人で解決しようとする傾向にありますが、職場で困ったことがあればまわりにも相談してみてください。愚痴や弱音を言ってみることで「人って案外、優しいんだ」「弱音をはいてもいいんだ」「1人でやらなくてもいいんだ」と発見できることもあります。

「自分が悪い」と思いやすい人は、「相手も悪い」という視点を持つのも効果的です。何をやっても上司に注意されるといった場合、「自分のスキルが足りないから」ではなく「こちらがどうやっても注意する人なんだな。人を育てる上で、上司にも問題があるんじゃないか」といった視点で見てみる。

「自分が悪い」もまた、子どものころの生存戦略かもしれないのです。親の声から解放され、自由を手にする一歩を踏み出してみましょう。

(構成:中原美絵子)

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提供元:「親に認められたい」完璧主義が裏目に出る人生|東洋経済オンライン

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