2023.08.14
「食べなくても太る」を解決、漢方の体質別減量法|ダイエット効果をUPさせる「2つのスパイス」
ダイエットをサポートするスパイスが入った「ゴールデンミルク」の作り方は?(写真:Olena Rudo/PIXTA)
久しぶりの行動制限のない夏がやってきて、外出する機会が増えたせいでしょうか。「やせる漢方薬はないの?」と聞かれることも多くなり、ダイエットに関する相談が増えてきました。
今回は漢方とダイエットについて解説したいと思います。
東洋医学的に見た「太る原因」
漢方では、私たちの体は、生命エネルギーである「気(き)」、体に栄養を与える「血(けつ)」、潤いを与えて熱の溜まりすぎを防ぐ「水(すい)」という3つの要素で成り立っていると考えています。
車に例えれば、気はエンジン、血はガソリン、水はラジエーターの水、となります。どれが欠けても車が動かないのと同様に、体も気血水のバランスが崩れると不調が表れます。
気血水の流れがよいと太りもやせもせず、その人に合った体型、体重を保つことができます。しかし、何らかの理由で気血水のバランスが崩れると、太ってしまったり、あるいは極端にやせてしまったりするのです。
1人ひとり最も活動的で気力も充実する適正体重は異なりますが、急に太ったりやせたりした場合は、体の異常を表すサインなので要注意です。
例えば、コロナ禍では運動不足やストレスからの食べすぎで、太る方が続出しました。いわゆる「コロナ太り」で、5~10kg太り、それに伴い体調不良に陥るケースも珍しくありませんでした。
コロナ太りが原因の根底にある体調不良は、薬をいくら服用しても症状の改善は期待できません。養生を実践して生活習慣を改善し、健康的に体重を落とすことで、症状が寛解していくのです。実際、そういう方が多く見られました。
太ることは、美容的な問題だけではありません。
体への負担も大きく、さまざまな症状をもたらしたり悪化させたりする恐れがあります。適正体重から2〜3kg増えただけで、なんとなく体が重く感じて出かけるのが億劫になる、といった経験はありませんか? こうしたことが積もりに積もって体やメンタルに影響が及ぶのです。
食べなくても太るのはなぜ?
今回ご紹介する、気血水の低下による体重の増加の大きな特徴は、“食べなくてもやせない”という点にあります。
普通は食べすぎて動かなければ太っていきますが、この場合、それほど食べなくても太ってしまうのです。それは、消化をつかさどる脾胃(ひい)の弱りによって、滞った未消化物が排出されず、体に吸収されてしまうからです。
太る原因は、気血水のいずれか、あるいは複数の働きの低下にあります。そして、気血水のどれが低下しているかによっても対策が異なります。
そこで、気血水それぞれのタイプの太り方と、対策についてみていきましょう。
まずは下のチェックをやってみてください。2〜3個当てはまればそのタイプを疑います。4個以上は典型的なタイプです。また複数のタイプにチェックが多いときは、2つ(3つ)のタイプが複合的に起こっていると考えられます。
気太り:ストレス太り、やけ食い
□ ストレスを感じることが多い
□ 完璧主義
□ 自分へのご褒美はスイーツ
□ 眠りが浅い
□ 肩や背中がこりやすい
□ 食欲や食べ方にムラがある
□ 便がスッキリ出ない
□ ガスが溜まりやすい
気太りタイプは、コロナ禍で多かったタイプです。
外出制限がある環境で、ストレスを食べることにより発散していた結果、驚くほど太ってしまったという方も多かったのではないでしょうか。
このタイプは、ストレスを食べること以外で発散することが肥満解消につながります。軽く体を動かしたり、マッサージを受けたり。良い香りで気を巡らせるのも効果的なので、アロマセラピーもおすすめです。
また、コーヒーをよく飲まれる方は飲む回数を減らして、代わりにハーブティーなどで気分転換するのもよいと思います。コーヒーはよい部分もありますが、飲みすぎるとカフェインの作用により自律神経が乱れてしまうので、気が低下しやすい人にはおすすめできません。
漢方ではカロリーだけではなく、体質に合わない食材をよくないものと考えます。コーヒー1日1〜2杯程度なら問題ありませんが、水代わりに飲むのは控えてほしいと思います。
おすすめのツボは百会(ひゃくえ)です。ゆっくりと5回押します。夏はツボのあたりを保冷剤で冷やしたり、霧吹きで水を吹きかけたりするのもおすすめです。
頭頂部より少し後ろにあるツボ(イラスト:ナミッコ/PIXTA)
血太り:血流が悪く、がっちり固太り
□ あざができやすい
□ シミやクマ、そばかすが多い
□ 痔がある
□ 肩がこりやすい
□ ニキビができやすい
□ 頭痛になりやすい
□ 冷えのぼせがある
□ 赤ら顔
血の巡りが悪く滞りやすい、女性に多いタイプです。
血が滞る状態を瘀血(おけつ)といいますが、瘀血があると血の巡りが悪くなるので、必要な栄養素が体の隅々まで行き渡らなくなります。また、老廃物の排出も滞るため、そこから余分な成分が吸収されて太りやすくなります。
まずは血流をよくすることが、ダイエットの基本となります。
冷えがあれば温めます。食べすぎや消化の負担になるような食べ物(脂の多い肉、揚げ物、ファストフード、生クリームなど)は控えたほうがいいでしょう。
おすすめのツボは、血海(けっかい)です。気持ちよい強さで押します。
ひざのお皿の内側の上、指3本分にあるツボ(イラスト:ナミッコ/PIXTA)
水太りタイプ:水はけが悪い、下半身太り
□ 上半身に比べて下半身が太っている
□ 舌の縁に歯型がつく
□ 足がむくみやすい
□ 関節痛がある
□ お腹周りを触ると冷たい
□ 頭痛やめまい、耳鳴りなどがある
□ 体が重だるい
□ ビールなど冷たい飲み物を飲むことが多い
体に余分な水分(水毒)が溜まることが原因で太るタイプです。
水分や、冷たいものや甘いものの摂りすぎ、運動不足などによる筋力の低下、内臓機能の低下による代謝低下などが原因で、体内に溜まった水分が問題となります。水は下方に溜まりやすいので、下半身太りになりやすい傾向があります。
特に夏は熱中症や脱水を恐れるあまり「たくさん飲まなくては」と、たくさんの水分を摂取している人が多いようです。しかし、その水がうまく排出されないと「水毒」になります。
水分を摂りすぎているか判別する方法に、漢方の診断法である「舌診(ぜっしん)」があります。ご自身の舌を鏡で見て舌の縁に歯の痕がついていたり、ボテっとしていたりしたら水毒の可能性があります。
水毒対策として心掛けたいのは、「水分は少量ずつ摂る」「足や腹部を冷やさない」「入浴はシャワーだけで済ませず、ぬるい湯に10分程度浸かる(水圧がかかることにより水分代謝がよくなり水毒解消につながる)」「ウォーキングやスクワットのような下半身を鍛えるトレーニングを行う」などです。
おすすめのツボは、陰陵泉(いんりょうせん)です。気持ちのよい強さで押します。むくみがひどい場合は、オイルマッサージもおすすめです。
ひざの少し下、腓骨のくぼみにあるツボ(イラスト:ナミッコ/PIXTA)
5つの味をバランスよく摂る
漢方では「五味」をバランスよく摂るのが理想の食事と考えます。五味とは酸苦甘辛鹹(塩)のことですが、これらが偏ると体に害を及ぼします。
食材は甘(甘いもの)や鹹(塩からいもの)が多く、意識しないでいると味は偏りやすくなります。
特に甘味は要注意です。本来、漢方でいう甘は砂糖からではなく、穀物から摂るのが基本です。栄養学的に見ても、穀物に含まれる炭水化物には糖だけでなく食物繊維が含まれています。そのため、糖だけを摂るよりも緩やかに消化吸収されることになります。
甘味がやめられないのは、砂糖は麻薬のようなものだからです。ストレスのあるときに甘いものを食べることを習慣にしてしまうと、やめるのが難しくなるので要注意です。
甘いものがやめられない場合は、苦味を心がけて摂るといいでしょう。ゴーヤやピーマンなどの苦い野菜には、余分な熱を冷ます働きもあります。
また、辛味のなかでは、ニンニクやトウガラシは食欲を刺激し、発汗が過多になることもあるので控えめに。
ダイエットの効率を上げるスパイス
一方、おすすめしたいスパイスは以下になります。
【ターメリック(ウコン)】肝機能を高めて老廃物を排出
肝臓に働きかけて胆汁の分泌を促し、脂肪や老廃物を体外に排出します。
油との相性もいいので、炒め物をするときにひとつまみ入れたり、味噌汁やスープに入れてもいいでしょう。カレーのときは米に小さじ1程度入れて炊き、ターメリックライスにするのがおすすめです。きれいな黄色で、見た目にもおいしそうです。
ホットミルク(あるいはココナッツミルク)にターメリックをひとつまみと、好きなスパイス(コショウやカルダモン、生姜、シナモンなど)入れれば、「ゴールデンミルク」と呼ばれる飲み物の完成です。
インドの伝承医学、アーユルヴェーダで健康のために飲まれていたようで、筆者はカルダモンを一粒入れます。まろやかになって、チャイのような味わいがおいしい飲み物です。
このターメリックを毎日の料理に取り入れていたら、便秘やニキビが改善して食欲も落ち着き、自然と5kgやせたという方がいらっしゃいました。
【クミン】胃腸を整えて消化を促進
体内の毒素を排出する働きがあり、胃腸の働きを高めて便秘を解消します。カレーの香りはクミンによるもの。古くから健胃薬、解毒薬として重宝された生薬です。
殺菌作用も高いので、夏におすすめのスパイスです。油にひとつまみ、ホール(粉でも可)のクミンを入れ、パチパチと音がしたら好きな野菜や肉を炒めると、スパイシーな炒め物の完成です。
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提供元:「食べなくても太る」を解決、漢方の体質別減量法|東洋経済オンライン