2023.08.10
「空き巣」が狙わない家が"やっている防犯対策"|マンションは高い防犯性を誇るゆえに隙が生まれる
空き巣や泥棒のターゲットになりやすいのは、どんな家?(写真:Haru photography/PIXTA)
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ここ数カ月、高級時計や貴金属買い取り店、リサイクルショップなどの店舗を狙った強盗・窃盗事件のニュースを見聞きしてきた。
都心のみならず地方でも、また店舗のある繁華街ではなく閑静な住宅街でも強盗や窃盗被害が報告されている。白昼堂々、在宅時に侵入するという荒っぽい手口に、多くの人が驚いたのではないだろうか。また自宅の防犯対策について「現状のままで大丈夫?」と不安を覚える人も少なくないはずだ。
実際、どんな家が空き巣や泥棒のターゲットになりやすいのだろうか。コロナ禍も落ち着き、夏休みの旅行やお盆の帰省などで、自宅を長期不在にするケースも増えてきた。マンション、戸建てそれぞれの防犯対策についてあらためて考えてみたい。
高い防犯性を誇るゆえに隙が生まれやすいマンション
まずはマンションのケースから見ていこう。一般的な一戸建て住宅と比較した場合、防犯性においてはマンションに軍配が上がるといっていい。
というのは、マンションには常時(厳密には常時とは言えないが)「人の目」がある。警備員や管理員、コンシェルジュなどによる有人管理がなされているためだ。マンションでは維持管理を行う「人の目」が、侵入者にとってのある種の壁となっているのは間違いない。
加えて最近のマンションには最新型のセキュリティシステムが設置されているケースも多い。
例えばピッキング対策・複製防止が施された防犯性の高い鍵やオートロックシステム(非接触キー・生体認証など)が挙げられるだろう。また密室となるエレベーターに関しても、利用者の行き先に応じて運行を制御する行先階制御システムが導入されているなどマンションの防犯システムは高機能化が進んでいる。
マンションでも万全とは言えない
しかし、高い防犯性を誇るマンションであっても、万全とは言えず、隙が生まれやすい。セキュリティの代名詞といえるオートロックシステムであっても過信は禁物である。
例えば、住人や訪問者がロックを開けると同時に、後ろからさりげなく侵入する「共連れ(ともづれ)」や、建物外で電話などをしながら、住人が外に出るタイミングを狙って入る「入れ違え(いれちがえ)」などの手口を用いれば、侵入することは可能だ。
侵入犯罪についてのデータをまとめた警察庁の『住まいる防犯110番』によると、住宅の侵入強盗被害(認知件数)では一戸建て住宅が17.6%、共同住宅(4階建て以上)が9.3%だ。確かに4階建て以上の共同住宅、つまりマンションが一戸建て住宅より少ない傾向にあることがわかる。
一方で共同住宅(3階建以下)では17.6%となり、これは一戸建住宅と変わらない数字となっている。バルコニーやテラス(専用庭)から侵入しやすい1階住戸などは、プラスアルファの防犯対策を練る必要があると言えるだろう。
また、警視庁の発表する東京の犯罪(令和4年版)『強盗の発生状況』では、侵入強盗の発生場所は4階建て以上の住宅で17.8%と発表されている。これはコンビニエンスストアでの強盗発生率と変わらない数字であり、中高層階なら安心できるわけではないことを示す証左でもある。
というのも実は、4階以上の住宅であっても窓・玄関から侵入されてしまう事例が多数発生しているのだ。泥棒や空き巣を働く不審者は、非常階段を使って屋上から、または電柱や雨どいなどをつたっていとも簡単に侵入してくることがわかっている。
これは一戸建てと同様で、倉庫やカーポートを足場にしたり、場合によっては隣家のバルコニーから飛び移ったりする方法で2階に侵入された事例も報告されている。マンションの場合、大規模修繕工事などで足場が設置されている時期はさらに侵入が容易となる。より気をつける必要があるだろう。
侵入者はほんの少しの隙を決して見逃さない
そしてマンションでは窓や玄関の無締まり(無施錠)も少なくない。オートロックなど高い防犯性への安心感からか、ごみ捨てなど短時間なら……と無締まり(無施錠)になってしまい、結果的に玄関や窓からの侵入を許してしまうことになる。また中高層階であることを過信し、窓に補助錠など二重の防犯対策を行っていないため、ガラス破りなどで簡単に窓を割られてしまう。
窓や玄関の無締まり(無施錠)はマンションに限った問題ではない。戸建て住宅でも在宅時、窓や玄関の鍵をかけずにいる、もしくはかけ忘れてしまうケースがある。
また人間は案外、活動する部屋以外の動向には無頓着になるものだ。1階にいれば2階の、2階にいれば1階の窓の鍵をかけないでそのままにしておく場合も多い。侵入者は、そういったほんの少しの隙を見逃さないものなのだ。不在時はもちろん、在宅時であっても玄関、窓の施錠を必ずするといった心がけが必要だ。
さらに不在時には、留守を悟られないよう配慮しなければならない。旅行や帰省で留守にする場合は数日であっても郵便物は局留めにし、新聞の配達を休止するよう連絡しておこう。
さらに近隣の目は大きな抑止力になる。親しい近隣住人、マンションの場合は管理人などに「留守にする」旨を伝えておくことも大切だ。家の周囲で怪しい動きをしている人や家から物音がした場合など連絡してくれるかもしれない。
在宅を装う方法としては、防犯設備機器を活用するのも一案だろう。例えば、防犯カメラなどで留守宅を監視しながら、自動で照明の点灯・消灯をすることで、在宅を装うといったことも可能となる。
一方で、同じくデジタルデバイスを活用したSNSへの投稿は、防犯面ではリスキーな面を持つことに注意したい。投稿した写真から自宅や家族構成、資産状況など個人情報が割り出されることが少なくないためだ。「旅行に出かける」との投稿、イコール「不在にする」ことを全世界に向け公開しているということを肝に銘じておきたい。
空き巣や強盗に狙われやすい一戸建て住宅の特徴
マンションに比べると侵入されやすいといわれる一戸建て住宅。空き巣や泥棒たちは、日々住宅街を下見し、住人の家族構成や帰宅時間、資産状況を含めた「属性」を加味し、侵入しやすいかどうかをチェックしていると言われている。では、どんな住宅が空き巣や侵入者などのターゲットとなりやすいのか。狙われやすい特徴として、次の5つが挙げられる。
1. 高い壁や木々に囲まれるなど死角が多く人目にふれにくい住宅
2. 在宅していないのが明らか(留守であることが一目瞭然)
3. 十分なセキュリティ対策がなされていない
4. 逃走経路が複数ある(裏通りに出られる、2方向の道路に出られる、など)
5. 自宅周辺や庭などの手入れや清掃が行き届いていない
順を追って説明しよう。1に関してはいったん侵入してしまえば、人の目にふれにくくなる。身を隠して犯行ができるため、侵入者にとって好都合な立地の住宅と言える。
2については先ほどお伝えしたように、不在を悟られるのがリスクとなる。また、一戸建て住宅でもマンションと同じく、無締まり(無施錠)による被害が多くなっている。在宅時であっても、鍵をかけていなければ窓や玄関から簡単に侵入されてしまう。補助錠や防犯フィルムなどでの二重の対策をしていなければ、「ガラス破り」という手口で入られてしまうのだ。
つぎに3についてだが、最近では、さまざまな防犯セキュリティシステムやグッズがあるが、こうしたものを1つ活用したところで安心することはできない。例えば、軒先に防犯カメラをつけるなら、合わせて音の出る砂利を敷くといった具合に、同じ個所に二重三重で対策をしておくことが大切だ。
玄関から侵入し、逃走しやすいことも「侵入しやすい」住宅の特徴となる。4のように容易に逃走経路が確保できる住宅では、玄関や勝手口に防犯カメラや人感センサーで反応するライトを設置するなどの対策が不可欠となる。また、勝手口は玄関よりも防犯性能が劣る鍵を使っていることも多く、注意が必要だ。
そして忘れがちなのがポイント5だ。住宅の周辺に不要なゴミが置かれたままになっていたり、庭木が生い茂っていたりする家は「無頓着な人」が住んでいると見なされる。防犯対策を含め、総合的に「つけ入る隙がある」と判断されるからだ。
住宅密集地にある一戸建てでは、1階の屋根や隣家のバルコニーが侵入者の「足がかり」となってしまうことにも注意が必要だ。また、複雑な構造の住宅、昔ながらの古い住宅も足がかりや死角が多い傾向にある。
補助錠や防犯フィルムを取り付ける、防犯カメラやセンサー付きライトを設置する、庭先に音の出る砂利を敷くなど、アイテムを複数組み合わせ、二重三重の防犯対策を講じておくことをおすすめする。
また、侵入犯が何より嫌うのが「人の目」だ。近隣住人と交流し、地域で協力して防犯に当たることが犯罪の抑止につながることも付け加えておきたい。
自動車盗難にも気をつけたい
住宅への侵入だけでなく、高級車を狙った盗難被害も相次いでいる。前出の警視庁の資料によれば、自動車盗難の約10%が中高層(4階建て以上)住宅で発生しているという。
駐車場の形式で見ていくと、平面式駐車場での盗難リスクは高い一方で、維持費の面で課題の多い機械式立体駐車場での盗難リスクは低い。メンテナンスや使い勝手などで俎上に上がることの多い機械式立体駐車場ではあるが、防犯面では一定のメリットを有していることにも着目しておきたい。
(画像:筆者作成)
一戸建て住宅では、盗難防止装置「イモビライザー」の機能を無効にしてしまうイモビカッターや、スマートキーを活用したリレーアタックによる手口、また、車の制御機能を担うCANシステムに侵入する手口など、いわゆる「ハッキング」に近い手口の犯行が増えている。
ハイテクかつ巧妙化する手口に対し、ハンドルロックやタイヤロックなど、物理的に車を動かせないようにする対策、追跡アプリの搭載までさまざまな防犯対策が存在する。
一方、対策を講じていたものの在宅時に玄関が無締まり(無施錠)だったため、玄関に置いてあった車のキーをそのまま盗まれ、気づいたら愛車がなくなっていたという事例もある。どんなにハイテクなセキュリティ対策を施しても、住宅に侵入され車の鍵を盗まれたら無意味なのだ。ほんのわずかな外出でも必ず鍵を閉める習慣が、自宅や愛車、ひいては家族や自らの身の安全を守ることにつながる。
在宅時の無締まり(無施錠)は、人がいても侵入してくる「居空き」「忍び込み」といった犯行のリスクもある。在宅時に侵入者と鉢合わせれば、命が危険にさらされることにもなる。留守時の防犯対策はもちろん、在宅時にも常に気を配り、二重、三重の対策を意識して行う必要があると言えるだろう。
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提供元:「空き巣」が狙わない家が"やっている防犯対策"|東洋経済オンライン