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2023.08.08

「ひざの不調」70代女性の7割が悩む病気の正体|変形性膝関節症の原因と対策を専門医が徹底解説


60代から急に増えるという「変形性膝関節症」にならないためにできることとは(写真:mits/PIXTA)

60代から急に増えるという「変形性膝関節症」にならないためにできることとは(写真:mits/PIXTA)

人生100年時代を迎え、多くの人がひざの痛みや歩行のトラブルを抱えています。60代から急に増える「変形性膝関節症」という病気が、長くなった「老後」という〝ご褒美時間〞の生活の質を低下させてしまう大きな原因の一つとなっています。

この病気はなぜ起こってしまうのでしょうか? そのメカニズムを知ることが、抜本的な治療や予防につながります。ひざ関節を専門とする整形外科医の巽一郎氏の著書『痛みが消えてずっと歩ける 100年ひざ』から一部抜粋、再構成してお届けします。

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70代女性の7割が変形性膝関節症

変形性膝関節症はとても身近な病気で、病院にかかるなどはしていない人も含め、「70代女性の約7割が変形性膝関節症である」という調査結果もあるほど。とくに女性が要介護状態になる原因は、この病気と腰痛、それから認知症がとても多いです。

患者さんにとっては、つらい痛みや、生活のしづらさを経験することになる病気です。しかし、この病気をきっかけに、原因を考え、生活を改善し以前にも増して充実した人生を送る"ターニングポイント"にすることもできます。僕はそのお手伝いをしたくて、まずは変形性膝関節症を正しく知っていただくところから、いつも説明を始めています。

変形性膝関節症は、その9割でひざ関節の内側の軟骨や骨に「変形」が生じるものです。多くの場合、足がO脚に変形し、はじめは立ち上がるときにひざに痛みを感じます。徐々にひざの曲げ伸ばしに不自由さを感じるようになり、やがて歩き出しに限らず、動作中も痛みが出て、歩行が困難になっていきます。

初期のひざの「変形」は、「軟骨の損傷」、俗に「軟骨がすり減った」といわれている状態から始まります。まもなく滑膜(かつまく)の炎症で関節に腫れが生じます。軟骨がすり減って、関節の隙間が狭くなってくると、間に入っていた半月板の損傷も生じてきます。

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ひざの痛みや歩きづらさを感じて病院にかかると、多くの場合、レントゲンを撮った後、「歳だから軟骨が減ってきましたね」と言われます。薬物治療(痛み止め)やひざ装具、湿布などを使いながら「様子を見ましょう」「ひざの負担を軽くするため、体重を減らしましょう」「運動をして太ももの筋肉をつけましょう」といった指導を受けるでしょう。

「体重減」と「筋力アップ」は大事な視点です。でもこれだけでは、そもそもの原因である「軟骨が減ったこと」は補えません。また痛み止めを飲んでも軟骨が増えることはありません。逆に痛み止めを多用して動き回ると、さらに軟骨がすり減ることになります。

やがて症状が悪化し、大腿骨と脛骨(けいこつ)が直接当たるようになると、人工関節に入れ換える「手術」などが提案されます。僕たちの人工関節センターを受診に来られる患者さんたちの、9割がこの状況の人たちです。「前の先生からは手術と言われたのですが、本当に手術しなくても治るのでしょうか?」と半信半疑の顔です。

けれど本来、ひざは正しく使っていれば108年はもつ構造体です。

「老化」とは別に、軟骨が減る原因があるはず。それを突き止めなくてはなりません。

108歳まで元気に歩ける人もいれば70歳で車イスが必要な人もいる。僕は患者さんと一緒に「老化以外の原因」を考え続けてきました。

そして見つけた答えはシンプルなものでした。

簡単にいえば、ひざの負担を大きくしている生活習慣があり、軟骨のメンテナンスも不十分。そこに老化が加わることで、軟骨が加速度をつけてなくなってしまうケースがほとんど――ということです。

軟骨が減ると痛いのは「微小骨折」が繰り返されるから!

ひざの痛みは、軟骨の有無が大きく関係していると説明しました。

みなさんが1歩踏み出すそのとき、ひざにどれくらいの負担がかかると思いますか?

その負担は「平地を歩くときは体重の5倍」「階段を降りるときには体重の8倍」の力にもなると報告されています。自分の体重を思い浮かべて、ちょっと計算してみましょう。

体重50kgの人が平地に踏み出したら、250kg!

体重60kgの人が階段を降りるときには、480kg!

軟骨というクッションのおかげで、この力が直接大腿骨と脛骨にかかることはありません。このクッション構造こそが、ひざの関節が体重の数倍もの衝撃をもろともせず、歩行や活動を可能にしているものです。

僕はよく患者さんにこんなたとえ話で説明しています。硬い組織である骨を「陶器でできたお茶碗」にたとえます。もし、2つのお茶碗を直接ガチャンと重ねたら? ひび割れてしまいますね。しかし、お茶碗とお茶碗の間に濡れた布巾をはさんでおいたらどうでしょうか? きっと割れにくい。この布巾と同じはたらきをしてくれるのが軟骨なのです。

そんな軟骨がなくなって骨どうしが当たると〝小さな骨折〞が起こります。それは骨がボキッと折れたのではなく、骨の表面に髪の毛くらいのひびが入った状態です。そんな小さなひびでも、骨の表面には知覚神経がたくさん分布しているので痛いのです。「微小骨折」と呼ぶ症状です。

この微小骨折は安静にして寝ていると1日でカルシウムが沈着して治ることがあります。翌朝起きたら、「あれ? 昨日ほど痛くないわ」と思ってまた畑へ行けます。それは髪の毛くらいのひびにカルシウムが運ばれて修繕が行われたから。ひざの痛みに波があるのはこのためなのです。

変形性膝関節症は、男性860万人、女性1670万人と推定され、女性は男性の2倍近くいることがわかっています。その原因は、「女性ホルモンの減少」。エストロゲンの分泌量が急激に減る閉経後は、微小骨折や骨欠損が起こりやすくなるといえます。

西洋では、変形性膝関節症の一番の原因は、急な体重増加ですが、日本でも最近は食事の欧米化により、急に標準体重を超える人が増えてきています。

それでも日本でもっとも多い原因は、「姿勢」によるもの。頭が前に先に出て歩く〝ニワトリ歩き〞が元凶といっていいでしょう。この「ニワトリ歩き」と「太りすぎ」という2つの原因に、およそ8割の人が該当します。

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はじめは、歩くときにただ頭が前に出ているだけですが、それが次第に、「頭が前に出ないと歩けなくなる」という、タチの悪い生活習慣です。この姿勢のせいで軟骨にかかる負担が偏っていきます。

生活習慣以外でひざの負担が大きくなる関節症

歩き方と、過体重という2つの理由の次に、変形性膝関節症の原因の3つめに多いのは、自己免疫障害から生じる関節リウマチがあります。

これは自分を守るべき抗体が、何を間違えたか自分の軟骨を食べるために生じます。また、炎症性疾患という、バイ菌や結晶がひざ関節内に入ることで生じる2次性の関節症もあります。これは原因を取り除けば早々に治ります。

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ひざ近くの骨を骨折し、それが治った後に、ひざにかかる力が変わって生じる骨折後2次性関節症というものもあります。股関節が悪くなり、左右の足の長さが変わったために生じる症状もこの2次性の関節症のひとつですが、これらは全体の1割程度であり、変形性膝関節症の原因の8〜9割はニワトリ歩きと標準体重オーバーです。

僕らのからだは本当によくできていて、たいていのトラブルを自然に修復する機能を備えています。これらいずれの関節症も、自分で治す自己修復機能がはたらきます。

ただし、「歩き方」は別です。誰かから指摘され、自分で気がついて戻さないと、手遅れになることがあります。

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提供元:「ひざの不調」70代女性の7割が悩む病気の正体|東洋経済オンライン

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