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2023.06.28

あなたの住んでるマンションの知られざる"寿命"|「長寿命化」への取り組みがグッと進む背景事情


マンションに永住意識を持つ人の割合は年々高まっています(写真:koni-film/PIXTA)

マンションに永住意識を持つ人の割合は年々高まっています(写真:koni-film/PIXTA)

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国交省の調査によると、マンションに永住意識を持つ人の割合は年々高まっているという。

5年ごとに実施される平成30年度『マンション総合調査結果』では「永住するつもり」と考える居住者が過去最高の62.8%(前回調査+10.4%)を記録している。同調査を見ると、居住者の高齢化が進んでいることもわかる。

居住者とともに、マンションも高経年化が進んでいる

70歳代以上の世帯主の割合は22.2%で、こちらも前回より3.3%増の結果となった。また居住者とともに、マンションも高経年化が進んでいる。完成年次が古いマンションほど高齢者の占める割合が高いのも特徴だ。

加えて昨今、マンション価格の高騰がたびたび話題となってきた。都心など人気エリアで新築マンションが高騰したこともあり、中古マンションを選択肢として検討する人もいるだろう。

終の棲家として考える場合、また新たに購入するケースでも何はさておき、気になるのが「マンションの寿命」ではないだろうか。この「自分たちのマンションは何年持つのか」については、マンションの設計の段階である程度の目安が定められている。「計画供用期間」という考え方だ。

(筆者作成)

(筆者作成)

「計画供用期間」とは、コンクリート構造物が竣工し、使用されてきた期間を意味し、躯体の耐久性を示していると言っていい。

上図では、短期は30年、標準が65年、長期では100年、超長期は200年というように級(水準)によって耐用年数が決められていることを示している。建物の設計時に、この水準の中から、計画する建物の供用期間について検討することになる。建物の耐用年数について計画するということだ。

(筆者作成)

(筆者作成)

そしてそれぞれの供用期間に応じ、コンクリートの耐久設計基準強度が定められている。これはコンクリートの「質」の部分になる(上図)。

1㎟(1平方ミリメートル)あたりに何N(ニュートン)の力が加わったのかを表す圧力の単位N/㎟で示され、例えば短期のおよそ30年では18N/㎟、標準のおよそ65年では24N/㎟、長期のおよそ100年では30N/㎟……など、性能が異なるコンクリートが使用されるのである。先ほども少しふれたとおり、これらは設計当初に検討されるものだ。

お住まいのマンションの竣工図の特記仕様書に「コンクリートの耐久設計基準強度」という形で記載されている。特記仕様書の記載を参考にどれくらいの強度のコンクリートによって設計されているのかを見れば、居住するマンションが「どれだけ持つか」のおおよそ見当がつくはずである。なお、仕様書の閲覧は、管理会社へ申請の上、閲覧するフローが一般的だ。

ただし、メンテナンスを行いながら使用していくことで、計画供用期間を上回る期間利用することは可能になることも付け加えておきたい。建物としてのマンションには「寿命」があるものの、適宜メンテナンスを行うことでより長持ちさせることができることになる。

つまり、本来の寿命に沿ってマンションの修繕計画を立てることが大きな意味を持つとも言えるだろう。

機能や性能を向上させる「長寿命化工事」とは?

そこで不具合のある箇所を修繕するのみならず、将来にわたっての幅広い利用を加味し、より機能的に性能を向上させる「長寿命化工事」が注目を集めている。国も既存マンションの寿命を延ばす「長寿命化」への取り組みを後押しすべく長寿命化促進税制を創設した。

管理計画認定制度の認定を受けている竣工後20年以上経過した総戸数10戸以上のマンションが長寿命化工事を実施した場合、翌年度に課される建物部分の固定資産税額を減額するものだ。

国が長寿命化工事を推奨する背景には、高経年マンションが抱える課題が少なからず影響している。居住者の高齢化に加え、工事費など関連費用の上昇が続き、修繕積立金不足のマンションが増えているためだ。適切な大規模修繕工事が行われなくなれば、結果として建物の老朽化、空き家化が進んでしまう。

促進税制は、このような課題の解消をめざして創設された経緯がある。マンションを適切に維持するための積立金を確保し、長寿命化工事の実施に向けた「管理組合の合意形成」を支援する内容が盛り込まれている。

国交省リーフレット:『マンションの大規模修繕をすると固定資産税が減税されます!』では、建物の老朽化や劣化を改善し、建物の寿命を延ばすために行われる「長寿命化工事」とは、具体的にはどのような内容を指すのだろうか。

例えば劣化した外壁や屋根、バルコニー、鉄部、屋上防水などの部分的な補修もしくは撤去、新素材で再生する工事も長寿命化工事に該当する。竣工時より進化した断熱材の設置により、省エネ効果をもたらす工事など、設備機能や性能水準の向上が図れる施工を指す。

施工により維持管理費用は抑えられ、安全で快適な住環境が確保できること、さらには「将来への投資」としての意味合いも持つのが長寿命化工事の特徴となる。通常の大規模修繕工事と比較するとより広範で、将来にわたって長く利用できる目的をメインとした工事と捉えることができるだろう。

長期修繕計画は7年スパンで見直すべき

ひるがえって自分たちの居住するマンションを見直すと、管理組合がこれまで作成してきた長期修繕計画はマンションの寿命を考慮した計画になっているのだろうかと疑問に思う方もいるかもしれない。例えば税制の活用を含めた「長寿命化工事」を視野に入れるとすれば、これまでの長期修繕計画の見直しが必要となるのだろうか。

2022年4月に始まったマンションの管理計画認定制度にあたって、国交省は『長期修繕計画作成ガイドライン』の内容を一部改訂している。長期修繕計画期間を30年以上に延長し、長期修繕計画の見直しの周期についておおよそ5年ごとに調査を実施すること、その後1年から2年程度の間に見直すことを明記したのである。

準備期間を含め、トータルで7年程度のスパンで計画の見直しを推奨している。その理由については、「長期修繕計画に含まれる不確定な事項」があるためだとして、以下4つのポイントに言及している。

(筆者作成)

(筆者作成)

例えば(1)の「建物及び設備の劣化の状況」については、マンションごとにかなりの差が生まれる部分だろう。そもそもの仕上げも違っている場合も少なくない。

また(2)の「社会的環境及び生活様式の変化」に関しては、マンションが計画、分譲された時期が古ければ、この社会的な環境生活様式の変化に対応させるために、大がかりな工事・改修が必要になると予想される。こちらも、設計時の内容による部分が大きく、マンション個々の事情は異なってくるだろう。また年々建築工法や材料は進化を続けている。

高耐久性の工法や材料を使うことによって周期や単価が変動し、修繕の周期も大きく変わってくるというニュアンスが③の「新たな材料、工法等の開発及びそれによる修繕周期、単価等の変動」部分だ。技術的な革新の部分でも見直しが必要になってくる。

(4)「修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、工事費価格、消費税率等の変動」についても、マンションそれぞれ固有の状況変化があるだろう。こういったものも含め、7年程度ごとに見直しが必要となる。

(4)「修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、工事費価格、消費税率等の変動」の部分については、そもそも修繕積立金のあり方そのものについての課題でもある。修繕積立金を積み立てる方法には「均等積立方式」と「段階増額方式」がある。

前者の均等積立方式ではあらかじめ必要な金額を算定し金額を設定した後、その後は長期間にわたり一定金額を積み立てていく方法だ。目標金額に対して当初は負担が大きいものの、将来的に大幅な増額がないため、国交省が推奨する方式となっている。

後者の段階増額方式の場合、新築当初は金額を低く設定されている。これはマンション販売時に入居後のコストを低く感じさせるために採用される場合が多い。

しかし、その後必要に応じて、段階的に増額していくことになるため、必要となるコストは均等積立方式と変わらないが、入居後一定期間を経て、管理組合総会で修繕積立金の増額について審議、可決を経て増額が決まるため、居住者の合意を得るのが難しい側面があるのは否めない。

管理組合会計にとって、課題を抱える結果となってしまう。均等積立方式の導入を含めた修繕積立金のあり方について議論、検討する必要もあるだろう。

大規模工事発注の選定は?

最後に大規模修繕工事の施工会社の選定方法についてあらためて言及しておきたい。選定方法は大まかに(1)管理会社(系列会社を含む)特命発注方式、(2)設計・監理方式、(3)プロポーザル方式(企画・提案力比較方式)が存在する。どの方法を選択してもメリット・デメリットがあるため、内容を十分に理解したうえで選択することが大切になる。

例えば管理会社との信頼関係があれば、「特命随意契約」という形で任せてしまう方法もある。手間が比較的少なく、迅速に進められる面ではメリットもある。

しかしながら、今回国が推奨する「長寿命化」など、どれだけ工事に反映されているかは見えにくくなる。マンション個々の事情が配慮されず、保証を長くするためだけの、名ばかりの「長寿命化」工事に過ぎず、内容は変わっていないというケースもあり得る。

談合のリスクをはじめ、管理組合が主体となって、意見や要望を伝えることができれば起こり得ないことでもある。このような場合は、比較的カスタマイズ的な要素の大きいプロポーザル方式を選ぶのも一案だ。

施工のパートナー選びで迷ったり、不安を感じたりした場合は一度立ち止まることも選択肢の一つとなる。マンションの寿命を延ばし、将来にわたって長く利用していくためには、大規模修繕工事の発注方法や計画自体を見直すことから始めなければならない。

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提供元:あなたの住んでるマンションの知られざる"寿命"|東洋経済オンライン

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