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2023.06.08

【胃カメラ】バリウムとの違い、楽な受け方は?|基本は50代以降、20~30代で検査が必要な人も


オエッとなるのが嫌で、胃カメラを受けていない人は多いのではないでしょうか(写真:XiXinXing/PIXTA)

オエッとなるのが嫌で、胃カメラを受けていない人は多いのではないでしょうか(写真:XiXinXing/PIXTA)

胃の不調が気になるが、できれば胃カメラはやりたくない。でも、病気は初期のうちに見つけたい……。「痛い」「苦しい」といったイメージから、胃カメラを受けるタイミングを逃している人は少なくないだろう。
しかし近年、胃カメラは、苦痛が少なく、精度の高い検査へと機器や技術が進化している。検査の受け方やメリットなどについて、内視鏡検査・治療のエキスパートである内視鏡専門医の平澤欣吾医師(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター内視鏡部准教授)に話を聞いた。

俗に「胃カメラ」と呼ばれている検査の正式名称は、「上部消化管内視鏡検査」だ。スコープの先に付いた小さなカメラによって、胃だけではなく、カメラが通過する喉や食道、十二指腸を含めた上部消化器官内のポリープやがん、炎症などを調べることができる。

胃カメラでわかる病気はいろいろ

胃カメラで見つかる疾患は胃がんなど胃の病気に限らず、咽頭がんや喉頭がん、食道がん、逆流性食道炎、十二指腸がん、急性胃炎、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍など、数多い。

実は、胃がんの原因とされるピロリ菌(H.pylori)感染の有無も胃カメラ検査でわかる(ピロリ菌関連記事:胃がん原因の9割、感染ある人の特徴はこちら)。

ピロリ菌関連記事:胃がん原因の9割、感染ある人の特徴はこちら ※外部サイトに遷移します

「ピロリ菌に感染していると特徴的な胃炎の所見が見られるため、内視鏡の専門医であれば、胃粘膜の状態だけでも感染を疑うことができます」(平澤医師)

胃カメラで胃内にポリープが見つかるケースも多い。ポリープと聞くと、がん化を心配してしまうがどうなのだろうか。

「大腸のポリープと違い、胃にできる多くは『胃底腺ポリープ』という良性のもので、ピロリ菌に感染していない健康な胃粘膜にできることが多いとされています。複数できることも多いですが、胃カメラで見つかっても基本的に切除する必要はありません」(平澤医師)

ただし、約1%程度、ポリープと見分けのつきにくいがんが紛れ込んでいることがある。そのため、専門医による正確な診断は欠かせないという。

ちなみに、胃カメラはスコープを挿入する場所が鼻か口によって呼称が変わる。口からの挿入するものは経口内視鏡、鼻から挿入するものは経鼻内視鏡と呼ばれている。

「痛い」「苦しい」といったイメージがある胃カメラだが、つらい思いをせずに受ける方法はないのか。

経口内視鏡を受ける流れは、検査前に、胃の中の観察をしやすくするため、胃の中の泡を消す消泡剤と胃の粘液を溶かす薬を飲む。のどにも局所麻酔薬のスプレーを吹きかける。

検査室では義歯やコルセット、時計・メガネなどをはずし、普段着のまま(検査着を着用することも)、ベルトを緩めて検査台に横になる。眠るための鎮静薬の注射を受け、リラックスした状態で検査を受ける。

「経口内視鏡は『オエッとなって苦しい』というイメージが強いと思いますが、今はほとんどの医療機関で鎮静薬を使っています。鎮静薬によって意識がぼんやりした状態になり、検査の不安やストレスも和らぎ、うとうと眠っている間に終わります。検査時間も3~5分ですし、痛みや苦しさを感じることはほぼありません。むしろ経口内視鏡が一番、楽に受けられる胃カメラだと思います」(平澤医師)

高機能化で超早期がんがわかる

経口内視鏡は近年、高機能化が進んでいるという。画像は最新機器だとフルズームで約100倍まで拡大観察できるようになり、NBI(狭帯域光観察:きょうたいいきこうかんさつ)と呼ばれる特殊な波長の光を使った観察も可能になっている。

「NBIでは、通常の光ではわかりにくいがん特有の血管構造などを強調させて観察できます。このおかげで、普通なら見つけられない2ミリ程度の“超早期がん”も発見できるようになりました」(平澤医師)

注意点としては、検査後、鎮静薬から覚めて意識がはっきりするまで、30~60分ほど横になって休む必要がある点だ。検査後に車の運転はできないなどの行動制限もある。

一方、経鼻内視鏡では、鼻血を予防する薬を鼻の穴にスプレーした後、ゼリー状の局所麻酔薬を注入する。これでスコープ挿入時の痛みが抑えられるため、前処置として鎮静薬を使用しないケースが多い。

経鼻内視鏡で使用するスコープの直径は約5~6ミリ。経口内視鏡の約半分の細さであることや、スコープが舌の根元に触れないため、嘔吐感が少なく、比較的楽に検査ができる。

「経鼻なら検査を受けている間、医師や看護師と一緒にモニターを見て、会話もできます。検査後の休憩も必要なく、行動制限がない点はメリットですね」(平澤医師)

ただし、鼻腔内が狭いと、スコープが鼻の中を通過する際に痛みが出ることもあるという。また、鼻中隔(鼻の左右を分けている壁)の曲がっている人や、副鼻腔炎や鼻アレルギー、花粉症などで鼻づまりがあると検査できないケースも。鼻腔内の状態によっては、経鼻内視鏡を予定していても、経口内視鏡に変更となるケースもあるという。

何より、経鼻内視鏡は経口内視鏡よりもカメラの性能や画質の点でやや劣り、拡大観察もできないと平澤医師。

「『痛い検査は嫌だが、多少の休憩時間はとれる』という人は経口、『多少痛くてもいいが、休憩時間がとれない』という人は経鼻と、それぞれのメリットとデメリットをよく考慮して決めていただければと思います」

胃がんは現在、日本人のがん死亡者数では1位の肺がん、2位の大腸がんに次いで3位(国立がん研究センター「がん統計2022」より)だ。

50歳前後から、とくに男性で急に罹患率が高まる。自治体の胃がん検診も50歳以上を対象としているが、「胃カメラは50代のうちに一度は受けること」を平澤医師は強く勧める。

「がんの多くがそうであるように、胃がんでも早期には症状が出ません。これといって気になる症状がないという人でも、50歳を過ぎたら一度は胃カメラを受けておくといいと思います」(平澤医師)

バリウムとの違い、検診について

ところで、胃がんの検査といえばバリウム検査(胃X線検査)を思い浮かべる人もいるだろう。2016年には検査の選択肢に胃カメラも加わったものの、いまも多くの自治体の胃がん検査で行われている。

現在は、バリウム検査であれば40歳以上を対象に年1回、胃カメラの場合で50歳以上を対象に2年に1回の受診が推奨されている。50歳以上であれば、バリウム検査か胃カメラかの検査方法を住民自身で選べることが多い。

ちなみにバリウム検査とは、バリウム(造影剤)を飲んで発泡剤(炭酸)で胃を膨らませ、X線(レントゲン)を連続的に照射しながら撮影する検査だ。体位を変えながらレントゲン撮影することで、バリウムが粘膜の表面を滑り落ちていく様子を観察する。それによって、食道、胃、十二指腸のポリープ、隆起、陥凹などの有無を捉えることができ、潰瘍やがんの存在もわかる。

平澤医師は胃がん検査ではバリウム検査ではなく、胃カメラを推奨する。バリウム検査では、バリウムを胃粘膜表面に付着させて凹凸を見分けるため、早期がんの小さな凸凹は見つけにくい。さらに、胃内に胃液などの液体が多い場合には、バリウムが薄まり、検査の精度が低くなってしまうという。

「バリウム検査でもある程度、早期がんは見つかりますが、2センチ以上の大きさでないと検出しにくい。2センチぐらいだと早期がんの場合もありますが、進行がんで見つかるケースもあります」(平澤医師)

これに対し、胃カメラであればわずか数ミリという“超早期の胃がん”も見つけることができ、治療も内視鏡ですむ。早期の胃がんの生存率は高く、5年生存率は96.7% とされている。

さらに胃カメラは近年、機能にAI(人工知能)技術が加わり、進化を続けている。

「画像にがんやポリープなどが確認されるとアラートが出る機能や、ポリープとがんを見分けることのできる機能の付いたAIシステムも出てきています。こうした機能により、超早期のがんが発見しやすくなりつつあります」(平澤医師)

ただ、AIはあくまでも医師のサポートであり、最終的な診断は医師が行うものだ。胃カメラでいかに早期のうちにがんを発見できるかは医師の腕にかかっている。

「正直、胃カメラを操作する技術のクオリティは医師によって異なります」と平澤医師。こう続ける。

「つまり、“同じがんでもそれを見つけられる医師と見つけられない医師がいるということ”です。せっかく検査を受けるのであれば、消化器内科や消化器外科で、日本消化器内視鏡学会専門医の資格を持つ医師を選びましょう。ネットの口コミよりも、身近な人たちが実際に検査を受けて、勧める病院や医師のほうが信頼できると思います」(平澤医師)

若くても受けたほうがいい人とは?

がん検診とは別に、20代、30代の若い人でも胃カメラを受けたほうがいい場合があると、平澤医師は言う。それは、“ピロリ菌感染歴のある人や胃がんになった人が家族にいるケース”だ。

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「ピロリ菌感染が胃がんの主な原因だとわかっています。ピロリ菌感染の有無をできるだけ早い段階で調べて、感染があれば速やかに除菌する。ピロリ菌による感染期間が短く、ピロリ菌感染による胃粘膜の萎縮がまだ見られない段階で除菌ができれば、胃がんリスクはぐっと低くなります」(平澤医師)

(取材・文/石川美香子)

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横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター内視鏡部准教授
平澤欣吾医師

1997年国立浜松医科大学卒業。1999年に横浜市立大学第2内科消化器グループ(現・消化器内科)入局。2003年より現在の横浜市立大学附属市民総合医療センターに勤務。消化器内視鏡の診断と治療を専門として拡大内視鏡・ESDに注力。日本内科学会認定医・指導医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員・関東支部会評議員。

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提供元:【胃カメラ】バリウムとの違い、楽な受け方は?|東洋経済オンライン

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