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2023.06.02

驚愕の感染力「はしか」40歳働き盛りが1番危ない|無料でワクチン打てる人、自費でも打つべき人


40歳前後の働き盛りの人たちこそ、はしかに注意が必要です(写真:Xeno/PIXTA)

40歳前後の働き盛りの人たちこそ、はしかに注意が必要です(写真:Xeno/PIXTA)

東京都で3年ぶりに2人、茨城県で4年ぶりに1人、「はしか」(麻疹)患者が確認された。4月に茨城県の30代男性がインドからウイルスを持ち帰り、発症数日前に新幹線に乗車、東京都の30代女性と40代男性に感染拡大したという。

ここ数年、新型コロナの世界的流行で感染予防策が徹底され、行動自粛もあいまって多くの感染症が息を潜めていた。だが、ポストコロナ突入とともに再燃してくることも、目に見えていた。

はしかは赤ちゃんや子供の病気と考えられがちだが、今このタイミングで用心していただきたいのが、40歳前後、働き盛りの人たちだ。

現在34〜49歳に「はしか免疫がない人」が多い

理由はシンプルだ。その年代は、はしかの抗体価が十分でなく、なおかつ通勤や人との交流を本格的に再開した人が多い。

2021年度の国立感染症研究所の調査で、当時38歳(=現40歳)の人たちの抗体保有率は93.9%だった。これは68歳未満の成人では最低の数字で、免疫が弱まってきているはずの50〜60代をも下回った(50代以上のほとんどは自然感染によって、予防接種よりも持続性の高い強固な免疫を獲得している)。

2021年度の国立感染症研究所の調査 ※外部サイトに遷移します

はしかは、適切な予防接種によって防ぐことができる。ただし感染拡大を押しとどめるには、社会全体で95%の人が十分な免疫を持っていることが必要だ。

「小さい頃に予防注射したはずなのに」と思うかもしれない。50歳以下なら確かにはしかの定期接種は導入されていた。だが問題は、現在24〜49歳の人が受けた当時の定期接種は、まだ1回接種だったことだ。

95% ※外部サイトに遷移します

(筆者作成)

(筆者作成)

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、はしかの場合、1回接種で93〜98%の人が免疫を獲得できる。一見、十分にも見えるが、平均で約95%と考えると、20人に1人は免疫がつかない。打った人だけ集めてその数字だから、1回接種世代の全体で見たら、免疫を持っていない人はもっと多い。打っていない人もいるし、打った当時に得た免疫が加齢ですでに減弱している人も少なくない。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC) ※外部サイトに遷移します

実際、2007年には首都圏で当時の大学生(1回接種世代)を中心に、はしかが大流行してしまった。結果、海外にも飛び火し、日本は「はしか輸出国」として世界から非難される事態となった。

厚生労働省はあわてて定期接種を見直し、2000年生まれ以降は2回接種とし、1990年代生まれの人たち(当時中高生)には2008年から5年間の追加接種措置を設けた。2回接種すると、99%の人が免疫を獲得できるとされる。

99% ※外部サイトに遷移します

ところがこの時、現在34〜49歳の人たちは追加接種対象とはならなかった。新幹線報道の3人も、ちょうどこの世代だ。日本の対はしか防衛上、もっとも手薄な部分なのは間違いない。

マスクは無意味、「12〜18人」桁外れの感染力

免疫保有者が9割超えでもまだ足りないのは、ひとえにはしかウイルス(麻疹ウイルス)の感染力が地上最強レベルだからだ。

はしかは「空気感染」で、1人の感染者から12〜18人に感染が広がる。インフルエンザで2〜3人、新型コロナ初期のダイヤモンド・プリンセス号の事例でも2.28人と計算されているから、麻疹ウイルスの感染力の高さはいわば規格外だ。

2.28人 ※外部サイトに遷移します

飛沫感染と違って、マスクは何の役にも立たない。はしか患者と同じ空間にいた人が20分たたずにうつってしまった事例もある。患者の呼気から空気中に放出され、感染力を保って2時間漂う、またドアノブでも数時間生き残るとされている。

私自身、新型コロナの流行ピーク時は感染予防のため車通勤としていたのを、だいぶ前に電車通勤に戻し、最近は混雑を体感している。「もしこの通勤電車内に1人でもはしか患者がいたら」……新幹線どころの騒ぎでは済まないだろう。

感染すると症状が出ずに済む人はごく少なく、9割以上が10〜12日たってから発症する。しかも発症の1日前(発疹の3~5日前)から、周囲の人にうつり始めるのでやっかいだ。

最初は風邪に似た症状で、38℃くらいの発熱や咳、鼻水が2〜3日続く。よく見れば口の中に白い発疹が出るものの、それに気づかなければ、はしかとの診断は難しい。

その後、一瞬熱がやや下がるのだが、再び39℃以上となり全身の皮膚にポツポツとした発疹が現れる。肺炎や中耳炎、心筋炎なども合併しやすい。周囲ではやっていると、ここでようやくはしかを疑う場合が多いが、すでに多くの人に感染させている。発疹から4~5日目くらいまでは、人にうつし続ける。

MRワクチン「無料で接種」できる人とは?

また2019年には、「はしかにかかると、さまざまなウイルスや細菌に対する免疫システムまで破壊されてしまう」という衝撃的な研究結果を、ハーバード大学が『Science』誌に発表した。

『Science』誌 ※外部サイトに遷移します

せっかく過去に獲得した、インフルエンザや水痘(みずぼうそう、帯状疱疹)のウイルス、肺炎や皮膚感染症を引き起こす細菌などに対する抗体が、一気に11〜73%も失われてしまうという。

さらに恐ろしいのが、「亜急性硬化性全脳炎」(SSPE)と呼ばれる脳炎だ。いったん治ったように見える患者の数万人に1人は、脳内に麻疹ウイルスが潜み続け、5〜10年かけてゆっくりと炎症が進行する。治療法はなく、難病指定されていて、最終的には死に至る。2歳未満、とくにワクチン接種前の1歳未満ではしかに罹った場合に起きやすいとされている。

「亜急性硬化性全脳炎」(SSPE) ※外部サイトに遷移します

というわけで、はしかは「なんてことない」と言える要素が皆無なので、全力で回避するしかない。個人的な予防には限界があるので、流行そのものを起こさないことで、免疫のない人を守っていくしかない。

麻疹単体のワクチンの他、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)があり、今は後者が主流だ。いずれも成人は自費だが、実は中高年男性の場合、条件をクリアすればMRワクチンを無料で打てる人もいる。

胎児に難聴を引き起こす「先天性風疹症候群」予防のため、国として風疹対策に力を入れているからだ。

厚労省は、風疹ワクチンの定期接種が女性限定だった世代、つまり1962年4月2日〜1979年4月1日生まれの男性約1500万人に対し、抗体検査を無料で行い、十分な免疫のない人にはワクチン接種も無料で実施している。

厚労省 ※外部サイトに遷移します

風疹単体のワクチンはもう国内製造されていないので、該当すればMRワクチンを接種する。要するに、風疹クーポンを使って検査し陰性だった人は、はしかの予防接種も無料で受けられる、ということだ。

だが……医療機関でまず抗体価を調べ、低かった人だけがワクチンを打てるとなると、2回以上医療機関を受診しないといけない。忙しい現代人には“タイパ”が悪すぎて、接種は想定通り進んでいないようだ。

個人的には、対象年代で接種歴が明らかでない人には、検査なしに無料接種を実施すればいい、と考えている。免疫のある人に打っても何のデメリットもないし、感染が広がった場合の社会全体の損失を考えれば、接種費用のほうがずっと安くつくに違いないからだ。

あるいは自費接種だとMRワクチンは1回1万円弱かかるが、その場で済む。ただ、国内にいる限り、はしかにしても風疹にしても、そこまでの危機感はないのが普通だ。

それでも自費接種すべき人とは?

特にはしかについては2015年、日本は世界保健機関(WHO)から「排除国」に認定されている。国内で感染・流行が自然発生することがなくなったことを意味する。

しかし一歩日本から出ると、状況は大きく違う。WHOによれば2023年5月現在、世界194カ国・地域のうち少なくとも106カ国で、流行はずっと続いている。アフリカやアジアでは猛威を振るっているし、ヨーロッパでも半数近い国で流行中だ。

WHOによれば2023年5月現在 ※外部サイトに遷移します

ここ数年は、新型コロナのパンデミックで世界的に人の動きが止まり、流行国から排除国へのウイルス持ち込みも止まっていた。だが、これからはそうはいかない。

特に、インドやイギリスと行き来がある人や、その周囲の人は、具体的に用心したほうがよさそうだ。

新幹線のケースで印象付いてしまったインドだが、実際、アメリカCDCが発表している患者数ワーストランキング(2022年10月〜2023年3月)では断トツだ。2位の9倍にあたる6万8473例が報告されている。

アメリカCDC ※外部サイトに遷移します

イギリスも今まさに感染者が増加中だ。昨年の年間患者数は54例だったが、今年は4月20日には49例に到達、その3分の2がロンドン地区だ。コロナ前の2019年には880人の感染者が確認され、英国健康安保障局(UKHSA)は再び警戒を強めている。

はしかの感染源は「ヒト」のみだ。感染者がいなければ、感染は起きない。自分が感染源にならないためにも、海外との交流の多い人は、自費接種のコスパをよく検討してみてはいかがだろう。

英国健康安保障局(UKHSA) ※外部サイトに遷移します

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提供元:驚愕の感染力「はしか」40歳働き盛りが1番危ない|東洋経済オンライン

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