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2023.06.01

がんの多くは「腸に何を入れるか」で予防できる|リスクを「上げる食品」と「下げる食品」とは


消化器外科医の石黒成治氏は、がんについて「毎日、腸の中に何を入れるか、つまり食事が重要」と語ります(写真:takeuchi masato/PIXTA)

消化器外科医の石黒成治氏は、がんについて「毎日、腸の中に何を入れるか、つまり食事が重要」と語ります(写真:takeuchi masato/PIXTA)

日本人の死亡要因1位であり、ここ30年で急増している「がん」。最新の研究により、「がんの発症は、免疫力を高める生活習慣で防げる」とわかってきました。そんな「がん」について、消化器外科医であり、YouTube登録者数27万人超の石黒成治氏は、「毎日、腸の中に何を入れるか、つまり食事が重要」と語ります。

がん専門医として20年以上の外科治療や、最新の医学データをもとに、具体的な食事例までをまとめた最新刊『専門医が教える がんにならない食事法』から一部抜粋・編集してお届けします。

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「腸内環境」が崩れると、がんを生み出す

ヒトの体には、日々5000個~10000個以上のがん細胞が発生していますが、その細胞ががん化して固形がんになるには10年以上必要です。そのため、自分の免疫細胞ががん細胞を死滅させる時間はたっぷりあるはずなのです。がんになるということは長期にわたって自分の免疫がしっかりと働かずに生活していたというサインです。

免疫がうまく働かなくなる原因として重要なのは「腸内環境」です。腸の中には免疫細胞の70%が存在していますから、腸の環境を乱すような食事、運動不足、睡眠不足、ストレスなどが続いてしまうと免疫力は低下します。

腸内環境を改善するためには、腸の中に「何を入れるか」が一番重要です。がんを予防する効果をうたった食材、サプリメントがあふれていますが、実際に存在しているのは、がんになる確率をほんの少し下げてくれる食材だけです。例えば、ウコン(ターメリック)、ニンニク、クルミ、ブロッコリーは、がんになるリスクを下げるという研究結果が発表されています。

しかしそれらの食材をふんだんに使った新鮮なサラダや料理を食べるときに、添加物たっぷりのドレッシングを大量にかけて、同時にピザなどの加工された冷凍食品を食べ、甘い清涼飲料水を飲んでいては、その効果は発揮されません。がん予防には、がんのリスクを下げる食材を摂ることはもちろんですが、同時に、がんのリスクを上げる食材を摂らないようにすることが重要です。

がんのリスクを爆上げする食品(1):超加工食品

普段、スーパーやコンビニなどで売られている「超加工食品」(スナック菓子、アイスクリーム、惣菜パン、シリアル、冷凍ピザ、ソーセージ、ハンバーガー、インスタント麺など)は、消費量が年々上昇しています。これらは、腸内細菌のバランスを悪化させ、炎症を引き起こし、心血管疾患を含む多くの慢性疾患や、がんのリスクを高めます。

超加工食品は、高収穫量の植物性食品(遺伝子組み換え食品を含む)や通常の料理では使用されることのない、さまざまな加工糖(ブドウ糖果糖液糖など)、加工油、および加工たんぱく質が原材料の中心です。集約的な畜産からの動物の死骸からも材料成分が作られます。自然の食品に比べて、風味やうま味が少なくなっているので、香り成分、うま味成分、口当たりをよくしたり、保存期間を長くするための添加物も加えられます。

超加工食品には、食物繊維、ビタミンDなどの、がん予防に有益な栄養素が含まれません。しばしば高濃度の砂糖、脂肪、塩分が含まれます。さらに、潜在的な発がん性物質が発生している可能性があります。硝酸ナトリウムを含む、食肉の加工中に生じるニトロソアミンや、肉の加熱処理中で生じるアクリルアミドなどです。食品の包装からビスフェノールAなどの化学物質が移行している可能性もあります。

がんのリスクを爆上げする食品(2):ブドウ糖果糖液糖

ブドウ糖果糖液糖は、市販の清涼飲料水、フルーツジュース、ヨーグルト、乳酸菌飲料、めんつゆ、焼肉のたれ、ドレッシングなどのほとんどに入っており、工業的に作られた液状の糖です。果糖は果実に多く含まれている糖分で、砂糖の約1.5倍の甘さがあります。含まれる果糖が50%未満のものは「ブドウ糖果糖液糖」、50%以上90%未満のものは「果糖ブドウ糖液糖」と呼び名が変わります。

さまざまな商品に、このブドウ糖果糖液糖が使用されている理由は価格の安さです。砂糖はサトウキビなどから糖分を抽出して精製して作られるため手間と時間がかかります。現在のブドウ糖果糖液糖の原材料は主にトウモロコシで、アメリカもしくはブラジル産です。そのトウモロコシの90%は遺伝子組み換えで、まだ安全性が確かめられていません。

果物には果糖が含まれていますが、果物の成分の80~90%が水分のため、果糖の量は多くはありません。果物の果糖は腸内で吸収されるとすぐに分解され、代謝されてブドウ糖になりますが、腸からブドウ糖を直接吸収するのに比べると、血糖値の上昇やインスリン分泌を刺激しません。

果糖の代謝量には限界があり、一定以上の果糖が腸内に流入すると小腸で分解ができず直接肝臓に到達します。肝臓で代謝される果糖は、脂肪の合成を刺激します。果物から吸収される低濃度の果糖と、清涼飲料水などから吸収される高濃度のブドウ糖果糖液糖の果糖では、後者の方が肝臓への負担、脂肪の合成量が高くなります。

そして、果糖には「発がん作用」があることも示されています。小腸で吸収しきれなかった果糖は大腸に到達し、リーキーガット(腸もれ)を誘導、慢性の炎症を引き起こし、大腸がんをはじめとする様々ながんのリスクにつながります。

がんのリスクを爆上げする食品(3):人工甘味料

多くの清涼飲料水、調味料などに使用されている人工甘味料は、甘みを感じる舌の味蕾を刺激しますが、砂糖と比べてカロリーがほとんどないこと、砂糖に比べてコストが抑えられることから使用量は年々増加しています。主な人工甘味料はアスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースなどです。

多くの人工甘味料はカロリーゼロとうたわれており、腸から吸収されないため体にとっては無害と考えられています。しかし実際は吸収されなくても腸内細菌の組成を変え、糖尿病などの代謝異常を体に引き起こします。

そして人工甘味料の摂取とがんの関連もわかってきました。10万人以上のフランスの疫学的研究からの結果です。アスパルテームとアセスルファムKの摂取は、全がん罹患のリスク、肥満関連がんのリスク、特に乳がんのリスクの上昇を認めています。

もちろん単回の使用でがんになるということはありませんが、繰り返し食べたり飲んだりしているものに人工甘味料が入っている場合は、考え直す必要があります。

がんのリスクを最小化するもの(1):食物繊維

では次に、がん予防にプラスになる食品は何でしょうか? 

一言でいうなら「野菜・果物」です。免疫力を高く保つには「腸内の善玉菌」の存在が重要ですが、「善玉菌」は食物繊維が好物です。

食物繊維をもらえなかった場合、善玉菌の量は減少し、食物繊維をエネルギー源としなくても栄養を得られる細菌が増加します。これらの細菌は腸の表面を覆う粘液をえさにします。粘液は腸の細胞に直接食事物や腸内細菌や毒素などが接しないように腸内を保護する作用がありますが、病原性の高い細菌なども簡単に腸の壁を越えて体内に侵入してしまいます。

ごぼうなどのすじっぽい成分に含まれる不溶性食物繊維は、水分を吸収してふくらみ、腸の動きを刺激して便通を促進します。海藻や里芋などのネバネバした成分に含まれる水溶性食物繊維は、腸の中をゆっくりと移動し、血糖値の上昇を抑えます。

そして善玉菌は、水溶性食物繊維をより好みます。作り出される短鎖脂肪酸は、炎症を抑えがんを予防する効果のほか、血糖値を調整して糖尿病を予防します。水溶性食物繊維が特に豊富な食材は、(1)押し麦、(2)らっきょう、(3)アボカド、(4)アーモンド、(5)わかめなどの海藻類です。

がんのリスクを最小化するもの(2):植物栄養素

果物や野菜には色素成分、香り成分などの多くの化学物質を含みます。これらの化学物資には、数多くの健康上のメリットとなる成分が含まれます。果物・野菜の色素成分には多くの抗酸化物質作用があり、活性酸素やフリーラジカルによるカラダの酸化を防止します。

●赤い食品

トマトに含まれるリコピン、ビーツに含まれるベタレイン、イチゴに含まれるアントシアニンには、炎症を抑える作用、血糖値安定、脂質代謝改善、免疫調整作用があります。

●オレンジの食品

にんじんに含まれるαカロテン、βカロテンや、みかんに含まれるβクリプトキサンチンには、性ホルモンを調整する作用があり、乳がん、前立腺がんを予防します。

●黄色の食品

レモンやショウガ、パイナップルなどにはカロテノイド・ベタレイン・フラボノイドが含まれ、胃腸の運動を改善し、消化を助けます。

●緑色の食品

ほうれん草などの葉物野菜や、ブロッコリー、小松菜などのアブラナ科の野菜は、クロロフィル(葉緑素)、葉酸やビタミンKを豊富に含み、血液をサラサラにします。アブラナ科の野菜に含まれるグルコシノレートには抗がん作用があります。

●紫色の食品

なす、ブルーベリーには、アントシアニンを豊富に含み、学習能力、記憶能力、認知機能を改善したり、気分を良くします。ブルーベリーは炎症、細胞の劣化を抑える効果も注目されています。

もちろん、1つの野菜・果物にはさまざまな成分あり、植物栄養素同士の相互作用もあるため、単一のサプリメントよりも、なるべくいろいろな野菜・果物をホールフードの形で摂ることが重要です。1日400~600グラム相当の色とりどりの果物や野菜を摂取すれば多くの一般的ながんの発生率が減少します。

がんのリスクを最小化するもの(3):きのこ

きのこにはβグルカンと呼ばれる食物繊維が大量に含まれ、免疫力を活性化してがんや感染症から体を守ります。体内でがん細胞を発見するマクロファージやがん細胞を殺傷するナチュラルキラー細胞を活性化させる働きや、がん細胞増殖の抑制をするインターフェロンの分泌を促す作用もあります。きのこであればどんな種類のものでも効果は期待できます。また、抗アレルギー効果、抗菌抗ウイルス効果、抗うつ、抗高脂血症、抗糖尿病、血圧低下作用なども確認されています。

がんのリスクを最小化するもの(4):発酵食品

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発酵食品は、含まれる善玉菌により腸活効果があります。胃酸で大部分が死滅するため実際に腸に到達する菌はわずかですが、腸の中で短鎖脂肪酸を増やしたり、悪玉菌と競合して排出したり、腸に働きかけて抗菌物質を産生させます。

乳酸菌は、動物の腸管内や口腔内に存在する動物乳酸菌(ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料など)と、野菜果物などに付着している植物乳酸菌(キムチ、漬物、みそなど)がありますが、その菌がその人にとって好ましいものであるかどうかは、実際に腸内に入ってみないとわかりません。

動物由来の乳製品を摂取し始めたのは戦後になってからですので、遺伝子や世代間を引き継ぐ基本的な腸内細菌はそれほど変化していないと考えられます。日本人が安心して摂取できる発酵食品は、植物乳酸菌の作る麹、みそ、醤油、納豆、ぬか漬けなどです。これらは毎日積極的に摂取すべきなので、その質には十分に注意する必要があります。

●麹(こうじ)

麹で作る発酵食品は、体内での消化・吸収を促進し、発酵過程で必須アミノ酸やビタミンB群など多くの有効成分を作り出し、腸内での善玉菌の繁殖を助け、腸内環境を改善します。麹に、塩や醤油、玉ねぎなどを加えれば、添加物フリーでうま味たっぷりの安全な発酵調味料が作れます。

●みそ

高濃度のイソフラボンが乳がんのリスクを下げる効果が期待されますが、一年かけて完成される「天然醸造のみそ」に限られます。市販の多くは、アルコールや酵母エキスなどを添加し、約3ヶ月で発酵させて作ります。そして、風味を整えるためにアミノ酸、砂糖、カラメル色素、保存量、香料などが添加されます。購入の際はしっかりと確認して本物を選んでください。

●ぬか漬け

乳酸菌や酵母が増殖し、乳酸やアルコールが作られ独特の風味を持ちます。米ぬかに含まれるビタミン、ミネラルとともに、発酵する微生物もビタミンを合成します。特に一番含まれている乳酸菌は、腸管粘膜の表面を保護するムチンの合成を誘導し、病原体やウイルスの侵入を阻みます。

以上のことを知識として持ち、100%守ることは難しいかもしれませんが、がんになる確率を最大限に下げるために、80%気をつけるというマインドが現実的でしょう。

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提供元:がんの多くは「腸に何を入れるか」で予防できる|東洋経済オンライン

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