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2023.03.28

憂鬱な人は「やる気が出る仕組み」をわかってない|臨床心理士が説く「モチベーションを育てる」方法


モチベーションとエネルギーを育てる方法を5つご紹介します(写真:Kazpon/PIXTA)

モチベーションとエネルギーを育てる方法を5つご紹介します(写真:Kazpon/PIXTA)

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気分の落ち込み、不安、ストレス、自信喪失……普段の生活の中で、心の浮き沈みは誰もが経験することでしょう。

心理学者にして臨床心理士のジュリー・スミス博士は、2019年からメンタルヘルスについてのアドバイス動画を投稿し始め、現在SNS総フォロワー数は300万、寄せられた「いいね」の数は2000万超え、イギリス公共放送BBCで特集されるほどの人気を集めています。

科学的根拠に基づきながら、自身やクライアントが実践して役立つことがわかった知識を網羅的に紹介する初の著作『一番大切なのに誰も教えてくれない メンタルマネジメント大全』より、一部抜粋、再構成してお届けします。

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やる気について、まず知っておきたいこと

人生をうまく生きるためのスキルを集めて道具箱(ツールボックス)を作るとき、わたしたちはモチベーションをスキルの1つと見なしがちだ。しかしモチベーションはスキルではない。また、モチベーションは、生まれつき備わっているものではない。

多くの人は、何をすべきかがわかっていても、すぐやる気にはなれない。しばらくたっても、やる気になれない。時には目標に向かって意欲的になり、物事が正しい方向に進み始めるが、数日後にはその気持ちは薄れ、振り出しに戻ってしまう。

モチベーションが上がったり下がったりするのはシステムの欠陥ではない。それは人間であることの一部だ。感情と同じくモチベーションは現れては消えるものであり、つねに心の中にあるとは限らない。このことは、わたしたちの夢や目標にとってどういう意味を持つのだろうか。

脳はつねに体で起きていることに注意を払っている。心拍数や呼吸や筋肉に何が起きているかを察知し、そうした情報に反応して、目の前のタスクにどれだけのエネルギーを費やせばいいかを判断しているのだ。そうであれば、わたしたちは自分が思う以上に、感情に対して影響力を持っていることになる。行動の変化は脳の活動に影響し、ひいては感情に影響する。この連鎖を利用すればよいのだ。

「めんどくさい」という感情に対処する方法は主に2つある。

● モチベーションとエネルギーを育てる方法を学び、それらがより頻繁に現れるようにする。

● モチベーションが湧かないときでも、努めて自分のためになる行動をする。少々気が進まなくても、するべきことをする能力を身につける。

この記事では、1つ目の「モチベーションとエネルギーを育てる方法」を解説する。

<モチベーションの育て方>

モチベーションは単に、何かをする理由ではない。わたしたちはしばしば、変動する熱意や意欲をモチベーションと呼ぶ。あるものはそれを育み、あるものはそれをしぼませる。わたしたちは何をしたときに、モチベーションやエネルギーを感じるだろうか?

ここではモチベーションを上げるものを、いくつか紹介しよう。

通常の運動量を少しでも超える運動の効能

<体を動かす>

モチベーションは、脳の特定の場所から湧き上がるわけではなく、生まれつきの性格に備わっているものでもない。また、自分を動かすために欠かせないツールでもない。多くの場合、モチベーションは体を動かすことによって湧き上がってくる。

しかし、運動しようというモチベーションが湧かないときは、どうすればいいだろう? 運動を日常生活の一部として持続させるカギは、モチベーションが低くても始められる運動を見つけることだ。わずかな運動でも何もしないよりましで、通常の運動量を少しでも超える運動は意志の力を大いに高めることが、研究によってわかっている(Barton & Pretty, 2010)。

気楽にできて、喜びを感じられる運動を見つけよう。退屈な義務ではなく、貴重な時間を過ごしていると感じられるものを探そう。加えて、友達との付き合いや、いい音楽など、楽しみに思える要素を日常に取り込もう。

適度なものであっても運動をすれば、お返しにモチベーションが得られる。動きたくないときに運動するのはおっくうだろうが、体を動かすというシンプルな行為が、その日の残りの時間の「めんどくさい」という気分に与える影響は計り知れない。運動をするだけで、勝利を手にすることができるのだ。

<目標日記をつける>

セラピストはしばしばクライアントと共に目標を設定し、その達成を支援する。クライアントの中には、セラピーを受けるとモチベーションがかなり上がる、と言う人がいるが、その理由の1つは、セラピーによって自分の目標を思い出すことができるからだろう。目標を見失ったら、勢いはたちまち失われる。

目標とのつながりを保つことはとても大切だ。なぜなら、目標はつねに育まれることを必要とするからだ。日々、目標に立ち帰ろう。それには、日記をつけるといい。1日の始まりの1分間、目標を達成するためにその日にすべきことを1つか2つ、リストアップしよう。そしてその日の終わりには、今日を振り返って、数行書き記そう。この種の作業はそれほど時間がかからないので、継続しやすい。せいぜい数分ですむだろう。毎日それを行うことで、自分の行動に責任を持ち、目標に気持ちを集中させ続けることができる。

大きな変革はいっぺんに行えない

<タスクを小さくする>

大きなタスクは「めんどくさい」という感情を招くので、タスクは小さく、焦点を絞ったものにしよう。セラピーでは、クライアントは1つの課題だけを家に持ち帰り、それに集中する。人は一度に1つのことにしか集中できないし、したくないと思うことをする能力は限られているからだ。

しかし、当然ながら大半の人はこのルールを守ろうとしない。人生を全面的に見直さなければならないと考えて、大きな変革をいっぺんに行おうとする。だが、自分に過剰な期待をすると、燃え尽きたり諦めたりして、ついには絶望に陥る。そうなると再挑戦する可能性は低くなる。

長期的な目標に対するモチベーションが下がったときには、小さな報酬が助けになる。外発的報酬ではなく、内発的報酬だ。自分の努力には価値があることを認め、頑張っている自分を褒めてあげよう。そうすれば、自分が望ましい変化に向かっていることを自覚し、努力を続けることができる。

そうやって進歩や小さな勝利を認めることで、努力が自分の世界に影響を与えられることに気づき始める。自分に主体性があるというこの感覚は、エネルギーを回復し、努力を続ける助けになる。新しい習慣を身につけるには、小さなことから始めて、1つずつ定着させていくのが望ましい。健康的な行動を優先する習慣をひとたび身につければ、それが支えになるだろう。

<ストレスを管理する>

行動を起こすには、モチベーションを高めるだけでなく、誘惑や、目標と逆の方向へ進みたくなる衝動に打ち勝つことも必要だ。

たしか3歳か4歳の頃、祖父母の家を訪れると、祖父が動かなくなった芝刈り機を裏返して、刃の間に詰まった草を引き抜いていた。祖父はわたしへ言った。「絶対、その赤いボタンを押しちゃいけないよ!」

わたしは芝刈り機の横に座り、赤いボタンを見つめた。押しちゃいけない、押しちゃいけない。それを押したら、カチッといい音がするのだろうか、とわたしは考えた。ボタンの表面はとても滑らかに見える。押しちゃいけない。まるで磁石に引き寄せられるかのように、そのボタンを押した。途端に大きな音がして、芝刈り機の刃が動き始めた。運良く、誰も指を切り落とされずにすんだが、わたしはひどく叱られた。

誘惑に負けないために

望ましくない行動に焦点を合わせるのは、有効な戦略ではない。では、いい方向に変わろうとするときに、誘惑に負けないためには、何が助けになるのだろうか。

強力な戦略の1つは、ストレスをうまく管理することだ。ストレスが低く、心拍変動が高いときに、セルフコントロールは最もよく働く。心拍変動とは、心拍の間隔の変動のことで、高い(すなわち、心拍の揺らぎが大きい)ほうが正常だ。朝、ベッドから出たときやバスに向かって走るとき、鼓動は速くなり、その後、徐々に遅くなる。体は必要な活動に備えて準備し、それが終わると、休息や回復のために落ち着くのだ。しかしストレスの多い状況では、心拍は1日中速いままになる(すなわち、心拍変動が低い)。

誘惑に打ち勝ち、意志力を最大限に発揮するには、体と心を落ち着かせる必要がある。ストレスが強いと賢明な選択ができなくなる。さらには感情に基づいて行動し、目標から目を逸らしがちになる。つまり、睡眠不足や、うつ、不安、食欲不振の状態にあると、心拍変動は低くなり、目標を達成する可能性も低くなるのだ。

やる気が出る仕組みを理解すれば一生役に立ちます(写真:Funtap/PIXTA)

やる気が出る仕組みを理解すれば一生役に立ちます(写真:Funtap/PIXTA)

意志の力を高めるには、まずストレスを解消する必要があり、それには運動が最適だ。運動は即効性があり、長期的な効果が期待できる(Oaten & Cheng, 2006; Rensburg et al., 2009)。ストレスを解消し賢明な選択をするためのもう1つの重要な要素は睡眠だ。たった一晩、よく眠れなかっただけで、翌日にはストレスが高まり、集中力は低下し、気分は落ち込む。セルフコントロールはエネルギーを必要とする。睡眠が足りないと、脳はエネルギー不足に陥り、ストレスに対して脆弱になり、行動をコントロールしにくくなる。

羞恥心はモチベーションにとって有益ではない

<失敗との付き合い方を変える>

モチベーションをくじくもう1つの要素は失敗への恐れだ。ちょっとしたミスや脱線をしただけで自分を激しく批判したり攻撃したりすると、羞恥心や敗北感を覚えるようになる。

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羞恥心はモチベーションにとって有益ではない。自己批判や羞恥心にとらわれていると、自分は無力で不完全だと感じ、劣等感を覚える。そうなると、隠れたい、小さくなりたい、消えてしまいたいと思う。その感情は多大な苦痛をもたらし、逃げたい、避けたい、という強い衝動を生む。そうなると、もう一度立ち上がって挑戦するどころではなくなる。依存症に苦しむ人にとっては危険なことだ。

したがって、何らかの目標に向かって挑戦し続けたいのであれば、途中で失敗したときにどう対処するかを、慎重に考えておく必要がある。

うまくいかないと感じたら、セルフ・コンパッション(自分自身を思いやること)をしよう。セラピーでは、クライアントから次のような言葉をよく聞く。「わたしは意欲をなくし、怠惰になる」「わたしは何も成し遂げられない」「そんなふうに窮地から抜け出すのは、わたしには無理だ」。しかし、そうした自己批判はモチベーションを高めるどころか、うつを引き起こす可能性が高い。それを知ると、ほとんどの人は衝撃を受け、驚く(Gilbertet al., 2010)。セルフ・コンパッションは、失敗した自分に優しさ、敬意、正直さ、励ましをもって接することを意味し、モチベーションの向上とより良い結果につながる(Wohl et al.,2010)。

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提供元:憂鬱な人は「やる気が出る仕組み」をわかってない|東洋経済オンライン

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