2023.03.14
"太っている人"が知らない「心臓病」超怖いリスク|日本人の死因2位は「心臓病」!防ぐコツは?
コロナで急増した「メタボ」と「心臓病」の深い関係について解説します(写真:voronaman/PIXTA)
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生活習慣病、血管、心臓など内科・循環器系のエキスパートで「血管の名医」として知られ、日々多くの患者と接する医学博士の池谷敏郎氏。
テレビ番組『あさイチ』(NHK)、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)やラジオ番組などに多数出演し、楽しくわかりやすい解説が好評を博している。
過去15キロ以上の減量に成功し、その減量メソッドを全公開した15万部のベストセラー『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』に続き、『60歳を過ぎても血管年齢30歳の名医が教える 「100年心臓」のつくり方』を上梓した。
「人生100年時代」を最期まで満喫できるかどうか健康長寿のカギを握る「『心臓の健康』にいい生活」を、運動、食事、生活習慣、メンタルなどあらゆる観点から解説し、「100年もつ心臓」を作るための秘訣を全公開した1冊だ。
その池谷氏が「コロナで急増した『メタボ』の人に潜む『心臓病』の超怖いリスク」について解説する。
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日本人の死因第2位「心臓病」を予防するカギは?
「人生100年時代」ともいわれ、誰もがみんな長生きできるような時代がやってきました。しかし、ただ長生きすればいいということではなく、「元気で長生き」「健康で長生き」は、多くの人の望むことではないでしょうか。
そのカギを握るものこそが「心臓の健康」です。
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心臓病(心不全)は、日本ではがんに次いで死因の第2位、アメリカでは第1位です。世界的にも心臓病は死因のナンバー1です。
寿命に関わるだけに心臓の不調は恐ろしいことですが、ありがたいことに私たちは自分の力で心臓病を予防し、心臓を強くすることができます。それも日常生活の範囲でできることばかりです。
まずは、どんな生活習慣が「心臓の健康」に悪いのか、それを知ることが大事ですが、なかでも今回は、「メタボ」(メタボリックシンドローム)について取り上げたいと思います。
じつはコロナ禍で、リモートワークが増えたことで、メタボになってしまう人が増えています。実際に私の医院でも、メタボの患者さんは増えました。
しかし、メタボには「心臓病を引き起こす大きなリスク」が潜んでいます。「心臓の健康」を守るためには、メタボを解消することがとても重要なのです。
今回は、「メタボ」と「心臓病」の深い関係について「2つの側面」から考えていきたいと思います。
【1】メタボが「動脈硬化」を進行させる
「肥満が心臓に大きな負担をかける」というのは、みなさんご存じだと思います。
肥満の人は太っている分、広く体の隅々にまで多くの栄養や酸素を届けなければならないので、心臓は必死で血液を押し出さなければならず、それだけ負担が大きくなります。
心臓病は、アメリカでは死因の第1位です。これはアメリカが「世界一の肥満大国」であることに大いに関係していそうです。
肥満の中でも、とくに内臓脂肪の多い「メタボ」が問題です。
メタボとは、内臓脂肪の蓄積に加え、「脂質」「血圧」「血糖」のうち2つ以上の項目が基準を超えている状態です。
メタボになると、内臓脂肪からさまざまな生理活性物質が分泌され、それにより、血糖や血中脂質の異常、高血圧などが引き起こされ、動脈硬化が進んで心臓にも負担をかけます。
「動脈硬化」はこんなメカニズムで起こる
メタボの人に起こりやすい「動脈硬化」の進行を表した図。血管の内側に「プラーク」(かたまり)が生じ、血管が狭く、硬くなる。さらに「プラーク」が破裂すると、そこに血栓が生じて血管が詰まるリスクが高まる(図表『「100年心臓」のつくり方』より)
ここで、「動脈硬化」について、ちょっと説明しておきましょう。
「動脈硬化」とは、まさに文字どおり、血管の内側にコレステロールなどが付着してコブ状の「プラーク」(かたまり)が生じ、血管が狭く、硬くなった状態です。
この状態になると、血液の流れが悪くなります。
それだけでなく、傷つきやすいプラークが破裂すると、そこに血栓が生じて血管が詰まってしまうリスクが高まります。
冠動脈(心臓の血管)が動脈硬化を起こしてしまうと、心臓に十分な血液が流れず、最悪の場合は心筋梗塞などの怖い病気を引き起こしてしまいます。
ですから、なんといっても冠動脈をしなやかに保つこと(動脈硬化が起きていない状態)が「心臓の健康」にとって重要なのです。
肥満やメタボを解消することは、生活習慣病の元凶となる「動脈硬化」を予防し、心臓をラクにしてあげるために欠かせないポイントです。
それに加えて、メタボと心臓病の関係について付け加えたいのが、「ストレス」との関連です。
【2】メタボの人は「ストレス過多」の危険性も
メタボは「自律神経」とも深く関わっています。自律神経には緊張しているときに優位になる「交感神経」と、リラックスしているときに優位になる「副交感神経」があります。
ストレスを感じて「交感神経」が過度に緊張すると、「ノルアドレナリン」が分泌されて、これが血圧を上げたり、血糖値を下げるインスリンの働きを邪魔したりするなどして、メタボのリスクを増やしてしまうのです。また、それが「心臓の病気のリスク」も増やしてしまいます。
実際に、メタボの人は交感神経がより活性化していることがわかっています。
つまり、メタボというだけで、「動脈硬化」が進むだけではなく、交感神経の緊張によって、「ストレスをため込んだ状況」になってしまっているのです。
メタボの人こそ「ストレスをためない生活習慣」を
ですから、メタボそのものの解消がまず大事であるのと同時に、メタボの人こそ「交感神経の緊張をさせない=ストレスをためない生活習慣」を心がけることが大切なのです。
特別なことでなくても構いません。家でゆっくりお茶を飲むとか、友達と会っておしゃべりをするとか、何か自分がリラックスできること、心が休まることがあれば、それでOKです。
できれば、その方法が「複数」あったほうがいいですね。
メタボは男女共に年齢を重ねるごとに自然に増加し、年率約6〜8%前後増加するのが一般的といわれています。
しかし、2019年度から2020年度にかけては約13~17%増と、例年の2倍程度の増加率であることが明らかになっています。
メタボは男女共に年齢を重ねるごとに年率約6〜8%前後で自然増加するといわれている。しかし、2019年度から2020年度にかけては約13~17%増と、例年の2倍程度の増加率であることが図からわかる(図表『「100年心臓」のつくり方』より)
「コロナで家にいる時間が増えたから仕方がない」という人もいるのですが、メタボについてもっと危機意識をもってほしいと思います。
私自身、36歳のころはメタボでした。しかし、医者である自分が生活習慣病にかかってはいけないと生活習慣改善に取り組み、克服した経験があるのです。
コロナで一変した生活を見直し「100年心臓」を
新型コロナウイルス感染症により、私たちを取り巻く環境や生活習慣、心理状態などが、これまでとは大きく変化しました。
コロナにより拍車のかかった「過食」や「運動不足」などの悪しき生活習慣は、「内臓脂肪の蓄積」とともに、「高血圧」や「糖尿病」「脂質異常症」などの「動脈硬化の危険因子の悪化」につながります。
さらに、一変した生活は「心の乱れ」を引き起こし、ストレスとなって自律神経に「よからぬ影響」をもたらします。これらは「心臓の健康」にとって大きなマイナスです。
そんないまだからこそ「『心臓の健康』を思いやり、生活習慣の改善を心がける」ことがなによりも重要です。
若々しく生きて「100歳を達成する」ために、食事、運動、睡眠、そしてメンタルを見直し、「心臓にやさしい生活」を今日から始めてみませんか?
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提供元:"太っている人"が知らない「心臓病」超怖いリスク|東洋経済オンライン