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2023.03.02

「治療後の職場復帰」職場と当事者が配慮すること|症状の悪化で再び休業してしまうことを防ぐ


病院と長く付き合い続けながら働き続けるために注意すべきこととは(写真:shimi/PIXTA)

病院と長く付き合い続けながら働き続けるために注意すべきこととは(写真:shimi/PIXTA)

現代日本は超高齢化社会に伴い、労働力の高齢化が進行しています。それに伴って疾病を抱えながら働く方の割合も増加していますが、診療技術が進歩したことにより、がんなどの疾患を抱えていても「病気と長く付き合いながら働き続ける」ことが可能になっています。

治療と仕事の両立支援

本人の希望に沿った働き方をしやすくなっている昨今の職場環境は喜ばしいことですが、その反面、疾患の治療後に職場復帰したときに、復帰そのものがうまくいかない場合や、折角復帰しても求められる能力を十分に発揮できない場合も少なくありません。以前は新型コロナウイルス感染症後の職場復帰について少し触れさせていただきましたが、今回は「治療と仕事の両立支援」をテーマに、何らかの疾患によって一時的に職場を離れた後、どのように職場復帰していけばよいかについてお伝えできればと思います。

まず一般的な両立支援の流れですが、労働者の申し出によってスタートします。そのため事業者側は、労働者が安心して相談できるよう窓口や担当者の存在を研修会などで周知することが必要です。また病気や休養を申し出たとき本人が不利益な取り扱いを受けないように、プライバシーが保たれるよう配慮することを担当者を含めた両立支援に関わる人全員に十分な教育研修を行っておく必要があります。さらに、休業によって収入が減り治療費などの経済的な問題が負担になることで申し出を行えない方もいらっしゃるため、保険や手当金についての制度を周知しておきましょう。

無事に申し出が受け入れられ、治療が進んで復帰を考える時期になると、労働者が必要な情報を集めて事業者に申し出る必要があります。このとき、ただ復帰するだけでなく、職場で求められる業務遂行能力をなるべく取り戻し、症状の再発や悪化で再び休業してしまうことを防ぐために、本人と主治医、産業医、事業者、そしてソーシャルワーカー等の社会的サポートのできる職種の連携をいかにうまく行うかが大切になってきます。

職場復帰の前に明確にしておくべきこと

連携がうまくいかないと、例えば主治医が病気そのものの回復の程度だけで職場復帰可能であるかの判断をしてしまい、職場が求める業務がまだ行えないうちに復帰が進んでしまうことがあります。そのため、あらかじめお互いに情報提供をじっくりと行うことで、十分な業務遂行能力があるかを見極めてから進めていく必要があります。

復帰の進め方の具体的なポイントはいくつもあります。病気を抱えているからといって事業者が配慮しすぎると、期待する仕事ができていないのにそれを指摘できないことで、本人の意欲が削がれたり、周囲の不満や負担が溜まったりすることにも繋がりかねません。

これを防ぐため、まず職場復帰の判断基準を事前に明確にしておきましょう。週○日勤務できるようにする、安全に通勤できる、生活リズムが安定している、注意力や集中力といった業務遂行能力が回復しているなど、目標となる項目を設定し、それらをクリアできるように職場環境を調整することが大切です。

はじめは現実とのギャップからうまくいかないことも多々ありますが、本人のみならずプライバシーに配慮しつつ「復職後状況報告書」などで周囲の声(職場での様子や業務の進捗、残業の有無等)を取り入れ、産業医等とこまめに面談を行うことで少しずつ目標に近づけていきましょう。

労働そのものに対するサポートとしては、事務作業など重労働を避けた業務にすることや、短時間勤務からはじめること、在宅勤務の割合を増やすことも有効です。

実際に働いてみないとわからない点も多い

疾患によっては特別な措置が必要な場合もあります。例えば大腸がんの手術後で人工肛門がつくられた場合、トイレに近い席に配置換えをするなどの小さな工夫が労働者の助けになることもあります。また定期的に抗がん剤治療のために通院する必要がある方もいらっしゃるため、主治医と連携して治療のスケジュールをもとに業務のスケジュールを調整し、負担なく医療機関に通えるような体制を作ることも重要です。

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このような問題点は、実際に働いてみないとわからない点も多いため、休職期間に「お試し」で出社することで問題点を洗い出すことも有効です。短期間もとの職場に出勤するだけでなく、勤務時間と同じ時間帯に自宅等で軽い業務を行う(模擬出勤)、自宅から職場近くまで移動して一定時間過ごして帰宅する(通勤訓練)こともできます。

なお、参考資料としては厚生労働省が「治療と仕事の両立支援ナビ」という専門のポータルサイトで詳しく各種案内をしており、ガイドラインとして「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」、その参考資料として「企業・医療機関連携マニュアル」を公開しています。詳細な制度や、具体的な様式例がどのようになっているかなどについて整理されていますので、事業者だけでなく、両立支援を考えている方は一度目を通していただけたらと思います。疾患にかかわらず、誰もが自分の意欲に沿った働き方のできる社会になっていけばと願っています。

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提供元:「治療後の職場復帰」職場と当事者が配慮すること|東洋経済オンライン

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