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2023.03.01

【老眼】「メガネがつらい」という人に伝えたい事|「遠視でずっと裸眼」は将来、認知症のリスクに


着けていて快適な「遠近両用メガネ」の選び方を紹介します(写真:daboost/PIXTA)

着けていて快適な「遠近両用メガネ」の選び方を紹介します(写真:daboost/PIXTA)

最近、老眼を自覚しはじめたけれど、まだシニア世代ではないし、できることなら老眼鏡はかけたくない、何とかして予防したいと思っている人もいるかもしれない。だが、早めに老眼を受け入れて、メガネやコンタクトレンズを早い段階から取り入れることで生活が楽になったり、肩こりや頭痛などの不調が改善したりする事例があるという。

スマホ時代の「いい目」についての新定義とともに、最適なメガネの選び方について、老眼用のメガネ選びに詳しい眼科医の梶田雅義医師(梶田眼科院長)に話を聞いた。

「目が悪い」というと、ほとんどの人が近視をイメージする。かつて、視力検査では遠くが見える目ほど「いい目」とされていたためだ。ところが、スマホを多用し、デスクワークにパソコンが欠かせない現代における「いい目」とは、むしろ近視だと梶田医師は言う。

近くがよく見えたほうがいい

「スマホや家の中、バスや電車の掲示板など、いまや必要な情報のほとんどは目から15センチから4メートル程度の中近距離にしかありません。とくによく見るスマホは、目から15~20センチの距離。そうした時代において、遠くが見えても近くが見えづらい遠視は生活しにくい。近くのものが楽によく見える近視の目こそがいまの時代の『いい目』といえます」(梶田医師)

近視の人は近くは見えるが遠くがよく見えないために、メガネ作りでもつい、「いまよりも遠くが見えるようにしたい」と思いがちだ。メガネ選びで梶田医師が重視するのは、「視力をよくばらない」ことだという。

「自分の仕事環境や生活環境をふまえて、『快適さ』を優先してメガネのレンズの度数を設定するといいでしょう。テレビとの距離、パソコン作業中の画面との距離、車の運転など、どこにピントを合わせるかで必要な度数も変わってきます」(梶田医師)

かつては「いい目」とされた遠視の人は、自分はいい目だからと裸眼で頑張り続けないことが大切だ。65歳を過ぎてしまうと、そこからいざ、メガネをかけようと思っても、体がメガネに慣れることができなくなってしまうという。メガネに慣れるということは、自転車に乗ることと似ているのだ。

「遠視で裸眼のままメガネをかけずに年齢を経てしまうと、73歳ぐらいで認知症の症状が出てくる人がいます。『メガネをかけてしっかり見る』ということは認知機能を高め、認知症を予防する観点からも重要です。できるだけ早い時期からの最適なメガネ選びが大切です」(梶田医師)

遠くに目のピントを合わせるときは交感神経が、近くにピントを合わせるときは副交感神経が働くという自律神経の仕組みがある(詳しくは、前回の記事参照)。

前回の記事 ※外部サイトに遷移します

スマホやパソコンなど近距離を凝視することの多い現代の生活では、自律神経もアンバランスになりがちだ。とくに遠視の人に影響が大きいという。遠視で老眼症状が出ても無理をして裸眼で頑張ってしまうと、ひどい頭痛や肩こり、目の奥の痛み、全身の倦怠感、ときにはうつ状態などの体調不良、心身障害を引き起こす例もある。

かつて、自身も遠視だったという梶田医師も、メガネをかけるようになる35歳以前までは原因不明のひどい肩こりや冷え、不眠などに悩まされ、日々、目薬と湿布薬に世話になりっぱなしだったという。

「眼科医にならなかったら、この気づきはなかったかもしれません。それまで肩こりや頭痛などに悩まされていた患者さんたちが、メガネをかけるようになったら、すっかりよくなったという話を聞いて、これは目が原因なのかもしれないと気づきました。私自身もメガネによって不調が改善され、人生が変わったといっても過言ではありません」(梶田医師)

最適なレンズの処方により、長年悩まされていた不調から回復し、性格も明るくなり、人生そのものが好転していく人たちをこれまで数多く見てきたという。

35歳前後の若い世代でも老眼が気になりはじめたら、遠近両用のメガネやコンタクトレンズを検討してほしいという。とくにシステムエンジニアなどの職業で手元での細かい作業が多い人や、子育て中の人には必須だと梶田医師は言う。

「幼い子どもは親の面前、スマホよりもさらに近い距離によく近づいてきます。そのときに、よく見えないと親子のスキンシップやコミュニケーションもうまくいかなくなることがあり、子どもへの愛情を感じにくくなる恐れもある。子育て中ほど、遠近両用メガネや遠近両用コンタクトレンズを使ってほしいです」

職業や生活スタイルで快適な視力を

最適なメガネ作りで重要なのは、視力ではなく、「見たい距離がよく見える」ということだ。どこを見るともなくボーッと見ているときにピントが合う「調節安静位」は1メートル程度のところにあるが、これをメガネによって、日頃使うパソコン画面やテレビ画面の位置に合わせる。

「最高視力を目指すのではなく、職業や生活スタイルに合わせて、快適な視力や快適な毎日が送れるメガネを作ることが重要です」(梶田医師)

では、そのメガネ作りに関して、意外に多くの人が知らないのは「眼科医で自分に合ったメガネの処方箋を作ってくれる」ということではないだろうか。

メガネやコンタクトレンズを作る際は、いきなりメガネ店に行くのではなく、まずは眼科医を受診し、白内障や緑内障などの病気による視力の低下ではないことを確認してから、メガネの処方箋を作ってもらうことが大切だ。

このメガネの処方箋は眼科医だけでなく、「眼鏡作製技能士」という国家資格をもった人も作製できる。眼鏡作製技能士はメガネの作成に関する最適な提案・販売・ケアを行う総合エキスパートだ。眼科医を受診後、眼鏡作製技能士のいるメガネ店で処方をしてもらってもいいという。

メガネ選びにおいて梶田医師は、手元が見える専用の老眼鏡でなく遠近両用メガネを勧める。それは、老眼鏡のように、かけたりはずしたりする手間が省けることのほかに、最新鋭の遠近両用メガネはその進化により、もはや「老人のメガネ」という概念にはないからだという。

「近年は、1枚のレンズに遠くも近くも中間距離にも焦点が合うように、複数のレンズの機能をまとめた高性能の遠近両用レンズが普及しています。レンズは薄くて境目もなく、老眼用レンズと周囲に悟られずに使うことができます」(梶田医師)

遠近両用コンタクトレンズも進化している。近くも中間距離も遠くも薄い1枚のレンズで快適に見える設計になっている。左右の目の度数差が大きい場合や強い乱視がある場合などはコンタクトレンズのほうが調整しやすいという。

子どもでも自分でコンタクトレンズの出し入れができれば、使用は可能だ。7歳ぐらいから自分で着脱をして使っている子どももいるという。

「弱視のお子さんは視力の発達を促すために、かなり早くからコンタクトレンズの使用を勧めています。視力の発達は9歳頃に終わるため、できれば早めに1歳ぐらいから大人が着脱をして着けてあげたほうがいい。視力の発達もメガネよりコンタクトレンズのほうがいいとされています」(梶田医師)

子どもでもメガネやコンタクトで視力を調整すると、「見えやすくなった」「疲れにくくなった」など、大人と同じような感想を話すという。

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一度作った遠近両用メガネもコンタクトレンズもずっと使えるわけではない。老眼の進行が止まる60歳頃までは、自分の目の変化に合わせて定期的にレンズを作り直す必要があるという。3年に一度程度は眼科医を受診してチェックを受けると安心だ。

快適に見えることは、QOL(生活の質)を上げるだけでなく、認知症予防など人生100年時代に健康寿命を延ばすことにもつながる。手元の見えにくさを感じたら、頑張りすぎずに、早めにメガネやコンタクトレンズを検討したい。

関連記事:【老眼】40代で発症、進行を緩やかにする対策5つ ※外部サイトに遷移します

(取材・文/石川美香子)

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梶田眼科院長
梶田雅義医師

1983年、福島県立医科大学卒業後、カリフォルニア大学バークレー校研究員などを経て、2003年に梶田眼科開業。東京医科歯科大学医学部臨床教授、日本眼光学学会理事、日本コンタクトレンズ学会常任理事の経歴があり、現在も日本眼鏡学会評議員などを務める。全国から多くの患者さんが訪れ、テレビや雑誌などのメディアでも活躍中。

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提供元:【老眼】「メガネがつらい」という人に伝えたい事|東洋経済オンライン

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