2023.02.20
周りに好かれる人が「必ずしている」怒りの対処法|怒ったり叱ったりした相手からも好かれる作法
その怒り、「マウントをとっているだけ」と思われているかも(写真:horiphoto/PIXTA)
累計250万部以上の書籍を手がける編集者である一方、ドラァグクイーンとして各種イベント、メディア、舞台公演などに出演する村本篤信氏による連載「話しやすい人になれば人生が変わる」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。
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怒るとき、叱るときは、必ず相手の事情にも耳を傾ける
「話しやすい人になるため、自分が話し手になるときに気をつけなければいけないこと」を、シチュエーション別にお伝えしたいと思います。
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今回はまず、誰かに対して怒るとき、誰かを叱るときに気をつけるべきことを考えてみましょう。
話しやすい人と思われたいのであれば、絶対にしてはいけないのは、一方的、感情的に怒りをぶつけること、叱ることです。
理由を話しもせず、事情や言い分を聞きもせず、いきなり怒りだす人や相手を叱りつける人が、話しやすい人とはほど遠いことは、おそらくおわかりいただけるはずです。
恐がられたり一目置かれたり、あるいは「厳しいけど本当は優しい人」「直情的だけど表裏がない人」などと評価されることはあっても、話しやすいと思われることはほとんどないでしょう。
では、「話しやすい人」として、誰かに怒ったり叱ったりするにはどうしたらいいのか。
ここでも大事なのは、相手の話を聞くことではないかと思います。
相手の言動に腹が立ったのであれば、なぜそういうことをするのかを聞いたうえで、冷静に「できればそういうことはやめてほしい」という要望や、その理由を伝える。
相手が何らかのミスを犯したのであれば、なぜミスを犯すに至ったのか、その経緯や事情を聞いたうえで、ミスの再発を防ぐための方法を考え、伝える(もしくは本人に考えさせる)。
そのような形であれば、怒ったり叱ったりした相手からも、話しやすい人だと思われる可能性は高くなるでしょう。
もっとも、人間には、どうしても我慢できず、いきなり感情を爆発させてしまうことがあります。
あるいは、いきなり怒ったり叱ったりしたほうが、相手の脳に「これはやってはいけないことだ」「今度から気をつけなければいけない」という情報が強烈にインプットされ、結局は相手のためになるかもしれません。
ただ、そのような場合でも、後で必ず相手の言い分にきちんと耳を傾けること。
それができれば、「この人とは話したくない」と思われることは少なくなるでしょう。
もちろん、「大勢の人の前で」「ネガティブなだけの言葉で」怒ったり叱ったりするのはNGです。
「見せしめのため」「マウントをとるため」に人前で誰かを叱るというのは、他者を支配するためにしばしば用いられる手段ですが、それによって表面的に相手を萎縮させ、従属させることはできても、決して本当の意味で心を許してもらうことはできません。
「だからお前はダメなんだ」などと頭ごなしに言う人より、「ここに気をつけたほうが、もっとあなたにとってプラスになると思う」と言う人のほうに、たいていの人は良い感情を抱くはずです。
怒るとき、叱るときは、あまり多くの人はいない場所で、ポジティブな言葉を交える。
それも、怒ったり叱ったりした相手からも、話しやすい人だと思われるポイントの一つだといえるでしょう。
などと、知ったようなことを書いていますが、私自身は、人に対して怒ったり叱ったりすること自体が苦手です。
他人に直接怒ったことは、特に大人になってからは数えるほどしかありませんし、子どもや部下がいないせいか、誰かを叱ったこともほとんどありません。
腹が立つことや相手のミスによる被害を受けることがあっても、「腹は立ったけど、冷静に考えたら、別にわざわざ怒るほどのことでもないよね」「まあ、人間だから失敗もあるよね。自分もよく失敗するし」「自分でダメだと気づかないと、なかなか人間、変われないよね」などと考え、黙って放置したり、「ミスを責めるより、先にミスをカバーする方法を考えないと」と思ったりすることが圧倒的に多いのです。
このように、めったに怒ったり叱ったりしないことこそが、私が比較的いろいろな方から「話しやすい」と感じていただけている、非常に大きな理由の一つになっているとは思います。
ですから、話しやすい人になるためには、そもそも怒ったり叱ったりしないことが一番……だといえるかもしれませんが、それが人として正しいあり方なのかどうかは、私にもわかりません。
謝るときは言い訳をせず、謝罪に徹する
では、逆に、自分(あるいは自分の身内や部下など)が誰かを怒らせたり、傷つけたり、ミスをしたりして謝らなければならなくなったときは、どうすればいいのでしょう。
ここで大事なのは、「言い訳をせず、きちんと謝ること」です。
当たり前のようですが、これができない人は少なくありません。
自分の非を認めないことで、自分自身の価値やプライドなどを守ろうとする心理が働いたり、「非を認めたらこっぴどく怒られたり、損賠賠償を請求されたりするかもしれない」という恐れが生まれたりするため、明らかに自分に非があっても、素直に謝ることができないのです。
もちろん、いろいろと言い分はあるでしょう。
たとえば、遅刻。
「電車が事故で大幅に遅延して……」とか「道で困っているおばあちゃんを助けて……」など、明らかに原因が本人以外にある場合はもちろん、一見、その人自身に原因がある場合でも、「連日忙しくて、どうしても朝起きられなかった」「出がけに、干さなければいけない洗濯物があることを思い出した」「子どもやペットが言うことを聞いてくれず、なかなか家を出られなかった」など、本人にとっては不可抗力としか思えない理由や事情が、きっとあるはずです。
しかし、どのような理由や事情があろうと、「それをわかってほしい」という気持ちを一度ぐっと飲みこんで、まずは「遅れてすみません」としっかり謝りましょう。
相手にとっては「あなたが遅刻した」という事実のみが重要であり、あなた側の理由や事情などは、基本的にはどうでもいいからです。
謝罪した直後に、理由や事情を伝えるのもNGです。
せっかく謝っても、すぐ後に言い訳をしたのでは、謝罪をした意味がなくなってしまいかねません。
理由や事情を話すのは、謝罪後に相手から訊かれた場合のみ。
どうしても相手に理由や事情を知ってほしいのであれば、謝罪後しばらく時間がたち、相手の怒りなどがしずまってから「実は」と話すようにしましょう。
やや姑息な手段ですが、後日怒っている本人に伝わるよう、その人と近しい別の人に事情を話してしまうのもありかもしれません。
「怒るとき、叱るときは相手の事情を考慮し、謝るときは言い訳しない」となると、自分ばかりが損をしているような気持ちになるかもしれませんが、残念ながら、世の中というのは、往々にして不平等なものなのです。
「自分が正しい」と信じているのは本人だけ
ちなみに私も、子どものころはかなりの言い訳番長でした。
自分の言動やミスを親や先生などから咎められ、自分としては「そんな言動をとった(そんなミスをした)正当な理由」だと思っていることを伝えているだけなのに「言い訳をするな」と叱られるたびに、「事実を話しているのに、『言い訳』の一言で片づけられるのは理不尽だ」と思ったものです。
でも年齢を重ねるにつれ、わかってきました。
法廷で争っているならともかく、人と人とのコミュニケーションにおいて、怒っている相手や対立している相手に対し、「自分の正しさ」を主張することは、百害あって一利なしです。
人は、結局は感情の生き物であり、「正しい人」を好きになったり、話しやすいと感じたりするわけではありません。
誰かに腹を立てたり迷惑をかけられたりしたとき、相手が謝りもせずに言い訳ばかりしていたら、おそらくみなさんも「こんな人とはまともにコミュニケーションできない」と思うでしょう。
そもそも、「自分が正しい」と信じているのは本人だけであり、実際には本人の言動に問題があったり、相手やほかの人からは「あの人、自分が正しいって言っているけど、明らかにあの人のほうがおかしいよねえ」と思われたりしている。
そんなケースは山のようにあります。
ですから、基本的には、謝罪をするときは謝罪に徹し、どうしても自分の気持ちが処理しきれないときは、自分の事情を静かに聞いてくれそうな人(つまり、あなたにとっての話しやすい人)に聞いてもらいましょう。
ただ、これはあくまでも、「話しやすい人だと思われたい相手」「大事にしたい相手」への対応です。
世の中には、相手が謝れば謝るほど怒りを増幅させたり、謝罪につけこんでいろいろな要求をしてきたりする人もいます。
そのような人に対しては、ときには毅然とした態度をとることも必要です。
アドバイスをするのは、相手から求められたときだけ
次に、誰かに対してアドバイスをするときに、気をつけるべきことを考えてみましょう。
アドバイスに関して、ぜひ心に留めておいていただきたいのが、「望まれてもいないのにアドバイスをしない」「上から目線でアドバイスをしない」ということです。
もちろん、ほとんどの人は、良かれと思ってアドバイスをしているつもりであり、「自分が上から目線でアドバイスをしている」という意識はまったくないでしょう。
しかし、何か問題や悩みを抱えて困っている最中の人にとって、他者からの言葉は「今、そうした悩みを抱えていない、お気楽で恵まれた人たちからの無責任で偉そうな言葉」に聞こえてしまいやすいのです。
ですから、相手がどんなに悩み苦しんでいても、「どうしたらいいと思う?」などと訊かれないかぎり、まずは話を聞くことに徹すること。
そして、アドバイスを求められたときには、「今、自分が言おうとしていることは、相手はとっくに知っている」「今、自分が言おうとしていることは、誰にとってもあてはまる正解ではない」ということを頭の片隅に入れておくだけで、言葉の選び方や伝え方が、少し変わってくるかもしれません。
たとえば、単に「~すればいいじゃん」と言うのではなく、「とっくに知っているかもしれないけど」「とっくに試したかもしれないけど」といった前置きを入れたり、「私だったら~するかもしれない」「正解はわからないけど、私は~するといい気がする」といった言い方をすれば、相手が受ける印象はかなり違うはずです。
ただ、ごくたまに、アドバイスを求めながらも、何か言われるとすぐ拒絶・否定するわがままな人や、どんなに言葉を選んでアドバイスをしても「上から目線」としかとらえられない、被害者意識の強い人がいます。
それは「相手が悪かった」「相性が悪かった」と思って忘れましょう。
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提供元:周りに好かれる人が「必ずしている」怒りの対処法|東洋経済オンライン