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2023.02.10

友人からの悩み相談を「聞き疲れしない」コツ|「自分自身を重ね合わせて同感」してはダメ


悩みごとを聞いていて「疲れ」を感じてしまうのは、受け止めかたのせいかもしれません(写真:takeuchi masato/PIXTA)

悩みごとを聞いていて「疲れ」を感じてしまうのは、受け止めかたのせいかもしれません(写真:takeuchi masato/PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」
の大野萌子です。

相談業務をしている私は、よく「悩みごとを聞いて、つらくなりませんか?」という質問を受けます。おそらく、人の話を聞いてつらくなった経験があるからこそ生まれる質問だと思いますが、その答えは「NO」です。

もちろん、集中して相手の話を聴くので、そうした意味ではとても疲れます。しかし、伺った内容に対して気持ちが疲れるかというと逆で、勇気をもらったり、生きる本質を真剣に見つめなおしたりできる、プラス面のほうが圧倒的に多いのです。

疲れてしまう理由

おそらく、疲れてしまうと感じる方々は、相手のためにと思い、問題解決のためのアドバイスを一生懸命に考えるからかもしれません。誠実な方は、人から相談を受けたときには、真摯に答えなくてはと苦しくなるのも当然です。しかし、苦しくなるのは、悩みやつらさを、あたかも「自分のこと」としてとらえてしまうからです。以前、同じような経験をした、似たような状況で苦しんだ経験があれば、それがよりリアルに感じられます。これを「同感」といいます。

要するに、今まで経験した自分自身のことを重ね合わせることで、「わかる、わかる。私も同じように思う」という感覚を強めるのです。例えば、仕事で失敗して落ち込んでいるという話を聞き、自分が仕事を失敗して落ち込んだときの感情と重ね合わせて反応します。相手のエピソードを通して、過去の自分の感情を蘇らせ、一緒になって感情の波にのまれることになります。

しかし、実際には同じ気持ちであるはずがなく、似たような状況下での自分の気持ちを思い出しているだけで、相手の気持ちとは異なります。さらに、自分の経験や知識をもとに、相談してきた相手にアドバイスをしたくなります。「同じことを経験したからこそいえる」と、自信満々に、そして「解決してほしいと願えばこそ」「相談される頼れる存在でありたいからこそ」気持ちも入ってしまい押し付けがましくなりがちです。そして、相手がそのアドバイスを実行しようとしないのなら、怒りさえ覚えてしまうのです。

「同感」ではなく「共感」を

では、どうしたらよいのかというと、「同感」せずに「共感」すればいいのです。同感が「私もそう思う」と話を聞く側が主体になってしまうのに対し、共感は「(あなたは)そう感じたんだね」「そうしたことがあったんだね」と相手主体のかかわり方です。

共感の場合は、聞いている側の考えは基本無視です。人間なので、感情が動かないということはありませんが、それでも、「自分だったら……」とか、「そういうときは、こうすればいいのに……」という考えは封じ、相手が何を訴えているかに気持ちを集中させます。そうした対応をすることに距離感を覚え、冷静がゆえに、冷たい対応に思えるかもしれませんが、これこそが相手を尊重する関わり方なのです。

相手を受け止めるためには、一定の距離間が必要です。ずかずかと境界を越えて相手の領域に踏み込むことも避けられます。相手主体のかかわり方は、正確かつ純粋に相手の思いを受け止めるための集中力は必要なものの、自分の気持ちと切り離しているので、引きずられて疲れることはありません。

相手も自分の言いたいことや気持ちを受け止めてもらえる感覚を得られるので、安心して気持ちを吐露することができ、その結果、気持ちの整理ができて解決に向かいやすくもなります。

では、いかなるときもアドバイスはいらないのでしょうか。親身になることは相手を思っているからこそで、どうにかしてあげたいと意見したくなることもあるでしょう。しかし、残念ながら、そのエネルギーは無駄に終わることが多いのです。なぜなら、答えはもうすでに相談している人の中にあるからです。

相手が答えを求めていることは実は少ない

相談や質問の形態をとっていても、相手が答えを求めていることは実は少ないのです。「自分の置かれた状況を理解してほしい」といった「話を聞いてほしい」という思いであることが多く、実際に、ハラスメント等で訴えがあるケースでさえも、このパターンは半分くらいあります。

また、「答えは決まっているのだけれど、話すことによって整理したい」もしくは、自覚がないだけで心の内には答えがあり、「それにたどり着くまで寄り添ってほしい」という場面も多くあります。ただ、聞いて受け止めてほしいだけなのですから、そこで、よかれと思って「ああしたらいい、こうすればいい」といったところで、なんの解決にもなりません。

しかし、場合によっては、答えが必要な場面もあります。それは、具体的な方法や対策など求められたときです。「この書類の書き方がわからなくて困っている」「〇〇に行きたいのに迷ってしまった」といった内容の場合です。答えられるならば、速やかに伝えましょう。

人との関係性を安定的に健やかに保つには、「境界」を侵害しないことが、大切です。それは、相手と距離をとるということではなく、一人の人間として信頼し尊重することなのです。

一人ひとり大切な存在として関わるために、心にとめていただければ幸いです。

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提供元:友人からの悩み相談を「聞き疲れしない」コツ|東洋経済オンライン

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