2023.02.01
【イボ】実は皮膚がん?受診が必要なサイン2つ|日光を長い間浴びて、放置すると危険な状態に
見た目も気になるイボ。見間違えるものの中には、がんの初期段階の可能性があるものも… …(写真:Hiroyuki / PIXTA)
顔や首まわりにできやすいイボ。年齢とともに徐々に増えていくこともあり、見た目にも触ったときにも気になるもの。大きく分けると紫外線や加齢によってできるタイプとウイルス性のタイプがあり、どちらも保険診療で除去できる。しかしイボと見間違えるものの中には、がんの初期段階の可能性があるタイプもあるので、要注意だ。イボの種類や取り方、放置すると危険なタイプについて、川端皮膚科クリニックの川端康浩医師に聞いた。
イボとは、皮膚の一部が盛り上がった小さなできもので、良性の場合、紫外線や加齢が原因となる「脂漏性角化症」や「軟性線維腫(アクロコルドン)」と、ウイルスに感染したことによる「ウイルス性疣贅(ゆうぜい)」に大きく分けられる。
脂漏性角化症は、頭や顔、胸、背中にできやすく、40代ごろから発生することが多い。60歳以上になると、約8割の人にできているほど身近な症状だ。
紫外線の刺激でイボができる
原因の1つは、長期にわたる紫外線の刺激だ。
皮膚は外側から順に「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層にわかれる。表皮はさらに表面の「角質層」から最下層にある「基底層」まで4層で構成されている。
紫外線を浴びると、基底層でメラノサイト(色素細胞)が活性化し、メラニンと呼ばれる黒色の色素が過剰に生成される。
このメラニンが、表皮を構成する細胞(ケラチノサイト)に滞留すると、色素沈着が起こり、シミ(日光性黒子、または老人性色素斑)ができる。
加齢によって新陳代謝が低下するとシミが発生した表皮は厚みを増していき、表皮の最も外側にある角質層も分厚くなることで、イボとなる。つまりシミの延長線上に、脂漏性角化症があるといえる。
とくに紫外線を浴びると皮膚が赤くなるタイプの人は、イボが発生しやすい。
茶褐色や黒褐色のものが多いが、もとの皮膚の色とほとんど変わらない場合もある。大きさは数ミリ程度から数センチ程度、形状はドーム状に隆起するものもあれば、ほとんど盛り上がらないものもあり、さまざまだ。
一方、軟性線維腫は、首や脇の下など、皮膚が薄くてやわらかい部分にできやすく、1~3ミリの比較的小さなものが多い。原因は明らかになっていないが、紫外線や摩擦などが一因と考えられ、加齢とともにできやすくなる。
「脂漏性角化症も軟性線維腫も悪性ではないので基本的には放置しても問題はありません。ただ、一度できたら消えることはありませんので、見た目が気になる場合は、治療によって除去することができます」(川端医師)
治療では液体窒素による凍結療法が行われていて、保険診療での治療が可能だ。
凍結療法は、医療用の液体窒素でイボを瞬間冷却して除去する。一般的には2~3週間の間隔を空けて、1カ所のイボに対し2~3回に分け、少しずつ除去していく。
ただし、治療によって表面が平らにはなっても、色は残りやすい。気になる場合は、炭酸ガスレーザーを照射して焼いて除去するという方法もある。ただし、炭酸ガスレーザーの場合は麻酔が必要なうえ、自費診療となる(凍結療法との併用は混合診療になるため、原則行えない)。
イボと見間違う「日光角化症」
イボと見間違う危険性があるのが、皮膚がんの初期段階である「日光角化症」だ。日光を長年浴び続けると、表皮の基底層付近でケラチノサイトが異常をきたす。異常をきたしたケラチノサイトが増殖し続けると、顔面やうなじなどにイボのような皮疹が発生する。
さらにこの状態で長い間放置すると、異常をきたしたケラチノサイトが表皮より奥にある真皮内に入りこみ、皮膚がんに移行する可能性がある。
このため、日光角化症の段階で、手術で切除するのが確実だ。ほかに日光角化症治療薬の「イミキモドクリーム(商品名:ベセルナクリーム)」を塗って治す方法も保険が適用される。
「良性のイボと違って、炎症によって赤くなっていたり、角化して硬くなっていたりするのが特徴です。ただし良性のイボでも頻繁に触るなどすると赤くなるので、一般の人たちが区別するのは難しいこともあります。気になる場合は皮膚科を受診してください」(川端医師)
話は変わるが、イボにはドラッグストアなどで購入できる市販薬もある。ただし、川端医師は「無効な薬もある」と注意を呼びかける。とくに気を付けたいのは、イボの市販薬として代表的な漢方の生薬ヨクイニン(ハトムギの皮を取り除いた種子)を使用した飲み薬だ。
「ヨクイニンを使用した飲み薬は、本来はウイルス性のイボに対して有効性が認められているもので、脂漏性角化症や軟性線維腫には無効です。それにもかかわらず、脂漏性角化症や軟性線維腫に効果があるかのように掲載している広告もあるので、注意してください」
イボの市販薬にはほかにサリチル酸を使用した塗り薬や貼り薬もある。サリチル酸は、厚く硬くなった皮膚をやわらかくする作用があるので、イボが目立たなくなることもある。ただ、「刺激が強いので、顔や首などに使用するのは危険です」(川端医師)という。
皮膚の接触でうつる「ウイルス性のイボ」
一方、ウイルスが原因のイボ(ウイルス性疣贅)は、形状や、できやすい場所によってさまざまな種類がある。指先や手のひら、ひざの裏、足の裏などにできやすいのが「尋常性疣贅」、青壮年の顔面や手の甲にできやすいのが「扁平疣贅」などで、どれもヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となって発症する。
HPVは性交渉によって感染する尖圭コンジローマや子宮頸がんなどの原因となるウイルスでもあるが、イボの原因となるHPVとはタイプが異なる。また、水イボ(伝染性軟属腫)の原因となるウイルスともまったく異なる。
ウイルス性のイボは皮膚の接触でうつるが、基本的に健康な皮膚には感染しにくい。
「アトピー性皮膚炎などで肌荒れを起こしていたり、乾燥や髭剃りなどで傷ができていたりするとウイルス感染しやすくなります。ウイルス性疣贅に効く抗ウイルス薬はないので、治療は脂漏性角化症などと同様、凍結療法が基本となります」(川端医師)
痛みやかゆみはなく、放置してもまれに自然に治る場合もあるが、多発して治るまで時間がかかることもある。
手洗いなどで感染対策を
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感染予防のためには手洗いが大事で、家族間などでのタオルの共用を避けるといったことが基本になる。
ありふれたウイルスなので接触を完全に避けるのは難しいが、肌荒れに対するスキンケアを行うなどして、可能な限りイボを予防したい。
(取材・文/中寺暁子)
川端皮膚科クリニック
川端康浩医師
1987年、国立佐賀医科大学(現佐賀大学医学部)卒。同年、東京大学医学部皮膚科教室入局。虎の門病院皮膚科、関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)、東京大学医学部附属病院分院皮膚科講師などを経て、2002年に開院。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。著書に『美肌の教科書』(データハウス)
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提供元:【イボ】実は皮膚がん?受診が必要なサイン2つ|東洋経済オンライン