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2023.01.06

心の専門家ががん患者に伝える5つのメッセージ|「病は気から」はがんには当てはまらない


がん告知を境に毎日が一変してしまったと感じ、「心の苦悩」が大きいがん患者。数えきれない対話の中から、「がん患者のこころをささえる言葉」を紹介します(写真:Luce/PIXTA)

がん告知を境に毎日が一変してしまったと感じ、「心の苦悩」が大きいがん患者。数えきれない対話の中から、「がん患者のこころをささえる言葉」を紹介します(写真:Luce/PIXTA)

日本ではがん告知から間もない時期に、うつ病や適応障害などの精神疾患になる人は5人に1人にのぼるといわれています。また、がん患者は体の痛みより、死への不安や生き方など「心の苦悩」が大きいようです。

清水研氏の専門である精神腫瘍学(サイコオンコロジー)では、「がんは人生そのものが脅かされる体験」と表現されます。それまで平和であった何気ない毎日が、がん告知を境に一変してしまったと感じる方も多く、今までは自分事として考えてこなかった「死」が切実な問題として迫ってくることになるからです。

清水氏は20年間、4000人以上のがん患者やその家族と対話し、それぞれの苦悩と向き合ってきました。数えきれない対話から、「患者さんとの共同作業で生まれた言葉」として61編の言葉を選び、『がん患者のこころをささえる言葉』にまとめました。そのなかから10編の言葉を2回にわたって抜粋してお届けします。今回は前編です。

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■苦しい感情にふたをしないで■

周囲の人の「頑張れ」と言う声は、
今のあなたには酷な言葉だろうと思います。
大事なのは、抱えている苦しい感情にふたをしないこと。
そして、泣ける場所や、
黙って泣かせてくれる人が必要だと思います。

茫然自失の状態で悲しむことができない時期、取り乱して泣き叫ぶ時期、理不尽な現実に怒りが込み上げる時期、失ったものに目を向けて涙が止まらない時期、現実を理解してしみじみ泣く時期など、さまざまな過程を経て、少しずつ現実と向き合えるようになっていくものです。

あなたは決して立ち止まっているのではなく、すでに現実と向き合うプロセスを進んでいるのです。泣いても、いいのです。十分すぎるほど、あなたは頑張っておられます。

無理に前向きにならなくてもいい

■「病は気から」は、がんには当てはまらない■

落ち込んだり、心配したりしても、
病気には影響がありませんから、安心してください。

私が専門とするサイコオンコロジー(がんとこころの医学)の領域では、「こころの状態ががんに影響を与えるのか?」を明らかにする研究が過去たくさん行われていました。

その結果、こころのあり方はがんの治療成績には影響しないことが明らかになり、最近はそのような研究はあまり目にしなくなりました。厳密な科学的な立場からは、ないと言い切るのに慎重にならざるをえず、「あったとしてもわずか」という表現を付け加える必要がありますが。

「病は気から」という言葉がありますが、がんには当てはまらないようです。「笑っていると免疫力が上がる」ということを聞いて不安になった方には、無理に前向きにならなくても大丈夫ですよと、私はいつもお伝えしています。

■ほんとうにしたいことは何ですか?■

死という厳然たる真実と
正面から向き合っても色あせないのは、
愛情深い時間と、美しさに触れる体験だと、
私は思います。

死を強く意識するようになると、「今日1日を過ごせることが、そもそも当たり前のことではない」という考えに至ります。そして、残された貴重な時間をどのように過ごすかを一生懸命考えるようになります。他人の評判のようなものは意味がなくなりますし、お金は手段として役に立つことはあるでしょうが、それそのものに意味はありません。

そして、例えば大切な人とゆっくり過ごす、という気持ちになると思います。ほんとうにしたいことというのは、すごく近いところにあるのではないでしょうか。

無理しなくていい。自分にご褒美を

■もっと自分を許してあげる■

仕事や家事が以前のようにできないときでも、
「これではダメだ」と思うのではなく、
「これだけ大変な状況なのだから、
仕方がないよね」という具合に、
疲れている自分を許していただきたいと思います。

周りは「無理をしなくてもいいのに」と心底思っていても、休めない方も多くいらっしゃいます。そんなあなたをいちばん苦しめているのは、「弱音を吐いてはいけない、もっと頑張らなければダメだ」と厳しい言葉を投げかけてくる、もうひとりの自分かもしれません。

ときには、頑張っている自分へのご褒美も考えてみてください。いちばんはまず休むことかもしれませんし、家族と旅行を楽しまれるのも一案かもしれません。

■寄り添う側の人に知ってほしいこと■

寄り添うという言葉には、誤解が生じがちです。
「困っている人の気持ちを考えて、
その人が助かったと感じられるように接する」
としたほうがよいかもしれません。

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寄り添うことはなかなか難しいことです。その言葉の印象から、近い距離にいなければならないと思うかもしれませんが、そっとしておいてほしい人にとっては迷惑になります。

あなたが重苦しい状況に耐えられず、一方的に励ますというのも、ときに相手を傷つけることになります。

まずはその人がどんな気持ちでいるのだろうかと想像し、どうするとその人が助かるのだろうと、相手の立場に立って考える姿勢が大切です。そういうふうに私がいろいろと思いを巡らせていても、「先生には私の気持ちがわからない」としばしば言われてしまうことも多く、落ち込みます。それでもめげずに、また相手の立場に立って考えていく以外はないのです。

がんに罹った人は、険しい道のりを、誰かにささえられながら歩む人もいますし、誰にも頼らないようにして歯を食いしばって進む人もいます。
人を頼ることがさまざまな事情で簡単でない方もおられるでしょう。
そういう方にも、「患者さんたちとの共同作業で生まれた」これらの言葉が、こころのささえになることができたらよいのにな、とは清水氏の願いです。

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提供元:心の専門家ががん患者に伝える5つのメッセージ|東洋経済オンライン

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