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2022.12.06

年末の帰省で確認を、認知症「実家の変化」リスト|遠距離でも適切なケアを進める関わり方のコツ


遠距離介護で知っておきたい実家の「変化」。チェックリストで確認してみましょう(写真:izumorabbit/PIXTA)

遠距離介護で知っておきたい実家の「変化」。チェックリストで確認してみましょう(写真:izumorabbit/PIXTA)

コロナ禍で病院での面会が制限されていることなどを背景に、需要の高まりを見せている在宅ケア。家での療養生活を支えるのが、患者宅を訪問して診療を行う在宅医などだ。

これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期まで自宅で過ごしたい」という患者の希望を叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)が、若い人たちにも知ってもらいたい“在宅ケアのいま”を伝える本シリーズ。

8回目のテーマは、離れた場所に住む家族が、在宅ケアや施設選びにどのように関わり、支えるかについて。遠距離であっても、適切なケアを進めるための関わり方のコツをひもとく。

年を重ねた親が遠方に住んでいる場合、子どもが親の日常生活の様子をなかなか把握しづらかったり、いざというときにすぐに駆けつけられなかったりといったジレンマを抱えることがあります。とくに現役世代で働いていると、在宅ケアや介護にどうやって関われば良いのか悩まれる方も少なくありません。

顔の見える関係が大事

私は在宅ケアにおいて、できる限り「顔の見える関係」を大切にしています。そのため在宅医として関わる際、家族には最初の訪問診療時にはできるだけ同席してもらい、顔を合わせてお話ができるようお願いしています。対面が難しいときは、電話やオンラインで話す機会を持つなどし、訪問診療をスタートする際に、必ず家族と対話するように心がけています。

なぜなら家族と対話するなかで得られる情報が、今後の治療の方針や進め方を考えるうえで役立つことが多いからです。

在宅ケアでは、「何を大切にして過ごしたいか」という本人や家族の希望に沿って治療方針を決めていきます。そのため、家族にも不安に感じていることや大切にしたいものを聞いて、個々の価値観に触れる機会は、在宅ケアを考えるうえで重要です。最初に家族の思いや考えを聞いておくと、その後に大きな意識のズレが生じることなく、ケアが比較的スムーズに進みやすい印象があります。

家族が患者本人の病状や生活状況を理解できていると、今後の見通しも含めた話し合いがしやすく、いざというときにも動きやすいです。

例えば、老老介護で暮らす親を離れた場所で住む子どもが見守る場合、1人が「動けなくなっても家にいたい」と言ったとしても、もう1人の親にかかる負担が大きければ、自宅で過ごすのが難しい。親の生活状況を子どもがどれだけ理解できているかで、その後の判断が変わってくることもあるのです。

インターネットの普及で、クリック1つで手軽にさまざまな物資を全国各地に届けられる今は、以前に比べると遠距離での介護に家族が関わりやすくなりました。LINEなどのコミュニケーションツールやオンライン通話の手段も広がり、離れた場所にいても、画面を通じて互いの様子を知ることができます。遠距離での見守りサービスなども広がりを見せています。

こうしたツールを活用するのも1つの手ですが、やはり実際に生活の場に足を運んでみないとわからないこともたくさんあります。

帰省は普段の親の生活を知る絶好のタイミングです。この年末年始に久しぶりに帰省されるという方は、ぜひ実家の様子を冷静に観察してみてください。

実家の変化に気づくポイント

次の表は、親の生活の異変に気づくためのチェック項目。ポイントはこれまでの状態からの“変化”です。以前と比べて部屋が散らかっている、服用すべき薬が残っているなどは、認知症の可能性もあります。

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こうした変化は、電話だけでは見えてこないので要注意。久しぶりに帰省して部屋が荒れている光景を目の当たりにして初めて、親の変化に気づくというケースも珍しくない話です。

大切なのは、「あれ? いつもと違うな」と思ったら、その感覚を見逃さないこと。家族として不安を消すための安心材料を探しがちですが、変化に気づくのが早いほど、症状や生活上での対策を講じやすいのです。

親にかかりつけ医がいれば、診療時に付き添って、診察に同席することもお勧めしたいことの1つ。医師の顔を見て、「いつもお世話になっています、息子(娘)です」とあいさつしておくだけでも「顔の見える関係性」が生まれます。それは本人はもちろん、子どもや医師にとっても、安心感につながると思います。

顔が見える関係が大事(撮影:向日葵クリニック)

顔が見える関係が大事(撮影:向日葵クリニック)

離れた場所に住んでいる場合、自分たちができること、できないことを明確にするのも大切です。あわせて考えたいのが、自分が動けないならどうするか。「自分が動けない」という覚悟を持って、誰かに頼む手はずを整えておくのも、立派な支え方の1つ。「こういうことは協力したい」という姿勢を周囲に対して明確にすることも、1つの関わり方です。

決断できないのが一番困る

私たちが困るのは、例えば家で過ごすか、施設で過ごすかといった大きな判断をする際、「どうしたいですか?」と聞いたときに、「どうしたらいいですか?」と返してくる人。もちろん家族の迷いや疑問はできる限り解決できるようにサポートしますが、大事な決断は本人や家族がすることであり、私たちのように在宅ケアをサポートする側が判断することはできません。

基本的には信頼して任せてくださっても、状況を把握しようと努め、いざというときにはきちんと関わって意思決定をする。こうした関わり方ができる家族は、距離は関係なく、ケアがスムーズに進むことが多いように感じます。

ここまで在宅ケアの話をしてきましたが、もちろん家で過ごすことが最良の選択というわけではありません。個々の状況や症状などによっては、施設や病院で過ごすほうが良い場合もあります。とくに1人暮らしの場合は、本人が在宅ケアを希望していても、最終的には施設に入る選択をするケースが少なくありません。家族が心配し、「このまま家に置いておけない」となることもあれば、本人が「家族に心配をかけてしまうから施設に入ろう」と考えることもあります。

終末期に入った段階で、1人暮らしの方が在宅ケアを選択するのは、本人も家族も、それなりの覚悟が必要になります。

私自身も、故郷の沖縄で暮らしていた母を近くに呼び寄せ、施設で看取りました。在宅医として24時間365日体制で働く私は、母の様子を見に頻繁に沖縄に帰ることがどうしても難しく、母の状況も考えると近くの施設に入ってもらうのがお互いにとって良いという話になったのです。

日本では、親を施設に入れることに対して、どこかマイナスなイメージがあるように思いますが、実際に経験してみると、施設ならではの良さもたくさん感じました。

施設で暮らす良さも実感

施設で母の日に100本のバラを持たせてもらって写真撮影したときの、母のうれしそうな顔を思い出します。施設ではこうした季節行事や各種レクリエーションが充実しているぶん、自宅の環境にはない賑やかさがあり、母も楽しそうに過ごせていました。

自宅で過ごす大きなメリットの1つに自由に過ごせることがありますが、施設に入れば24時間誰かがいるという安心感もあります。親が最期を過ごす場所について悩む人も多いですが、まずは親の希望を聞いてみる。そして自分が何をどこまでできるのか、そして何をしてあげたいのかを、費用の面も含めて現実的に考えることが大切です。

クリスマスにはハープの演奏も(写真:向日葵クリニックホームページより)

クリスマスにはハープの演奏も(写真:向日葵クリニックホームページより)

一口に施設といっても、さまざまな種類や特徴があります。まずはどんな施設があるのか、その選択肢を知っておく。そのなかで親が過ごすならどのような施設が良いのか考えておきましょう。

離れた場所に住んでいる場合には、いざというときに「親を呼ぶ」のか、「自分が行く」のかの判断も迫られます。そのときになって慌てないためにも、なるべく元気なうちに話し合っておくと良いでしょう。

「家で過ごしたい」という本人の希望をかなえることが難しい場合、私が見てきたなかでは、「これ以上、家で過ごすのは無理だから」と本人にはっきり言って、親を施設に連れてきた娘さんもいらっしゃいました。

1人でトイレに行けなくなったことをきっかけに、施設入所を決めるケースは多いですが、この親子もまさにその例。介護する側の負担を踏まえると、本人の意思を尊重とばかりはいかないときもあります。

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認知症でなくても、年を重ねることで判断能力が落ちる人も少なくありません。ときに家族が強気に出ないと、適切なケアが進まない場合もあります。

本人の希望を叶えることはとても大切ですが、同じぐらい家族の人生も大切です。介護される側の希望と、介護する側の人生の両方を大切にしながら、お互いに無理のない関わり方や支え方を考えてほしいと思います。

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提供元:年末の帰省で確認を、認知症「実家の変化」リスト|東洋経済オンライン

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