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2022.11.30

「認知症の発症リスク」を4割減らせる12の要因|予防医学の第一人者が教えるカギは「楽しむ」


認知症のリスクを減らすための予防法とは (イラスト:フクイヒロシ)

認知症のリスクを減らすための予防法とは (イラスト:フクイヒロシ)

「認知症予防には○○がいい」など認知症予防について多くの情報が入り乱れている。何をすればいいのか悩む方も多いだろう。

週刊東洋経済 2022年12月3日号(11月28日発売予定)は「認知症 全対策」を特集。介護から予防、費用、相続まで認知症のあらゆる対策を網羅する。

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「認知症予防はマラソンと同じ。楽しく、長くできることから始めたい」と日本認知症予防学会理事長の浦上克哉・鳥取大学医学部 認知症予防学講座教授は語る。浦上教授に「認知症予防の基本」を解説してもらった。

認知症予防には3つの段階がある

Q1. 認知症は予防できますか

A まず「予防」の概念を知ってほしい。認知症予防には3つの段階がある。健康なときに行う発症予防が1次予防。発症後、症状がほとんどない段階か、軽度認知症段階での早期発見・治療・対応が2次予防。生活に大きな支障が出始める中度~重度認知症の段階で症状の進行を遅らせるのが3次予防だ。

4大認知症は、根本治療法が現状なく、発症を完全に防ぐことは不可能だ。だが、生活習慣を改めるなど基本的なことで発症リスクを下げられる。発症しても症状はゆっくり進行していく。早くに発症に気づき手を打てれば、進行をさらに遅くできる可能性がある。

予防はマラソンだと考えて、できることを楽しく、長くやることが肝心だ。3~5年など中期的に取り組める予防法の実行を心がけてほしい。

Q2. 1次予防で気をつけるべきことは

A 2020年、英医学雑誌『Lancet(ランセット)』に、生活習慣を改善することで認知症の発症リスクを40%下げられるという研究が発表された。発症リスクとして難聴や教育歴(知的好奇心の低さ)、高血圧などの生活習慣病まで12の項目が本研究では紹介されている。

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『週刊東洋経済 2022年12/3特大号[雑誌](認知症 全対策)』(東洋経済新報社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

また若年期(45歳未満)、中年期(45~65歳)、高齢期(66歳以上)の3段階で、この12の項目のどれに気をつけるべきかもわかっている。

とくに発症リスクを大きく高めるのが中年期の難聴。難聴を防げば、発症リスクが8%下がるとされている。一次予防ではこの12の項目のうちリスクの大きいものから意識して予防に取り組んでほしい。なかでも生活習慣病は認知症発症リスクを高めるという研究も多い。生活習慣病予防が1次予防では重要になる。

1次予防は、もの忘れなどの自覚症状のない人から「認知症予備軍」といえる「MCI(軽度認知障害)」の人までが対象。とくにMCIの段階で、早期に生活習慣の改善など適切な手を打つことが重要だ。MCIの段階で何もしないと4~5年で50%以上の人が認知症になってしまう。一方で適切な手を打てば年間16~41%の人が通常の認知機能の状態に戻るという報告もある。

MCIとは本人も家族など周囲の人間も認知症機能の低下に気づいているが、生活に支障がない状態を指す。65歳以上の高齢者の約2割がMCIという推計もあり、自分自身やご家族について「あれ、おかしいな」と思ったらMCIでないか疑ってみてほしい。心配な場合は、専門医のいる「もの忘れ外来」など専門外来を早めに受診することをおすすめする。

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コロナ禍が長引く中、外に出て体を動かすことや他者とのコミュニケーションが減ることで、認知機能が低下しやすくなっているという報告もある。自分やご家族の認知機能が低下していないか特に気にかけてほしい。

予防を楽しむ

Q3. 具体的にどのような予防を行えばいいでしょうか

A まず意識してほしいのは「予防を楽しむ」ということだ。パズルなどの「脳トレ」も嫌々取り組むとストレスがかかり、脳の神経細胞を傷める。

どの段階でも予防の基本は生活習慣を整えること。また、運動・知的活動・コミュニケーションの3つを意識すると12の認知症リスク要因のほとんどを取り除ける。

運動では、週に2~3回、ウォーキングなどの有酸素運動や筋トレを疲れない程度に行うとよい。注意したいのは、有酸素運動をやりすぎないことだ。有酸素運動ばかり続けると筋肉量が落ち、転倒・骨折のリスクを高める。知的活動やコミュニケーションでは、新しいことにチャレンジするのがとくに有効だ。新しいことに取り組むと、脳の神経細胞は新たなネットワークを構築する。

認知症を発症し脳の神経細胞が死滅すると、記憶などの機能が失われる。しかし、残った神経細胞がネットワークを伸ばすことでその機能を代替できる。脳の神経細胞のネットワークが豊富なほど認知機能は衰えにくくなることがわかっている。脳に新しい刺激を与え、このネットワークを広げることが重要だ。

難しいことをやる必要はない。絵や手芸、楽器といった趣味や将棋などのゲーム、日記など手軽に始められるものから挑戦しよう。コミュニケーションでは可能な限りいろいろな人と話すことを意識したい。気の合う友人だけでなく、あまり話したことのない人とも会話することで脳へ新しい刺激を与えてほしい。

また、二次予防までの段階では、自身の低下した機能に特化して鍛える知的活動も有効だ。例えば日付や曜日が分からなくなるなどの見当識障害に対応する場合、日記など日付を意識的に考える活動をおすすめする。

栄養バランスが取れた健康的な食事を

Q4. 3次予防ではどのような手法が有効ですか

A 今まで述べてきた中でできることに取り組んでほしい。しかし3次予防の段階では、新しいことに取り組むのは困難だ。本人が好きだった趣味を勧めてみるなど過去の楽しい記憶に基づいた予防法がいいだろう。

中度認知症でとくに介護者の負担となる、介護拒否などの行動・心理症状(BPSD)の進行を遅らせることも可能だ。介護をしていると心配するあまりつい叱ってしまうことがある。BPSDは本人にストレスがかかると表れやすい。お互いの負担を少なくするためにも、周囲に頼りながら、本人が安心できる環境を整えることがBPSDの予防につながる。

Q5. 認知症予防によい食事は

A なるべく多く野菜を食べるなど栄養バランスの取れた健康的な食事を意識してほしい。オリーブオイルを多く取る地中海式の食事や、塩分を控えた和食は認知症予防にいいとされる。だが、すべての食事を和食にしたりする必要はない。それぞれの食事で認知症予防にいいとされる食材、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含む青魚やポリフェノールを多く含む緑茶などを意識的に摂取することから始めよう。無理なくバランスのよい食事を楽しんでほしい。

Q6.予防を始める年齢はいつ頃がよいか

A 40代から始めても早すぎることはないというのが私の意見だ。認知症は65歳以上で発症することがほとんど。だが、4大認知症のなかで代表的なアルツハイマー型認知症では、発症の20年以上前から(発症の原因の一つとされる)アミロイドβが蓄積しはじめると分かってきた。つまり、発症の20年前、40代から予防に取り組めば、より効果的に発症を防いだり、遅らせたりすることができるだろう。

(監修 鳥取大学医学部 認知症予防学講座教授・浦上克哉)

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和田秀樹「脳トレは認知症予防にならない理由」

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提供元:「認知症の発症リスク」を4割減らせる12の要因|東洋経済オンライン

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