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2022.11.29

やせたいと色々試す人に知ってほしい3つの盲点|炭水化物抜き、デトックス、軽い断食は何が問題か


よくあるダイエット法のうそを科学で解き明かします(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)

よくあるダイエット法のうそを科学で解き明かします(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)

あらゆる人が健康的に生きていけるようになるための食事とは? さまざまなダイエット法や真偽のほどが不明の健康情報が広がる現代において大切なのは、科学に基づいた厳然たる事実と、そうではない擬似科学とを選別できる情報リテラシーだ。

イギリスを代表する栄養士の1人であるリアノン・ランバート氏の著書で、最新の科学的知見から導き出される健康と幸福のための食事法を、トピックスごとにわかりやすく解説する『食事と栄養の科学大図鑑』より、ダイエットをめぐるいくつかの真実について一部抜粋、再構成してお届けする。(構成:黒澤彩)

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「低炭水化物ダイエット」の落とし穴

過度なダイエットを繰り返したり、偏ったものだけを食べ続けたりする方法があまり体によくなさそうだということは知られている。では、「健康的にやせる」とはどういうことなのか?

いくつかのダイエット法には危険性がある。具体例を3つ挙げよう。

まず、炭水化物を極力とらないようにし、タンパク質の摂取を心がける「ケトジェニックダイエット」「アトキンスダイエット」「デュカンダイエット」などについて。メディアがもてはやしたことで広まったとしつつ、炭水化物さえ減らせばいいという考え方は大きな間違いだ。

メディアや一部の科学論文では、炭水化物は太る原因とされがちだ。活動度の低いライフスタイルの広がりによって、社会全体の炭水化物必要摂取量が減ったのは事実だが、それでも炭水化物がバランスのとれた食事の重要な一部であるのは変わらない。思い出してほしいのは、日本は肥満率が世界最低レベルだが、同時に炭水化物の消費量ではトップクラスだということだ。

・水分の減少

炭水化物から(グルコースの形で)得られたエネルギーは、グリコーゲンに変換され、将来使うために貯蔵されるが、その際にグルコースへの再変換に必要な水も一緒に貯蔵される。低炭水化物ダイエットではグリコーゲンの貯蔵量が減るので、それに対応する水も少なくなる。この分の急激な体重減少を脂肪の減少と勘違いすることが多い。

・食物繊維の不足

炭水化物の摂取を急に制限すれば、頭痛がしたり、便秘などの消化器系の問題が生じたりするかもしれない。炭水化物に含まれる食物繊維には、消化を助けたり、血糖値を安定させたりといったいくつかの健康効果がある。ケトジェニックダイエットでは多くの野菜や果物を食べないが、それは便秘の原因になる可能性があるし、腸内細菌に栄養を与えることで得られる長期的な健康効果を逃しかねない。

・コレステロール値の上昇

炭水化物の摂取をやめたり、量を減らしたりする場合には、その穴をほかの多量栄養素で埋めることになる。そうすると、タンパク質と脂肪の摂取量が不健康なレベルまで増える可能性がある。それで空腹感はおさえられるので減量には役立つかもしれないが、コレステロール値の上昇などほかの問題が起こる。若い健康な成人が高タンパク質・低炭水化物のダイエットをすると、LDLコレステロールが44%増加したという研究結果がある。

ただし、2型糖尿病の人にとっては、低炭水化物ダイエットが安全で効果的な体重管理方法になりうるという。その場合は専門家に相談し、血糖値をモニタリングしながら行うことが重要だ。

体は「デトックス」を必要としていない

2つ目はデトックス(解毒)。この言葉は魅力的で、ダイエット業界でも盛んに用いられる用語だ。多くの人はデトックスの何たるかをわかっていないのに、大量に汗をかいたり、利尿作用を促すお茶などを飲んだりすることで満足してしまいがちである。

そんなデトックスブームに対して言えるのは、減量効果はないということだ。栄養摂取の面では絶対に足を踏み入れてはいけない領域だとも言える。

私たちは体を「浄化する」、つまり解毒する必要はまったくなく、この手のダイエットをしても、期待されるような浄化や解毒の効果はないだろう。

ダイエットをする人たちが、費用が高く、制約がひどく多いデトックスダイエットを何度も始める気になるのは、終えるとすっきりした気分になると考えるからだ。私たちは毎日、たとえば呼吸する空気や口にする食べ物に含まれる環境有害物質と接触している。体は、体内に入り込んだ毒素や老廃物を肝臓の作用によって効率的に取り除く機能をそなえた、すばらしい有機体だ。

デトックスダイエットを実行すると、体重が減る可能性はあるが、ほとんどが水分の減少であり、普通の食事に戻すと元に戻るだろう。

また、お茶によるデトックス法「ティートックス」に危険が伴う。センナ葉のように、便秘の治療として使われる成分を含むものがあり、服用すると脱水や腹痛、下痢を引き起こす可能性がある。そうした下剤のような効果によって短期的にはやせたように感じたり、スリムに見えたりしたとしても、脂肪減少には影響しない。お茶を飲めば体重が減るという話を裏付ける科学的根拠はないそうだ。

3つ目は、ときどき食事を抜くことで体重を減らすダイエット法。一見シンプルなダイエット方法だが、話はそれほど単純ではないようだ。

ここ数年人気の断続的断食は、主に3種類ある。1日中、基本的に食事をとらない「終日断食」。1日おきに断食日を設け、断食日にも1日1食をとることが推奨されている「1日おき断食」。普段と同じ量を1日のうち8時間の枠内に食べるなど、食べる時間帯を制限する「時間制断食」。

これらの断続的断食は摂取カロリーをわかりやすく減らせる一方で、誰にでも有効だとはかぎらない。たとえば、満腹になっても食べるのをやめられず、ストレスでやけ食いしがちな人には効果がない。

心配なのは、断続的断食につきものの制限が、食べすぎやドカ食い、摂食障害につながるおそれがあることだ。また食事を抜く習慣は持続するのが難しい。断続的断食が糖尿病や心臓疾患のリスク因子を低くするかもしれないという証拠は確かにあるが、この分野の研究はまだ初期段階だ。

行ううえでの注意点としては、朝食を抜かないこと。朝食は健康な体重を維持するのに重要で、朝食をとることによって1日全体の食物摂取をコントロールしやすくなることを示した研究もある。一方で、朝食を抜くことは肥満の人の体重管理には有効だとする研究結果も多少あるが、その理由としてわかっているのは、単に摂取カロリーが制限されるからということくらいだ。体内時計のパターンのせいで、空腹で目を覚ますタイプの人はとくに朝食を抜かないよう気をつけたい。

リバウンドの悲劇を防ぐために

ダイエット法にはたくさんの選択肢があり、どの方法であっても、誰もが同じような結果になるわけではない。しかも、画一的な方法ではリバウンドしてしまうことが多く、14種類の人気ダイエットプログラムの分析では、12カ月後には体重が元に戻ることがほとんどだったそうだ。

食事制限中には、食物への強い渇望を感じ、食べ物をめぐる感情が高ぶり、食べることばかり考えるようになることが、研究で明らかになっている。同じように「いい」食べ物とか「悪い」食べ物と決めつけることも、制限されていると感じるようになり、食物への渇望を感じることにつながる。

ダイエットを成功させるのに必要なのは、堅苦しい計画を守ったり、摂取カロリーを決めてカロリー計算に勤しんだり、特定の食品を避けることではない。自分のニーズに合った食べ方を見つけ、時間をかけてゆっくりと着実に体重を減らすのが最も効果的だ。特定のダイエット法よりも、むしろ食事をきちんととることを続ける必要がある。

1回の食事の量をコントロールし、食事の間には健康的な間食を選ぶようにしよう。摂取する食品の種類を増やすことも減量効果を高めると考えられている。さまざまな種類の料理や野菜を毎日試すのがいいだろう。

気分よく過ごせるように

柔軟さも必要だ。友達付き合いなどの余地を残し、感情面や身体面のニーズにも対応し、気分よく過ごすのに役立つようでなければならない。具体的には次のような点を考慮する必要がある。

・自分にとっての「健康的」とは?(野菜をたくさんとることか、糖分を減らすことか、など)
・自分がどのくらい活動的か、どのくらいの頻度で運動するか。
・食べ物の好みや知識、心配な点。
・睡眠の質やホルモン機能、不安のレベルなどの体や心の健康。
・社会や文化、家族からの影響。
・現実的な目標とサポート。

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『食事と栄養の科学大図鑑』(河出書房新社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

すぐに始められる方法として、食事日記をつけることを推奨したい。いつ、どこで、誰と、何を食べたか、満腹感はどのくらいか、どう感じたか、を記すことで、どんな要因が食事に影響するのかといった自分のパターンを知ることができる。

自分のニーズに合った食べ方を見つけるには、管理栄養士など専門家のアドバイスを受けるのが望ましいが、グループでの自助プログラムに参加したり、オンラインツールで計画作成したりする方法もあるだろう。

魔法のようなダイエット法は存在しない。次々に現れては消えるはやりのメソッドや他人の成功例に惑わされることなく、必要な栄養をバランスよく取りながら地道な減量プログラムに取り組むことが、健康的にやせる最善の策だ。

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提供元:やせたいと色々試す人に知ってほしい3つの盲点|東洋経済オンライン

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