2022.11.14
スーパー「買っていい肉」「ダメな肉」の決定的な差|意外と「お宝肉」が見つかる場合もある
スーパーですき焼きにぴったりのおいしい肉を見つける方法とは?(写真:shige hattori/PIXTA)
日々お肉に触れ、生産者巡りをし、各地のお肉を食べ、お肉について議論している肉おじさんも、たまにスーパーの精肉売り場をのぞくことがあります。それは近所のお店だったり、商談のついでにちょっと寄ったお店だったりします。もちろん市場調査のためでもありますが、そこにとてつもなくお買い得なお肉を見つけることがあります。
スーパーマーケットのような量販店では、牛肉の部位なら肩ロース、もも、スジ、サーロインくらいの表記がほとんど、イチボやサンカクなどの部位を表記して売っているお店も時々ありますが、それはかなりまれです。
スーパーには「お宝肉」が埋もれている
そもそも量販店は、大量仕入れの販売なので、格之進のように細かく部位を分けていてはあまりにも手間がかかってしまうため、大きなかたまりとしての表記をすることになります。例えば、肩周りのお肉は、「肩ロース」「ウデ」「肩バラ」といった具合です(これは間違っているわけではありません)。
そのため、「肩ロース」の中に、ザブトン、肩ロースの芯が、「ウデ」には、ミズジ、ウデサンカクが、「肩バラ」には、ショートプレート、ブリスケも含まれていることがあるのです!つまりスーパーのお肉にはお宝肉が埋もれている可能性があるというわけです。
先日、中野のお店で見つけたのは、「和牛ももステーキ」と書かれていた商品。これはどう見ても牛の腰からお尻辺りのランプ肉でその中でもサーロインにつながっている“ランボソ”という部位。1頭から1キロくらいしか取れない希少部位です。やわらかくうま味がありスッキリした脂が特徴のお肉です。これが、100g498円は激安です! 細かなサシの入り具合、まるでヒレのような見た目のもも肉を見つけたら買いです。
また、以前近所のスーパーで見つけたのは、肩から腕にかけてのお肉、ミスジ。スライスされたお肉にきれいな筋(半透明の筋)が1本入っているのが特徴で、細かなサシが入り、甘味のあるお肉です。これも1頭に2〜3キロくらいしか取れない希少部位で、焼肉店なら特上肉です。これが肩ロースとして売られていたので、思わず買ってしまいました!
おいしいお肉の選び方の基本
11月下旬から12月にかけて、贈答シーズンを迎え、ブランド牛やA5、A4ランクのお肉が市場に出回るので、スーパーにもいつもより高級な肉が並び、ちょっとお得な価格にもなる時期になります。
そんな「お肉の季節」の今、スーパーで選ぶときのポイントをまずは伝授しましょう。
お肉の味を左右する脂の部分は、酸化が進むと灰色かかってくるので、白、もしくはピンクがかった白い脂身のお肉を選んでください。輸入肉は、牧草を多く食べているお肉が多いので、脂身が黄色くなっていることがありますが、これは劣化ではありません。
サシは、多ければいいというものではなく、そのキメの大きさが大事。キメの粗いお肉は、味が薄く、うま味、甘味もあまり濃くないので味は半減! キメの細かい肉を選んでください。
赤身は、やはりきれいな赤ピンクが鮮度がよい証拠。しかし、実はカットしたばかりのお肉は赤黒いのです。牛肉は、酸素に触れることで鮮やかな赤色になります。だから、パックのお肉で、重なり合っているお肉が赤黒くなっているのは、酸素に触れていない状態だったからです。よく傷みかけのお肉が最もおいしい、と言いますが、これは茶褐色、小豆色くらいの肉色だと思います。確かにこの辺りもおいしいです。
そしてもう1つよく見てほしいのが、お肉をカットした時の方向“切れ目”です。肉には、筋繊維が走っているので、この筋繊維に対して垂直にカットされていることが大事で、これがお肉のおいしさを左右します。見た目的には、繊維が長く、流れているように見える場合は、順目カットなので、筋っぽくあまりおいしいとは言えません。
さて、いいお肉を手に入れたらおいしく召し上がっていただきたい! 寒くなり鍋のシーズンを迎え、しゃぶしゃぶ、すき焼きなど牛肉を食べる機会も増える時期となりました。沸騰したお湯(またはスープ)に、薄くスライスしたお肉を潜らせるだけのしゃぶしゃぶは、家でも簡単にできる鍋の1つ。
ですが、しゃぶしゃぶの牛肉は、煮立った鍋に入れてはいけません! 肉の水分がすっかり落ちてしまってパサパサになってしまい、おいしさ激減です。なので、しゃぶしゃぶをする時は、鍋の温度を60度前後に保ちながら食べるのがベスト。
肉には主にミオシン・アクチン・コラーゲンという3種類のタンパク質があり、ミオシンは50度で変成し、肉に弾力が出て食べやすくなり、うま味が感じられるようになるのです。アクチンは、60度以上で変成してお肉がパサパサになってしまいます。コラーゲンは、68度で変成しますが、60度くらいから徐々に変わり始め、お肉がやわらかくなるというそれぞれの特徴があります。
これらのタンパク質の特性を鑑みると、しゃぶしゃぶは60度くらいの鍋温度で食べるのがベストなのです。ちょっとめんどくさいかもしれませんが、温度計を用意してしゃぶしゃぶしてください。
では、すき焼きはどうか? やはりこれも加熱しすぎには注意が必要。肉おじさんのおすすめは、関東風の割下を使ったすき焼き。市販のすき焼きの割下も販売されているので、これを使ってください。ちなみに肉おじさんの愛用は、「人形町今半の特選すき焼き割下」です。
すき焼きは、まずは肉の味を楽しむ!
すき焼きを食べる時は、絶対に牛脂を手に入れてください。牛脂は、バラ脂またはロース脂の牛脂を手に入れることをおすすめします。対面販売のお肉屋さんなら手に入れられる可能性が高いと思います。これがおいしさの素、うま味がでます!
まず鍋に火をかけ、牛脂を入れて脂が鍋に乗ってきたら(溶け出したら)、火を止めてジュウジュウいわない温度になったら割下を鍋面が隠れるくらいのひたひたに入れます。 割下かフツフツしてきたら1枚目のお肉を投入します。この時、お肉が踊るように揺れ動いたら正解。火加減は、弱火〜中火にして、片面に火が入ったら、お肉を返してさっと火を通して引き上げます。グツグツ煮ないことがポイントです。
ここで野菜を入れたいところですが、まずはお肉だけを半分くらい楽しんでください。割下を少しずつ足しながら、割下の味を纏ったお肉を食べます。煮詰まってきたら、出汁または水を加えて味を調節してください。お肉をある程度楽しんだら、野菜やしらたき、焼き豆腐などを入れます。お肉の味がプラスされたコクのある割下の味が染みた野菜や豆腐は、格別です。締めのうどんまでしっかりお肉のうま味を堪能してください。
すき焼きにおすすめの部位は、やはりサーロインやリブロースですが、肩ロースでもいいし、赤身でもよし、和牛なら切り落としでも、この“肉おじさん流のすき焼き”ならおいしく食べられます! ぜひお試しください!!
独断!おすすめ肉ランキング
最後にしゃぶしゃぶ、すき焼きにおすすめの部位をご紹介します(カッコ内は、スーパーなどで表記されると思われる部位)。
【しゃぶしゃぶ用おすすめランキング】
霜降り肉
1. リブロースのまき(リブロース)
2. ミスジ(肩肉)
3. トモサンカク(もも肉)
4. 肩ロース
5. イチボ(もも肉)
赤身肉
1. ヒレ
2. ウデサンカク(肩肉)
3. カメノコ(もも肉)
4. ランプ(もも肉)
5. シンタマハバキ(もも肉)
【すき焼き用おすすめランキング】
霜降り肉
1. サーロイン
2. リブロース
3. 肩ロース
4. ウデニク(肩肉)
5. イチボ(もも肉)
赤身肉
1. ヒレ
2. ウデサンカク(肩肉)
3. カメノコ(もも肉)
4. シンシン(もも肉)
5. ランプ(もも肉)
この連載一覧はこちら ※外部サイトに遷移します
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:スーパー「買っていい肉」「ダメな肉」の決定的な差|東洋経済オンライン