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2022.11.12

「ビールは健康にいいと言える」たった一つの理由|「心のヘルスケア」のカギは幸せホルモンだった


健康への悪影響が心配されがちなお酒。しかし、実は「健康にいいお酒」はすでにある(写真:Rawpixel/PIXTA)

健康への悪影響が心配されがちなお酒。しかし、実は「健康にいいお酒」はすでにある(写真:Rawpixel/PIXTA)

ビールを飲めば健康になれる。そう聞いてあなたは眉に唾をつけるでしょうか。一般的には酒類は健康への悪影響が心配されがち。しかし、ビールが持つ意外な側面に着目して、売り上げを伸ばしている企業があります。キシリトールガムをブームにした立役者である藤田康人氏の著書『ウェルビーイングビジネスの教科書』からその企業の取り組みを一部抜粋・再編集してご紹介します。

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「健康にいいお酒」はすでにある?

お酒は体に悪い。

一般的には、そう思う方が多いでしょう。

お酒は飲みすぎると、肝臓や心臓、消化管、脳の疾患につながります。睡眠障害やうつ病などの心の病を引き起こすこともあります。

もちろん、リラックスやストレス発散といったプラスの効果も言われてはいますが、それらを割引いても体に悪いという側面が強調されがちではないでしょうか。

しかし、実は「健康にいいお酒」はすでにある、と言えばみなさんは驚かれるでしょうか。

新しいタイプのお酒が発明されたという意味ではありません。みなさんの身近にある、普通のお酒に、ある視点を加えることで健康効果が見えてくるのです。

ヒントは「幸せホルモン」です。

幸福感は、脳内で分泌される物質が、脳の神経細胞などに作用することで生まれます。

具体的には、神経伝達物質のドーパミン、セロトニン、そしてホルモンのオキシトシン。

これら3つが幸せを感じるために重要な物質で、耳にしたことがある人も多いと思います。

「安心、やすらぎ」といったことを感じるときにセロトニンが分泌され、そこで味わうことができるのが「心と体の健康からくる幸福」である「セロトニン的幸福」。

夫婦、恋人、親子、兄弟、友人といった相手との安定した関係によって生まれるプラスの感情や喜びなど、他者との交流、関係によって生まれる「つながりの幸福」が「オキシトシン的幸福」。

お金を得る、欲しい物を手に入れる、あるいは昇進・昇給といった仕事での成功など、何かを得たり達成したりしたときの喜びや幸せからくる「成功の幸福」が「ドーパミン的幸福」。

重要なのは、3つの幸福の優先順位

精神科医の樺沢紫苑氏は、著書の中で、この3つの幸福の優先順位が非常に重要であると述べています。

優先度が高い順から

セロトニン的幸福 ⇒ オキシトシン的幸福 ⇒ ドーパミン的幸福

この順番を間違えると、幸福になるどころか、最終的には不幸になる可能性もあるのです。

なぜなら、心身の幸福があって初めて、ドーパミン的な幸福が得られるからです。

なかでも、お酒と関わりが深いのが「オキシトシン」です。

先に述べたように、お酒は適量なら気持ちをリラックスさせる効果があります。また、お酒を介して誰かと一緒に過ごすことで、人と人とのつながりを作り、さらに深めていくことができます。

つまりお酒は、飲んだ人が楽しいだけでなく、人間関係を円滑にするコミュニケーションツールでもあるわけです。「つながりの幸福」をつくる「オキシトシン」を分泌させる重要なファクターでもあります。

「人と人とをつなげるビール」で19期連続売上増

すでに、日本のビールメーカーで、「オキシトシン的幸福」な側面で売り上げを伸ばしている企業があります。

それは、クラフトビール最大手のヤッホーブルーイングです。

同社の商品はスーパーやコンビニでも見かける身近なもの。幅広い層に人気の「よなよなエール」をはじめ、「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など独特なネーミングと斬新なパッケージデザインが目を引きます。ヤッホーブルーイングの販売戦略のカギは、リピーターを増やすことにあったといえます。

例えば、ビールを飲む生活者のことを「ファン」と呼びます。

同社の姿勢が垣間見えるエピソードです。さらに、ビールファンが一堂に会し、さまざまな切り口でビールを楽しむ「超宴」というイベントを群馬県・北軽井沢で開催(コロナ禍においてはオンラインで開催)し、ファン同士の交流を促進しています。

ほかにも、ビールに合うおつまみのつくり方や、インターネットラジオなどを発信。自分らしくいられたり、周りの人と笑顔で過ごす時間に寄り添うビールという位置づけで、さまざまなコミュニティーを提案しています。

2021年のヤッホーブルーイングの売り上げは、前期比3割増、19期連続で過去最高を更新しています。

もちろん、ファンイベントだけでなく、さまざまな営業努力の結果ではありますが、私は「人と人とのつながり」を重視するアプローチである「オキシトシン的幸福」への貢献が、同社の売り上げの支えになっているのではないかと考えています。

これまでお酒メーカーは、体への影響からお酒という商品自体でヘルスケアビジネスに参入するのはハードルがありました。しかし、「心のヘルスケア」へと視点を変えると、新たなマーケットが生まれるのです。

海外にも似た事例があります。それは、「バドワイザー」です。著名なビールで「Budweiser」と書いたほうが見慣れているかもしれません。

現在のバドワイザーは、「のどごしが……」「キレが……」「うまさが……」といったビールの美味しさを伝えるアプローチだけをしているわけではありません。

人々の交流に貢献する、ビールの役割と取り組み

バドワイザーが掲げているのは、「人々を集めるために、我々は存在する(We exist to bring people together)」。

つまり、バドワイザーは、ビールは美味しさを味わうためや飲んで気持ちよくなるためのものだけではなく、人と人の関係性をつくる、人々をつなぐためのものというアプローチを始めているのです。

そのためバドワイザーは、コロナ禍の自粛期間の頃から、次のような取り組みを続けていました。

・休業中のジムトレーナーによるエクササイズ動画の配信
・休業中のシェフによる料理スクール動画の配信
・オンライン飲み会の企画
・バー・レストランの再開支援

以上は、あくまで代表的なものです。

バドワイザーが訴えるビールの果たす本質的な役割は、人々が集まり、交流することで「オキシトシン的な幸福」に貢献することなのです。

こうした取り組みを、みなさんはどのようにお感じになったでしょうか。

「よく聞く、ファンビジネス、リピータービジネスの例だよね」と思った人もいるかもしれません。しかし、私がみなさんにお伝えしたいのは、単に消費者を囲い込むためのテクニックではありません。

オキシトシン的幸福である人と人とのつながりに着目したビジネスが消費者の支持を得ている、その背景にある価値観の変化について知っていただきたいのです。

それは、世界レベルで「幸せ」の定義が変わってきていること。それが、たまたま「ビール」という商品を通じて表現されたにすぎないということです。

「幸せの定義」のアップデートがビールにも影響

近年、世界的に「持続可能性」がキーワードになっています。

SDGsはその代表例ですが、あくまで「社会」の持続可能性でした。私が着目しているのは「個人」が持続可能な人生を求めるムーブメントです。人生100年と言われていますが、そのためには、心身ともに健康であることが重要です。寝たきりで100年生きても、あるいはひとりぼっちで誰ともつながれないまま孤独に長生きしても、幸福とは言えないかもしれません。

そこで今、注目されている価値観が「ウェルビーイング」です。

ウェルビーイングとは「体も心も元気で、社会との関係も良好である状態」のことを言います。 無理をせず 「自分らしく、心も体も健やかに」生きることに重きをおく新たな人生観、新時代の「幸せ」の定義です。

アメリカやヨーロッパでは普遍的な概念になりつつあり、日本でも2021年2月に国会の予算委員会で、国民1人当たりのウェルビーイング・幸福充実度を測る新しい物差しとして「GDW/国内総充実度」の採用が提唱されました。

日本にも、本格的にウェルビーイングの概念が広まりつつあります。

ヤッホーブルーイングにしても、バドワイザーにしても、家族や大切な仲間と一緒に過ごす時間を大切にする「オキシトシン的な幸福」が重視されています。「心のヘルスケア」に寄与するものです。

「幸福」のあり方の変化が、先進的な商品やサービスの変化に如実に現れてきているわけです。バドワイザーもヤッホーブルーイングも「ウェルビーイング」をビジネスにしていると言っても過言ではありません。

これからは、さまざまな分野でウェルビーイングビジネスが発展していくと考えています。

例えば、同じ商品であっても

「ひざの痛みがやわらぐサプリメント」と「家族と一緒にお出かけできるサプリメント」、

「口の中に濃厚な甘さが広がるスイーツ」と「心が元気になるスイーツ」、

というふうに、消費者の求める価値が異なれば、企業側のアプローチ方法はまったく変わってきます。

このように、新しい視点から商品の価値を見直すことを私は「関係性のリデザイン」と呼んでいます。

新しい価値と市場、消費者との接点が生まれる

新しい価値が生まれれば、新しい顧客が生まれ新しい市場が生まれます。ウェルビーイングの視点で商品を見つめ直すことで今までにない消費者との接点が生まれるのです。

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私はマーケッターとして、1997年に「キシリトールガム」を日本で大ヒットに導いたときから今まで「関係性のリデザイン」の方法論を深めてきました。

日本におけるウェルビーイングの市場規模は2025年に12.5兆円に成長(株式会社インテグレート試算)する見込みです。

SDGsの後に、ビジネストレンドの主役に躍り出るのはウェルビーイングであるといわれています。

こうしてウェルビーイングが世界的なトレンドになり日本でも本格的に定着し始めた今だからこそ新商品、既存の商品問わず、ウェルビーイングな視点で商品の価値を世に問う、絶好のタイミングだと思っています。

ぜひ、ウェルビーイング視点で、あなたが関わっている商品・サービスの価値を「リデザイン」してください。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

日本人がやりがちな「寿命を縮める」3大悪習慣

日本人が「幸せ」を外国人より感じない根本理由

アサヒとキリン「自粛ダメージ」の決定的な差

提供元:「ビールは健康にいいと言える」たった一つの理由|東洋経済オンライン

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