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2022.11.02

【魚で体調異変】知られざるヒスタミン中毒の害|アレルギーとの違い、購入時に気を付けたい点


魚を食べて体調に異変が起きたときは、ヒスタミン中毒が原因の可能性もあります(写真:COMOC Sizzle/ PIXTA)

魚を食べて体調に異変が起きたときは、ヒスタミン中毒が原因の可能性もあります(写真:COMOC Sizzle/ PIXTA)

サバなどの魚を食べて体がかゆくなった、じんましんが出た……。そんなときに疑うのが「魚アレルギー」だろう。しかし、必ずしもアレルギーが原因で起こっているのではなく、犯人は「ヒスタミン中毒」だったということもあるようだ。魚好きなら知っておきたいヒスタミン中毒について、当サイトで医療記事を執筆されているナビタスクリニック内科医師の久住英二さんに話を聞いた。

「先日も、ある患者さんが、『マグロを食べたあとに皮膚が赤くなったので、アレルギーの検査したい』と言って外来を受診されたんです」と話す久住さん。

診察室で話を聞くと、マグロは以前から何度も食べていて、症状が起こったのは今回が初めてとのこと。

そこで、「マグロを食べるたびに同じ症状が起こったらアレルギーかもしれませんが、今回が初めてであればヒスタミン中毒かもしれません、次回マグロを食べたときに同じ症状が起こったら検査をしましょう」と説明して、帰ってもらったという。

「サバやマグロなどの魚を食べて何らかの症状が出ると、魚アレルギーかな?と思う人は少なくないでしょう。ただ、そのなかには実際はヒスタミン中毒が原因で起こっていたということは、十分にありえると思います」(久住さん)

ヒスタミンを大量摂取しヒスタミン中毒に

ヒスタミン中毒という言葉を初めて聞いた人もいるかもしれない。どういう病気なのか、久住さんの説明によるとこうだ。

ヒスタミンとはご存じの通り、花粉症やアレルギー性鼻炎などで鼻水や鼻づまりを起こす原因物質だ。じんましんの原因でもあり、蚊に刺されたあとに赤くなってかゆくなるのも、ヒスタミンの作用によるものだ。要するに、炎症に関わる物質である。

このヒスタミンを”何らかの理由で大量に摂取したこと”で生じるのが、ヒスタミン中毒だ。

ヒスタミン中毒は、一度に食品100g当たり100mg以上摂取してしまうと、発症するとされている。ヒスタミンが多く含まれる食品を食べれば中毒を起こすのは当然だが、少量含まれていてもその食品をたくさん食べれば、やはり中毒が起こる可能性がある。

厚生労働省によると、年間60~400件の患者数報告(2012~2021年)がある。ただ、これは医療機関から保健所に届け出があった件数なので実数はわからず、この数字は氷山の一角という可能性もある。

ヒスタミン中毒のメカニズムは次の通りだ。

魚(マグロやイワシ、サンマ、サバ、カツオ、ブリ、アジなど)の身には「ヒスチジン」というアミノ酸が多く含まれている。このヒスチジンがヒスタミン産生菌の酵素によってヒスタミンに分解され、身に蓄積する。この身を食べることで起こるのがヒスタミン中毒だ。

ヒスチジンは魚だけでなく肉にも含まれるが、ヒスタミン産生菌は海中に棲んでいるため、魚にくっつきやすい。そのため魚でヒスタミン中毒が起こりやすいというわけだ。

ヒスタミンは加熱しても毒素が壊れない

菌が関与するということは、やはり鮮度などが関係するのだろうか。

「そうですね。コールドチェーン(生産地から小売りまで適正な温度で流通させること)で適切に保管されていない魚を食べると起こりやすいです」

久住さんの経験からすると、代表的な魚はサバで、マグロも多いそうだ。ちなみに、過去の食中毒事例などを見ると、白身魚のフライやマグロのソテー、ムニエルなどで起こっている。魚の種類というよりも、大型魚の切り身を調理したものが多い印象だ。

多くの食中毒と違うのは、ヒスタミンは加熱しても毒素が壊れないという点。その魚にヒスタミンが多く含まれていれば、煮ても、揚げても、炒めても、予防することはできない。

「防ぐ方法はただ1つ、ヒスタミンが多く含まれていない魚を食べる、ということにつきます」と久住さん。

スーパーや鮮魚店に並ぶ商品にヒスタミンが多く含まれているかどうかは見た目ではわからない。そのため、「やはり信頼の置ける店で購入するのが安全でしょう」と付け加える。

ヒスタミン産生菌を増やさないことも重要だ。生の魚を買ってきたら、以下のようなことを心がけたい。

・魚を購入したら常温で放置せず、速やかに冷蔵庫で保管する。
・ヒスタミン産生菌はエラや消化管に多く存在する。魚のエラや内臓は購入後できるだけ早く除去する
・鮮度が低下した魚は食べない(加熱しても分解されない)
・唇や舌先に通常と異なる刺激を感じたら、食べずに処分する
・釣った魚は速やかにクーラーボックスに入れ、常温で放置しない。内臓はできるだけ早く取り出す
(厚生労働省、食品安全委員会HPより編集部で改変)

食べ始めて数分~30分ぐらいで症状が出る

では、ヒスタミン中毒になるとどんな症状が出るのか。

「ヒスタミンが体内で増えると血管の透過性が亢進(こうしん)する、つまり血管から体液が漏れていきます。いわば風呂の栓を開けっぱなしにしたような状態ですね。それが皮膚で起こればむくんだり、腫れたりしますし、鼻や気管で起これば鼻水が出たり、鼻がつまったりします」

呼吸が苦しくなってゼイゼイすることもあり、胃腸で起こると、嘔吐や下痢になる。さらには血液中から水分が減ってしまうため、血圧が下がってショック状態のようなことが起こることもあるそうだ。

「こうした症状は、原因となる食品を食べ始めてから数分から30分ぐらいで現れます。ちなみに、菌が原因となる食中毒はもっと時間がかかりますし、キノコなどの毒素で起こる食中毒も6時間ぐらいかかる。そういう意味では食べている途中で具合が悪くなるというのが、大きな特徴の1つでしょう」(久住さん)

アレルギーと違うので体質は関係なく、ある程度の量を摂ったら、誰でも同じように起こるが、体調(月経や胃腸の病気を患っている、薬を飲んでいるなど)でヒスタミン代謝は変わる。また、喫煙や飲酒はヒスタミンを分解する能力を低下させるため、症状が出やすくなるそうだ。

症状の程度は、ちょっとかゆみが出るという程度の軽いものから、血圧が下がって倒れてしまうというものまである。医療機関を受診すべきだろうか。

「じんましんや赤みなどが出てもすぐに治まるようでしたら、受診の必要はありません。症状が悪化傾向にあるとか、非常につらい症状が出ているというときは、出ている症状によって皮膚科や内科を受診されるといいでしょう」(久住さん)

治療は、ヒスタミンの症状を抑える抗ヒスタミン薬の飲み薬や注射薬を使うほか、呼吸困難がひどければ酸素ボンベで呼吸管理をし、血圧が低ければ補液を点滴する。症状が軽快していれば様子を見るだけにとどめることもある。だいたい6~10時間で回復し、重症になることは少ないそうだ。

魚アレルギーとの鑑別をどう行うか

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「基本的に問診でヒスタミン中毒が疑われたら、その治療をするということで、検査は行いません。ヒスタミンの血中濃度を測ることはできますが、結果が出る頃には回復されていますし、末梢に残っているものは検出できないため、緊急時には役に立たないからです」

なお、ヒスタミン中毒か魚アレルギーかの鑑別をしたいという人もいるだろう。アレルギー検査については冒頭で紹介したとおり、久住さんは「同じ種類の魚を1口、2口食べたときにまた同じ症状が現れたら、そのときに検査を行えばいい」というスタンスだ。

ヒスタミン中毒の頻度は決して高くなく、症状も軽く、比較的早く回復する。心配するような食中毒ではないが、われわれが欠かせない「食」に関するトラブルだけに、知っておいたほうがいいことの1つといえるだろう。

(執筆:編集部・山内リカ)

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ナビタスクリニック・医療法人社団鉄医会理事長
久住英二医師

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。現在は立川・川崎・新宿駅ナカ「ナビタスクリニック」を開設し、日々診療に従事している。

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提供元:【魚で体調異変】知られざるヒスタミン中毒の害|東洋経済オンライン

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