2022.10.05
平気で「お弁当」を買う人が知らない超残念な真実|「安い市販品」に、こんな「裏側」があったとは…
「市販の弁当」がどのように作られているか、「裏側」を見ていきます(写真:SORA/PIXTA)
「食の裏側」を明かし70万部を突破する大ベストセラーになった『食品の裏側』の著者、安部司氏が開発したレシピ集『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』が8刷6万5000部を突破し、話題を呼んでいる。
『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選した1冊だ。
いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が、「平気で『市販のお弁当』を買う人が知らない超残念な真実」について語る。
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お弁当は「差」が激しい。「安さ」の裏側は?
食事をつくれないとき、出かけるときなど、「市販の弁当」は非常にありがたい存在です。
ご飯とおかずが詰め合わされているから、これ1つで食事が完結するし、家族で食べる場合も、それぞれが好みのものを選ぶことができます。
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みなさんも一度ぐらいは利用されたことがあるのではないでしょうか。なかには日常的に食べているという人も少なくないでしょう。
しかしみなさん、「市販の弁当」がどのように作られているか、その「裏側」をご存じでしょうか。
今回はいわゆる「仕出し弁当」「持ち帰り弁当」のつくられ方を見ていきたいと思います。
つくられ方といっても、もちろん業者によって違いがあります。
家庭でつくるのと同じように手作りしたり、添加物をほぼ使わずにマジメにつくっている業者も存在します。ただ、残念ながら少数です。
あるいはメインの惣菜だけ自前でつくって、煮物など副菜のみ仕出しを使うところもあります。その意味では「お弁当は『差』が激しい」といえます。
ここではあくまでも「こういうつくられ方をしているところもある」という一例としてご覧いただければと思います。
わかりやすい例として、人気の「ハンバーグ弁当」を考えてみましょう。
「激安で売られている弁当」は、「裏側」でこのようなつくられ方をするところが少なくないのが実情です。
ハンバーグ弁当のメニューは白いご飯にハンバーグ、付け合わせにスパゲティ、ポテトサラダ、キャベツの千切り、福神漬けというものです。
まず、このハンバーグ弁当を「家でつくる場合」を考えてみましょう。
まず合いびき肉に、炒めて冷ました玉ねぎのみじん切り、パン粉、牛乳、卵、塩コショウなどを加えてこね、まるめて焼きます。ソースは簡易的にケチャップとウスターソースを半々に混ぜた即席でいいことにしましょう。
ポテトサラダは、ゆでたじゃがいもをつぶして、きゅうり、ハム、ゆでにんじん、さらした玉ねぎのみじん切りなどと一緒にマヨネーズで和えます。
スパゲティは玉ねぎ、ピーマンを炒めてゆでたパスタを入れ、ケチャップで味付けします。添え物の漬物は、家にあるたくあんや浅漬けなどでいいことにしましょう。
この「家でつくるハンバーグ弁当」は、加工用の添加物はゼロです。
厳密に言えば、マヨネーズやソースに使われている「化学調味料」や、市販の漬物を買ってきた場合はそれに使われている添加物くらいのものです。
「アベ食品のハンバーグ弁当」衝撃のつくられ方
次に、町の仕出し弁当専門店「アベ食品」がつくる激安ハンバーグ弁当を見ていきましょう。
「家庭でつくる弁当のように、ハンバーグをネタからつくって焼く……」と思えば、さにあらず、「業務用の冷凍品」を仕入れてきて、これを湯煎(ゆせん)や電子レンジなどで解凍して詰めるだけです。ソースも「仕入れのデミグラスソース」を使います。
「付け合わせのナポリタン」「ポテトサラダ」も業務用を仕入れてきて、それをパックから出して詰め合わせます。「福神漬け」は、もちろん仕入れ品。
驚くべきことに、アベ食品では「白ご飯」「キャベツの千切り」も仕入れ品です。
結局、「アベ食品」でやっていることは「仕入れの食材」をパックから出して詰め合わせるだけです。鍋もガスも、包丁さえも使いません。
「弁当業者」というより「詰め合わせ業者」といっても過言ではありません。
こうしてつくられた「アベ食品」のハンバーグ弁当。
プラスチックのふたを開けてみると、鮮やかなナポリタン風スパゲティの上に大ぶりのハンバーグ。上にはツヤツヤと光るとろみのあるデミグラスソースがかかっていて、見るからにおいしそうです。
付け合わせは、ポテトサラダとキャベツの千切り。つやのある真っ白なごはん。鮮やかな朱色の福神漬けも添えられていて食欲をそそります。
「アベ食品」では、この弁当を契約企業やスーパーに卸しています。
使われている添加物を「リスト」にすると…
私は何も「仕入れ品を使うことがいけない」と言っているわけではありません。
弁当業者だって、「仕入れ品」を使ったほうが安いとか、朝一から調理していたら昼前の納品に間に合わないとか、いろいろ事情もあるでしょう。
私が問題にしたいのは、こうした仕入れ品を使うことによって、かなりの「添加物」が使われているということです。
以下は、それぞれの食材によく使われている添加物の一例です。
(1) ハンバーグ
調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、加工デンプン、リン酸(Na)、着色料(カラメル色素、紅麹色素)
(2) デミグラスソース
増粘多糖剤(加工デンプン、キサンタンガム)、調味料(アミノ酸等)、酸味料、カラメル色素
(3) スパゲティ
調味料(アミノ酸等)、酸味料、pH調整剤、増粘多糖類、着色料(クチナシ色素、紅麹色素、紅花色素)
(4) ポテトサラダ
増粘剤(加工デンプン、増粘多糖類)、ソルビット、調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、グリシン、酢酸Na、香辛料抽出物
(5) 福神漬
調味料(アミノ酸等)、酸味料、保存料(ソルビン酸K)、甘味料(サッカリンNa)、合成着色料(赤102、黄4、黄5、赤106) 、香料
(6) キャベツの千切り
表示なし
(7) 白ごはん
乳化剤、pH調整剤、調味料(アミノ酸等)
*メーカーによって違いはあります
いまの一覧を見て「白ご飯にも添加物が使われるのか」と驚かれるかもしれません。
しかし「日持ち」「食感の向上」「外見(つや、白さ)」などの効果を上げるために添加物が使われることもあります。
とくに「アベ食品」が仕入れているのは、古米が使われた激安のご飯。
古米はパサパサしておいしくないため、油や添加物で「味」や「つや」を補う必要があるのです。もちろん添加物を使用せず、炊きたてを配給する業者もあります。
ラベルからは知り得ない「隠れた添加物」も使われる
さらに恐ろしいことに、この大量の添加物が「最終製品(弁当)」になったときに、全部記載されるのではなく、「数が目減りする」というマジックもあります。
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その「知り得ない添加物がある」という裏側について興味のある方は、ぜひ私の書いた『食品の裏側』や『食品の裏側2』をご覧ください。
加工食品には「私たちがラベルや表示では知ることのできない『隠れた添加物』」がたくさん使われていることも少なくないのです。
すべての仕入れ品に添加物が使われるわけではもちろんありませんが、激安食品の場合は「さまざまな理由」により、添加物が使われているケースがじつに多いのです。
では、なぜこれだけの添加物が使われるのでしょうか?
その答えは、私が考えた「添加物の効用5原則」にあります。つまり「安い」「簡単」「便利」「キレイ」「オイシイ(味が濃い)」の5つです。
【理由1】安い――コスト削減で「フェイク食材」などに置き換え
まず「安い」については、添加物を使うことで増量できたり、「高い食材」を「フェイク食材」で置き換えたり、「安い食材」もそれなりに見栄えがよくなったり、おいしくなったりということがあります。
コスト削減で「牛肉」も「ケチャップ」も置き換え可能
「安いハンバーグには牛肉が使われていない」といったら、みなさん驚くかもしれません。
「イミテーションミート」、つまり牛肉の代わりに「組織状大豆たんぱく」を使います。
これだと牛肉の風味が全然ないので「ビーフエキス」、結着性がないので「食感改善」と「つなぎ効果」を高めるために「加工デンプン」や「リン酸(Na)」などの「結着剤」を使い、「牛肉らしさ」を出していきます。
100%「組織状大豆たんぱく」でつくる場合もあれば、本物の牛肉と混ぜるところもあります。その際、牛肉が30%も入っていれば「高級ハンバーグ」の部類に入ります。
ごはんも、安い古米を仕入れて、「酵素」や「加工デンプン」を入れて、「つや」を出したり「弾力」を出したりして「新米風」に仕上げます。
それから、付け合わせのスパゲティナポリタンにも安くあげるカラクリがあります。
ナポリタンは通常はケチャップで炒めますが、ケチャップは高いので、「着色料」や「酸味料」でケチャップ風につくり上げるのです。
「アベ食品」が仕入れているのも、この「ケチャップもどき」でつくったナポリタンです。
【理由2】簡単――加工の手間がはぶけ、短時間でつくれる
「簡単」は、添加物を使うことによって、加工の過程で手間をはぶくことができることです。
「アベ食品」の場合、デミグラスソースは仕入れ品ですが、製造元では添加物が大活躍しています。
つまり、デミグラスソースは、本来は牛骨や野菜を長時間煮込んでつくるのですが、激安のものは「エキス類」や「増粘多糖類」「化学調味料」などで短時間でつくり上げます。
さらに付け合わせのキャベツも、カットされた状態で仕入れ。「カット野菜」は加工食品扱いになり、添加物は使っていいので、「殺菌剤」や「酸化防止剤」「変色防止剤」などが使われています。
【理由3】便利――日持ちがグッとよくなる
「便利」は保存性です。添加物を使うことで日持ちがグッとよくなります。
とくに「仕出し弁当」のような常温で流通するものには「腐敗のリスク」があります。腐ったものを出したら命取りですから。
「つやつやの照り」も「濃厚で強い味」も添加物の力
【理由4】キレイ――人工的に「つやつや」「キレイな朱色」が出せる
「キレイ」は、見た目です。この場合のハンバーグソースのつやつやでおいしそうな「照り」は「増粘多糖類」や「加工でんぷん」でつくられたもの。タレがたれるとクレームが出るので、その予防にも役に立ちます。
福神漬けのキレイな朱色は、もちろん「人工着色料」です。
【理由5】オイシイ(味が濃い)――手軽に「濃厚で強い味」が出せる
「オイシイ」は、添加物を使うことで、手軽に「濃厚で強い味」が出せます。
もはや、食品加工は添加物なしでは成立しません。弁当加工の現場でも添加物は大活躍なのです。
こういう話をすると「食品添加物は科学的知見に基づいて安全性が確保されたものだけが使われている」「厚労省が認可しているものだ」などという反論をよく受けます。
あたかも添加物の危険性を訴えるのは非科学的だと言わんばかりです。
しかし現実的には、添加物は「認可」と「削除」の繰り返しの歴史です。
つまり「安全なので使っていいですよ」という「認可」されたはずのものが、しばらくすると「やはり発がん性が疑われる」などという理由で「削除」される、その繰り返しの歴史なのです。これは厚労省のHPを追っていればわかることです。
また、そういう「安全性の議論」はおいておいたとしても、みなさんが実際に食品加工工場で「白い粉」を大量にバサバサッと入れる光景を見たら、たじろぐと思います。
「口に入れるものに、こんな不自然な『白い粉』を大量に入れて、本当にいいのか」
「科学的な安全はよくわからないが、どうも『気持ちが悪い』」
「少なくとも、子どもたちには食べさたくない」
純粋にそう思う人も少なくないのではないでしょうか。その「素朴な感情」こそ、大事にすべきではないかと私は思うのです。
2022年には名古屋市立大学が妊婦9万4062人のデータを基にした研究で「市販弁当や冷凍食品を頻繁に食べる妊婦は、死産の確率が2倍以上になる」という発表がされており、『毎日新聞』も2022年5月の記事「市販弁当や冷食が多い妊婦、死産と関連か 名古屋市立大研究チーム」で取り上げています。
「市販弁当や冷凍食品を頻繁に食べる妊婦は、死産の確率が2倍以上になる」という発表 ※外部サイトに遷移します
「リスク」を知る。「手作りのおいしさ」も見直す
だからといって、食品添加物をいっさい使ってはいけない、「市販の弁当」はやめようなどと言いたいのではありません。
「市販の弁当」は確かに便利だし、私も地方の講演などでお昼に出されれば、しっかりいただきます。昭和の世代ですから、食べ物は残せません。
私が言いたいのは、やはり「安いものには理由がある」ということ、そして「『便利さ』と引き換えに、引き受けないといけないリスク(添加物)がある」ということです。少なくともそれを「知ったうえで」食べていただきたいと思います。
そして「市販の弁当」を利用してもいいけれど、やはり中心は「できるだけ手作りを大切にしてほしい」と私は思います。
私が15年かけて開発した「安部ごはん」も、『食品の裏側』発売後、「そうはいっても、毎日忙しくて、手作りしている時間がとれない。だから、家庭で簡単にできるレシピを教えてほしい」という全国の読者の声を受けて、誕生したものです。
すべて手作りしている時間がとりづらい現代だからこそ、あらかじめ「5つの魔法の調味料」を使って用意しておけば「時短で簡単につくれるレシピ」をたくさん開発しました。「和風ハンバーグ」のレシピもあります。
安部氏が開発した「魔法の調味料」さえあれば、15分で手軽で簡単につくれる「ザ・和風ハンバーグ」。『安部ごはん』の「絶対おすすめ!ベスト10レシピ」にも選出されている大人気の一品(撮影:佳川奈央)
加工食品全盛の今だからこそ、「安さ」「便利さ」ばかりを追い求めるのではなく、「簡単にできるレシピ」を知ったうえで「手軽に時短でできる、手作りの安心・安全、おいしさ」を、どうか今一度見直し、味わい、体感してほしいと、「食の裏側」を知る人間として、強く願っています。
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提供元:平気で「お弁当」を買う人が知らない超残念な真実|東洋経済オンライン