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2022.09.27

年金を一番トクにもらう「夫婦の年齢差の法則」|配偶者手当「加給年金」をどう受け取るかがカギ


改正された年金制度。「年金戦略」を立てるときの視点を紹介します(写真:8x10/PIXTA)

改正された年金制度。「年金戦略」を立てるときの視点を紹介します(写真:8x10/PIXTA)

年金制度が改正された。受給開始年齢を75歳まで繰り下げられるようになり、受給を遅らせれば遅らせるほど、受け取る年金額が増えていく仕組みとなったのだ。そこで悩ましい問題が出てきた。いったい何歳からもらうと生涯にわたって受け取る年金の総額を最も多くできるのだろうか、ということ。社会保険労務士の増田豊氏の著書『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』より、「夫婦間の年齢差」、「平均寿命」、受給開始を遅らせたことによる「待機期間中の生活費」の3つの視点で一部引用・再編集して紹介する。

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受給開始を遅らせるほど年金は増えていくが

年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は65歳からの受給開始が基本だが、本人の希望によって受け取る時期を遅くすることも早めることもできる。年金を受け取る時期を65歳よりも後ろにすることを「繰り下げ」、65歳よりも早めることを「繰り上げ」と言うが、今回の年金大改正では、年金の受給開始年齢を「75歳まで繰り下げる」ことができるようになった。

これまでも70歳までは繰り下げることができたが、それがさらに5年間、後ろ倒しできるようになり、しかも、75歳に繰り下げると65歳から受け取るのと比べて、受け取る年金額が84%も増える。つまり、75歳まで繰り下げると「ほぼ2倍」の年金を受け取れるようになったのだ。ここが年金大改正の最大のポイントだ。

もう少し詳しく説明すると、年金を66歳以後に受給開始する場合、65歳から繰り下げた月数によって0.7%ずつ、受け取る年金の月額が増えていく。受給開始を65歳から1年間、繰り下げると8.4%、70歳まで繰り下げると42%、75歳まで繰り下げると84%も増えることになる。

それでは、いったい何歳から受け取り始めれば、「生涯で受け取る年金の総額がもっとも多くなる」のだろうか。

年金は生きているうちは生涯にわたって受給できるので、65歳から受給開始すればそれだけ長い期間、受け取れる。一方、受給開始を遅らせれば遅らせるほど、(65歳からの受給開始と比べて)受け取る期間は短くなるものの、月々に受け取る年金額は多くなる(正確には、年金の支給はふた月に1回、2カ月分が支払われる)。

受け取る総額をもっとも多くするには、何歳からどのように受け取り始めるのがいいのか。今回の年金大改正によって、その「年金戦略」を「自分で立てて」、実行することが求められるようになったといえる。

年金をもっとも多くもらうには夫婦で戦略を

年金戦略を自分で立てて実行するとはいえ、やみくもに受給開始を遅らせればいいのではないことは、容易に想像がつくだろう。極端な話だが、75歳まで受給開始を繰り下げても75歳1カ月で死んでしまったら繰り下げ増額の意味がなく、65歳からもらっていたほうが生涯にわたって受け取る年金の総額が断然、多くなることはすぐにわかる。このように、実際のところは「寿命」という不確実な要因によって左右されてしまうところが大きい。

もう1つ、年金受給者の多くが「夫婦で老後を迎える」ことを考えると、年金戦略は「夫だけ」、あるいは「妻だけ」ではなく、「夫婦そろって」生涯にわたって受け取る年金の総額を増やすという視点で考えなくてはならない。ここが重要なポイントになる。

一般的な年金世代は「夫が会社員で妻が専業主婦」という夫婦が多いが、中には妻が若いころに働いており、その間に厚生年金に加入していて老齢厚生年金の受給資格がある場合もあるだろう。そうなると、夫婦で受給できる年金は、夫の老齢基礎年金と老齢厚生年金、妻の老齢基礎年金と老齢厚生年金の4種類になる。それぞれの年金について受給開始を「75歳まで繰り下げる」、あるいは「繰り下げずに65歳から受給する」というように個別に決められる。

こうしたことを踏まえて、夫婦で受け取る年金の総額をもっとも多くするには、まずは、夫婦そろって「すべての年金の受給開始を繰り下げる」ことを検討するのがセオリーといえる。日本人の平均寿命などから考えると、ずばり「70歳への繰り下げ」を検討するのが基本戦略といえるだろう。

ただし、この基本戦略にも「落とし穴」があることを忘れてはならない。それが「夫婦間の年齢差」だ。年金世代の夫婦なら、多くの場合、妻は夫よりも年下だ。年齢差はまちまちでも、3歳や5歳、中には10歳ほどの差がある夫婦も珍しくはないだろう。

なぜ、「夫婦間の年齢差」に注目すべきなのか。理由は、年齢差に応じて「加給年金」を受け取ることができるからだ。

10歳差夫婦なら約400万円も受け取れる

加給年金とは、「年金の配偶者手当」とも呼ばれる制度だ。厚生年金に20年以上、加入している人が65歳になった時点で「65歳未満の配偶者(妻もしくは夫)」がいる場合、配偶者が65歳になるまで「毎年38万8900円」(令和4年度)が支給される。

例えば、65歳の夫と、5歳年下の妻という夫婦で、夫が20年以上、厚生年金に加入していた場合、夫が65歳で老齢厚生年金の受給を開始すると、5歳年下の妻が65歳になるまでの5年間に毎年38万8900円、合計で194万4500円が、夫の老齢厚生年金に加算されて支給される。年齢差が大きければ大きいほど受け取る金額が増えるので、夫65歳、妻55歳の「10歳差夫婦」なら、38万8900円×10年間でじつに400万円近くも受け取れる。

ぜひとも受け取りたい年金だが、じつは年齢差がある夫婦なら誰でも受け取れるというものではない。加給年金は、「老齢厚生年金に付随して支払われる」ので、夫が老齢厚生年金の受給を繰り下げてしまうと、老齢厚生年金の待機期間中は加給年金も受け取れなくなってしまう。

どういうことか。夫65歳、妻60歳の5歳差の夫婦で説明する。夫が老齢厚生年金の受給開始を70歳まで繰り下げると、65歳から70歳までの5年間の待機期間中は加給年金が支給されない。しかも、夫が70歳になったときには妻も65歳になってしまうので加給年金の支給対象から外れてしまう。このケースでは、夫が老齢厚生年金の受給開始を繰り下げたがために、5年間分の加給年金(総額194万4500円)を受け取れなくなってしまうということになる。

先に夫婦での年金戦略を考えたとき、夫の老齢基礎年金も老齢厚生年金も含めて、まずは、「すべての年金の受給開始を70歳まで繰り下げることを検討するのがセオリー」と書いたが、夫65歳、妻60歳というように、夫婦に一定の年齢差(妻が年下)があるなら、「夫婦そろって繰り下げ受給」ではなく、夫の老齢厚生年金の受給を繰り下げずに、加給年金を受け取る選択をしたほうが、夫婦で受け取る年金額を増やすことができる可能性が高くなる。

夫婦で一番トクする「夫婦の年齢差の法則」

すると、気になるのは「一定の年齢差」がいったい何歳差なのかということ。どのくらいの年齢差があるときには加給年金を選び、いくつまでの年齢差なら繰り下げ受給を選んだほうがいいのか、その損益分岐点を探れば、年金を一番トクにもらうための「夫婦の年齢差の法則」が見えてくる。

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考えるポイントは、夫の老齢厚生年金を繰り下げたことで、本来はもらえるはずだった加給年金がもらえなくなるが、その「損失」を(夫の)老齢厚生年金の繰り下げによる「増額分」で埋め合わせできるのは何年後か、ということ。

仮に95歳以上にならないと埋め合わせができないのであれば、そこまで長く生きられるかどうかわからないので、老齢厚生年金を繰り下げずに加給年金をもらうべきと判断できるし、反対に75歳にならないうちに追いつくのであれば、加給年金を受け取らずに、繰り下げ増額を選択したほうがいいという判断ができる。

その視点で、3歳差、5歳差、8歳以上の年齢差の夫婦でシミュレーションをしてみた。結論からいうと、3歳差の夫婦であれば加給年金を受け取らずに繰り下げたほうがおトク、5歳差は微妙だが夫婦そろって元気なうちにより多くの年金を受け取りたいという考えであれば加給年金を受け取ったほうがベターといえる。8歳以上の年齢差のある夫婦なら、迷わず加給年金を受け取ったほうが、夫婦そろって生涯にわたって受け取る年金の総額をもっとも多くすることができる。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

年金は何歳からもらうのが一番おトクなのか

夫の定年時「5つ以上年下の妻」は注意が必要だ

年金未納の多い夫が死んだら遺族はどうなるか

提供元:年金を一番トクにもらう「夫婦の年齢差の法則」|東洋経済オンライン

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