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2022.09.26

新「八重洲バスターミナル」便利と言い切れない訳|発着は集約されるもたどり着くのが難しい立地


9月17日にオープンした「バスターミナル東京八重洲」のインフォメーションセンター(筆者撮影)

9月17日にオープンした「バスターミナル東京八重洲」のインフォメーションセンター(筆者撮影)

私が勤務する千葉県東金市の大学へは、JR東京駅や横浜駅などから学生や教職員が利用できる直行の高速バスが運行されており、私も通勤に利用している。

9月のはじめ、大学の総務課から在校生や教職員に「東京駅シャトルバス乗り場の変更について」という連絡が入った。これまで大学までのシャトルバスは、東京駅八重洲中央口から外堀通りをはさんで八重洲通り沿いにある停留所に発着していた。

八重洲地下街の出口の目の前にあってそれなりに便利ではあったが、酷暑と厳寒の季節は待つのがつらいし、日除けや雨宿りになる屋根も狭いため、傘を差しながら待つこともしばしばだった。

9月16日に廃止された東金・銚子方面の地上バス停(筆者撮影)

9月16日に廃止された東金・銚子方面の地上バス停(筆者撮影)

そのバス停が2022年9月17日、東京ミッドタウン八重洲の地下2階にオープンした「バスターミナル東京八重洲」に移転した。

これまでJR東京駅周辺の高速バス乗り場は、つくばや鹿島方面など関東エリアを走る昼行便と、中部・関西方面への夜行便を運行するJRのバスこそ、駅構内の一角にある「東京駅JR高速バスターミナル」を使用していたが、それ以外の各社の停留所は路上に分散し、初めて利用する乗客は、お目当てのバス停を探すのがかなり難しかった。

私自身、バス停に並んでいる際に数えきれないほどの人にバス停の場所を聞かれたし、中には間違って並んで大学のシャトルバスに乗り込もうとする乗客もいた。

シャトルバスは、ビィー・トランセグループの西岬観光というバス会社が運行しており、バスの車体に大学名は書いてあるが、全体のデザインは、同社が運行する東京~成田空港間の高速バスなどと同じなので、乗り間違えてしまう人がいるのもうなずける。

ちなみに、東京駅前を出ると大学のキャンパスまで直行するこのシャトルバスは、これまで停留所に出発時刻も明記され、一般の利用者も正規の運賃を払えば乗車可能であった(大学関係者は、学内で買える割安のチケットでの乗車が原則)。

開業した八重洲のバスターミナル

さて、9月17日にオープンした「バスターミナル東京八重洲」は、2028年度に予定されている全面開業に向けた、先行オープンとしての開業である。

開業当日の午後、実際にターミナルを訪れてみたが、まず目についたのは地下1階に新しくできたピカピカの飲食店だった。沖縄名物の「ポーたま(ポークたまごおにぎり)」の店は、午後2時を過ぎていても長蛇の列だったし、「立食い寿司 根室花まる」なども賑わいが遠くまで響いていた。

この一角に高速バスの案内所とチケットの自動販売機があり、乗り場は地下2階へとエスカレーターで降りていく。降りてみると、「かなり狭い」というのが第一印象だった。

「バスターミナル東京八重洲」構内の案内板(筆者撮影)

「バスターミナル東京八重洲」構内の案内板(筆者撮影)

まず、11番から16番まで、発着バースが6つしかない。しかも、そのうち、初日は1つのバースは発車するバスはまったくなく、もう1つも深夜に出発する夜行便のみで、実際に乗車に使われているのはほぼ4バースのみであった。この数で、1日600便あまりの高速バスをさばくことになる。

また、1バースごとの乗客が並ぶスペースも狭く、座って待つスペースも18席と決して多くない。ここだけ見れば、“日本最大級”とはほど遠い状況である。このエリアに、小さいながらコンビニとトイレが設けられているのが何よりの救いで、手軽に飲み物や軽食を買って乗車できるようになったのは嬉しい。

地下2階の出発バース(筆者撮影)

地下2階の出発バース(筆者撮影)

しかし、もともと分散してわかりにくいバス停をわかりやすく集約するのが目的だったはずだが、東京駅から見て八重洲地下街のかなり奥の方にあり、しかも遠くからは見通せないため、初見でたどり着くのは難しそうだ。

実際にこの日、偶然バスターミナルで教え子の大学生に会ったのだが、「バスターミナルの入り口が探しづらく、なかなか見つからなかった」とこぼしていた。

すでに定着して久しい「バスタ新宿」

東京の大規模バスターミナルというと、2016年4月に開業した新宿高速バスターミナル「バスタ新宿」が思い起こされる。

東京駅周辺と並んで高速バスの発着が多い新宿駅周辺も、バスタ新宿の開業以前は乗り場が分散していて利用者には不便きわまりなかった。それがJR新宿駅南口の正面にバスタ新宿ができたことで一変した。

バスタ新宿は1日最大1600便あまりの高速バスが発着する、わが国最大級の高速バスターミナルとして大きな存在感を放っている。

これまで、テレビ局が東京への観光客、あるいは東京から地方へ向かう帰省客などのインタビューを取る際には、JR東京駅か羽田空港が定番となっていたが、開業以降はバスタ新宿もそうした「東京の玄関」の1つとなり、メディアへの露出が増えて、高速バスそのものの知名度も上がった。

2016年のオープン時に撮影したバスタ新宿の外観(筆者撮影)

2016年のオープン時に撮影したバスタ新宿の外観(筆者撮影)

これまで東京では、次々と高速バスが発着するような光景がなかっただけに、バスタ新宿の広いバースにバスが発着する様子や、バスタに入構する高速バスが甲州街道に連なる様子は、普段高速バスに縁がない人にとっても、高速バスの存在を印象付ける効果があったといえよう。

大型バスターミナルの嚆矢は「名鉄バスセンター」

東京では近年になって、急速に整備されているように感じる大規模バスターミナルだが、実は名古屋市には以前からあり、愛知県出身の私が小学生のころにはすでに見慣れた光景であった。

というのも、1967年(昭和42年)に、JR名古屋駅に隣接する名古屋鉄道(名鉄)名古屋駅と一体となったビル(現在の名鉄百貨店メンズ館、当時は名鉄メルサという商業ビルが主テナントとして入るビル)に、「名鉄バスセンター」が開業したからである。

多くのバスが出入りする「名鉄バスセンター」(写真:天空のジュピター/PIXTA)

多くのバスが出入りする「名鉄バスセンター」(写真:天空のジュピター/PIXTA)

ビルの3~4階のほぼすべてがバスターミナルとなっており、24の発着バースを備えた、今見ても巨大な施設だ。開業間もない当時、筆者はこのバスセンターに隣接する診療所に週1回通っており、バスセンターに発着するバスを眺めるのが何より楽しみだった。

当時はまだ、今ほど高速道路網が発達していなかったため、乗り入れていたのは名鉄バスの郊外路線が多かったが、1965年に名神高速道路、1969年に東名高速道路がそれぞれ全通し、1975年には中央道の名古屋側(小牧JCT)から長野県伊那地方の駒ヶ根ICまでが開通するなど、高速バス網が広がる下地ができつつあった。

名鉄バスセンターにも、東名急行バス(名古屋から東京方面)、日急バス(名古屋から京都・大阪方面)、名鉄の高速バス(名古屋から中津川、飯田、びわ湖バレイなど)が乗り入れるようになり、旅へのいざないをかきたてていた。子ども時代、毎週のように見ていた大型バスターミナルが、東京では平成も末期にならないとできなかったことのほうが不思議である。

広島市中心部の「広島バスセンター」や九州一の繁華街、福岡・天神にある「西鉄天神高速バスターミナル」など、高速バス網が発達した地方都市でも、東京よりもかなり早く、規模の大きなバスターミナルが、空港や新幹線の駅と並んで地域の玄関的な役割を果たしていた。

西鉄「天神高速バスターミナル」の出発表示(2016年、筆者撮影)

西鉄「天神高速バスターミナル」の出発表示(2016年、筆者撮影)

そんな中で東京は、土地の制約のほか、ターミナルが東京、新宿、池袋、渋谷、品川の各駅周辺に分散していることもあり、ランドマークとなるようなバスターミナルが造られてこなかったと考えられる。

「バスターミナル東京八重洲」のこれから

さて、八重洲のバスターミナルは、東京ミッドタウン八重洲の地下に入っているように、ターミナル単独の整備というより、八重洲地区の大規模な再開発とセットとなっている。そんな背景もあり、ターミナルの整備はUR都市機構(都市再生機構)が担当するが、運営は新宿での経験がある京王電鉄バスが行う。

東京ミッドタウン八重洲の全面開業は2023年3月だが、前述したように1日1500便が発着可能というバスターミナルのフルオープンは6年先の2028年だ。

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現時点では、まだまだこのあたりの認知度は低く、当分の間、初訪の利用者がバスターミナルを見つけるのは難儀しそうである。

また、これまでのバス停は地上だったため、首都高速道路の宝町ランプへの出入りに発着から1分もかからなかったが、地下2階から地上に上がる分、所要時間も少し伸びそうだ。なお、東京ミッドタウン八重洲には、オフィスのほか、外資の高級ホテル「ブルガリホテル東京」、区立小学校、認定こども園などが入居することになっており、全面開業時にはさらに注目を集めそうである。

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提供元:新「八重洲バスターミナル」便利と言い切れない訳|東洋経済オンライン

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