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2022.09.24

【帯状疱疹】ズキズキと眠れぬ激痛、発症の原因|予防可能な2種類のワクチン接種、どう選ぶ?


帯状疱疹を発症し眠れないほどの痛みに苦しんでいる人もいます(写真:freeangle / PIXTA)

帯状疱疹を発症し眠れないほどの痛みに苦しんでいる人もいます(写真:freeangle / PIXTA)

ピリピリ、ヒリヒリ、ズキズキと痛み、夜も眠れないほどの痛みに苦しむ人もいる帯状疱疹。これは水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって引き起こされる。しかし、最近はワクチン接種によって予防が可能になってきた。

高齢化などによって増え続けている帯状疱疹の発症を防げるというワクチン接種。対象となる人や予防効果、ワクチンの選び方などについて、奈良県立医科大学皮膚科学教室教授の浅田秀夫医師に聞いた。

関連記事:【帯状疱疹】子育て世代で急増する意外な背景

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60~70代の高齢者に多く、80歳までに3人に1人はかかるといわれている帯状疱疹。

体に帯状の発疹(赤く盛り上がったブツブツ)が広がり、発疹が出る2~3日前から痛みが生じる。原因は「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」で、初めて感染したときには「水ぼうそう(水痘)」として発症する。

水ぼうそうは一般的に10歳までに感染するが、ウイルスは水ぼうそうが治ったあとも神経に潜伏し続ける。そのウイルスが免疫低下や加齢などをきっかけに再び活動を開始すると、帯状疱疹を発症する。

発疹が完治した後でも、痛みが残る場合も

発症しても早い段階で抗ウイルス薬の飲み薬による治療を受ければ、2週間~1カ月程度で治るという(関連記事:【帯状疱疹】子育て世代で急増する意外な背景)。しかし、治療の開始が遅れた人や発疹が重症だった人、高齢者などは発疹が完治したあともしばらく痛みが残ることがある。

この痛みは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれていて、帯状疱疹を発症した50歳以上の約2割がかかるといわれている。

帯状疱疹の急性期の痛みは主に炎症によって起こるが、帯状疱疹後神経痛の痛みは神経がダメージを受けたことによって起こるもので、電気が走ったようなピリピリした痛みや、衣服に触れるだけでヒリヒリした痛みを感じることが多い。

【帯状疱疹】子育て世代で急増する意外な背景) ※外部サイトに遷移します

誰にでも効く治療法はなく、入院が必要になる人や、数年にわたって痛みが続いて日常生活に支障が出る人もいる。

痛みが長く続くかもしれないことを考えると、帯状疱疹はできるだけかかりたくない。予防のための最も効果的な方法が、ワクチンの接種だ。50歳以上を対象に2016年から「水痘ワクチン」が、2020年から「サブユニット(不活化)ワクチン」が接種可能になった。

「水痘ワクチン」とはウイルスの毒性を弱めた「乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビケン)」のことで、幼児が定期接種しているものとまったく同じワクチンだ。一方、「サブユニットワクチン」はウイルスの表面タンパクの一部に、免疫を増強させる薬剤(アジュバント)を添加したワクチンだ。

2つのワクチンの違い

2種類のワクチンはどう違い、どう選べばいいのか。

「2つのワクチンは効果と安全性において、違いがあります」と浅田医師。具体的には次のように説明する(下記図表は、外部配信先ではすべて閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でご確認ください)。

(出所)各種資料を基に筆者作成

(出所)各種資料を基に筆者作成

「まず効果についてですが、水痘ワクチンは帯状疱疹の発症を50%程度減少させるのに対して、サブユニットワクチンは97%減少させることがわかっています。帯状疱疹後神経痛の予防についてもサブユニットワクチンのほうが効果的です」

一方でサブユニットワクチンは副反応が出やすく、約8割の人で接種した部位に腫れや痛みなどが現れ、約6割の人で発熱や頭痛などの全身症状が出る。水痘ワクチンは接種部位に痛みが出ることはあるが、全身症状が出るのはまれだ。30年以上前から幼児に接種されてきた水痘ワクチンとまったく同じものなので、安全性も保証されている。

また、費用面の違いも大きい。自治体によっては助成があるが、一般的に水痘ワクチンは1回で済み、8000円程度。サブユニットワクチンは2回接種する必要があり、合計で約40000円になる。(助成については、自分が住んでいる自治体に問い合わせを)

「リウマチや膠原病(全身性エリテマトーデスなどの病気)などで免疫を抑える治療を受けている人や、抗がん剤を使用している人は、弱毒化ウイルスによる感染のリスクがあるため、水痘ワクチンは接種できません。しかし、こうした免疫が弱っている人は帯状疱疹にかかりやすいので、サブユニットワクチンの接種をおすすめします」(浅田医師)

では、帯状疱疹にかかったことがある人にはワクチンは不要なのか。
帯状疱疹に一度かかったことがある人は、もう二度とかかりたくないという思いが強い。しかし、二度とかからない保証はないことがわかってきた。浅田医師が話す。

「かつては帯状疱疹は一生に1回の病気と考えられていましたが、香川県小豆島に住む50歳以上の人を対象にした調査では、帯状疱疹を発症した人のうち約15%が過去に帯状疱疹を経験していました。ただし、2回目以降の発症の場合、1回目よりも軽症で帯状疱疹後神経痛にもなりにくい傾向があります。このため、再発についてはあまり心配しなくてもいいと思います」

発症から5年以内であれば接種は不要

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少なくとも帯状疱疹の発症から5年以内であれば、ウイルスに対する免疫力が維持されているので、再発予防のためにワクチンを接種する必要はない。

最近は新型コロナウイルスとの関連が指摘され、コロナにかかった人は帯状疱疹を発症しやすい、コロナワクチンの接種後に帯状疱疹を発症するといった報告がある。両者の関連性が明らかになるのはこれからだが、コロナ感染が身近になっている今、帯状疱疹の予防についても検討したい。

(取材・文/中寺暁子)

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奈良県立医科大学皮膚科学教室教授
浅田秀夫医師

1984年奈良県立医科大学卒業。大阪大学皮膚科、米国NIH留学などを経て、2007年から現職。日本皮膚科学会皮膚科専門医・指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医・指導医。

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提供元:【帯状疱疹】ズキズキと眠れぬ激痛、発症の原因|東洋経済オンライン

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