2022.09.01
【頭痛】首こりが原因?緊張型頭痛の劇的改善法|長時間のPC作業がリスク、セルフケアで予防も
患者が多いといわれる緊張型頭痛に対するペインクリニック治療を紹介します(取材:shimi/PIXTA)
生活の質を下げるさまざまな痛み。今、痛みを伝える神経をブロックすることで鎮痛をはかる治療が広まっている。この治療を行っているのが、痛みを専門に診る診療所(診療科)ペインクリニックだ。
ペインクリニックには、薬ではなかなか解決しない頭痛を抱えた患者も多く受診する。そこで、ペインクリニックで痛み治療について麻酔科医の小林玲音(れおん)医師(昭和大学病院)に聞いた。
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仕事や家事などに支障が出やすいのが頭痛だ。悩んでいる人は多く、4万人を対象に実施した大規模な全国疫学調査では、慢性頭痛の有病率はなんと約40%にものぼる。
頭痛は痛み方などによって、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つに分かれる。先の調査によると、緊張型頭痛が最も患者数が多くて有病率は約22%、次が片頭痛で約8%だ(群発頭痛の患者数は不明)。
「ペインクリニックで行う神経ブロックは、ほとんどの頭痛に有効です。ただ、治療によって血管が拡張して血流がよくなるので、群発頭痛の発作中は注意が必要です」(小林医師)
今回は、特に患者が多い緊張型頭痛に絞って、神経ブロックとセルフケアについて取り上げる。
首の筋肉の過度な緊張で起こる頭痛
緊張型頭痛は、筋肉の過度な緊張や神経の過敏によって引き起こされる頭痛。どうして痛みが起こるのかはまだ十分にわかっていないが、痛みは頭全体だけでなく、肩甲骨の下ぐらいまでおよぶ。
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西遊記の孫悟空ではないが、「頭にはめた金属の輪で締めつけられるような圧迫感を伴う痛み」が特徴で、これが短い人では30分ほど、長い人では7日間ほど続く。慢性化してしまっている人も多いという。
原因は「首に負担がかかる姿勢を長く続ける」ことにある。頭を支える後頭部や首の筋肉が緊張して血流が悪くなると、神経が徐々に変化して刺激に過敏となり、その結果、痛みが出るのだ。長時間のパソコン作業をしている人によく見られることから、現代病の1つといえるだろう。
最近では、精神的なストレスも発症に関係していることがわかっている。緊張して首や肩に力が入ると血管が収縮する。これが緊張型頭痛のきっかけになる。
頭痛持ちの人のなかには、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)で対処している人もいるだろう。
「非ステロイド性抗炎症薬は、炎症の元になるプロスタグランジンという物質を抑えて、痛みをとっていきます。非ステロイド性抗炎症薬にはさまざまな種類があります。作用だけでなく、副作用のことも考えて、安易な使用は避けましょう」(小林医師)
そもそも緊張性頭痛は二次性頭痛というほかの病気が原因で起こる頭痛によく似ているので、医療機関で診療を受けたうえで薬を服用するのが望ましく、自己診断による鎮痛薬の服用は勧められない。
薬の常用で別の頭痛が起こることも
鎮痛薬は飲んだら比較的すぐに痛みをとってくれるが、一方で薬に頼りすぎなのも、危険だ。常用することで、肝臓や腎臓にも負担がかかり、薬が原因による薬物性頭痛が起こる可能性もある。
むしろ、こうした薬物療法などで思うような改善が見られないときに試したいのが、ペインクリニックでの治療だ。
前回の記事(【つらい痛み】鎮痛薬が効かない時にすべきこと)でも触れたが、ペインクリニックで行っているのは、痛みの原因となっている神経、あるいはその周辺を探り当てて、そこに注射針を刺し、局所麻酔薬などを注入することで、痛みの信号が脳に行くのをブロックするという治療法だ。
「緊張型頭痛には、頭痛の引き金となっている首のうしろや頭、肩甲骨の周囲などのこった筋肉に針を刺して、局所麻酔薬を注入し、血流を改善する“トリガーポイント注射”が有効とされています。飲み薬と違って、痛みがある部分に狙い撃ちができるので、強い鎮痛効果が得られます」(小林医師)
トリガーポイント注射であれば、どこのペインクリニックでも行うことが可能だが、慢性的な頭痛だと専門的な治療が必要になってくる。
「神経ブロックには数十種類もあり、超音波やレントゲン透視(画像で状態を確認)を使わないとできないブロックもあります。大学病院のような大きな施設ではこれらの装置を駆使しながら、頭痛の原因となっている神経を探り出して、トリガーポイントよりももっと深い場所に神経ブロックを行っていくことが多いです」(小林医師)
【つらい痛み】鎮痛薬が効かない時にすべきこと ※外部サイトに遷移します
このほかに、自律神経の働きを改善したり上半身の血流をよくしたりする星状神経節ブロックも有効だという。
「星状神経節ブロックは、交感神経をブロックすることを目的に、首の根元部分に局所麻酔薬を注入します。興奮して過敏になっている神経を落ち着かせる働きや、筋肉の緊張を和らげて血管を拡張する働きもあり、総合的に体調の改善をはかってくれます」(小林医師)
緊張型頭痛やほかの頭痛でも、程度やこじらせ方などにもよるが、週1回から通院をはじめて、痛みが改善してきたら月1回のペースで継続する。3カ月~半年で治療の目処がたち、卒業までたどり着くことが多いという。頭痛が再発した際にはまた治療に訪れればいいそうだ。
運動やストレスマネジメントで再発予防
前述したように、緊張型頭痛は姿勢の悪さなどが原因で起こる。したがってそこを直さなければ繰り返される。では、どんなことが必要か。小林医師への取材でわかったことをまとめた。
緊張型頭痛対策としてのセルフケアでは、運動、睡眠、そしてストレスマネジメントが大切だ。
運動は痛みの改善と予防にも有効だ。軽く汗をかく程度の運動を20~30分、週2~3回行う。筋トレ(スクワットや腕立てなど)や、肩・腰回りをほぐして姿勢を正すためのストレッチは積極的にしてほしい。
痛みへの対処法として温めるか冷やすか。どちらがいいのだろうか。
「冷やすと体が硬くなってしまうので、温めたほうがいいですね。しかし、なかには冷やすほうが楽という方もいますので、ご自身が気持ちいいほうを選択してください」(小林医師)
ストレス対策については、「強いストレスがかかっているときもそうですが、ストレスから解放され、ふっと神経が緩んだタイミングにも病気になりやすい傾向があります。ストレスで気を張っているときにこそ、自分が無理をしていないかを意識してみることも必要です」(小林医師)
今回紹介した緊張型頭痛は、ほかに原因となる病気がない「一次性頭痛」の1つだが、このほかに脳卒中や髄膜炎などの病気の症状として現れる二次性頭痛がある。
二次性頭痛のなかには緊急性を伴うものもあると、小林医師は言う。
「くも膜下出血などの可能性もあるので、『急に痛くなった』とか、『今までにない強い痛みがある』とか、『吐き気など頭痛以外の症状もある』ということであれば、躊躇(ちゅうちょ)せず、医療機関を受診してください」
(取材・文/熊本美加)
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昭和大学病院麻酔科講師 小林玲音医師
東京都出身。2005年に昭和大学医学部を卒業、2007年より同大学麻酔科学講座に在籍。2011年同大学大学院(博士課程)にて学位取得。手術室での麻酔管理のほか、ペインクリニックにも従事し、痛みに対する神経ブロック療法、できるだけ体に傷を残さずに治療するインターベンショナル治療の研究に携わっている。
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提供元:【頭痛】首こりが原因?緊張型頭痛の劇的改善法|東洋経済オンライン