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2022.08.20

飲み残し「ペットボトル」を平気で捨てる人の盲点|どのようにリサイクルされるか知っていますか?


飲み終わって廃棄したペットボトルはその後どうなるのでしょうか(写真:森天/PIXTA)

飲み終わって廃棄したペットボトルはその後どうなるのでしょうか(写真:森天/PIXTA)

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暑い日が続く中、外出先で喉が渇き飲料を購入し、その場で飲み終わった容器を付近の回収ボックスに入れる。読者の皆さんは、このように外出先で廃棄物を出した経験が一度はあるだろう。

廃棄物処理法上、外出先でごみ箱や回収ボックスに排出される廃棄物は、それらを設置した事業者が排出した事業系の一般廃棄物か産業廃棄物とみなされる(参照:『在宅勤務のごみを「家庭ごみとして出す」深刻問題』)。

『在宅勤務のごみを「家庭ごみとして出す」深刻問題』 ※外部サイトに遷移します

外出先でペットボトルを排出した場合の責任者は?

つまり、外出先でペットボトルを排出すると、その回収ボックスを設置した者が排出した産業廃棄物として扱われるため、その設置者が責任をもって処分しなければならない。

外出先で排出したごみの廃棄物処理法上の位置づけ(出所)東京二十三区清掃一部事務組合「ごみれぽ23 2021年」、2020年、35頁。赤枠は筆者が加筆

外出先で排出したごみの廃棄物処理法上の位置づけ(出所)東京二十三区清掃一部事務組合「ごみれぽ23 2021年」、2020年、35頁。赤枠は筆者が加筆

家庭で飲料を飲んだ後に出る容器のごみは地方自治体が定める排出方法にて出さなければならないため、指定された曜日まで自宅に保管しておき、ルールに沿って集積所に出すようになる。

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しかし、外出先なら回収ボックスに入れるだけでいいため、その手軽さからか、適当になりがちだ。

それに加え、排出方法を細かく注意する人がその場にはいないため、容器に煙草の吸殻を入れたり、飲食時に出たプラスチック包装やごみ袋なども飲料とともに収集ボックスに入れたり、飲料容器以外も一緒くたにして排出している状況も見かける。

飲料を飲み終わり容器を回収ボックスに入れた瞬間、私たちのその容器への関心はまったくと言っていいほど薄れる。それらがその後どう処理されるかはまったく気にせず、その場を後にする。

炎天下の中を歩いていると、自動販売機の横に備え付けられた回収ボックスから飲料容器があふれ出ているのを目にするが、それらの容器を処理・処分している人がいるため、私たちの生活環境からごみがなくなり衛生的な環境が維持されていく。当然ながらごみの向こうには人がいるのだ。

本稿では、家庭“以外”から排出される飲料容器に着目し、それらがどのように処理・処分されているのか、また、その処理の過程に従事する人々に迫り、今後私たちがごみの排出時に何を注意したり、心掛けたりすればいいのか考えてみたい。

業者による飲料容器の収集と中間処理

前述したように、外出先で排出する飲み終わったペットボトル、瓶、缶などの飲料容器は産業廃棄物となるため、収集ボックスを設置している者が処分する責任を負う。しかし、自らで処分はできないため、契約する業者に処分を依頼する。筆者は本稿の執筆にあたり、その業者の1つ、埼玉で中間処理事業を展開する「木下フレンド」社のご協力をいただき、飲料容器を処理する過程を見学した。

ご協力をいただいた木下フレンド(写真:木下フレンド提供)

ご協力をいただいた木下フレンド(写真:木下フレンド提供)

木下フレンドは、各種小売店、外食産業、公官庁、学校、病院、ホテル、オフィスビル、球場、遊園地、鉄道駅など、約4500社と契約し、保有する約200台の収集車のうち40台を利用してスチール缶・アルミ缶・ペットボトルといった飲料容器を収集し、リサイクル業者に引き渡す事業を展開している。

収集作業は、日中はもちろん深夜時間帯にも行われる。顧客のもとを訪問し、清掃車に飲料容器がいっぱいになるまで約8時間かけて収集して所沢市に擁する中間処理工場のリサイクルラインに搬入する。

収集ボックスを設置する事業者が、排出する飲料容器を種類ごとにしっかりと分別してくれれば作業は容易になるのだが、現実的にはかなり難しい。例えば駅のホームに設置しているごみ箱を想像してほしい。

そもそも細かく分別するスペースもなく、不特定多数の排出者に対してその場で細かい分別方法を指示するのは難しく、さらにかなりの量が一度に排出される。そのため、いったんは「飲料容器」など大きなカテゴリに分けて排出してもらい、そこから各種容器を選別していく形をとらざるをえない。

よって、一緒くたに「ペットボトル/缶・瓶」をまとめてポリ袋に入れて排出してもらい、木下フレンドはそれを収集して持ち帰って自社のリサイクルラインで分別し、容器の品目ごとにまとめていく作業を行う。また毎日大量の飲料容器を処理する必要があるため、可能な限り機械化し、受け入れ可能量を増やす体制を整えている。

清掃車により搬入された飲料容器類は手作業で粗選別され、そこから不適物となる金属類、段ボール類などが取り除かれる。

搬入された飲料容器類(筆者撮影)

搬入された飲料容器類(筆者撮影)

ポリ袋と飲料容器を分ける

次に破除袋機にかけてポリ袋を裂いて中身が取り出せるようにし、ロールスクリーン機に2回かけ、ポリ袋と飲料容器に分けていく。

ロールスクリーン機(写真:木下フレンド提供)

ロールスクリーン機(写真:木下フレンド提供)

ポリ袋を取り除いた後の飲料容器(写真:木下フレンド提供)

ポリ袋を取り除いた後の飲料容器(写真:木下フレンド提供)

その後、飲料容器は磁力選別機へとかけられ、磁石の力によりスチール缶が抜き取られる。

磁選機内でスチール缶が上部に付き、抜き取られていく(写真:木下フレンド提供)

磁選機内でスチール缶が上部に付き、抜き取られていく(写真:木下フレンド提供)

次はアルミ選別機へ

次にアルミ選別機にかけ、磁界や電流の力を使用してアルミ缶とペットボトルとに選別する。最後は、光学式選別機にかけ、ペット(PET)素材かポリエチレン(PE)素材なのかを光で判定し、ペットボトルを取り出している。

光学式選別機(左側の装置)(写真:木下フレンド社提供)

光学式選別機(左側の装置)(写真:木下フレンド社提供)

選別されたペットボトル(写真:木下フレンド社提供)

選別されたペットボトル(写真:木下フレンド社提供)

このような過程を経てスチール缶、アルミ缶、ペットボトルとビニール袋に分別され、それぞれのリサイクル業者に搬入。飲料容器は新たな素材へと生まれ変わっていく。

木下フレンドは大規模なリサイクルラインを稼働させているが、すべてが機械化されているわけではない。人の手が必要な箇所があり、所々にスタッフが入り選別作業を行っている。

そのスタッフのほとんどが元収集車の運転手で、加齢により車の運転に不安を感じた55歳から60歳までの社員が配置転換を希望してなっている。リサイクルラインは朝8時から夕方5時まで稼働させており、50分経過すると10分休憩を取る形で、午前中4回、午後に4回分の仕事をしている。

手作業のうちの1つである混合廃棄物が投入された直後に行う粗選別では、スチール缶やアルミ缶やペットボトルではない不適切物がリサイクルラインに入って稼働が止まらぬよう、事前に目視して手作業で抜き取っている。

中には飲料容器の中にタバコの吸い殻が入れられたもの、飲み残しがあるもの、ひどいときには飲料容器に交ざって注射器、ライター、電子タバコのリチウム電池、大工仕事で使う工具なども捨てられていることもある。これらはリサイクルできないどころか発火の恐れがあるものもあり、手作業で事前に取り除かなければリサイクルラインが止まりかねない。

リサイクルラインからは大きな音が発生するため、スタッフは耳栓をする。また、鋭利なもので手を切らぬよう防刃手袋をはめて作業を行っている。屋根はあるとはいえ屋外に近い環境での作業になるため夏場は高温となり、かなり臭いも伴う中での作業となる。このような状況にもかかわらず、スタッフは分別不良による危険物と対峙しながらも、廃棄物処理過程の安定的稼働の一翼を担っている。

木下フレンドは中間処理事業を営む営利企業であるので、中間処理にかかる手間やリスクは当然のこととして負担すべきという声もあるだろう。しかし、すでに資源循環サイクルの廃棄物処理の一端を担って稼働し続けている以上、この中間処理事業が欠けてしまうと私たちの身の回りに飲料容器が散乱するような状況へとなりかねない。

外出先でも守るべき分別ルール

外出先でのごみ排出に関しては、自分の家から出されたごみではないため適当になりがちだが、これまで説明してきたように、適当な排出は私たちの生活環境に影響が生じてしまう可能性もある。

では、今日からできることは何か。その場に示された選別のルールを守り、不適正排出物は絶対に出さないようにする必要があるだろう。とくに、飲料容器などのリサイクル品については、容器の中にごみを入れて排出せず、なるべくきれいな状態で出すことが求められる。

身の回りにあるものの使用後の行き先や、ごみの向こう側にいる人が見えてくると、おのずと自らの排出行為が変わっていく。また、その人たちに配慮した排出へともなっていく。ごみの向こうに人がいることを忘れないでほしい。

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提供元:飲み残し「ペットボトル」を平気で捨てる人の盲点|東洋経済オンライン

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