2022.08.18
「日本の猛暑」に戦慄する外国人たちがしている事|デーブ・スペクターさんはギャグで暑さを凌ぐ
今年の夏は、ひときわ暑い……日本の夏になれていない外国出身者はどのようにしてしのいでいるのだろうか(写真:Flatpit /PIXTA)
最高気温は東京35度、バンコク31度、ニューデリー31度……。16日も猛烈な暑さに見舞われている日本では、「暑い」とされるタイやインドの気温を上回る日が続いている。
今年の夏は観測史上最も暑い夏の1つとなっており、穏やかな気候の国から来た外国人にとってはまさにサバイバルになっている。湿度の高さに加えて、気温が40度近くまで上がるというのは非常に過酷な体験だ。
こうした中、日本人の知人から教えてもらった暑さ対策を取り入れている外国人も多い。一方、日本と同じくらい、あるいは、それ以上に暑さが厳しい国から来た人は自国で行っていた涼をとる方法を実践している。
「可能なら冷蔵庫の中で寝たい」
放送プロデューサー・タレントのデーブ・スペクターさんは、彼らしいユーモラスな語り口で、暑さをしのぐためのいくつかのアイディアを惜しみなく教えてくれた。
「可能なら冷蔵庫の中で寝たい」とスペクターさんは言う。「だけどそうはいかないから、寝る前に冷房を約15分間強く掛けて部屋を『準備』させます」。
日中は「日本特有のかき氷やいろんなアイスをバンバン食べます。行きつけのコンビニに『また来たか』ときっと思われてますよ」。また、外国人はちょっと似合わないかもしれないが、サラリーマンのように冷たいおしぼりで顔や首を拭くのは最高。よくやるけど人が見てない時にね」とも話す。
せっかくなので、ジョークも披露してもらった。
「日本滞在1年目の外国人がかき氷を早く食べすぎる:『Ouch!』
日本滞在5年目の外国人がかき氷を早く食べすぎる:『いててててて!』
だから、『いててててて!』と言うようになったら、1人前の日本人になったと確信できます。
……自分のギャグが『寒い』とよく言われるから読み返すとちょっと涼しくなる!」
野外の活動は控えている
徳島に長く住んでおり、日本での生活についての小説を多数執筆し、『The Baseball Widow』で賞も取っているスザンヌ・カマタさんは、今年は屋外の活動をいくつか見送る予定だと語る。
「例えば、瀬戸内海で行われる瀬戸内国際芸術祭に参加したいのですが」とカマタさんは語る。「3年に1回しか開催されない芸術祭で、世界的なアーティストたちが素晴らしい展示やインスタレーションを行うのですが、暑さに耐えるのは嫌なんです。不快な経験になってしまいますから」。
カマタさんの出身地であるアメリカでは、南部を除いて日傘を使うことはめったにない。しかし、日本では1年を通して、特に夏は至る所で日傘を見かける。人生のかなりの部分をアメリカ南部で過ごしたカマタさんには、日傘を使うことについてある思い込みがあった。
「日本に来て女の人たちが日傘を差しているのを見た時、この人たちは神経質に過剰反応しているだけだと思っていました。アメリカ人は少し日焼けすることを好みます。アメリカにいた頃の私は皆から色白すぎると言われていたので、少し日焼けしたいと思っていたくらいです。でも日本では皆が日傘を使っているので、私も使ってみたんです。初めて使った時、使わないよりも本当に涼しいということを知りました」(カマタさん)
一方、厳しい暑さで知られるアリゾナ州フェニックス出身の大学職員、コリーヌ・ウィルソンさんは暑さについては日本のほうが凌ぎやすいと語る。フェニックスの夏の平均気温は40度にも上るからだ。ただし「それは乾燥した砂漠の暑さです」とウィルソンさん。「こんなに湿度は高くありません」。
東京に住むウィルソンさんによると、アリゾナ州の住民は夏にはカウボーイブーツかサンダル、ジーンズとハット、日焼け止めとサングラスというスタイルが普通だという。
「明るい色のリネンやコットンの服を着ている人たちをよく見かけます」と彼女は説明する。「そして、砂漠の暑さで靴底が溶けてしまうので、厚底の靴を履きます。テバやビルケンシュトックのサンダルなど熱に強いものです」。
ウィルソンさんによると暑さに打ち勝つ秘訣はシンプルだという。とにかく避けることだ。「用事は朝のできるだけ早い時間に済ませるか、日が落ちるまで待つのです」と彼女は言う。「できれば日中は冷房の利いた屋内にいます」。
つねに着替えを持ち歩いている
大阪を拠点とするミュージシャンでプロデューサーのデロン・レイノルズさんはアメリカの北西部出身で、これまで湿気や猛暑に悩まされることはなかった。「エアコンさえ持ってませんでした」とレイノルズさん。
25年前に日本に移住してきた彼がこの国の暑さをしのぐ秘訣は、つねに着替えを持ち歩くことだという。
「私にとって大事なのはシャツと下着です」とレイノルズさんは語る。「職場や出勤前の駅で着替えられる場所を確保しておけば、香り付きのシートで体を拭いてから新しい服を着ることができるので、涼しくなれます。ベビーパウダーを使えば涼しくドライになるし爽やかな香りもします」。
関西科学・文化・言語・環境学園で代表と教員を務めるマーク・ブラッフォードさんの近所に住む日本人たちは、彼のことを昔の日本人みたいだと思っている。日本の昔ながらの方法で暑さをしのいでいるからだ。
「職場の前の歩道に打ち水をしている白人の男がいたら、それが私です」とブラッフォードさんは語る。「柄杓ではなくホースを使っていますけどね」。
ブラッフォードさんはフロリダ州出身なので、暑さと湿気には慣れている。「でもフロリダでは事情が大きく異なります」と彼は説明する。「ほとんどの人は、エアコンの利いた家からエアコンの利いた車に乗ってエアコンの利いた職場に行くからです」。
「気候変動というより、地球異常化」
日本に長年住んでいるブラッフォードさんは、「30年前はヒートアイランド現象が極度の高気温の原因だと言われていました」と振り返る。
ヒートアイランド現象とは都市化による気温上昇のことで、現代の交通機関、経済活動、製造業、エアコンなどがすべて熱排出の増加につながるとされる。さらに都会では水や風、緑地など気温を下げる要素が少なくなる傾向がある。
「気候変動とは言われていませんでした。しかし、私は地球温暖化よりも『地球異常化』という言葉のほうがしっくりくると思います。暑さがより暑く、寒さがより寒く、湿度の高さがより高くなっていく理由を説明するために作家のトーマス・フリードマンが考えた言葉です」
最後はやはり、デーブ・スペクターさんに締めてもらおう。
「冷房がない国が圧倒的に多いので『暑い!』とあんまり言わないことを心掛けてます。日本の夏は楽しいので暑さはその1つと割り切って満喫をする主義です。せっかく日本に住んでるからジャパニーズ・サマーを満喫するのは一番の対策。どうもお疲れサマーでした!」
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提供元:「日本の猛暑」に戦慄する外国人たちがしている事|東洋経済オンライン